こうした現実から、中国ではレアアースの輸出規制については、民生用製品の輸出には影響しないと説明しており、目的はあくまでも日本の再軍備を阻止することだとコメントしている。>
<もともとアメリカが世界最大のレアアースの供給国だったのが、長期戦略を立てて、割安で供給することで、西側諸国のレアアース供給企業が採算割れする戦略を進めて、独占的な地位を占めた。いわば、中国の革新的戦略だったわけだ。>
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代替が難しい「日本版レアアース」技術の正体
岩崎 博充 によるストーリー • 2 時間 • 読み終わるまで 9 分
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高市早苗首相(写真:ブルームバーグ)
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東洋経済オンライン
高市早苗首相の発言に端を発した日中関係の悪化は、ついに中国が持つ切り札とも言える「レアアース(希土類)」の対日輸出の規制にまで発展しつつある。
中国は2026年1月、軍事用途に供され得るデュアルユース(軍民両用)品について、日本向け輸出を禁じる措置を発表した。中国側は「対象は防衛関連に限る」と説明する一方、実務面では、レアアースや希土類磁石を含む品目で、対日向けの輸出許可審査が滞る動きも報じられている。
こうした問題はアメリカ向けではすでに前例がある。中国は25年4月、サマリウムやジスプロシウムなど7種のレアアースを輸出管理の対象に追加し、輸出には許可が必要になった。許可手続きの遅れは調達不安を招き、フォードが希土類磁石不足を理由にSUV「Explorer」の生産を一時停止したと報じられている。
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さらに中国は2025年10月、レアアース関連の輸出管理を拡大する追加措置(第2弾)を公表し、最終用途・最終需要家の確認強化や、海外企業にも許可申請が及び得る“域外的”な運用が論点になった。しかし中国商務部と税関総署は同年11月、この追加措置の適用を2026年11月10日まで停止すると発表している。
もともとアメリカが世界最大のレアアースの供給国だったのが、長期戦略を立てて、割安で供給することで、西側諸国のレアアース供給企業が採算割れする戦略を進めて、独占的な地位を占めた。いわば、中国の革新的戦略だったわけだ。
「日本版レアアース」の技術とはどんなものか
しかしその一方で、実は日本にも「日本版レアアース」とも呼ばれる工業製品や技術があることをご存知だろうか。レアアースは他に変わるものがないのが強みで、いわゆる代替性がないのが大きな特徴だ。実は日本にも数多くの代替性のない製品や技術がある。
他に変わるものがない唯一無二の日本製品は、様々な分野に及んでいる。いま中国がトップの座を目指して推進している「AI強国」への道についても、AI開発に不可欠な半導体は、その製造工程に日本企業は大きく関わっている。日本の技術がなければ、半導体の製造は困難だ。エヌビディアも、その例外ではない。
問題は、こうした日本特有の技術や製品を、外交上の戦略物資として中国のように、輸出規制などできるのかどうかだが、実際に、日本ではすでに輸出規制などを実施した実績がある。安倍政権時代、日本は韓国に対してスマートフォンなどの画面に使う「フッ化ポリイミド」や半導体製造で使う「EUVレジスト」「フッ化水素」の3品目を規制したことがある。
はたして中国に対しても、同様の輸出規制をするのか。日本版レアアースの技術とはどんなものなのか、その効果はどの程度期待できるのか。その可能性について考えてみたい。
例えば、日本が世界シェアを独占する企業や技術というのは、意外なところに存在している。食品会社として知られている味の素の「ABF(味の素ビルドアップフィルム)」もそのひとつだ。ABFは、半導体とチップの基板を接続させるための絶縁材料だが、高性能CPU/GPU用ではほぼ100%に近いシェアを長年維持していると言われている。半導体製造には不可欠な絶縁材料と言っていい。
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むろん、エヌビディアのチップなどのAIサーバーも、このABFがないと生産がストップしてしまうといわれている。95%以上の完璧なシェアがあり、いわゆる「チョークポイント・ストラテジー(構造的優位性)」を持っている工業製品といえる。莫大な利益を生む市場がストップすることになり、外交上の強力な武器になると指摘されている。
簡単に紹介すると、精密機械の心臓部であるCPUに使用するための絶縁体で、回路以外に電気が流れてしまうことを防ぐフィルム。半導体などは、小さなスペースに複雑な回路や微小なパーツがふんだんに詰め込まれる構造になっており、優れた機能を持つ絶縁フィルムは不可欠だ。味の素はこれを食料品の製造技術をベースに開発、製造。1999年には大手半導体メーカーに採用されている。世界中のCPUに採用されており、2021年に生産された「PlayStation 5」の販売の遅れは、味の素のABFの生産が追いつかなかったから、という報道もある。
世界シェアが高い日本の技術
こうした世界シェア90%以上という製品は、ABF以外にもいくつか存在している。簡単に紹介すると次のようになる。
● EUVペリクル(三井化学)
EUVとは、半導体製造装置で使われる次世代露光技術のひとつで、日本語では「極端紫外線」と呼ばれる。半導体製造装置において、シリコンウェハー上に極めて微細な回路パターンを露光するために使われる最先端の光技術だ。三井化学のペリクルとは、EUVの際に設計図にゴミがつかないように守る超薄膜のこと。唯一同社が量産体制を確立しており、そのシェアは90%以上と言われている。
● EUVマスクブランクス(HOYA)
半導体製造の過程で不可欠と言われるのが、半導体の原版となるガラス板。フォトマスク、マスクブランクスと呼ばれるガラス板は、究極の平坦度が求められ、世界中の最先端チップは同社のガラスから生まれていると言われている。シェアは7〜8割とされているが、事実上の寡占状態とも言われている。
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● EUVマスク欠陥検査装置(レーザーテック)
AIなどに使う最先端のチップの設計図である「マスク」の傷をチェックする検査装置。レーザーテックの欠陥検査装置はサムスンやTSMCでも使われており、これがないと最先端のAIチップは作れないと言われる。世界シェア約100%ともいわれる。
● EUV用コーター・デベロッパー(東京エレクトロン)
露光装置と一体化して、感光材を塗る装置。塗布現像装置とも言われるが、世界シェアは90%以上と言われている。同社の装置がなければ、最先端の微細なチップを製造できないとされる。
半導体製造以外の分野でも突出する日本の技術
この他にも、EUVの「高性能フォトレジスト(感光材)」も、日本企業の高い技術として知られている。純度が圧倒的に高く、中国企業による代替が最も難しい分野のひとつだ。「信越化学」や「JSR」「東京応化工業」といった会社がこの技術を持っており、トータルすると90%以上の世界シェアを持っていると言われている。
この他にも、世界シェア90%以上と言うわけではないが、大きなシェアを持っている製品や技術は数多くある。例えば、京都府京都市を拠点とする「TOWA」は半導体のモールディング装置(樹脂封止装置)で世界トップシェア(約6割)を誇る。半導体チップを保護するため、樹脂で封印する工程を担うモールディング装置は、40年以上に渡って独自技術を維持してきた。一方「ディスコ」は、半導体の「後工程」におけるウェハーの切断・研削などに使われ、非常に高い精度が求められる「精密加工装置」を製造しており、その世界シェアは80%とも言われる。
日本は医療用製品の分野でも、特化したシェアを持つ製品や技術が存在している。例えば、眼科用ナイフ・縫合針、内視鏡や外科・手術用ロボット、人工関節といった分野では、日本企業が開発した製品は世界的に大きなシェアを持っている。カメラや繊維といった分野でも、日本企業が世界のトップシェアを持つ製品や技術は数多くある。
一方、レアアースを戦略的な武器として、日本やアメリカに圧力をかけている中国にとって、もっともその影響が大きいのは何か。いわば、中国にとってのチョークポイントとはどのようなものが考えられるか。
�々眄�能フォトレジスト
先に紹介した「高性能フォトレジスト(感光材)」は、日本がほぼ10割のシェアを持っており、7nm以下の先端チップの製造は物理的に不可能と言われている。自動車や家電向けの汎用的なArFレジストでも中国は日本に依存しており、この感光材の供給が止まれば既存の工場も稼働停止に追い込まれるとされている。
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フォトレジストをウェハーに塗って、現像する装置。「東京エレクトロン」が世界シェアの90%を独占していると言われる。露光装置の世界シェア92.8%を持つと言われるオランダASML製の露光装置と連携させており、この装置が入手できなければ半導体は作れない。
��洗浄装置と高純度化学ガス
「スクリーンホールディングス」が洗浄装置で高いシェアを保有しており、ウェハー上の微細なごみを取り除く洗浄装置などは日本企業に依存していると考えられている。
日本の優位性がいまだに保たれている
こうした日本企業による高いシェアは、日本と全面的に輸出規制競争などになった場合には、中国の半導体メーカーの開発プロセスや、中国政府が推し進めるAIやフィジカルAI開発などは、少なくとも短期的な影響は避けられない。とりわけ、半導体製造過程のなかの「洗浄」と「後工程」と呼ばれる部分については、日本の優位性がいまだに保たれており、中国には大きな影響を与えられると考えられている。たとえば、「ディスコ」のウェハを切り出す精密切削装置「ダイシングソー」も、世界の70〜80%のシェアを持っている。
株式投資をやっている人ならすぐに気が付くはずだが、これらの企業は半導体関連銘柄として、株価も大きく上昇している。金融マーケットでは、すでに日本企業の優位性がよく知られているわけだ。
さて、問題はこうした日本企業の優位性を外交上の武器として使うかどうかだが、これはなかなか難しいと言っていい。中国はすでにレアアース関連製品の対日輸出について、軍民両用(デュアルユース)の審査を厳格にしたことを発表しており、実際に輸出許可が滞っていると報道されている。
こうした動きを受けて、日本政府は中国に対して日本が独占する製品や技術を、中国向けに規制した場合、どんな結果になるのか。すでに安倍政権時代に実施された韓国に対する輸出規制は、韓国側は直後に「脱日本」を掲げて、自国での生産に切り替えている。その後、規制は解除されたものの、日本企業への不信感を高める結果となった。
ただ、韓国と日本は同じ西側で、いわば同盟国に近い存在。最終的な決裂にまでは至らない事は容易に想像できた。しかし中国の場合は、そうはいかない。2026年初頭、中国政府は半導体設備の国産化率50%目標に掲げている。すでに、以前から日本の技術に依存していることは認識しており、中国はすでに急ピッチで対応を進めているはずだ。それでも日本が中国に対して輸出規制に踏みきれば、中国のAI強国への道に短期的にブレーキがかかるかもしれないが、長期的には乗り切るはずだ。
中国に大きく依存している製品が多数
その一方で、日本の影響は計りしれない。中国からの輸入品に頼っている業種は数多いし、中国の工場で製造している企業は想像以上に多い。たとえば、パソコンやスマホ、エアコン、衣類といった品目の大半は、製造拠点を中国に依存しており、さらに抗生物質の原材料や抗菌性物質、医療医薬関係の多くは中国からの輸入に頼っている。また、リン酸アンモニウムや尿素といった農業生産に不可欠な化学肥料も中国に大きく依存している。
仮に中国からの輸入が止まった場合、代わりに輸入できる国がないという意味での100%依存状態の製品も少なくない。日本政府は、こうした現実を踏まえて、他国への過度な依存を防ぐ意味で、11の分野を「特定重要物資」に指定して、供給先の多角化を図っているものの、トランプ関税等で混乱する世界経済では、なかなか進んでいないのが現実だ。
いわば、日本と中国は「恐怖の均衡」を維持しながら、付き合っていくしかないのが現状だ。こうした現実から、中国ではレアアースの輸出規制については、民生用製品の輸出には影響しないと説明しており、目的はあくまでも日本の再軍備を阻止することだとコメントしている。
ある意味で、日本が持つ様々な唯一無二の技術を外交上の戦略として使うには、極めて慎重にならざるをえない状況だ。
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東洋経済オンライン
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ー
https://www.msn.com/ja-jp/money/other/%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E3%81%8C%E9%9B%A3%E3%81%97%E3%81%84-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%89%88%E3%83%AC%E3%82%A2%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B9-%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%81%AE%E6%AD%A3%E4%BD%93/ar-AA1UMbgk?ocid=msedgntp&cvid=6972db7a652c4eccb05dae8eedefe9a6&ei=49
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