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2017年11月21日19:44

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PL記録:ゆうやけこやけ(狐の社で)リプレイ風小説 その8

翌日、学園を抜け出した私は、幽霊ちゃんと一緒に社にやってきた。
社じゃ既に夕香と外人、そして子狸が待機していた。
夕香はまだもじもじしていたが、何とかなるだろう。

下の八幡神社に行く前に、分社に寄って広さを確認する。
とりあえず、広さ的には問題なさそうじゃの。

夕香は初めて見る分社に興奮を隠せないのか色々と漁っている。
小狸も分社の周りをぐるぐると走り回りながら楽しそうだ。
本当に小奴らは500近く歳が離れておるんじゃろうか−−

「見よ! この分社の賽銭箱には落ち葉以外にも沢山小銭が入っておる!」

夕香が嬉しそうに賽銭箱を開けてそう言った。
ま、まぁ、自分の分社じゃから開けてしまっても問題なかろう。
ひいふうみいと小銭を数えている夕香を注意する気にはなれず、
外人と二人で苦笑いを浮かべる。

現在の金銭事情には疎い夕香の代わりに、外人と幽霊が小銭を数える。
するとどうやら1万円ほど貯まっていたらしい。
夕香はその額を聞くと、大金だと大はしゃぎし始めた。

「いや、夕香よ。 現在では1万円はそこまで大金ではないぞ」

流石に昔の感覚でいられてはこれからが危ういので、訂正しておく。
パタパタと振っていた尻尾をペタンと垂らした夕香には申し訳ないが、
これから街に行って服や食べ物の値段を見て驚かれても困るから仕方がない。

とりあえずこの1万円は夕香の服代としてありがたく使わせてもらおう。
賽銭箱から小銭を回収し、軽く社を清めてから私達は八幡神社へと向かった。

 



===


 


八幡神社は、まだ朝早いためか参拝客の姿はなかった。
これは好都合、私達は夕香を連れて社務所の戸を叩く。
しばらく待っていると、中から足音が聴こえ、狐耳を生やした少女が出てきた。

「なんだ、社務所が開くのはもう少し後で−−」

と、そこまで言った所で視線が夕香で止まる。
しばらくじいっ見つめた後、パッと破顔した少女は夕香に飛びついた。

「夕香!夕香じゃないの! 80年ぶりね!」
「ちょ、ちょっと待つのじゃ鈴音! う、うてはその、まだ覚悟が−−」
「ちょっと!80年も何をしていたのよ! せっかく分社まで用意したのに!」
「な、なんじゃと、あの分社はお主が用意したものだったのか!?」

目を白黒させながら、夕香は鈴音に疑問をぶつける。
鈴音と呼ばれた少女はそんな夕香の言葉にキョトンとしていたが、
やがてジト目になりながら夕香の肩をがっしりと掴んだ。

「夕香、まさか覚えていないの? あれだけ盛大に宴も開いたってのに?」
「う、宴−−そういえば80年ほど前に宴に参加したような」
「真っ先に酒をかっくらっておったのは何処のどいつ−−まさか」
「は、はは、は−−すまん鈴音、酒を飲んでからの記憶がうてには無くて−−」
「このっ、ばかー!」

スパーンと小気味良い音を立てて鈴音が夕香の頭を叩く。
んん? つまりどういうことじゃ?
話に付いていけない私達は面を傾げる。

 

「夕香の元の社はあまりに山奥だったから、別に分社を用意したのよ」

鈴音が語ったところによると、
どうやら総本社があまりに古く通い辛かったので分社を別に建てたのこと。
夕香を分社に移す為の『勧請』を行う為に宴を開いたということ。
夕香がその宴で早々に酒を飲み、勧請のことをすっかり忘れてしまったということ。

結果、夕香は分社の事をすっかり忘れて総本社に居続けたが、
町の人々は交通の便が良い分社の方に参拝するようになった。

だが、それを知らぬ夕香は80年もの間ずっと総本社に篭り続け、
自分が人から忘れられてしまったのではないかと、うじうじし続けていた。


「アンタ、やっぱり馬鹿でしょ?」
「う、うては悪くない!」

話を聞いた私達は鈴音に負けぬほどのジト目で夕香を見やる。
夕香は必死に自己弁護を続けているが、どう考えても悪いのは夕香よ。

まぁこれも、自分から行動せずに社に居続けた夕香の有り様が招いたこと。
下界に下りたり、鈴音に会いに来たりすればすぐに気付いた筈なのだ。
やはり夕香自身を変えねばなるまいて。

「で、80年も引きこもっていた夕香が下りてきたのはどういう理由なの?」
「実はこ奴等がうての為に祭りを開くと言うておってな−−」

かくかくしかじか、まるまるうまうま。
夕香が鈴音にハロウィンの祭りについて説明をする。
しばらく静かに聞いていた鈴音は、夕香が話し終えるとこちらに視線を向けてきた。
 

「ハロウィンという催しに関しては私も知っているわ」

流石は八幡の狐神、どこぞの引き篭もりと違って世事に詳しい。
とはいえ彼女もあと半月でそのような大きな祭りを開けるものかと懐疑的だ。
だがまぁ、祭りを開くという事に関しては反対ではないらしい。

「そこはほら、私等が手伝うつもりじゃて」
「面霊気の貴方と、幽霊と、子狸と−−ええっと、マレビトの貴方達が?」

鈴音に昨晩練った計画を事細かに伝えてゆく。
妖達によるハロウィンもとい百鬼夜行計画。
最後まで聞き終えた鈴音は、ジト目でこちらの方を見ている。

「いやいや、無理でしょ。 どう考えても貴方達じゃ人手?が足りないし」

確かに私もそれなりにこの町の妖を知ってはいるが、圧倒的に妖手が足りない。
幽霊は成ったばかりだし、外人に至ってはこの町に来たばかりだ。
だがその時、子狸がピョコンと間に割って入った。

「はぁ? 狸の一族なら100匹ほど集められるから大丈夫?」

ふんすと子狸は自信満々に言い放つ。
こやつ、いっちょ前に大法螺を吹きおったわ。
鈴音は最初はバカにしていたが、小狸は譲ろうとしない。

「狸程度が100匹集められるなら、狐は200匹は余裕なんだから!」

段々と鈴音も意固地になってゆき、遂にそう言い放った。
すると子狸も300匹集めてみせると言い、バチバチと火花を散らし始める。
ふむ、子狸が言うように300も集められるなら、合わせて500。
 

「ほっほーぅ、500も居れば妖手も十分じゃのう」
「えっ、あー、そうね。 200でも足りるとは思うけど−−」
「えっ、じゃって二匹合わせて500連れて来るんじゃろ?」

買い言葉に売り言葉、熱くなっていたとはいえ八幡の狐神の言った言葉。
夕香と同じく鈴音のその言葉も神勅には違いない。
しかも200で足りるとまで言ったのだ、ならば開けぬ道理はあるまいて。

鈴音は何やらしまったという顔をして冷や汗を流しているが、放った言葉は口には戻らぬ。
これで目出度く八幡からのお許しも出たということだ。

何やら後ろで夕香が『200−−500−−えっ?』みたいなことを言っておる。
でもまぁ、もし祭りをやるなら人妖合わせて1000は下るまい。
今言って尻込みされても困るので言いはしないが、の。





===


 


さて、鈴音との話合いが終わって帰ろうとする夕香の肩をがっしりと掴む。
ここまでは予定通り、ここからは予定外。

「ところで鈴音殿、この夕香の服装を見てどう思う?」
「夕香の服装? そういえば夕香ったら80年前と同じ服装じゃないの」

ジロジロと無遠慮な視線を夕香に向けて鈴音はそう言った。
鈴音の服装は町の流行りに多少は寄せているようで、あまり違和感を覚えない。
そんな彼女の姿を皆で褒めていると、夕香も自身の服装を気にし始めた。

「う、うての服装はやはりおかしいのか?」
「そうじゃのう、鈴音殿はなかなか似合うておるが、夕香はなぁ」
「ハッキリ言ってうちで七五三をやる子供みたいよ」
「し、七五三の子供−−」

大きな衝撃を受けたのか、夕香がよろよろと後退る。
私も敢えて言うまいと思っていた事をあっさり言ってのけるとは、やりおる。
 

夕香には悪いが、この流れを利用させてもらうとしよう。
ずーんと、沈んでしまった夕香をよそに服の話題で盛り上がった私達は、
このまま分社の賽銭を使って商店街に服を買いに出ようと提案する。

「い、いや、うては別にこのままでも−−」

町へ繰り出すと言われて縮こまる夕香をあの手この手で煽りまくる。

「やーい、七五三、七五三」
「うては500歳だ! そのような歳ではない!」
「えー、でも七五三に見えるしのー? のう、鈴音殿よ」
「ええ、もうちょっとマシな格好した方がいいわよ夕香」

私や鈴音は面白がって夕香を煽る。
子狸も夕香の袖を引っ張りながら街へ行こうと言っている。
夕香はまだ渋っているが、先程よりも抵抗が弱くなっている。

「というわけで、街へ行くぞ夕香よ」
「あっ、ちょっ、引っ張るでない!」
「それでは鈴音殿、私達はこのまま街に繰り出すとします」
「待て! というか面霊気、さっきから鈴音には殿付けているのにうては呼び捨て−−」
「ほっほっほ、行きますぞ、夕香」

ズルズルと夕香を引きずって八幡神社を後にする。
子狸も面白がって夕香に縋り付いているお陰で夕香も強く振りほどけない。
その様子を外人や幽霊も微笑ましそうに見ており、夕香を助ける者は誰もいなかった。

ひらひらと手を振る鈴音殿に『薄情者―!』と言いながら、
夕香は私達の手によって町の商店街へと連れて行かれるのであった。


〜 その9に続く 〜
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