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2019年05月26日04:37

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公正証書遺言でもあぶない その1 公正証書遺言が無効とされた例 弁護士 岡本哲

公正証書遺言でもあぶない その1 公正証書遺言が無効とされた例 弁護士 岡本哲

遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言があり、前者は特に料金はかからないが、後者には数1000万円程度の相続でも50万円程度の費用がかかる。相談者がよほど現金の手持ちがなくて困っている場合を除いて弁護士としては公正証書遺言をおすすめしている。
 相続人にとって不公平と感じる内容だと、遺言無効訴訟を生じやすく、たとえ有効だとしても、確定するまで遺産分割協議がとどこおるからである。
 公正証書遺言でも無効になる場合はある。東京地裁平成30年1月30日判決では公正証書遺言の無効を認めている。判決の認定事実からすると、問答のときに被告が口添えしており、成立を認めた公証人もちょっとどうかと思われる。
 ただ、これは認知症で介護施設委へはいった老人の介護者が養子縁組をしあつえ自己に有利な公正証書遺言を作成させたものであって、介護者の倫理(被介護者の財産に手をだしてはならない)としても問題があるように思われ、そもそも無理スジな遺言であったように思われる。本件が控訴されたかどうか、養子縁組についてどうなったのか、は不明である。

遺言無効確認請求事件
【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成27年(ワ)第4795号
【判決日付】 平成30年1月30日
【判示事項】 亡訴外人の相続人の訴訟を承継した原告らが,亡訴外人の養女で,自筆証書遺言及び公正証書遺言で同訴外人の遺産の全部を相続するとされた被告に対し,遺言の無効確認を求めた事案。裁判所は,亡訴外人の精神状態に関するエピソードと本件各遺言との時的関係に照らし,各作成日の同人のアルツハイマー型認知症は,相当程度進行し,日常生活の基本的事柄を自律的に判断することも困難な程度に,著しく低下させていて,先行遺言を取消し,正面から抵触した本件各遺言をする能力はなかったとして,本件各遺言を無効とし,請求を認容した事例
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文
 1 東京法務局所属公証人A1作成に係る平成24年第455号遺言公正証書による亡B1の遺言が無効であることを確認する。
 2 亡B1が平成24年9月5日にした別紙1記載の自筆証書遺言は無効であることを確認する。
 3 訴訟費用は被告の負担とする。

       事実及び理由
第1 請求
   主文と同旨
第2 事案の概要等
 1 事案の要旨
   本件は,亡B1(以下「亡B1」という。)の平成19年3月23日付け公正証書遺言(以下「先行遺言」という。)によれば亡B1の遺産を相続することとされていた亡B1の妹らの訴訟承継人である原告らが,亡B1の養女であり,亡B1の平成24年9月5日付け自筆証書遺言(以下「本件自筆証書遺言」という。)及び同年10月18日付け公正証書遺言(以下「本件公正証書遺言」といい,本件自筆証書遺言と併せて,「本件遺言」という。)によれば亡B1の遺産全部を相続することとされた被告に対し,本件遺言が作成された各時点では亡B1に遺言能力はなく,本件遺言はいずれも亡B1の意思に基づかずに作成されたものであると主張して,本件遺言がいずれも無効であることの確認を求める事案である。
 2 前提事実(当事者間に争いがない事実,裁判所に顕著な事実,括弧内掲記の証拠(枝番号については特に必要な場合を除き省略する。)又は弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
  (1) 当事者等
   ア 亡B1について
    (ア) 亡B1は,大正8年○月○○日生まれの女性であり,その親族関係は,別紙2(B1家親族関係図)のとおりである(甲2,甲52)。亡B1に実子はなく,その夫及び父母は,亡B1の死亡時には既に他界していた(当事者間に争いなし)。
    (イ) 亡B1らの父である亡C1(以下「亡C1」という。)は,医師であり,東京都荒川区に△△医院及び併設薬局の△△薬局を開設し,その後,亡B1の夫で医師の亡D1(平成7年7月6日死亡)にこれらを承継させた(弁論の全趣旨)。
    (ウ) 亡B1は,長年,△△医院建物を居宅として生活していたが,平成19年12月頃から,介護老人施設◇◇◇(以下「◇◇◇」という。)への短期入所を繰り返すようになり,平成24年には,◇◇◇に7度の短期入所と1か月を超える入所を4度行った(甲8)。亡B1は,平成25年1月21日に◇◇◇を退所すると,介護老人施設◇◆◇に移り,平成26年5月16日以降,介護老人施設◆◇◆に移り,その後,医療法人社団◆◆◆病院に入院し,平成27年2月2日,同病院で死去した(甲6,乙10,被告本人)。
   イ 被告について
    (ア) 被告は,亡B1の姪(亡B1の妹であるE1(以下「E1」という)の子)である(甲52)。
    (イ) 被告は,亡B1が介護を要する状態になってから,金銭の管理をはじめ,亡B1の身の回りの世話をするようになり(甲13,乙10,被告本人,弁論の全趣旨),平成24年8月27日,亡B1との間で,被告を亡B1の養子とする旨の養子縁組(以下「本件養子縁組」という。)を行った(甲4)。
    (ウ) 被告は,後記(2)イウのとおり,本件遺言において,亡B1の全遺産を相続することとされた(当事者間に争いなし)。
   ウ 亡B1の姉妹及び原告らについて
    (ア) 亡B1の死亡時において,亡B1には,F1(以下「F1」という。),E1,G1(以下「G1」という。)及びH1(以下「H1」という。)の四名の妹(これらの者を一括して「亡B1ら五姉妹」といい,E1,F1,G1及びH1の4名を指すときは「亡B1の四姉妹」という。)がいた。亡B1の四姉妹は,いずれも亡B1と父母を同じくしており,後記(2)アのとおり,先行遺言において,亡B1の全遺産を相続することとされていた(当事者間に争いなし)。
    (イ) 亡B1の四姉妹のうち,E1,G1及びH1は,本件養子縁組及び本件遺言により,先行遺言における自らの権利が侵害されているとして,本件養子縁組の無効確認を求める訴えを東京家庭裁判所に提起するとともに,平成27年2月23日,本訴を提起した(弁論の全趣旨,裁判所に顕著な事実)。
    (ウ) E1は,本訴係属中の平成29年1月7日に死亡したため,E1の子である原告X1及び原告X2がE1の原告としての地位を承継した(裁判所に顕著な事実)。
      G1は,本訴係属中の平成29年3月14日に死亡したため,G1の子である原告X3及び原告X4がG1の原告としての地位を承継した(裁判所に顕著な事実)。
      H1は,本訴係属中の平成27年10月26日に死亡したため,H1の子である原告X5がH1の原告としての地位を承継した(裁判所に顕著な事実)。
  (2) 亡B1の遺言(当事者間に争いなし)
   ア 東京法務局所属の公証人I1(以下「I1公証人」という。)は,平成19年3月23日,東京都荒川区(以下略)所在の亡B1方において,亡B1を遺言者とする平成19年第99号遺言公正証書を作成した。同遺言公正証書に係る先行遺言の要旨は,別紙3(遺言目録)記載1のとおりである。
   イ 亡B1は,平成24年9月5日,介護老人保健施設◇◇◇(以下「◇◇◇」という。)において,亡B1を遺言者とする自筆証書遺言(本件自筆証書遺言)を作成した。本件自筆証書遺言の要旨は,別紙3(遺言目録)記載2のとおりである。
   ウ 東京法務局所属の公証人A1(以下「A1公証人」という。)は,平成24年10月18日,◇◇◇において,亡B1を遺言者とする公正証書遺言(本件公正証書遺言)を作成した。本件公正証書遺言の要旨は,別紙3(遺言目録)記載3のとおりである。
  (3) 亡B1の遺産
    亡B1の相続開始時(平成27年2月2日)における亡B1の遺産の内容は別紙4(遺産目録)記載のとおりである(甲53)。
  (4) 亡B1についての成年後見開始
   ア E1,G1及びH1は,平成25年1月29日,東京家庭裁判所に対し,亡B1についての成年後見開始の申立てをし(甲14の1,14の2),東京家庭裁判所は,同申立てを受け,神経精神科・心療内科の医師であるJ1(以下「J1医師」という。)に鑑定を命じた(甲15)。
   イ J1医師は,平成25年5月13日,亡B1を往診し,亡B1には,今体験した事項すら忘れ,自分の年齢を誤認する程の著しい記憶障害,著しい見当識障害,一桁の加算・減算もできない程の計算力の著しい低下,「わからない」,「私はどうしたら良いの」と常に言い続け,介護者がその都度誘導しければならないほどの理解・判断力の著しい低下があると判断した(甲15)。J1医師は,同月26日,これらの事情を根拠に,�)苅贈韻禄電戮離▲襯張魯ぅ沺七診�知症に罹患していること,�△修里燭瓠に苅贈韻蓮ぜ�己の財産の管理・処分をする能力を有しておらず,これらの能力を回復する可能性がないことを主文とする鑑定書を作成し,その頃,これを東京家庭裁判所に提出した(甲15)。
   ウ 東京家庭裁判所は,平成25年7月1日,亡B1について,成年後見開始の審判をした(甲14の3)。
第3 争点及び争点に関する当事者の主張
 1 争点
   本件遺言作成当時における亡B1の遺言能力の有無
 2 原告らの主張
   本件遺言作成当時,亡B1に遺言能力はなかった。
   その理由は,大要,以下のとおりである。
  (1) 亡B1は,本件遺言作成当時,重症度のアルツハイマー型認知症に罹患しており,その判断能力は著しく低下していた。
   ア 亡B1は,遅くとも平成24年2月17日以降,アルツハイマー型認知症の治療薬であるアリセプトの処方を受けていた。
   イ 亡B1は,平成24年2月21日付でされた介護認定のための調査において,意思の伝達が「ほとんど不可」,毎日の日課の理解が「できない」,ひどい物忘れが「ある」,話がまとまらないことが「ある」,金銭の管理が「全介助」,日常の意思決定が「日常的に困難」であると認定された。
   ウ 亡B1は,本件遺言の当時,在宅介護が困難であり,施設による介護が必要な状態であったところ,◇◇◇に入所中,�’嘶�行動異常,��多動,徘徊行為,��失行(着衣失行),�た臾仮祿押きサ�憶障害,��失認,�Г修梁召瞭丹曚聞堝阿魴�り返した。
   エ ◇◇◇の嘱託医であるK1(以下「K1医師」という。)は,紹介状で,亡B1の状態につき,「認知症の進行有り,周辺症状の悪化がみられ(る)」,「介護拒否,拒薬,見当識障害,失認識,短期記憶障害,不穏,不眠,徘徊,不安にて入所中他者深夜に起こして回ったりしてしまい共同生活が困難な状況となってい(る)」との見解を示した。
   オ 亡B1は,本件遺言作成の際,A1公証人から,子や兄弟姉妹の存否,夫の死亡時期など,自身の家族のことに関する簡単な質問を受けながら,これらに対して正しく答えられなかった。
   カ 亡B1は,J1医師により,「アルツハイマー型認知症 重度障害」,「自己の財産の管理・処分をする能力はない」,「回復の可能性はない」と鑑定され,平成25年7月1日,後見開始の審判を受けた。
  (2) 本件遺言の内容が不合理であること
    亡C1はB1家の財産は本来的には亡B1ら五姉妹で受け継ぐべきものとの認識をしており,亡B1も同様に認識していたこと,亡B1と亡B1の四姉妹とは,長年にわたり,良好な関係を築いていたことからすれば,亡B1の四姉妹に対し自らの財産を平等に分ける旨記した先行遺言こそが亡B1の真意が反映したものであり,全遺産を被告に相続させるとする本件遺言の内容は不合理である。
  
以下略

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