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2018年06月17日04:38

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名誉棄損 変態的行為なのか その2完

 イ 原告は,同年3月25日,ツイッターにおいて,下記の記事を投稿した(甲31,乙14)。
         記
     DMらしきものを見たけど,嘘だらけじゃないか。何回も犯された?ア○ルを犯した?一回普通にしただけなのにどういうことですか?フラフラになるまで飲んでたのは貴方。送った後,娘さんに挨拶したでしょ。電話にも出ないし,流石にこれ以上デマを流すなら,法的措置も検討せざるを得ません。
  (7)ア 「B @◇◇」は,平成28年5月18日,ツイッターにおいて,下記の記事を投稿した(甲31)。
         記
    某年某月某日,某所にて
    ○□「X1’’やん?あいつ,キャンディーのアナル掘ったんだぜ?なにがX1’’やんだよ,Aやんじゃねーか」って会話をしたとかしていないとか。(三名から聞いたダニ)しかしあの界隈って下半身は本当に緩いダニ。ついでに暴力組織集団は本当に仲間を簡単に売るダニね。
   イ 同年5月19日,原告が,ツイッターにおいて,被告に対し,「アナやんて誰のことですか?」と質問する記事を投稿したところ,「I」が,「アナやんとはX1のことであるwHさんが言ってた」と回答する記事を投稿した(甲27,33)。
   ウ 同日,「○×」において,下記の記事が掲載された(甲29)。
         記
     X1
     栃木の造園会社に勤めてる
     バイクで2ケツして女を殺してるのに(中略)
     C栃木支部長(中略)
     Bに飴ちゃんのアナルをほったのでアナやんと陰口叩かれてることをバラされる
   エ 被告は,同日,ツイッターにおいて,下記の記事を投稿した上,上記ウの記事を引用するURLを掲載した(甲27,28)。
         記
     ○×ではよりカオスになっている。祭りでアナやんの由来が親切に分かるようになっているかもwww
   オ 被告は,同年5月20日,ツイッターにおいて,下記の記事を投稿した上,上記ウの記事を引用するURLを掲載した(甲32)。
         記
     Eが「アナやん?そんなメンバーいない」と書いているのにブロック外して「X1’やん」が出てきて粘着して自縄自縛プレイを披露した挙句に再びブロックして遁走するから○×のFスレが「アナやん祭り」になっているじゃないか!Jやん!
  (8) 被告は,平成28年5月22日,前記(7),アの記事を引用するなどして,本件ツイートをした(甲5)。
  (9) 平成28年6月7日,「○×」において,「X1’やんて苗字なんての?K?」と質問する記事が掲載され,これに対し,「X1」と回答する記事が掲載された(甲30)。
 2 争点(1)(同定可能性)について
  (1) ある記事によって名誉を毀損された者と原告の同定可能性については,原告と面識があり,又は原告の履歴情報を知る者において,その知識を手がかりに当該記事が原告に関するものであると推知することが可能であり,当該記事の読者の中にこれらの者が存在した可能性があるか否か,また,これらの読者の中に,当該記事を読んで初めて,原告についてのそれまで知っていた以上の情報を知った者がいた可能性があるか否かによって決すべきである(最高裁平成12年(受)第1335号同15年3月14日第二小法廷判決・民集57巻3号229頁)。
    前記前提事実,認定事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告の姓である「X1」と「X1’やん」の音には共通する部分があるところ,原告は「C」に参加しており,「C」のホームページには,その構成員として,「栃木支部長 X1’やん @□□」という記載がある上,「○×」においては「X1’やん」と原告の同一性を示す記事が相当回数掲載されており,被告が平成28年5月19日及び同月20日にツイッターに投稿した記事並びにこれらに引用されている「○×」の記事を読めば,「アナやん」,「C栃木支部長」である「X1」及び「X1’やん」は同一人物を指すものと,また,本件ツイートを読めば,「X1’’やん」,「Aやん」及び「X1’やん」は同一人物を指すものとそれぞれ推論することができ,実際,同月19日に「I」によって投稿された記事の内容からすれば,第三者においても「アナやん」と「X1」は同一人物を指すものと認識していたことが認められる。
    そうすると,原告を知る者において,「X1’やん」が原告を指し,本件ツイートが原告に関するものであると推知することは可能であり,本件ツイートの閲覧者の中にこれらの者が存在した可能性があり,また,これらの閲覧者の中に,本件ツイートを読んで初めて,原告についてのそれまで知っていた以上の情報,すなわち本件事実を知った者がいた可能性があると認めることができる。
  (2) これに対し,被告は,本件ツイートから判明する事実は,� 孱悖院任笋鵝廚箸いΕ張ぅ奪拭次Ε▲�ウント,��顔がほとんど認識できない顔写真(本件顔写真),��アナルセックスをしたこと,の3つしかなく,これらから原告を特定することはできない旨主張する。
    たしかに,本件顔写真等の本件ツイートから判明する事実のみによって,「X1’やん」が原告であると特定することは困難である。
    しかしながら,「X1’やん」と原告の同定可能性は上記事実のみを基礎として判断されなければならないものではなく,上記のとおり,原告を知る者において,従前から有していた情報に本件ツイートによって新たに入手した情報を併せて推論すれば,「X1’やん」が原告であると特定することは十分可能であるというべきである。
    そもそも,本件ツイート及びこれに関連して被告が投稿した一連の記事(そこに引用された記事を含む。)の内容からすれば,被告は,原告を揶揄ないし嘲笑する意図をもって,「X1’やん」という呼称を使用して本件ツイートをしたものと推認できるから,その際,被告のツイートの閲覧者との間で,「X1’やん」が原告を指すことは共通理解であり,「X1’やん」と原告の同定可能性があることを前提にしていたものと推認するのが相当である。この点について,「C」の関係者の陳述書(甲36から41)は,陳述者が法廷において尋問を受けたものではないため,一般的にはその証拠価値が乏しいものであるが,上記推認を裏付ける限度では証拠価値を認めることができるというべきである。
    被告の上記主張は採用することができない。
  (3) 以上によれば,原告を知る本件ツイートの閲覧者において,本件ツイートが原告に関するものであると推知すること,すなわち本件事実が原告に関するものであると推知することは可能であったと認められる。
    なお,被告は,本件ツイートは表現の公然性の要件を満たさないとも主張するが,上記と同様の理由により,採用することができない(以上の理は,プライバシー侵害についても同様に当てはまる。)。
 3 争点(2)(法益侵害)について
  (1) 名誉毀損
   ア 本件ツイートは,原告が女性とアナルセックスをした,又はしようとしたという事実(本件事実)を摘示したものである。
     被告は,アナルセックスは多くの人に認知され受け入れられた性的嗜好であるし,また,人の愛し方は多様であり,膣に陰茎を挿入して愛し合うことと肛門に陰茎を挿入して愛し合うことは同様に認められなければならないのであって,そのような性的嗜好を有することによって社会的評価が低下すると評価することは,人の愛し方の多様性を否定するものであり,性的少数者に対する差別であって,許されない旨主張する。
     しかしながら,名誉とは,人がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名誉を指すものであるから(最高裁昭和43年(オ)第1357号同45年12月18日第二小法廷判決・民集24巻13号2151頁),ここでの問題は,アナルセックスをすることの当否ではなく,これに対する社会一般の受け止め方であるところ,アナルセックスは性行為の態様として一般的とはいえず,そのため,社会の中には,その有する価値観によっては,上記のような性的嗜好を有する者に対し,違和感,抵抗感あるいは嫌悪感を抱く者が存在することは,事実として否定できないところである。
     そうすると,本件事実の摘示によって原告の社会的評価は低下したものと認めるのが相当である。
   イ また,本件事実の摘示について,公共性及び公益目的があったことの主張・立証はないから,その違法性が阻却されることはない。
     この点について,被告は,本件ツイートが虚偽でなければ名誉毀損は成立せず,違法性阻却の要件として公共性及び公益目的は不要である旨主張するが,独自の見解であり,採用することはできない。
     以上によれば,本件ツイートは,原告の名誉を毀損するものと認められる。
   ウ なお,前記認定(第3,1,(7),ア及び(8))のとおり,本件ツイート中の原告の名誉を毀損する中核的な部分(前記第3,1,(7),ア)については,被告がその原物を作成したものではなく,既に第三者(「B@◇◇」)によって作成され公開されていた記事を被告が引用したにすぎないことが認められ,ここから,被告は,本件事実の摘示は被告とは無関係であるとしてその責任を否定する。
     しかしながら,仮にある事実がインターネット上で公開されていたとしても,その時点においてはこれを知る者がごく一部に限られていて多数人に知られていたわけではなかったのに,被告の行為によって情報拡散が行われ繰り返されることによって多数人に知られるに至ったような場合には,被告の当該行為はなお不法行為を構成するものと解すべきである。
     本件において,被告は,被告のアカウントにおいて,閲覧者の好奇心をそそる表現を用いることによって,より多くの閲覧者を本件URLに誘導して上記の中核的な部分を閲覧するよう仕向けているとともに,閲覧の対象として女性の顔写真(甲9)その他の関連する情報を付加し組み合わせることによって,情報の具体性・信憑性を高めているのであるから,まさに上記の場合に該当するというべきであって,被告の上記主張は採用することができない。
     もっとも,本件ツイート中の原告の名誉を毀損する中核的な部分が当時既に第三者によって作成され公開されていたという事実は,原告の損害のうち被告の行為と相当因果関係のある部分の認定に当たって考慮すべき一事情となると考えられる(以上の理は,プライバシー侵害及び名誉感情侵害についても同様に当てはまる。)。
  (2) プライバシー侵害
    前記のとおり,本件ツイートは,原告が女性とアナルセックスをした,又はしようとしたという事実(本件事実)を摘示したものである。
    そして,本件事実は,原告の私生活上の事実であり,一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しない事柄であり(被告自身,平成29年4月17日付け準備書面(5)(5頁最終行以下)において,「アナルセックスをしたという事実は通常秘匿を望む事柄であ」ると主張しているのであるから,この点については異論のないところと思われる。),一般の人々に未だ知られていない事柄であったことが認められる。
    なお,被告は,原告は「飴」という女性について「C」のライン・グループ上で「俺の女だ。」と自慢していたのであるから,自己のプライバシーを放棄したものである旨主張するが,そのような事実を認めるに足りる証拠はない。
    以上によれば,本件ツイートは,原告のプライバシーを侵害するものと認められる。
  (3) 名誉感情侵害
    前記のとおり,本件ツイートは,原告が女性とアナルセックスをした,又はしようとしたという事実(本件事実)を摘示したものである。
    しかしながら,本件事実が真実であると認めるに足りる的確な証拠はない。この点について,Lの陳述書(乙46)には本件事実は真実である旨の記載部分があるが,陳述者が法廷において尋問を受けたものではないため,その証拠価値は乏しく,採用することはできない。
    そうすると,原告は,女性とアナルセックスをした,又はしようとしたという事実(本件事実)がないにもかかわらず,本件ツイートによってこれを摘示されたことになるのであり,本件ツイートは,原告について,性的嗜好という人間の根源に関わり人格の核心に触れる部分に関して虚偽の事実を摘示して,揶揄ないし嘲笑するものであるから,社会通念上許される限度を超える侮辱行為であって原告の人格的利益を侵害するものというべきである。
    以上によれば,本件ツイートは,原告の名誉感情を侵害するものと認められる。
    これに対し,被告は,原告は,性的少数者を含むあらゆる差別に反対する「C」に所属しているのであるから,性的少数者の有する性的嗜好を自身が有することを公表されたからといって,原告の名誉感情が侵害されることはあり得ない旨主張する。
    しかしながら,特定の性的嗜好について,それを他者が有することを許容し支援することと,自己が有することとは次元の異なる事柄であって,被告の上記主張はこれを混同するものであるし,自己が有していない特定の性的嗜好について,他者から,自己がこれを有している旨の虚偽の事実を摘示された場合,その内容如何によっては,名誉感情が侵害され得ることは明らかである。
    被告の上記主張は採用することができない。
    以上によれば,本件ツイートは,原告の名誉感情を侵害するものと認められる。
 4 争点(3)(損害)について
   前記のとおり,本件ツイートは,被告が,原告を揶揄ないし嘲笑する目的で,原告が女性とアナルセックスをした,又はしようとしたという事実(本件事実)を摘示することによって,原告の名誉,プライバシー及び名誉感情を侵害して,原告に看過できない精神的苦痛をもたらしたものである。
   しかしながら,他方,本件ツイートはマスメディアにおいて公表されたものではなく,インターネット上のツイッターにおいて公表されたものであるところ,一般に,ツイッターに投稿された記事の内容の信用性はさほど高いものとはいえない。
   また,本件ツイートから判明する事実のみによって「X1’やん」が原告であると特定することは困難であり,したがって,これを特定し得た者の多くは,「C」又はその対抗勢力の関係者が占めるものと考えられるのであって,本件事実がこの範囲を超えて広く一般人に広まり,極めて多数の者が認識するに至ったとは考え難い。
   さらに,本件ツイート中の原告の法益を侵害する中核的な部分は,その原物を被告が作成したものではなく,既に第三者によって作成され公開されていた記事を被告が引用したものにすぎない。
   加えて,前記認定(第3,1,(6))のとおり,原告は,自ら,ツイッターにおいて,「飴」と性交渉を持った事実は自認しながら,本件事実は否定する旨の記事を投稿しているところ,前者に関しては,同事実の摘示による原告の法益侵害はないということになるし,後者に関しては,結果として,その閲覧者を本件ツイートに誘導し,あるいは本件事実を想起させる契機となった可能性を否定できない。
   以上の諸事情を総合考慮すれば,本件ツイートによって原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は10万円と認めるのが相当である。
   また,本件における認容額その他諸般の事情に照らせば,本件の弁護士費用は1万円と認めるのが相当である。
   以上によれば,被告は,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料10万円と弁護士費用1万円の合計11万円及びこれに対する不法行為の日である平成28年5月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべきである。
 5 謝罪文の掲載請求
   本件ツイートの内容,想定される閲覧者数や,本件ツイートによって侵害された原告の法益のうち主たるものはプライバシーであると考えられることなどからすると,本件ツイートに対する名誉回復処分として,被告に対し謝罪文の掲載を命じるまでの必要性があると認めることはできない。
 6 まとめ
   被告は,本件訴訟の提起は,被告に対する嫌がらせ目的によるものであって,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠き,それ自体不法行為に当たるから,棄却ないし却下されるべきである旨主張するが,本件訴訟の提起がそのような目的によるものであると認めるに足りる証拠はなく,被告の上記主張は採用することができない。
   以上によれば,原告の金銭請求のうち,被告に対し,慰謝料10万円と弁護士費用1万円の合計11万円及びこれに対する不法行為の日である平成28年5月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるが,その余の部分は理由がない。
   また,原告の請求のうち,謝罪文の掲載を求める部分は理由がない。
第4 結論
   よって,原告の請求は,被告に対し11万円及びこれに対する平成28年5月22日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の金銭請求及び謝罪文の掲載請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
    東京地方裁判所民事第34部
           裁判官  中園浩一郎

 

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