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2018年11月01日05:53

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特殊詐欺のだまされたふり作戦と不能犯

特殊詐欺のだまされたふり作戦と不能犯
不能犯で判例検索していたらでてきました。
1審無罪で検察官控訴されても逆転しなかったんですね。


詐欺未遂被告事件
名古屋高等裁判所判決/平成28年(う)第161号
平成28年9月21日

【判示事項】 いわゆる「だまされたふり作戦」が実施された手渡し型の特殊詐欺事案において、被告人が詐取の結果発生が不能に確定した後に意思を通じた受け子であることを理由に詐欺未遂罪の成立を否定した第一審無罪判決について、共謀の成立を否定して無罪とした結論は正当であるが、その理由は誤りであるとして、控訴審において理由付けが是正された事例

【判決要旨】 被告人について,共犯者との間で詐欺を行うことについての意思の連絡があった場合,詐欺という犯罪に加担する意思を持って現金等を受領しようとしたが,実際は既にその結果が発生することはない状態にあったことから,自己の行為が詐欺未遂罪として処罰されるのか,結果発生が不可能になっていたとして刑事処罰を免れるかが問題になっており,このような場合に不能犯と同じような判断方法を用いるのは肯定されてよい。
 被害者が警察に相談して模擬現金入りの本件荷物を発送したという事実は,被告人及び氏名不詳者の共犯者らは認識していなかったし,一般人が認識し得たともいえないから,この事実は,詐欺既遂の結果発生の現実的危険の有無の判断に当たっての基礎事情とすることはできない。
 被告人が氏名不詳者らから本件荷物受取の依頼を受けた時点で氏名不詳者らは,実際に現金を受け取る意思であったと認められるから,詐欺の犯意は失われておらず,被告人が氏名不詳者らとの間で共謀したとみられれば,被告人に詐欺未遂罪が成立することとなる。

【参照条文】 刑法250
       刑法246−1
       刑事訴訟法336
       刑事訴訟法396
       刑法60

【掲載誌】  高等裁判所刑事裁判速報集平成28年217頁
       判例時報2363号120頁
       LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】 法学新報124巻5〜6号285頁
       法学セミナー62巻3号121頁

       主   文
 本件控訴を棄却する。
       理   由
 本件控訴の趣意は,検察官小暮輝信作成の控訴趣意書に,控訴趣意に対する答弁は,弁護人廣田和彦作成の答弁書に,それぞれ記載されているとおりであるから,これらを引用する。論旨は,事実誤認をいうものと理解される。
第1 公訴事実の要旨
   本件公訴事実の要旨は,被告人が,他人の親族等になりすまし,その親族が現金を至急必要としているかのように装って現金をだまし取ろうと考え,氏名不詳者らと共謀の上,平成27年8月20日(以下「平成27年」の記載は省略する。),氏名不詳者が,複数回にわたり,名古屋市中川区内のA方に電話をかけ,同人(当時81歳。同人が詐欺未遂の被害者であることは間違いないので,以下「被害者」という。)に対し,電話の相手が被害者の息子であり,同人が現金300万円を至急必要としているので,取引先のある埼玉県秩父郡△△村内の×××(被告人が便利業として掲げている屋号である。)に宛てて現金を送付してもらいたい旨うそを言い,その旨誤信させて,被害者から現金の交付を受けようとしたが,同人が警察に相談したためその目的を遂げなかった,というものである(なお,被告人は現金受取役として起訴されている。)。
第2 原判決の概要
   原判決は,�“鏐霓佑�共犯者から現金受取の依頼を受けた時点で,被害者は詐欺に気付いて模擬現金入りの荷物の配達依頼をしていたのであるから,詐欺の結果発生の現実的危険は既に消失しており,その段階で詐欺未遂の共謀が成立する余地はなく,かつ,��被告人が共犯者との間で本件詐欺についての共謀を遂げたとも認められないとして,被告人に無罪を言い渡した。
第3 論旨
   論旨は,原判決が,被告人を無罪とした点(前記の� き◆砲砲弔い董ぐ焚爾暴劼戮襪茲Δ僻酬茲鳳洞舛魑擇椶垢海箸�明らかな事実誤認があると主張している。
 1 被害者が詐欺に気付いて模擬現金入りの荷物の配達依頼等をしたからといって詐欺既遂の結果発生の現実的危険は消失しておらず,その後に荷物を受領した被告人の行為は詐欺の実行行為に当たり,詐欺未遂の成立する余地がないとしたのは誤りである。
 2 被告人は,「BのC」を名乗る者(この者が本件詐欺未遂の共犯者であることは証拠上明らかである。以下「C」という。)からの郵便物の転送依頼に関し,本件以前の4月11日,警察官から詐欺の可能性があると伝えられた時点で,自分が受け取る配達物が詐欺の被害金等であるかもしれないと認識していたのであるから,その上で,遅くとも8月20日の電話でCから荷物の受取を依頼されてこれを承諾した時点で,本件詐欺の共謀が成立したのに,これを否定したのは誤りである。
第4 当裁判所の判断
 1 前提事実
   関係証拠によれば,以下の事実が認められる。
  (1) 本件以前のCからの依頼
   ア 被告人は,住居地で「×××」の屋号で便利業を営む者である。3月,被告人方に,Dなる会社からの,赤珊瑚の購入権がある旨の内容の郵便物が届き,次いで,被告人に対しCから初めて電話があり,その内容は赤珊瑚の購入権を売ってほしいというものだった。被告人がこれを断ると,今度は,Cは,被告人宛に本人限定郵便物が届くのでそれを転送してほしいという被告人の営む便利業の仕事として依頼をしてきたので,被告人はこの依頼を引き受けた。そして,郵便局で5通の本人限定郵便物を受け取り,これをまとめてCから指定された住所に転送し,同月19日,報酬として1万0360円(1通につき2000円に加え送料360円)の振込みを受けた。なお,被告人は,Cから開封しないように言われていたが,転送に当たって念のため5通のうち1通を開封したところ,簡単な挨拶文と銀行の振込口座番号が記載された書面が入っていたため,問題がないと判断して転送したものであった。
   イ 4月,Cから被告人に対し,前と同じ方法で郵便物を転送する依頼があった。被告人はこれを引き受けたが,転送先が前回と違ったため怪しいと感じたことから,4月11日,埼玉県小川警察署に電話をかけ,同署のE警察官(以下「E」という。)に対し,これまでのいきさつを説明するとともに,個人情報をCに教えてしまったことと,郵便物を転送する行為が問題になるかといった相談をした。Eは被告人に対し,何らかの犯罪に関わっている可能性があるので(なお,このときEが被告人に対し「詐欺の可能性がある。」と述べたかどうかは争いがある。),今後はCと一切の関わりを持たないように教示した。しかし,被告人は,前記のとおり1回目の転送の際に開封して中身を確認し,特に問題がないと判断したことなどから,2回目も依頼どおり郵便物1通の転送を行い,同月16日,報酬として5000円の振込みを受けた。
   ウ 被告人は,6月にもCから同様の転送依頼を受けてこれを引き受け,郵便物1通の転送をして,同月9日,報酬として5000円の振込みを受けた。
  (2) 本件犯行と,Cと被告人の連絡等
   ア 本件犯行は,被害者への息子を名乗る者の電話から始まった。すなわち,被害者は,8月20日午後零時過ぎ頃,被害者の息子を名乗る氏名不詳者から自宅にかかってきた電話で,「会社の者がへまをしてしまった。取引先に600万円を支払わないといけない。」「300万円でいいから銀行でお金をおろしてきてほしい。」などと言われてこれを承諾し,300万円を引き出すために銀行に行ったが,その際,息子に電話をして確認したところ,息子が,詐欺であると見抜き,警察に連絡した。
   イ 警察が被害者方に到着した後,氏名不詳者から6回電話があった。4回目の電話で,氏名不詳者は,被害者に対し,現金を,取引先である埼玉県秩父郡△△村内の×××に宛てて,8月21日午前中に到着するように宅配便で送るように指示し,住所等を伝えた。
   ウ 被害者は,8月20日の遅くとも午後3時55分までに,模擬現金を梱包し(以下「本件荷物」という。),これに×××の住所等を記載した宅配便の伝票を貼り付けた。そして,同時刻から午後4時16分までの間に,住所近くのコンビニエンスストアで本件荷物を発送した。
   エ 本件荷物の発送後,氏名不詳者から被害者に電話があり,本件荷物のお問い合わせ送り状番号を尋ねてきたので,被害者はこれを伝えた。
   オ 一方,被告人は,8月20日午後2時10分頃,Cから被告人の携帯電話に不在着信があった後,午後4時05分,Cに電話をかけて約160秒通話した(以下この通話を「本件通話」という。)。本件通話の中で,Cが被告人の翌日の在宅する時間を尋ね,被告人が4時過ぎであればいる旨答え,Cが,一つ受け取ってもらいたい荷物があるなどと述べた。
   カ 8月20日午後5時58分,宅配便業者のサービスセンターに電話があり,本件荷物のお問い合わせ送り状番号を告げた上で,配達時間帯を8月21日午前中から,同日午後4時から6時までの間に変更を求めてきた。
   キ 8月21日午後4時17分,被告人住居地に,配達員を装った警察官が本件荷物を届けた。被告人は,依頼主の名の記載された伝票を提示され「届くっていう連絡は受けていますので。」と答え,本人確認を求められて運転免許証を提示し,配達票に自分の名前と電話番号を記載し,本件荷物を受け取った。午後4時23分,前記配達員を装った警察官が,被告人に対し警察官であることを告げ,他の警察官が被告人に検証許可状,捜索差押許可状を呈示して,以後,午後4時41分までの間,×××事務所の検証および捜索が行われた。この間の午後4時29分,被告人が携帯電話の操作を誤ってCに誤発信し,その後の午後4時34分,Cから被告人の携帯電話に電話が入り,約110秒間の通話がなされた。この通話終了の約1分前,午後4時36分頃からの会話には以下のようなものがあった。
     被告人「届いてますので,取りに来てもらえれば。」
     C「お名前ってどちらのになってますかね。」
     被告人「名古屋市の,何と読むのかな,これ,ちょっと字が薄いので。」
     C「あのすぐに折り返しご連絡いれて大丈夫ですかね。」
     被告人「はい,はい,よろしくお願いします。」
 2 被害者が詐欺に気付いて模擬現金入り本件荷物の配達依頼等をした時点以降に,詐欺未遂罪の成立する余地について(前記第3の1)
  (1) 関係証拠上,本件通話以前に,被告人がCからの荷物受領の依頼を受けた事実は認められない。また,前記1(2)アないしウのとおり,被害者は,8月20日午後3時55分までには,氏名不詳者からの電話が詐欺であることを知って警察に通報し,氏名不詳者からの配達指示を受けて模擬現金入り本件荷物を準備し,午後4時16分までの間に本件荷物を発送していることが認められる。
  (2) 原判決は,被告人が荷物を受け取ることを承諾した行為が,被害者が荷物を発送するまでに氏名不詳者らがした行為に何らかの影響を与えたと認めることはできず,加えて,被害者が本件荷物を発送した時点(被告人の利益に考え,本件通話以前に発送したと認める。)で既に詐欺既遂の現実的危険も消失していたから,その後に関与した被告人の行為が本件詐欺未遂の結果と因果関係を有することはなく,この点で,被告人に本件詐欺未遂の共同正犯の責任を負わせることはできないと判断している。
    この点について,原審検察官が,本件詐欺の結果発生の現実的危険の有無については,いわゆる不能犯に当たるかどうかが問題となる場合と同様の基準により判断すべきであると主張したのに対し,原判決は,本件では氏名不詳者による本件詐欺の実行行為後に関与した被告人に詐欺未遂の共同正犯の罪責を問うことができるかが問題となっているのであるから,犯罪の成否自体を問題とする不能犯とは問題状況が異なるとして,その主張を排斥して上記のとおり判断した。
  (3) しかし,不能犯の考え方は,行為者が犯罪を実現する意思で行為をしても,結果発生がおよそ不可能な場合には刑事処罰の対象としないという考え方であり,未遂犯として処罰を加えるか,不能犯として不処罰とするかが問題となるものである。このように,不能犯の考え方が,結果発生が不可能と思われる場合に,未遂犯として処罰すべきか,未遂犯としても処罰すべきではないかを分ける機能を有するものであり,結果発生が不可能になる事由や時期も様々であることに鑑みれば,単独犯だけでなく,共犯の場合,それも共犯関係に後から入った場合でも,不能犯という言葉を使うかどうかはともかく,同じような判断方法を用いることは肯定されてよい。単独犯で結果発生が当初から不可能な場合という典型的な不能犯の場合と,結果発生が後発的に不可能になった場合の,不可能になった後に共犯関係に入った者の犯罪の成否は,結果に対する因果性といった問題を考慮しても,基本的に同じ問題状況にあり,全く別に考えるのは不当である。結果発生が当初から不可能な犯罪を実行しようとした者に,後から犯罪実行の意思を持って加担した者がいた場合,原判決の立論では,仮に,当初から実行しようとした者については未遂犯が成立するとしても,後から関与した者は常に処罰されないことになると思われるが,そのような結論は正当とは思われない。また,原判決は,不能犯は犯罪の成否自体を問題にするというが,そこでは全体としての詐欺罪のみを問題にしていると思われる。仮に,本件の被告人について,詐欺を行うことについての意思の連絡があった場合は,詐欺という犯罪に加担する意思を持って現金等を受領しようとしたが,実際は既にその結果が発生することはない状態にあったことから,まさに,自己の行為が詐欺未遂罪として処罰されるのか,結果発生が不可能になっていたとして刑事処罰を免れるかが問題になっている,換言すれば,共犯者の一人については,犯罪の成否が問題となっている場面なのである。このような場合に不能犯の考え方を用いて判断するのは,必要かつ妥当であると考えられる。
    したがって,この点についての原判決の結論は是認できない。
    そして,実際には結果発生が不可能であっても,行為時の結果発生の可能性の判断に当たっては,一般人が認識し得た事情および行為者が特に認識していた事情を基礎とすべきである。そうすると,仮に,被害者が,被告人がCからの荷物受領の依頼を受ける以前に既に本件荷物の発送を終えていたとしても,被害者が警察に相談して模擬現金入りの本件荷物を発送したという事実は,被告人および氏名不詳者らは認識していなかったし,一般人が認識し得たともいえないから,この事実は,詐欺既遂の結果発生の現実的危険の有無の判断に当たっての基礎事情とすることはできない。本件通話の時点で氏名不詳者らは,実際に現金を受け取る意思であったと認められるから,詐欺の犯意は失われておらず,被告人が氏名不詳者らとの間で共謀したとみられれば,被告人に詐欺未遂罪が成立することとなる。
    なお,被告人がCからの依頼を受けて被害金を受領する行為が本件詐欺の実行行為に当たるかは一個の問題であるが,仮にこれが実行行為に当たらないとしても,当該受領行為は,財物の騙取を実現するための重要な行為であり,通謀の上これを分担したのであれば,正犯者といえる程度に犯罪の遂行に重要な役割を果たしたものとして,少なくとも共謀共同正犯には当たり得るものと考えられる。
 3 被告人の共謀の有無について(前記第3の2)
   前記2のとおり,本件通話の時点でも,被告人に詐欺未遂罪の成立する余地がある。
   なお,原判決は,本件通話の時点で詐欺既遂の現実的危険が消失していたとしつつも,8月19日以前の概括的共謀の成否や,本件通話で荷物の受取を承諾した時点および実際に本件荷物を受領した時点での被告人の認識についても論じている。
  (1) 原判決は,論旨とほぼ同旨と理解される原審検察官の主張に対し,�“鏐霓佑�,Eから詐欺の可能性があると伝えられたとしても,以後にCから依頼された郵便物の転送を承諾した時点で,その中身が詐欺の被害金等であるかもしれないと認識していたと認めるには疑問があり,�△泙拭と鏐霓佑�本件通話でCから本件荷物の受取を依頼されてこれを承諾した時点およびその後実際に本件荷物を受け取った時点までに,当該荷物が詐欺で騙された被害者から送付される現金であるかもしれないと認識していたと認めるにも疑問が残るとして,被告人が本件詐欺未遂について氏名不詳者らと共謀した事実を認めるに足りる証拠はないという判断を示している。
  (2) 原判決は,(1)の判断に当たり,被告人の原審公判供述は,Eから詐欺だと告げられてはいないという点を除けば,その信用性を否定できないと評価している。
    被告人供述の内容は,おおむね,原判決が「第3 当裁判所の判断」3(3)の項で要約しているとおりである。要するに,前記1(1)のとおりの経過で警察に相談し,何らかの犯罪に関わっている可能性があるのでCと縁を切るように指導されたが,詐欺とは言われなかった,このようなアドバイスはあったが,同アのとおり,1回目の郵便物の中身に特に問題がなかったことや,Cの話し方が紳士的であったので信用してしまったこと等から,犯罪性はないと判断してCの依頼を受け続けた,本件時も8月20日に荷物の受取を依頼され,Bの社員が取りに行くので渡してほしいと言われたが,犯罪に当たるとは思っていなかった,報酬については決まっていなかったが多くて1万円くらいと思った。以上のとおり供述している。
  (3) 前記被告人供述のうち,Eから詐欺とは言われなかったという点については,被告人に詐欺の可能性があるとアドバイスした旨のEの原審公判証言(その内容に不自然,不合理な点は見当たらず,同人が通報を受けた際の管理票(原審甲10)の内容と符合しており,信用することができる。)に反し,捜査段階供述(原審乙3,5)からも変遷しており,信用することができない。この点は原判決も指摘するとおりである。
    しかし,その余の部分については,捜査段階,公判を通じてほぼ一貫しており,前記E証言や管理票,通話記録,取引履歴等に符合する内容である。そして,前記1(1)アのとおり,Cからの当初の依頼は郵便物を転送するというものであり,被告人は,最初の転送の際,転送依頼された郵便物を開封し,前記のような書面が入っていたに過ぎないことを確認していたこと,同イのとおり,警察に相談した動機は,個人情報をCに教えてしまったことと,郵便物を転送する行為が問題になるかといったことについて相談するといったもので,これに対するEのアドバイスの内容は「詐欺の可能性がある(詐欺被害に遭っているかもしれない,若しくは詐欺に加担しているかもしれない)」という以上の具体的なものではなかったと認められる。なるほど,警察官から詐欺の可能性を指摘されれば,自分がそれに加担することのないように注意し,依頼を断るなどすることも考えられるところであり,この点が,被告人が,Eからのアドバイスを受けた時点で,その後Cからの依頼を受けて自分が受け取る配達物が詐欺の被害金等であるかもしれないと認識したのではないかと推認する一つの理由になることは否定できない。しかし,Eの指摘は,前記のとおり具体的なものではなかったし,被告人が,前記1(2)キのとおり,警察官から令状を呈示され捜索等を受けている正にその最中に,Cからの電話に対し,荷物が届いているので取りに来るよう告げるなど,詐欺の被害品を受領したことを認識していたのであれば通常考え難い会話をしていること(所論は,警察官に対し詐欺の故意を有していないように見せるため,あるいはCに責任転嫁するため平静を装ってそのような言動をしたと理解できるというが,原判決がいうような,被告人が令状呈示時に告げられたであろう詐欺未遂という言葉と自身の行為を結びつけていない表れという見方もできるのであって,所論のように理解すべきであると断定することはできない。)などにも照らせば,被告人の原審公判供述中,Eから詐欺だと告げられなかったという点以外の信用性を否定できないとして,前記(1)のとおり説示した原判決の判断に,誤りはないというべきである。
  (4) この判断に対し,所論は,以下の理由を述べて反論している。
    すなわち,�ゞ畛�,特殊詐欺事案の新たな手口として,受取役が直接被害者方に赴いたり,宅配便を利用して現金を送付させたりする事例が報道されており,被告人がそのことを知っているからこそ警察に相談したとも考えられるのであり,その被告人が警察官から「詐欺に加担しているかもしれない。」などと告げられれば,Cの依頼で受け取る郵便物に詐欺の被害現金等が在中しているのではないかという疑念を強く抱いたことが容易に推認できる。��被告人は警察への相談後にもCからの転送依頼を2回引き受けているが,1回目と同様の依頼内容であったのに報酬額が1通2000円から5000円に一方的に引き上げられているし,被告人が本件通話でCから引き受けた依頼は配達物を預かるという,従前と比べて手間の軽いものであるのに,被告人は従前より高額の報酬を期待していたものであって,このことから,Cからの報酬が手間だけで決まるのではないことを被告人は認識していたといえるし,本件で報酬が増額する理由としては,Bの社員と直接接触することで詐欺の発覚のリスクが高まること以外に合理的な理由が見いだせない。��Eから詐欺と告げられたかどうかという点についての供述の変遷は,被告人供述全体の信用性を減殺させる事情である。
    しかしながら,まず�,療世砲弔い討蓮い修了�実の被告人の認識に対する推認力は検察官が主張するほど強いとはいえないし(はっきりと警告を受けたわけではない。),本件では前記(3)のとおり推認を妨げるような事情も認められる。�△砲弔い討蓮な鷭軍曚�引き上げられた理由は必ずしも判然としないが,Cの方からの提示額で仕事を請け負ったという被告人の供述も否定できず,そうであれば,顧客がくれるというのでもらっておく程度の認識もありえ,上がった金額も特に異常というほど高額とはいえないものである。報酬が上がったことやその額自体から,受け取る郵便物に詐欺の被害現金等が入っていることを認識したと推認するのは相当な飛躍があるというべきである。��については,先に述べたとおり,被告人供述の他の部分は,その信用性を肯定する理由があり,上記のような変遷があったことで被告人の供述全体の信用性が失われるとはいえない。
    よって,所論のいうところは結局採用できない。
  (5) したがって,被告人が,本件詐欺未遂について氏名不詳者らと共謀を遂げた事実を認めるに足りる証拠はなく,本件公訴事実についての証明は不十分である。
第5 結論
   以上の次第であって,結局,被告人を無罪とした原判決は結論において正当であるから,論旨は理由がない。
   よって,刑訴法396条を適用して,主文のとおり判決する。
  平成28年9月21日
    名古屋高等裁判所刑事第2部
        裁判長裁判官  村山浩昭
           裁判官  大村泰平
           裁判官  赤松亨太

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