ライターのグレースは、夫ジャクソンと共に何もない田舎へ引っ越した。ジャクソンの叔父が亡くなり、空き家となった一軒家を譲ってもらったのだ。荒れ果てた家をなんとか住めるようにして、やがて妊娠出産。育児で家を空けられないグレースは、孤独の中で次第に精神に不調を来していく。
「ダイ・マイ・ラブ」
以下、ネタバレを撃ち殺して。




ジェニファー・ローレンスとロバート・パティンソンの夫婦ドラマ。監督はリン・ラムジー。単なる産後うつの映画でもないし、「男だから全く感情移入できない」で済ませていい映画でもない。1人の女の精神崩壊を擬似体験する映画で、良くある麻薬中毒者のトリップ体験映画に近いかもしれない。しかしこちらの方が圧倒的に身近で、「母となることの呪縛」という普遍的な内容には誰しも戦慄はすると思う。
そもそも、2人の引越しからして呪縛というか刑務所入りに近い。周囲には森と畑しかなく、家は〈事故物件〉で、義理の両親が近所に住んでいる…しかし夫への愛情の強さで不満は押し隠してきたんだな。出産を経ると、夫からの愛情表現も減り、育児のヘルプも望めないと悟っていく。まわりはみんな敵に見え、夫に愛されたいのに愛されない。赤ちゃんは可愛いけど、もう仕事にも家事にも関心を払えない。もともとグレースには精神疾患の芽があり、崩壊へのカウントダウンは着実に進んでいく。…その過程はサスペンスでもありホラーでもあった。パティンソンがあのルックスで根は善人ながら、絶妙にダメ夫で、妻の妊娠出産を控えている男性はぜひ反面教師的に見たほうがいい。「死んでくれ、私の愛する人」という原題は両親のエピソードとリンクする。「私の愛する人」とは、ラストの山火事(幻覚)から察するに自分自身のことだろうか。描かれてはいないが、多分グレースは自殺する…パムの銃を手に取って。怖い映画だし、嫌な映画だった。ゆえに忘れ難い。「ビューティフルデイ」を観てポール・シュレイダー味を感じたが、「呪縛・しがらみ」に囚われた人間たちを描くという点では確かに共通しているかも。ぜひ。
…ニック・ノルティ&シシー・スペイセクがパティンソンの両親役で出演。特にスペイセクは佇まいからして素晴らしく、いい年の取り方をしていたな。
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