そのアパート
【カトレア春日部南】
に住みはじめたのは社会人2年目の春頃だったかな、多分。寒かった気もする。
眼鏡屋に勤めていたんだけれども。
ふとしたことで父親と喧嘩をしたんだ。
ふてくされて数日。
とりあえず実家を出る事にした俺は当時付き合っていた彼女と不動産屋さんを覗いてみた。
別に同棲するわけではないんだけれども。
なんか不安だしな、通って欲しいから一応一緒にみてもらおうかという部分もあり。
三軒みせてもらった。
「じゃあ案内するから乗ってよ」
不動産屋の社長は割烹着みたいのを着ているおじいさんだ。なんでも春日部では有名な小料理店の社長らしく、経営が軌道に乗ってから不動産屋も始めたんだとか。
彼が店に横付けしたカローラに乗り、内見が始まる。
・駅から徒歩二十分ほどの2階建て、2DKバストイレ別。家賃は7万弱、広いが洗濯機置場はベランダ。
「ここはお風呂広いから一緒に入れるよ」
と社長。堂々たるセクハラ。時代は平成だ。
駅から少し遠く、彼女の実家は線路の向こうとあってさらに遠い。からだったか。ここは保留した。
次に行ったのは駅から6分、1DKのやや古いアパート、家賃は…覚えてない。
見た目がいかにも古く、室内は綺麗だが社長が
「ここはお婆ちゃんが住んでたんだけど亡くなってて…」
老衰で亡くなった場合は客に伝えなくてもいいらしいんだけど社長が正直に言うものだから彼女が拒否反応。
「ちょっと…怖い…かな」とか言われる。
古めかしい雰囲気が災いしたな。却下。
次。
三軒目が俺のアジト【カトレア春日部南】だった。
駅徒歩10分かからないぐらいの軽量鉄骨2階建てアパート。
2Kバストイレ別だが追い焚きとか出来ない。ユニットバスからトイレを外した形。
外階段登って扉を入ると玄関が即和室となっており、右手に洗濯物を干せるぐらいの小さなベランダつき。
奥にクッションルームと呼ばれる洋室。さらに奥に台所とバストイレが右左に。一番奥に洗濯機置場がある。
一直線な長方形なアパート。
一人で住むには十分な広さ。
家賃も前述の通り45000だかで、電車の音がうるさいのが難点ではある。
部屋を借りるには保証人が必要なのだが、保証会社というのがあってそれを利用した。
一先ず布団と全然温かくない電気のヒーターだけ持ち込み、寝泊まりを開始。
あと実家から持ってきたのはテレビと折りたたみの小さいテーブルぐらいか。
友人のトモアキのお祖父ちゃんが軽トラを持っていた気がするので家電運ぶのを手伝って貰うことにした。が、持ってたのは軽バンだった。
コジマで小型の2ドア冷蔵庫や洗濯機を買い、徐々に部屋は出来上がっていく。
軽バンだと冷蔵庫やら倒さないと詰めなくて、
【横倒しにした後2時間は電源入れないでください】みたいな但し書きがあったりで、引越記念飲み会をやるのにビールを冷やせなかったりした。
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