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2024年11月17日15:55

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霊界案内人そまり

 昔書いた小説を投稿します。

 霊界案内人さんの話です。

 興味のある方はどうぞ...。

 よろしくお願いします。

 それでは始まります...。



 僕の名前はそまり。僕の仕事は何かって言うと実際、霊界案内人だ。どんな仕事かっていうと人が死んだら、幽体になって舞い上がって来て、その人達を地獄か天国に振り分けるのさ。地獄行きか天国行きかも僕次第ってわけさ。でも、別に気分で振り分けてるわけじゃない。僕だってこれでもプロだ。そこはちゃんとしてるさ。多分ね。
 また一人舞い上がって来たよ。
「おーい」
 呼んでるみたいだね。
「はーい」
 さっそく仕事だね。
「ちょっと教えてくれ。ここは何だ?」
 年の功は四十半ばといったところかな?
 中年サラリーマンみたいだね。
「ここはというと?」
「ここだよ。一体何だね?ここは?」
「あなたはね。おやじ狩りにあったんですよ」
「おやじ狩り?」
「そうです。新宿のチーマー達にフクロですよ」
「何だって?」
「だから、チーマーにやられたんですよ」
「チーマー?」
「チンピラ達ですよ」
「私がか?」
「そうですよ」
「やられたって何がだ?」
「殺されたんですよ。死亡したんですよ。あなたは」
「何だって?」
「死者ですよ。あなたは」
「死者だって?」
「幽霊ですよ。あなた今幽体なんですよ」
「何だって?」
「魂の緒がぶち切れたんですよ。幽体離脱とはちょっと違う」
「死んだだって?」
「そうですよ。あなたやられたんですよ。チーマーにね」
「……」
「初めまして。僕の名前はそまり。霊界案内人。死神ですよ」
「死神……」
「あなたの行き先を決定する者です。天国か地獄かをね」
「……」
「その決め方ですが……」
「……」
「あなたにこれからある武闘大会に出場して頂きます。その成績いかんということに致しましょう」
「何だって?」
「場所ですが……」
「……」
「この時期は魔界で行われます」
「何だって?」
「では参りましょう」
 僕はその男の腕を取り魔界へと向かった。


 その男はまだ事態が飲み込めず、挙動不審にあたりを見回しながら僕に引っ張られていた。
 僕達の姿は次第に薄く、透明になっていき、人間界から魔界へと移行していった。
 人間界と魔界の狭間の深い緑色をした空間を越えて、僕達は完全に魔界に突入した。
 空は赤黒く、辺りは黒い霧に包まれている。
 大地にいくつもの暗い森が見える。
 プテラノドンの様な巨大な黒い鳥がたくさん飛んでいる。
 獣の様な魔物達の鳴き声がそこかしこから聞こえてくる。
「失礼ですが、あなたお名前は?」
 僕は男に名前を聞いた。
「田中庄一だ」
 男は堂々と答えた。
「田中さんですね……」
 僕は田中を連れて武闘大会の出場手続きをするためにこの先のビアギュラー山という山の頂にある神殿に向かった。
「優勝出来たらいいですね」
「何だって?」
 神殿のすぐ近くまで行くと近衛兵二名が手を振ってくれた。
 僕は神殿の入り口に降り立つと二人に会釈して、田中を引き連れ中へと入った。
「そまり君、よく来たね」
 奥の木製の机に座っていた老人がそまりに微笑んだ。
「こんにちは。ゼーゼさん」
 僕はゼーゼさんに軽く微笑んで挨拶し、用件を切り出した。
「今日はこの田中さんのことで……」
「ふむふむ」
「アンチレーレ武闘会の出場手続きをお願いしたいのです」
「ふむふむ」
「あとユニフォームか何か頂ければ」
「ふむふむ、よろしい。田中さん、出場。ユニフォームじゃな」
「はい」
「ふむ。それでは明日のこの時間にもう一度ここへ来てくれるかな。その時に田中君の出場枠、ならびにユニフォームを用意致そう」
「わかりました。ありがとうございます」
 僕は軽く会釈して、田中を連れて神殿を後にした。
 僕等は少し飛んでからスプリングという泉に降り立った。
 泉のほとりに腰を下ろすと僕は田中さんに事の詳細の説明を始めた。
「田中さん、あなたはアンチレーレ武闘会に出場するのです。そして、そうですね。上位入賞で天国行きということに致しましょう」
「何だって?」
「アンチレーレ武闘会にはあなたの様に天国行きをかけて出場する人、魔界にその名を知らしめたい魔族達、お洒落感覚で出場する者達と様々です」
「アンチレーレ……」
「アンチレーレ武闘会です。まあ、全ては明日、ゼーゼさんが教えてくれます」
「ゼーゼ……」
「まあ、それまでお昼寝でもしましょうか」
「……」
 田中と僕は大空を見上げて、地面に大の字になった。
 広い。僕はそう思った。吸い込まれそうだ。どこまでも飛んでいけそうだ。
 僕は大空を見て、これから先、何だってやれると思った。
 横を向くと田中はスースーと寝息を立てて眠っていた。
 まるで子供の様な寝顔だなあ。僕は思った。
 田中の寝顔を見てると何だか僕も眠くなってきて、大きなあくびをした後、僕もすぐに眠ってしまった。
 


 翌朝、小鳥達のさえずりで僕達は目を覚ました。
 田中と僕は大きな伸びをしてから、ゆっくりと立ち上がった。
「ここの泉の水は飲めるんです。様々な養分が入っていて食事を取るより元気がでるでしょう」
 僕は田中にそう教えて、二人で泉の水を飲み、それを朝食とした。
 しばらく二人でぼんやりしていたが、そろそろゼーゼさんのところへ行く時間になったので、僕は田中の手を取り、上空へと舞い上がった。
「よく眠れましたか?」
「ああ」
 神殿に着くと、僕は田中を引き連れてすぐにゼーゼさんのもとへ向かった。
「やあ、おはよう。そまり君」
「おはようございます。ゼーゼさん」
「おはよう。田中君」
「……」
 ゼーゼさんはさっそく僕達に武闘会についての詳細を話し始めた。
「さて、田中君の出場枠じゃが……。Cブロックじゃ。最初の相手じゃが……。マシリトという選手じゃ。何とサイボーグだそうな」
 僕は田中の方を振り向いた。
「マシリトですって……」
「……」
 ゼーゼさんは田中を見て微笑んだ。
「まあ、頑張ってくれたまえ。大会は今日の正午からじゃ。これはわしから君へのユニフォームの贈り物じゃ」
 そう言ってゼーゼさんは田中に全身紫の胴着を渡した。
 田中は微動だにしなかったので、ゼーゼさんは田中の手に胴着を持たせた。
「あと二時間くらいで始まりますね」
 僕は田中にそう言い、ゼーゼさんに微笑んで会釈して、田中を連れて神殿を出て、再びスプリングの泉のほとりに降り立った。
「じゃあ、あと二時間、お昼寝でもしましょうか」
 僕は田中にそう言い、再び二人で大の字になってほとりに寝転んだ。
 田中はすやすやと眠り、まるで子供みたいだなあと僕は思った。
 大会三十分前になって、僕は田中を起こした。
「田中さん、起きましょう。もうすぐ大会が始まります」
「んん……」
 田中は目をこすって起き上がった。
「行きましょう」
 僕は田中の手を掴み、舞い上がった。


 会場が見えてきた。
 会場はローマのコロッセウムの様な造りになっている。
 入り口に降り立つと僕は受付に田中の紹介を済ませた。
「今日Cブロックで出場する田中さんです。よろしく」
「はい、存じております」
 受付は厳正な態度で僕に対応すると深々とおじぎをした。
「さあ、行きましょう。田中さん」
 僕は田中さんの手を掴んで、会場の中に入った。
「あと十分ですね。もうここで着替えて下さい」
 僕はそう言って田中に着替えを促した。
 田中はそそくさと着替えを済ませた。


 そして、田中の試合が始まった。
「第一試合、田中庄一対マシリト!」
 リングアナがマイクで大きく叫んだ。
 試合開始直後、マシリトは田中目掛けて真っ直ぐに猛スピードで進んできた。
 マシリトは下半身がタンクになっていてタイヤで進んでくる。
 すぐさま真横に飛びのいた田中だったが、マシリトはすぐに方向転換して田中の方に向かってきた。
 そして、雨あられの様なパンチを田中に浴びせた。
 田中は場外に吹っ飛んだ。
「場外!」
 リングアナは大きく叫んだ。
「勝者、マシリト!」
 リングアナはマシリトの勝ち名乗りをあげた。
 マシリトは歓喜し、タンクで会場の中を走り回った。
 僕は田中のもとへ駆け寄り、腕を掴んですぐさま会場を後にした。


「田中さん……。残念でしたね」
 僕は田中の方を見て、情けなく微笑んだ。
「ゼーゼさんのところへ行きましょう」
 僕は田中の腕を掴み、舞い上がり、神殿へ向かった。




「ゼーゼさん、田中さん、負けました」
「ふむ。残念じゃった……」



「地獄行きじゃ」
 ゼーゼさんは力強く言った。
「何だって?」
 田中はゼーゼさんを見つめた。
 ゼーゼさんは両手を天にかざした。
 田中の足元に暗黒の小さな黒い空間が出来、田中は吸い込まれていった。
「ゼーゼさん……」
 僕はゼーゼさんを見つめた。
「大丈夫じゃ。彼は必ず這い上がってくる」
 ゼーゼさんは遠くを見つめてそう言った。





おわり


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