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国道213号が豊後高田の市街地に入る直前に右折する──富貴寺(ふきじ)までの道は走りやすい。
蕗(ふき)は地名だ。富貴は当て字だ。
蕗の里には、日本の原風景というべき懐かしさを感じる。
ここに九州最古の木造建築物──富貴寺・大堂がある。
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参道の石段の左右にある小さな石像や石塔さえも、鏡子さんは見逃さない。
興味深げに凝視していく。
拝観券を求め、さらに登れば、大堂である。
最近ではアニメ「平家物語」に、架空の阿弥陀堂としてトレースされていた。
12世紀の話だから、もっと古い富貴寺モデルは時代考証をパスするのだ。
靴を脱いで回廊を歩く。
この回廊は完全に一周している。
そうでなければ、「堂々めぐり」ができないから。
時計回り、と鏡子さんが指示した。
右肩を露わにするのが仏への敬意を示すのだという。
右肩を見せるには──なるほど時計回りだ。
庭に国東塔がある。その名の通り、国東にしかない独特の石塔だ。
笠塔婆(かさとうば)というモニュメントも珍しい。
「あれが十王像」
鏡子さんが指差すのは、苔むした小像たち。
閻魔大王だけではない、あの世の裁判官たちだ。
しかし、ひとまわり大きい像は、
「奪衣婆(だつえば)」だ。
亡者の着物をすべて剥ぎ取る係員である。
(つづく)
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