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2017年09月07日17:51

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扶養義務・扶養手当・扶養控除

扶養義務・扶養手当・扶養控除

                            弁護士 岡本 哲
1 扶養義務とはなにか
 扶養は、老幼、心身の障害、疾病、貧困、失業などの理由により自己の労働が困難でかつ資産が十分でないために独立して生計を営めない者(要扶助者)の生活を他者が援助することである。日本民法では725条により6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族が親族とされ、直系血族・兄弟姉妹、特別な場合に3親等内の親族は扶養義務を負うことになっている(877条1項)。親等の計算は戸籍を基準としておこなわれる。
 社会保障の普及で一般の扶養義務自体を問題にすることは少なくなっており、親子・夫婦といった2親等の婚姻費用分担・離婚給付や離縁給付などの問題が法律家の手掛ける扶養問題のほとんどである。
 このほかに戸籍や住民票に反映されない事実婚・内縁やLGBTの問題や渉外的扶養関係の問題もあつかうことがある。
 
2 扶養手当
 家族手当がある会社は多い。これは男性中心・終身雇用を前提としていた昭和40年代からの就業規則がそのまま受け継がれているような場合もあり、男女共同参画の時代にあってないことがままある。夫婦共働きで別会社に勤務し、双方家族手当をもらっているが、片方の収入が明らかに多い場合に双方が家族手当ありというのはなんとなくおかしいと読者も感じることだろう。扶養の定義や家族手当の性質上、同居とかも要求されていることもあり、就業規則の解釈としては実際に扶養していることが必要と解されることも多い。
 夫婦間で双方扶養手当をとっていることがわかれば、収入の少ない側は会社に対して詐欺罪(刑法246条)を働いたことになるように思われる。
 男性側が妻の扶養に入っているというのを会社に報告する、というのは、むかし風の男性、現在40歳代以上だと抵抗があるようである。

 手当の不正受給での懲戒事例としては 神戸地方裁判所平成25年12月17日判決 労働判例1113号14頁 があるが不祥事の累計で公務員が分限免職処分を受け取消請求が棄却された事例である。住居手当と扶養手当だとそうそう金額も変わらないと思われるので一応の参考になる。
 原告は、被告の交通部運輸課にバス運転手として採用されたが、不正に住居手当及び通勤手当を受給したことで、停職6月の懲戒処分を受け、更に、共済組合から虚偽申告をして融資を受けたことなどで分限免職処分を受けたのを無効として処分の取消しを求めた。裁判所は、原告が、通勤・住居届兼認定書の提出を怠ったこと、本件過支給につき、住居変更手続きを行わず、故意に借家に係る手当を受けたこと、共済からの借入れにつき、債務額を過少申告し、別異の使途に流用したことを認定し、動機、態様、結果のは悪質かつ重大で公務員としての倫理観、規範意識に重大な欠陥があり、勤務態度等も職務遂行の適格性を欠くとし、本件各処分を適法として請求を棄却した。

3 扶養控除
 所得税における扶養控除は家族を扶養しているときに一人あたり約年38万円の控除を受けられるものである。扶養家族が一人ふえると平均的なサラリーマンでは年8万円程度税金が安くなる。
 扶養が家庭裁判所で問題になるのが夫婦・親子間がほとんどのためか、世間的には扶養控除は、同居あるいはかつて同居していた夫婦や子が未成年の親子の間だけとおもわれているようである。
 実際の扶養控除は生計を一にしている6親等内の血族・3親等内の姻族であればよい。同居要件はない。年齢制限もない。同居したことのない、ニートのおいの子供やめいの子供でも扶養していれば通用する。生計を一にしているとしても内容はあいまいである。お年玉をあげていれば扶養に入るかもしれない。
50代サラリーマンが年金暮らしの両親に月々5万円おくっている場合に両親を扶養に入れるのはどうか。老人ホームの保証人になっているが、毎月の仕送りはまだはじまっていない場合はどうか。
 LGBTで親族関係が戸籍や住民票に反映されていない場合はどうか。
 渉外的家族関係で親族関係が戸籍や住民票に反映されていない場合はどうか。
2017年8月8日に調査した範囲内では判例は存在しなかった。ケースとしては灰色ということになる。控除が現段階で通っていても否認される恐れは残ることになる。

4 扶養手当と扶養控除
 労働者が実際に金銭出費をしていない扶養家族について扶養手当を請求するのは、雇用している会社等に対して詐欺罪ではないかという問題はすでに指摘した。
 では扶養手当と扶養控除の要件に差があっても、扶養控除をして節税したい場合に労働者はどうすればよいのか。
 これは扶養手当を申告せず、扶養控除だけを申告すればいい。具体的には給与所得者の扶養控除等異動申告書を出せばいい。これをちゃんとやっているのはある程度給与実務にくわしい人である。

5 ちょっといやなこと
 離婚した夫婦の子供の養育費支払い請求事件だと、法律上は元夫も元妻もありうるが、筆者の所属する事務所の50年以上の事件でも、ほとんどの場合が養育費支払い義務のあるのは、元夫である。
 元夫がサラリーマンだと給与明細が家庭裁判所にでてくる。明細をみると、養育費の支払いをおこたっているのに扶養手当・扶養控除はちゃんとしていることがある、手当や控除の目的とは異なる給与のつかいかたをしているわけであり、人間のいやなところをみた感じになってしまう。

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