「僕は象じゃない!動物じゃない!これでも人間なんだ!」
19世紀のロンドン。興行師バイツが営む見世物小屋で公開禁止となった出し物があった。それは〈エレファントマン〉。世にも不気味な外見をした奇形人間を見せるというものだった。病院の外科医トリーブスは興味を惹かれ、「彼」を診察することにする。頭蓋骨が肥大し背骨も彎曲、皮膚も硬化し背に無数のコブを有したまさに奇形の彼。その身体構造から気管支炎を抱え、常に命を失いかねない状態にあった。トリーブスは彼を直ちに病院に保護し、気管支炎治療を施しながら学会に提示して、新種の病を発見したかどで賞賛を得ることになる。しかしトリーブスは、自分がバイツのやっていたことと何ら変わりなく彼を見世物にしたことに自己嫌悪に陥り、彼を保護しようと決意する。やがてトリーブスは、彼にジョン・メリックという名があり、文字も読め礼儀正しい会話もできる普通の青年であることを知る…
「エレファント・マン」。映画ファンのあいだでは、リンチが自分の悪趣味を見せかけのヒューマニズムで誤魔化した作品、とされていますが、人間の心の醜さを暴く痛烈な映画として、今も輝きを失わない作品と感じました。ロンドンの空を覆う黒煙、ケンドール女史の舞台、母が象に襲われるイメージなどに、「ツインピークス」のリンチ節が垣間見れますが、ことさらにメリックの異様さを強調したホラー演出はありません。リンチは自身の悪趣味が持つ危険性を理解したうえで、これを撮ったに違いありません。必見です。
ところで、このメリックの病気は一体何だったのでしょうか?私が医学部で勉強した頃は、フォン・レックリングハウゼン病と呼ばれる神経線維腫が原因と言われていましたが、頭蓋骨の肥大化など合致しない症状が多く、近年ではAKT1遺伝子の変異で起こるプロテウス症候群だとされています。
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