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2018年11月21日23:48

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親権者による未成年者略取誘拐罪成立を認めた最高裁平成17年12月6日判決の現在における射程その1

親権者による未成年者略取誘拐罪成立を認めた最高裁平成17年12月6日判決の現在における射程
                         弁護士 岡本 哲
未成年者拐取罪は未成年者を略取(暴行脅迫を用いる)または誘拐(だます)する罪である。その保護法益については大きく3つの説が対立する。
� “鏖�取者の自由又はその身体の安全
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 ��については片方が侵害されたら犯罪成立なのか両方が侵害されないと犯罪成立を認めないのか、さらにふたつに分かれるようには思われるが、最近は�\發�有力なので��をどう適用するかはあまり問題になっていないようである。
純粋な�∪發世反童⊆坿屬任里海匹發亮茲蟾腓い砲弔い討鰐だ�年者拐取罪は成立しなくなるが、そこまでの説はないようである。
 平成17年の最高裁判決 (注1)では構成要件レベルでは2歳児童の親権者である父の連れ去りについて未成年拐取罪の構成要件該当性を認めたうえで違法性阻却が問題とされ、滝井裁判官の反対意見が付されたが多数意見により有罪とされている。
 一般的には妻が家をでるときに乳幼児を夫にだまってつれていくが、これについては処罰例がないこと(子の連れ去りに関するハーグ条約ではこれもだめなようである)とのバランスも問題となる。

2 平成17年事件での特殊事情
 夫婦間の対立が激しく、支配化にない親との円満な面会交流が成立していない状態であったし、家庭裁判所の利用を夫婦ともおこなっていない。東京・青森県八戸市・沖縄と夫婦間の距離もかなり遠い。
「被告人が上記行為に及んだ経緯は次のとおりである。
 被告人は,Bとの間にCが生まれたことから婚姻し,東京都内で3人で生活していたが,平成13年9月15日,Bと口論した際,被告人が暴力を振るうなどしたことから,Bは,Cを連れて青森県八戸市内のBの実家に身を寄せ,これ以降,被告人と別居し,自分の両親及びCと共に実家で暮らすようになった。被告人は,Cと会うこともままならないことから,CをBの下から奪い,自分の支配下に置いて監護養育しようと企て,自宅のある東京からCらの生活する八戸に出向き,本件行為に及んだ。
 なお,被告人は,平成14年8月にも,知人の女性にCの身内を装わせて上記保育園からCを連れ出させ,ホテルを転々とするなどした末,9日後に沖縄県下において未成年者略取の被疑者として逮捕されるまでの間,Cを自分の支配下に置いたことがある。
 (4)Bは,被告人を相手方として,夫婦関係調整の調停や離婚訴訟を提起し,係争中であったが,本件当時,Cに対する被告人の親権ないし監護権について,これを制約するような法的処分は行われていなかった。」

3 滝井反対意見
人身保護法がつかえなくなった経緯をふまえて、かなり説得力がある用の思われる。なお筆者の父(岡本貴夫 弁護士 司法修習15期)と滝井判事は司法研修所同期同クラスで交流があったことから筆者の身びいきがはいっているかもしれない。
「私も,親権者の1人が他の親権者の下で監護養育されている子に対し有形力を行使して連れ出し,自分の事実的支配下に置くことは,未成年者略取罪の構成要件に該当すると考えるものである。しかしながら,両親の婚姻生活が円満を欠いて別居しているとき,共同親権者間で子の養育をめぐって対立し,親権者の1人の下で養育されている子を他の親権者が連れ去り自分の事実的支配の下に置こうとすることは珍しいことではなく,それが親子の情愛に起因するものであってその手段・方法が法秩序全体の精神からみて社会観念上是認されるべきものである限りは,社会的相当行為として実質的違法性を欠くとみるべきであって,親権者の1人が現実に監護していない我が子を自分の支配の下に置こうとすることに略取誘拐罪を適用して国が介入することは格別慎重でなければならないものと考える。
 未成年者略取誘拐罪の保護法益は拐取された者の自由ないし安全と監護に当たっている者の保護監督権であると解されるところ,私は前者がより本質的なものであって,前者を離れて後者のみが独自の意味をもつ余地は限られたものであると解すべきであると考える。とりわけ,本件のように行為が親権者によるものであるとき,現に監護に当たっている者との関係では対等にその親権を行使し得るものであって,対立する権利の行使と見るべき側面もあるのであるから,それが親権の行使として逸脱したものでない限り,略取された者の自由等の法益の保護こそを中心にして考えるべきものである。
 このような観点から本件を見るに,被告人は,他の親権者である妻の下にいるCを自分の手元に置こうとしたものであるが,そのような行動に出ることを現に必要とした特段の事情がなかったことは多数意見の指摘するとおりである。しかしながら,それは親の情愛の発露として出た行為であることも否定できないのであって,そのこと自体親権者の行為として格別非難されるべきものということはできない。
 確かに,被告人の行動は,生活環境についての判断・選択の能力が十分でない2歳の幼児に対して,その後の監護養育について確たる見通しがない状況下で行われたことも事実である。しかしながら,親子間におけるある行為の社会的な許容性は子の福祉の視点からある程度長いレンジの中で評価すべきものであって,特定の日の特定の行為だけを取り上げその態様を重視して刑事法が介入することは慎重でなければならない。
 従来,夫婦間における子の奪い合いともいうべき事件において,しばしば人身保護法による引渡しの申立てがなされたが,当裁判所は引渡しの要件である拘束の「顕著な違法性」の判断に当たっては,制限的な態度をとり,明らかに子の福祉に反すると認められる場合を除きこの種紛争は家庭裁判所の手続の中で解決するとの立場をとってきたものである(最高裁平成5年(オ)第609号同年10月19日第三小法廷判決・民集47巻8号5099頁,同平成6年(オ)第65号同年4月26日第三小法廷判決・民集48巻3号992頁など)。
 私は,平成5年(オ)第609号同年10月19日第三小法廷判決において,「別居中の夫婦(幼児の父母)の間における監護権を巡る紛争は,本来,家庭裁判所の専属的守備範囲に属し,家事審判の制度,家庭裁判所の人的・物的の機構・設備は,このような問題の調査・審判のためにこそ存在するのである。」として,子の親権をめぐる紛争において審判前の保全処分の活用を示唆された裁判官可部恒雄の補足意見に全面的に賛成し,子の監護をめぐる紛争は子の福祉を最優先し,専ら家庭裁判所の手続での解決にゆだねるべきであって,他の機関の介入とりわけ刑事司法機関の介入は極力避けるべきものと考える。
 このような考えに立つ以上,被告人もまたこの種紛争の解決は家庭裁判所にゆだねるべきであったのであるから,一方の親権者の下で平穏に生活している子に対し親権を行使しようとする場合には,まず,家庭裁判所における手続によるべきであって,それによることなく実力で自分の手元に置こうとすることは許されるべきことではないといえるものである。
 しかしながら,そのことから被告人が所定の手続をとることなく我が子を連れ出そうとしたことが直ちに刑事法の介入すべき違法性をもつものと解すべきものではない。
 そのような行為も親権の行使と見られるものである限り,仮に一時的に見れば,多少行き過ぎと見られる一面があるものであっても,それはその後の手続において子に対する関係では修復される可能性もあるのであるから,その行為をどのように評価するかは子の福祉の観点から見る家庭裁判所の判断にゆだねるべきであって,その領域に刑事手続が踏み込むことは謙抑的でなければならないのである。
 確かに,このような場合家庭裁判所の手続によることなく,他の親権者の下で生活している子を連れ出すことは,監護に当たっている親権者の監護権を侵害するものとみることができる。しかしながら,その行為が家庭裁判所での解決を不可能若しくは困難にしたり,それを誤らせるようなものであればともかく,ある時期に,公の手続によって形成されたわけでもない一方の親権者の監護状態の下にいることを過大に評価し,それが侵害されたことを理由に,子の福祉の視点を抜きにして直ちに刑事法が介入すべきではないと考える。
 むしろ,このような場合,感情的に対立する子を奪われた側の親権者の告訴により直ちに刑事法が介入することは,本件でも見られたように子を連れ出そうとした親権者の拘束に発展することになる結果,他方の親権者は保全処分を得るなど本来の専門的機関である家庭裁判所の手続を踏むことなく,刑事事件を通して対立する親権者を排除することが可能であると考えるようになって,そのような方法を選択する風潮を生む危険性を否定することができない。そのようになれば,子にとって家庭裁判所による専門的,科学的知識に基づく適正な監護方法の選択の機会を失わせるという現在の司法制度が全く想定していない事態となり,かつまた子にとってその親の1人が刑事事件の対象となったとの事実が残ることもあいまって,長期的にみればその福祉には沿わないことともなりかねないのである(このような連れ出し行為が決して珍しいことではないにもかかわらず,これまで刑事事件として立件される例がまれであったのは,本罪が親告罪であり,子を連れ去られた親権者の多くが告訴をしてまで事を荒立てないという配慮をしてきたからであるとも考えられるが,これまで述べてきたような観点から刑事法が介入することがためらわれたという側面も大きかったものと考えられる。本件のようなありふれた連れ出し行為についてまで当罰的であると評価することは,子を連れ去られた親権者が行為者である他方親権者を告訴しさえすれば,子の監護に関する紛争の実質的決着の場を,子の福祉の観点から行われる家庭裁判所の手続ではなく,そのような考慮を入れる余地の乏しい刑事司法手続に移し得ることを意味し,問題は大きいものといわなければならない。)。
 以上の観点に立って本件を見るとき,被告人の行為は親権者の行為としてやや行き過ぎの観は免れないにしても,連れ出しは被拐取者に対し格別乱暴な取扱いをしたというべきものではなく,家庭裁判所における最終的解決を妨げるものではないのであるから,このような方法による実力行使によって子をその監護下に置くことは子との関係で社会観念上非難されるべきものではないのである。
 このような考えから,私は被告人の本件連れ出しは社会的相当性の範囲内にあると認められ,その違法性が阻却されると解すべきものであると考える(私は,多数意見の引用する当小法廷の決定においては,一方の親権者の下で保護されている子を他方の親権者が有形力を用いて連れ出した行為につき違法性が阻却されないとする法廷意見に賛成したが,それは外国に連れ去る目的であった点において,家庭裁判所における解決を困難にするものであり,かつその方法も入院中の子の両足を引っ張って逆さにつり上げて連れ去ったという点において連れ出しの態様が子の安全にかかわるものであったなど,本件とは全く事案を異にするものであったことを付言しておきたい。)。
 以上によれば,本件被告人の行為が違法性を阻却されないとした原判決は法律の解釈を誤ったものであり,その違法は判決に影響を及ぼすことは明らかであるから,これを破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。

4 平成30年からみると
 面会交流の実務はある程度成熟してはきているが、人身保護請求が認められていた時代、平成5年以前ほどの緊急的解決は存在しないように思われる。人身保護は合議ですぐに法廷をたちあげねばならず、盆でも正月でも裁判官と書記官をかきあつめねばならず裁判所の負担がおおきかったため。それを制限する解釈をとっていてのも平成5年段階の司法改革以前であればやむをえないかもしれない。しかし、予算や人員の制約で裁判所の後見機能を放棄するのも疑問ではある。
滝井反対意見については平成30年の現在でも問題をなげかけている。


注1
未成年者略取被告事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷決定/平成16年(あ)第2199号
【判決日付】 平成17年12月6日
【判示事項】 母の監護下にある2歳の子を別居中の共同親権者である父が有形力を用いて連れ去った略取行為につき違法性が阻却されないとされた事例
【判決要旨】 母の監護下にある2歳の子を有形力を用いて連れ去った略取行為は,別居中の共同親権者である父が行ったとしても,監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情が認められず,行為態様が粗暴で強引なものであるなど判示の事情の下では,違法性が阻却されるものではない。
【参照条文】 刑法35
       刑法224
       民法818
       民法820
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集59巻10号1901頁
       家庭裁判月報58巻4号59頁
       裁判所時報1401号25頁
       判例タイムズ1207号147頁
       判例時報1927号156頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 刑法判例百選第7版12事件
警察公論61巻8号109頁
       研修693号11頁
       ジュリスト1321号208頁
       ジュリスト1389号108頁
       信州大学法学論集7号221頁
       捜査研究55巻5号2頁
       同志社法学60巻5号2221頁
       法学セミナー51巻2号123頁
       法曹時報60巻7号2355頁
       法律のひろば59巻6号53頁
       刑事法ジャーナル4号92頁
       専修ロージャーナル6号309頁
       主   文
 本件上告を棄却する。
       理   由
 弁護人山谷澄雄の上告趣意は,違憲をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論にかんがみ,未成年者略取罪の成否について,職権をもって検討する。
 1 原判決及びその是認する第1審判決並びに記録によれば,本件の事実関係は以下のとおりであると認められる。
 (1)被告人は,別居中の妻であるBが養育している長男C(当時2歳)を連れ去ることを企て,平成14年11月22日午後3時45分ころ,青森県八戸市内の保育園の南側歩道上において,Bの母であるDに連れられて帰宅しようとしていたCを抱きかかえて,同所付近に駐車中の普通乗用自動車にCを同乗させた上,同車を発進させてCを連れ去り,Cを自分の支配下に置いた。
 (2)上記連れ去り行為の態様は,Cが通う保育園へBに代わって迎えに来たDが,自分の自動車にCを乗せる準備をしているすきをついて,被告人が,Cに向かって駆け寄り,背後から自らの両手を両わきに入れてCを持ち上げ,抱きかかえて,あらかじめドアロックをせず,エンジンも作動させたまま停車させていた被告人の自動車まで全力で疾走し,Cを抱えたまま運転席に乗り込み,ドアをロックしてから,Cを助手席に座らせ,Dが,同車の運転席の外側に立ち,運転席のドアノブをつかんで開けようとしたり,窓ガラスを手でたたいて制止するのも意に介さず,自車を発進させて走り去ったというものである。
 被告人は,同日午後10時20分ころ,青森県東津軽郡平内町内の付近に民家等のない林道上において,Cと共に車内にいるところを警察官に発見され,通常逮捕された。
 (3)被告人が上記行為に及んだ経緯は次のとおりである。
 被告人は,Bとの間にCが生まれたことから婚姻し,東京都内で3人で生活していたが,平成13年9月15日,Bと口論した際,被告人が暴力を振るうなどしたことから,Bは,Cを連れて青森県八戸市内のBの実家に身を寄せ,これ以降,被告人と別居し,自分の両親及びCと共に実家で暮らすようになった。被告人は,Cと会うこともままならないことから,CをBの下から奪い,自分の支配下に置いて監護養育しようと企て,自宅のある東京からCらの生活する八戸に出向き,本件行為に及んだ。
 なお,被告人は,平成14年8月にも,知人の女性にCの身内を装わせて上記保育園からCを連れ出させ,ホテルを転々とするなどした末,9日後に沖縄県下において未成年者略取の被疑者として逮捕されるまでの間,Cを自分の支配下に置いたことがある。
 (4)Bは,被告人を相手方として,夫婦関係調整の調停や離婚訴訟を提起し,係争中であったが,本件当時,Cに対する被告人の親権ないし監護権について,これを制約するような法的処分は行われていなかった。
 2 以上の事実関係によれば,被告人は,Cの共同親権者の1人であるBの実家においてB及びその両親に監護養育されて平穏に生活していたCを,祖母のDに伴われて保育園から帰宅する途中に前記のような態様で有形力を用いて連れ去り,保護されている環境から引き離して自分の事実的支配下に置いたのであるから,その行為が未成年者略取罪の構成要件に該当することは明らかであり,被告人が親権者の1人であることは,その行為の違法性が例外的に阻却されるかどうかの判断において考慮されるべき事情であると解される(最高裁平成14年(あ)第805号同15年3月18日第二小法廷決定・刑集57巻3号371頁参照)。
 本件において,被告人は,離婚係争中の他方親権者であるBの下からCを奪取して自分の手元に置こうとしたものであって,そのような行動に出ることにつき,Cの監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情は認められないから,その行為は,親権者によるものであるとしても,正当なものということはできない。また,本件の行為態様が粗暴で強引なものであること,Cが自分の生活環境についての判断・選択の能力が備わっていない2歳の幼児であること,その年齢上,常時監護養育が必要とされるのに,略取後の監護養育について確たる見通しがあったとも認め難いことなどに徴すると,家族間における行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるものと評することもできない。以上によれば,本件行為につき,違法性が阻却されるべき事情は認められないのであり,未成年者略取罪の成立を認めた原判断は,正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,主文のとおり決定する。
 この決定は,裁判官今井功の補足意見,裁判官滝井繁男の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見によるものである。

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