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2025年08月17日18:37

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ロミオとハック

28歳くらいの時に人生で描いた2つ目の小説です。

孤児院から逃げ出して来た男の子とその子と一緒に暮らす優しい青年のお話です。

興味のある方はどうぞ...。

それでは始まります...。




「ロミオさん、今夜は何だか雨と風が強いね。台風みたいだ」
「そうですね。僕はこんな夜も好きですよ。楽しくて」
ロミオは木製の机に向かい自分の右手より少し前に置かれたランプの明かり
の元書き物をしていた。
ハックは木製の長椅子に座りロミオの背中を見つめていた。
ロミオのペンのコツコツという音が部屋に響いていた。
ビューという風の音が時折聞こえる。窓の窓ガラスは雨に打たれてタタタタと
音を立て続けている。
家を出てほんの百メートルも行けば海に面した高い崖になっている。
この天気ではその海も相当荒れ狂っていることだろう。
家の後ろは深い森になっていてその森を越えないと街に出ることは出来ない。
人里から離れた秘密の場所のような所にこの家は建っている。
ロミオがこの場所を選び家を建てたのだ。

「ロミオさん、物語は順調?」
「そうですね。まあまあですね」
「ロミオさんはすごいね。あんなに面白い物語をいくつも書けるんだもん」
「ロミオさんの家の本はほとんど読んだけどロミオさんの本が一番面白い
と思うよ」
「ふふ、ありがとう」
ロミオは相変わらずコツコツと音を立てて物語を書き進めていた。
ロミオはふいにペンを止め顔を上げて口を開いた。

「もう三年になりますか」
「え?」
「あなたがここを訪ねて来てから」
「そうだね」
ハックの年は十歳くらいのものだろう。
ハックは物心がついた時にはすでに孤児院で暮らしていたため正確な年が
わからないのだ。
その孤児院もそこの孤児達の隠れた暴力とさらには孤児の世話をするはずの
そこにいた大人達からの虐待に耐えかね逃げ出しあの森を越えてこの家の
ドアを叩いたのだ。

「ハックもあの時と比べたらずいぶん元気になったし大人にもなりましたね。
あの時はあまりに痩せていたので驚きましたよ」
「うん。あの時ロミオさんに助けてもらわなかったら間違いなく死んでいた
と思うよ。今では字の読み書きもできるしね。ロミオさんが毎日教えてくれる
から」
「ハックは飲み込みが早い」
「ふふ」
ハックは照れながら笑った。
ロミオは机の上を片づけてランプを消してから口を開いた。
「今日はもう寝ましょうか」
「うん」
ロミオとハックはそれぞれの椅子から立ち上がりタンスからロミオは青い
ハックは白いパジャマを取り出し着替えを済ませた。
ロミオは部屋の灯りを消すとハックと一緒に同じベッドに入った。
「ロミオさん、ありがとう」
ハックは小さくそう呟いて目を閉じた。



翌朝、小鳥がさえずる中二人は目を覚ました。
朝食を取り着替えを済ませるとロミオはハックに話し掛けた。
「散歩にでも出ますか」
「うん。そうだね」
家を出ると昨夜の嵐はすでに立ち去った後で暖かい陽射しが二人を照らした。
上空を一羽のカモメが通り過ぎた。
二人は崖の方へ向かって歩き出した。
崖の先端まで来ると立ち止まり二人そろって下の海を覗きこんだ。
海は少しまだ荒れていた。
それぞれ姿勢を元に戻すとロミオが話し出した。
「ハック。君は僕の家が気に入っていますか?」
「うん。もちろんだよ」
「それはよかった。安心しました。でも君もいつまでもここにいるわけには
いかないですね。あなたにはあなたの人生がある」
「僕はずっとここにいてもいいけどね」
「ハック。僕はね、君にはちゃんと外の世界で自分の幸せを掴んで欲しいんです」
ハックは黙っていた。
「確かにここはあなたにとって居心地がいいのかもしれません。でも、いつまでもあなたをここに置いておくということは僕が君の人生を駄目にすることに
なる」
ハックは首を横に振った。
「僕はね、ハック。君にはきちんとした世間に出てもらいたい。確かに世間には色んな人達がいるし、もしかしたら君には特に風当たりが強いかもしれない。でもね、ハック。僕は君にその中で君にとって何が本当に必要で何が本当に大切かを見極めて欲しいんだ。読み書きを毎日教えているのもいずれ君が
世間に出た時のためです」
「ロミオさんと離れるなんて」
「いずれは君を送り出すつもりです。それまでに僕の出来ることは全てする
つもりです」
二人の間に沈黙が流れた。
ロミオは水平線の遥か向こうを見つめハックは自分の足元を見つめていた。
「それはいつくらい?」
ハックは口を開いた。
「あと三年といったところでしょう」
ハックは黙ってしまった。
しばらくしてハックは顔を上げてロミオの方を見て話し掛けた。
「僕がちゃんとした立派な大人になったらまたロミオさんのところに遊びに
来てもいいかな?」
「ええ、もちろんです。大切な友人としてあなたを迎えるつもりです」
「ロミオさん、僕頑張るよ」
「ええ」
ロミオはハックを見て微笑んだ。
「そろそろ戻りましょうか。昼食の準備もありますし」
「うん」
二人は自分達の立っていた崖を後にし家の方へと歩き出した。
高く昇った太陽が二人の背中を優しく照らしていた。








おわり
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