飲み過ぎだな…後輩ノブ(22歳男性)がこんなふうに見えてくる…立派になったな…。
飲み過ぎた…。
酒も限界…かな。
…気まずい事があっても、店の雰囲気やらノブの気遣いで間はもっていた。
ただ、酔いが回るほどに自身の惨めさは際立っていく…。
ここは俺の居場所ではない…。
…。
やがて立ち上がったシノブはトイレへ。
奥のテーブルの前を通ると常連やゴトウさんに声をかけられて楽しそうに話している…。
口説いてくるという…男。
気になるという…男。
ごめん…俺がいなけりゃ…楽しく過ごせたのにな。
虚ろになってるだろう目で…そっちを見る。見たくもない…現実。
酔いのせいで…少し…歪んで見える、黄色い世界。
卑屈なのは俺の良くないところなんだろうけど…性格はどうにもならない。
いじける様なところを…可愛いって言ってくれたことも…あったような…わからん…。
「…ノブ、先帰るよ」
フラフラと立ち上がる。
お前はゆっくりしてってくれ…
今日は悪かったな…カンガルーとか言って…。
言ってないな…
お前がいれば、彼女も安全だろうって思う…。詫びたいし礼も…お願いもしたいが、惨めで泣きそうになるから…言えない。
もう帰ろう。
皆さん良くしてくれてはいるが…普通なら修羅場だろこんなん…
財布をケツポケットから取り出して
「ご馳走様でした」
カウンターで話をしているヤヒロさんに声をかける
「あれ、もう帰るの?」
彼も赤ら顔になっている。
さっきテキーラ煽ってたな…
店員だろあんた…
カオスだな。
「ええ、そろそろ…おいくらですか?」
「千円でいいよ」
「」
…結構飲んだぞ…。フラフラしてるし…
大丈夫かこの店…
「オーナーいないといい加減なんだよね」
座ったままのノブは苦笑いしている。
後日聞いた話だが、ヤヒロ氏オーナーに滅茶苦茶怒られてたらしい。
一見の俺ですらこうなんだから推して知るべし…だろうな。
まあ、俺としては別に文句を言う話でもない訳ですけど…
帰る…。
帰ろう…。
うぷ…。
「利根ちゃん待ってよ」
扉を開ける俺にシノブがついてくる。
便所から出てゴトウさん達と楽しくお喋りしてたと思ったが…。
というかお前金払ったか…?
何なら俺が払うけれども。
「もういいって…」
ほっとけよもう…。
店の前に止めた…銀のマウンテンバイクにまたがってヨロヨロと…走り出す。
まっすぐ走れない…。
三半規管が
『エラーデス!トレマセン!…ヒット』
みたいな。
かつてないほどの酩酊感で…エラーですねこれは…捕れませんよ。
もう何も捕れない…
多分歩いた方がいいぞ…
知るか。
自転車を取りに店の裏に回ったシノブをかえりみる事なく、駅の方へ。
「お、階段あるやんけえ…」
一ノ割駅前の踏切には地下道があり、『開かずの踏切状態』の時には下を通る事が出来るのです。
踏切も鳴っていないけれどもこの酩酊感…
「いくしかないやろぉ…?」
ないやろなあ…
チャリで下り階段に突入…
「」
転落する…
まあ…、そもそもまっすぐ走れてないですからね…
ガッ
つって…
ガガガがガガガが
ってなる。
エラーデス!トレマセン!
…ヒット!
ヒジとか腕とか膝とかを階段にコスリ落ち、チャリの上に着地みたいな。
漫画とかでボコボコにされて生ゴミの前に座り込んでるような姿勢で、チャリと一緒の…俺。
生ゴミは俺の方か…
受け身もうまく取れないが酒も入っているので痛みはあんまりない…
まあ痛いんですけどね。
痛い…
頭打って死ねばよかったのに…
ヨカッタヨカッタ…ヨカッタネェ!(※1富井副部長・談)
(※1富井副部長…有能な男)
「痛え…」
落ちて来た階段を見上げれば、自転車のハンドル越しにシノブがこちらを見下ろしている。
悲しそうな顔をして。
ああ無様だな。
死ねばよかったのにな…
お前の彼氏で…終われる…
お前もそう思うだろ…?
嗤えよ…。
無様な俺を…。
顔を背け、チャリを起こす。
地下道を踏切の反対側まで。
チャリを引きずり上げるとシノブは待っていた。
ほう…先回りとは…やるな。
「やるじゃねえか」
「何してんのよ」
彼女が呟く。
お前もな…
「ジーパン破れてるじゃん…大丈夫?」
「別に…」
痛いのは心だよ…体の方は…いっそ壊れてしまえばよかった…
…ああ…だから人間は自死を選ぶんだな…
駅前のAMPMで缶ビールを…買う。後で飲もう…。
こういうのって翌日金払った記憶がなくて不安になるんだよね…。
フラフラしながら、線路沿いをアパートまで歩いた…さすがにチャリは押した。
シノブもついてきた。会話は…ない。
チャリを適当に外階段の下に置いて、階段をよじ登る。俺の部屋は2階。
安っちい鍵を開けて、玄関は和室。
安い畳なのか、独得な匂い。
俺が臭いわけではない…はず。
辛い。立ってるのも座ってるのも…。
グラグラと頭が痛くて…血管をアルコールが流れてるんじゃないかという…。
敷きっぱなしの洋室の布団に転がり込んで仰向けになる。
「水飲みなよ」
シノブは台所からコップを持ってきた。
AMPMで買ったらしい水を入れてくれた。
「…ありがとう…ごめん」
…。
彼女は朝までそばにいてくれた…
色々潰れた俺は、それでも彼女に触れたかった。
膝枕みたいに…枕元に腰掛ける彼女に手を伸ばす。
前髪に触れ、頬に触れ…
彼女は俺の頭を撫でる。
…。
何も拒まれはしない…。
よくわからない…。
愛されている気が…した。
ゴミみたいにボロボロになった俺と…眠りもせずに俺を見つめる彼女。
彼女は朝までそばにいてくれた。
学校があるから、夜明けに帰って行った。
『ごめん…介抱してくれてありがとう…』
メールすると、
『彼女だもん』
返事がきた。
よくわからない…。
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