2026年第9回K-POPシリーズ
K-POPのグループを紹介するシリーズ、今回は5月9日(土)と10日(日)に東京都調布市にある京王アリーナで2daysを控えるITZY(イッジ)に焦点を当てていく。TWICEの妹分と期待が寄せられたグループは、自立した女性としての力強さを打ち出していた。早くから世界進出を進め、アジアからヨーロッパへと大陸横断を遂げている。2019年の結成時から7年間の歩みをまとめた。彼女たちの魅力に迫っていく。
タイトル「意志を研ぐ表現者たち —— ITZY、その身体表現の深層」
ITZYといえば、強さと可愛さを併せ持つ「ティーンクラッシュ」路線を辿る。自己肯定をテーマにした歌詞にあわせて、高難度のダンスを繰り出す。下半身が安定している分、上半身のしなやかな動きを生み出す。同じ事務所に所属するTWICEと比較され、妹分とも評される。先輩にあたるTWICEは「親しみやすさ」から日本と韓国の若者の間で浸透した。コロナ禍以降は世界進出を加速させ、カリスマアーティストへ変貌しつつある。対して、ITZYは「私は私を愛する」と、開拓者精神を貫いた。
デビューからわずか数年で、彼女たちは「ガールズクラッシュ」と呼ばれるジャンルを定着させ、身体の切れを生かしたアスリート的な姿でステージに立った。強い女性像を確立した5人の軌跡を追う。
目次
・序章 コロナ禍前、力強い眼差しから世界視野を見据える
・第1章 TWICEの系譜から「個」の確立へ
・第2章 「毒林檎」を喰らい、運命を書き換える
序章 コロナ禍前、力強い眼差しから世界視野を見据える
2019年1月21日午前0時、JYPエンターテインメントは新たな5人組ガールズグループのデビューを発表した。黒髪に黒のミニスカートで統一されたティザー映像は、洗練された強さを印象づけた。平均年齢17歳。デビュー日は2月12日、グループ名は「ITZY(イッジ)」——「it(それ)」と「있다(ある・いる)」をかけ合わせた、自己肯定の意志を象徴する名である。デビュー前日、タイトル曲「DALLA DALLA」のティザーが公開された。スーツケースを引き、エレベーターに乗り込んだ4人は、密閉された空間でブラウスを脱ぎ捨てる。更衣室かのように、ケースを開けて、着替えをした。直立した姿勢のままボタンをはめていた際、隅っこに設置されたカメラの存在に気付いた。プライベートな領域を守るようにブラウスをカメラに向かって投げつける。
扉が開くと同時に響く硬質なベース音とパーカッション。メンバーはカラフルなジャケットやセーターを着用した。腕を鋭く振り、腰を弾ませながら、ビートを支配するダンスを披露した。清楚さと反骨精神が共存する、鮮烈なデビューだった。
写真� �2019年に公開されたティザーの映像の一幕
ITZY メンバープロフィール
写真�◆�2019年に公開されたティザー
写真左から順に記載
・チェリョン (CHAERYEONG) 2001年6月5日生まれ 167cm
指先まで神経の行き届いた、しなやかで知的なダンスが魅力。
・リア (LIA) 2000年7月21日生まれ 162cm
メインボーカル。豊かな表現力と叙情的な歌声で、グループに情感を添える。
・リュジン (RYUJIN) 2001年4月17日生まれ 164cm
センター。カリスマ性と中性的な魅力で、唯一無二の存在感を放つ。
・ユナ (YUNA) 2003年12月9日生まれ 170cm
最年少。元フロアボール選手の身体能力を活かした、ダイナミックな表現力は随一である。
・イェジ (YEJI) 2000年5月26日生まれ 167cm
リーダー。ストイックな練習量に裏打ちされた、精密で力強いダンスが武器。
第1章 TWICEの系譜から「個」の確立へ
あのTWICEを生み出したJYPエンターテインメントから妹分として送り出されたITZY(イッジ)は、デビューの瞬間からまったく違うコンセプトを打ち出していた。 「親しみやすさ」を美徳としたTWICEに対し、ITZYが突きつけたのは「I LOVE MYSELF(私は私を愛する)」という揺るぎない自立の哲学である。デビュー曲『DALLA DALLA(違う違う)』で見せた、他者の視線に左右されない態度は、アイドルの新機軸の枠を超えていた。意思の強い女性を象徴するいわゆる「ガールズクラッシュ」の先駆けだった。
日本デビューは、2021年12月22日にリリースしたベスト・アルバム『IT'z ITZY』だった。先駆けて11月12日には、コロナ禍による入国制限に伴い、韓国からオンラインでテレ朝系列の「ミュージックステーション」に生出演をした。トークにおいては、日本語を学習しているリュジンが積極的に受け答えする。彼女は、見所として「腰の振り方です」と答えて、体をやや捻りながら、腰に手を当てて実践した。披露する『WANNABE』の核となるのは、「フューチャー・ハウス(Future House)」の要素を色濃く反映した、エレクトロニックなダンスリズムである。
写真�� WannabeのMVの一幕
•拍動の構造: 1分間に約120〜125拍(122 BPM前後)という、人間の心拍数よりも速く、かつ焦燥感を煽らない絶妙なテンポで構成される。
•「硬い」ベース音: サビ(ドロップ)部分では、金属を打ち付けるような鋭く重いシンセベースが「ドッ、ドッ」と規則的に鳴り響く。まさにリュジンが強調した「腰の振り」を視覚化するための強固な土台(フレーム)となっているのである。
•12月18日に日本初となるオンライン・ライヴ「ITZY JAPAN DEBUT SHOWCASE “IT'z ITZY”」を開催した。アップテンポな曲を揃えたステージは、画面越しとはいえ、醍醐味に溢れていた。Mステ出演時にリュジンが日本語で「腰の振りに注目して」と語ったのは、深い分けがある。代表曲「WANNABE」の機械的なビートに対して、自らの肉体をどれほど精密に同期(シンクロ)させ、かつ「個」の意志を宿せるかという挑戦でもあった。
•ビートを支配する強靭な身体能力。その筆頭として、アスリートの経歴を持つユナの存在が、グループの説得力をより確固たるものにしている。
写真�ぁ�2021年11月13日のMステ出演時の映像
•コロナによる制限がなくなりつつある2022年、ようやく東シナ海を越えて来日が実現した。9月23日にミュージックステーションに初めてスタジオ出演を果たし、「Blah Blah Blah」を披露する。タイトル曲を日本語に訳すると、「(かくかくしかじか、ぺちゃくちゃ)」である。パフォーマンスでは、「手で噂話をしているようなジェスチャー」がアピールポイントとなる。メンバーが口元や耳元で手をパタパタと振る。股関節の柔らかさからくる指先の動きは速やかで力が伝わっていた。「他人の言葉など私には届かない」と拒絶しながらも、芯の強さを提示している。
•中毒性のあるリズミカルなラップ: メロディーの骨格は、リズミカルなラップと中毒性の高いメロディである。ダンスもリズムに同期していた。一見すると遊び心の中に、JYP特有の「重いビートを全身で受ける」ための体幹が要求される。
•「モノトーン衣装からの自立」
:2022年4月6日に発売されたJAPAN 1stシングル『Voltage』は、グループの方向性を確定させる。鮮やかなブルーやレッドを大胆に取り入れた衣装で、ポップで力強いビジュアルに変わる。「自分の歩むべき道を堂々と進む」とのメッセージを打ち出した。
写真�ァ�ITZY 2022年4月6日 Japan 1stシングル「Voltage」のMV撮影時の衣装
リュジンがMステで語った「腰の振り」へのこだわりは、この曲でも健在である。噂話を揶揄する上半身の軽やかな動きに対し、下半身は常にどっしりとビートを捉える。腰を振りながら両手の拳を交互に突き出す「Wanna be」と同じく、上半身は力強く、そしてしなやかに振る。サビを終えると、リュジンとユナのラップのパートに、チェリョンが合いの手を入れる。リアとイェジの歌唱へとつなぐ。それぞれのメンバーの個性が噛み合い、 一つに結集する。まさにグループの真骨頂を示した。
第2章 「毒林檎」を喰らい、運命を書き換える
次のテレビ出演は2023年10月14日、NHKの「Venue101」だった。披露した曲は「RINGO」である。リアは体調不良により長期休養中だった。スタジオにて4人は、それぞれ赤や黒のベストを着用し、椅子に座ったままトークを展開した。リュジンが中心となり、やや言葉に支えられながらも、日本語で語り出す。積極的に手を上げて、来日時ショッピングを楽しんでいることを打ち明けた。日本食として卵焼きやタマゴサンドが好きで、スタジオの机に並べられた実物に手を伸ばした。朝はタマゴサンドを、夜は卵焼きを口にするという。韓国にもこれらのメニューはあるものの、ショッパイと端的に答えた。イェジもチェリョンも、予め用意された回答を日本語で伝える。チェリョンは「お芋のお菓子」が好物、対してイェジは食べ物ではなかった。「写真」が思い出に残っていると吐露した。かつての日本公演でファンをバックに撮影したステージ写真をお披露目する。一方でユナは遠慮がちに見守っていた。トークの時間に限りがあるがゆえ、ステージへと向った。
写真�Α�ITZY ジャパンオフィシャルアルバム「RINGO」ジャケット
パフォーマンス曲の『RINGO』は、グリム童話の「白雪姫」を現代的な解釈で塗り替えた意欲作である。
• 受け身の否定: 従来の白雪姫は、毒林檎を食べて王子様の救いを待つ「受動的な存在」であった。ITZYは、一転して攻撃の意思を貫く。自ら林檎(運命)を齧ると、その甘酸っぱい香りに刺激さえ、エネルギーを生み出した。毒を中和する体内メカニズムが働き、ダンスパフォーマンスとして還元した。
• 「おとぎ話」からの脱却: 歌詞には、「おとぎ話のような決められた結末はいらない」と寓話的な解釈を否定していた。作り込まれた話に入りびたりせず、自らの強い意思で生き抜く決意が秘められていた。デビュー以来一貫している「I LOVE MYSELF」の哲学の深化だった。
• 身体表現の連動: 林檎を齧る仕草や、鏡を覗き込むような動作は、まさに寓話の世界である。自己愛を確認するための儀式とは明確に異なっていた。多角的な視野から世界を俯瞰することで、己の現在位置を確認し、研鑽を積む。コロナ禍後の世界進出へ向けた眼差しだった。
次章以降は、メンバー5人の資質や、個別のエピソード、身体能力を紐解いていく。
写真�А�ITZY 2023年10月14日、NHK [VENUE101]出演時
写真出展先
詳細記事 THE F1ST TIME 2023年10月27日付
https://www.thefirsttimes.jp/column/0000342033/
写真�´◆�2019年デビュー時のティザー 掲載元 Danmee
https://danmee.jp/knews/k-pop/itzynews-2/
写真�� Wanna beのダンス(中央リュジン)掲載元 NO K-POP NO LIFE 2021年10月28日付(最新更新:2023年7月8日付け)
https://mt9itzy5jpn.com/itzy-wannabe-jpn/
写真�ぁ�ITZY 2021年11月13日Mステ出演時 出展先 ITZYオフィシャルX
https://x.com/JYPEITZY_JP/status/1459144399762247684/photo/2
写真�ァ�ITZY 2022年4月6日 Japan 1stシングル「Voltage」のMV撮影時の衣装 掲載元 TOWER RECORDS 掲載: 2022年02月25日 16:45 更新: 2022年04月04日 12:00
https://tower.jp/article/news/2022/02/25/tg009?srsltid=AfmBOopmjhtHQbACMsZnDqaiQQiYAVfWYKgtqg7yin9Dd4Xr2mi6nGea
写真�Α�ITZY ジャパンオフィシャルアルバム「RINGO」ジャケット 掲載元 ワーナーミュージックジャパンより
https://store.wmg.jp/products/3315?srsltid=AfmBOoqF2aS02k4kUPcCFuQXcHL6vpqPJp62i04_2mx-w3cM_0jQkTf-
写真�А�ITZY 2023年10月14日、NHK [VENUE101]出演時 掲載元 ITZY JAPAN OFICIAL X 2023年10月15日付
https://x.com/JYPEITZY_JP/status/1713225761216242045/photo/1
以下 関連作品。
2022年9月23日付 今夜MステSPにITZY登場!B'zの稲葉さん58回目の誕生日、
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983325490&owner_id=32437106&from=list_diary_title
以下 直近のK-POPシリーズ
・2026年4月25日 第8回 『制動のアルゴリズム ― MISAMOが描く16ビートの規律と、和の様式美』3部作中篇
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1992047002&owner_id=32437106&from=list_diary_title
・2026年4月21日 第7回 『春の重奏、さざなみの記憶(下)』第3章 野球のマウンドに立つデジタル光 ― カリナとウィンター、MLBとの交差
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1992024817&owner_id=32437106
『イナズマロック フェス』が『FEST. INAZUMA』に改名して今年も 西川貴教、RIIZE、ももクロ、WANDS、MONGOL800ら第1弾発表
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=8777966
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