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奇跡の話をしよう。
真城山伝乗寺は、かつて広大な敷地を持っていた。
寺のなかに寺がある──それが当たり前だった時代があった。
時が移り、伝乗寺はただ一堂を残すのみになったが、収蔵庫である真木大堂(まき-おおどう)には九体の仏像が安置されている。
これがすごい。国宝級の仏像がこんなに集まっているのは他には京都しかない、と説明されて、私は驚いたものだ。
しかし、鏡子さんはそれらを後回しにするという。
かつての伝乗寺の一部だった随願寺に行くという。
そこは彼女の結縁(けちえん)の地。
断絶したまま、本尊だけが雨ざらしになっていたのを、一個人が再興した寺。
平成の世に。私財をなげうって。
鏡子さんは、その人の妻に会ったという。
道端の地蔵尊に花を捧げていた婦人と、何気ない言葉を交わした。
その地蔵尊こそが(旧)随願寺の本尊であった。
その一年後、小さいが、正式な寺がそこに建っていた。
側に縁起を記した石碑があり、それにより、あの婦人の名前を知った。
「私は、お寺の再興に立ち会ったのよ」
私が檀家第一号だと言って、鏡子さんは随願寺の扉を開けた。
空気の流れが起きる。
この国東にある数多くの寺。
そのなかに、特別な寺がある。自分だけを待っている寺がある。
国東は人を呼ぶ、というのが私の持論だが、
間違いなく、清水鏡子を呼ぶものがここにあった。
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