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2017年11月01日11:09

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昭和63年の司法試験・商法論文式試験問題から現在の企業法務をみる

昭和63年の司法試験・商法論文式試験問題から現在の企業法務をみる

          弁護士 岡本 哲
構成
はじめに
第1問について
第2問について

はじめに

また、司法試験の論文式の論点予想で過去30年くらいまでさかのぼる意味はあった。司法試験委員はそのころの試験を受けて合格していることがおおいので、立法や判例の動きがあまりない時代は問題意識が共通していたわけである。平成も二けたになると利害状況や判例の進展、試験傾向の年々の変化で、過去問にしても過去10年くらいで足りているようには思われる。

 筆者の合格した年、昭和63年だと商法はいまでは企業法務での実務的意義が2問ともなくなってしまった。頭の体操くらいにちょっと考えてみたいただきた。
昭和63年商法
第1問
甲株式会社の資産総額は200億円であり、甲会社の内規によれば、10億円以上の借入れには取締役会の決議が必要である。甲会社の代表取締役Aが、甲会社の名において乙銀行と次の取引をしたとき、それぞれの取引の効力はどうなるか。
(一) Aは、取締役会の決議を経ることなく、20億円を借り入れた。
(二) Aは、自己の住宅購入資金にあてるため、2億円を借り入れた。
第2問
個人営業を営む甲が、A株式会社代表取締役甲名義で約束手形を振り出した場合、甲の手形法上の責任はどうなるか。A会社が実在する場合と実在しない場合とに分けて論ぜよ。

これを2時間でそれぞれ1000〜2000字くらいの答案を作成して回答する。そんなに苦戦せずに解答したものと思われる。

第1問について

昭和63年だと定期預金の金利が年1割をこえていたわけで、民事の年5パーセント、商事の年6パーセントの遅延損害金は利息としては安いことになる。マイナス金利や住宅ローン金利が2パーセントの平成29年現在とは異なる。
第1問については当時の商法260条違反の効果と、判例の民法93条但書類推との効果について判例理論をかいたあと、200億円の資産総額、20億・2億という金額 事業負資金か自己の住宅購入資金かを期待して会社が責任をおうべきかどうかをとわせるものであった。銀行側としては契約が有効で会社に効果帰属してもらわないと十分な利息が回収できない、というものであった。
ところが平成29年段階では代表取締役Aに十分資産があるのであれば、契約を無効にして不法行為として法定利息をとったほうがいいことになる。利益状況がかわったうえ、無効にしたほうが、救済がよりはかられるという事態になってしまった。相対無効ではなく絶対無効でいいとなると、条文と離れて妥当な解決をはかろうとする解釈論の苦労はなくなってしまう。
 遅延損害金の利率の変化により、良い問題だったのが、意味がなくなってしまった。

第2問について
平成も1桁ころまでは司法試験の論文式試験では手形法・小切手法は12分の1の重要性があり、これで7段階評価の最下位Gをとると不合格間違いなし、となっていた。
6科目または7科目でそのうち1科目の商法は2問出題されるのだが、そのうち1問が必ず手形法・小切手法からの出題だった。現在は手形の流通量が激減したためか。論文式試験ではまずでなくなった。
 本問は手形振出しにおける行為者特定方法、手形客観解釈・手形の無因性、会社が実在する場合の商法12条との関係、無権代理(代表)の責任、偽造者の責任の各論点を書けばいい。昭和63年当時では文具屋で手形用紙がおいてあり私製手形も簡単に作成できた。東京地裁平成15年11月17日が私製手形による手形訴訟利用を否定したこともあり、商工ローンでも平成16年以降私製手形とつくらなくなった(日栄・商工ファンド対策全国弁護団活動報告書 日栄・商工ファンド対策全国弁護団 2010年・110頁)。
平成29年段階では銀行等金融機関の発行する統一手形用紙以外の手形はまずでまわらず、統一手形用紙の場合は番号が振ってあるから誰が振り出したかは、明確にすぐわかるようになってしまった。私製手形の流通がほぼなくなるという社会情勢の変化により実務的には意義がなくなってしまった。

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