ロサンゼルス、日曜日。
マリブビーチで若い女性の死体が揚がった。休日を恋人ニコルと過ごそうとしていた市警殺人課警部補フィル・ゲインズは、渋々ながら相棒のルイスとともに現場に臨場する。遺体は10代の女性で、所持品からグロリア・ホリンジャーと判明。ゲインズは両親を署に呼び、遺体の身元確認をさせるのだった。父であるマーティ・ホリンジャーは、朝鮮戦争から帰国して以来、塞ぎがちの頑固な男。若い娘が死んだのは警察の怠慢によるモノだと、ゲインズを激しくなじるのだった。グロリアは奔放な少女で、いかがわしい所にも出入りしていたらしい。実際、彼女の体内には複数の男の精液が残っていた。しかし、レイプや暴力の痕跡は一切なく、血中からは大量のセコナール(睡眠薬)が検出された。これだけ見れば、グロリアは他殺ではなく自殺の線が濃厚だ。ゲインズはサントロ本部長に概要を報告し、自殺で処理するよう命じられる。だがルイスは、グロリアの財布にあった写真に引っかかっていた。町の有力弁護士レオ・セラーズとグロリアが半裸で抱き合っている写真だ。「レオを尋問すべきかも」と言うルイスだが、ゲインズはあまり乗り気ではない。大物にメをつけられるのが嫌だったし、そもそもレオとはある因縁があったのだ。実はゲインズの恋人ニコルはフランスからやってきた高級娼婦で、レオは彼女の<お得意様>なのだ。そこでゲインズはグロリアの死を自殺と処理し、その旨をマーティに報告する。しかしマーティは、娘は自殺なんぞしない、ゼッタイに殺人だと主張して譲らない。そして独自にグロリアの週末の足取りを調べ、土曜にレオが主催した乱交パーティに娘が参加していたことを突き止めた。娼婦から足を洗えないニコルとの関係に踏ん切りが付かず悩み続けていたゲインズは、マーティの暴走を止めようとレオの尋問に踏み切るのだが・・・
『ハッスル』。アルドリッチ監督とバート・レイノルズのコンビで送る刑事ドラマ。ニコル役にカトリーヌ・ドヌーブを配し、ちょっとハリウッド映画というよりヨーロッパ映画の雰囲気です。
しかし、この監督/主演で、しかも<ハッスル>なんて題名だと、やはりアクションとかハードボイルドなスジを期待しますよね。でもそんな気持ちで観てしまうと、完全にハズレなんです、この作品。主人公の刑事は巨悪を追い詰めようともしないし、アクションもやりません。そもそも、事件は本当に自殺(らしい)ので、殺人事件すら起きていないのです。じゃ、単なるラブストーリーかと言うと、そうでもないんですね。これ、「アメリカ」という名のシステムの中でもがき、抜け出そうとする人間たちが惨めに足掻くドラマなんですね。本部長のツルの一声、有力者の権力。そういったモノに歯向かう気力を失い、出張で行ったローマの思い出に逃避して、売春を続ける恋人に「売春をやめてくれ」という勇気が持てない男・・・それが主役のゲインズ警部補(バート・レイノルズ・・・ミスキャストと言ってしまえばそれまでですが)なのです。もう一人の主役は、朝鮮で地獄を見て以来まともな家庭生活を送る事ができず、可愛かった娘の思い出だけを生き甲斐に人生を送っている老人マーティ(ベン・ジョンソン)。どちらも、現代アメリカが抱える暗いシステムに組み込まれた犠牲者と言えるでしょう。ラスト、ついにマーティはレオと対峙し、ある行動に出てしまうのですが、それに直面したゲインズが出す結論・・・それが彼の「システムから抜け出す」第一歩だったのではないでしょうか。タイトルの「ハッスル」とは、このシステムから前に出て行く、という意味と私は捉えました。かなり異色の刑事映画ですが、一見の価値はあります。
(通算969タイトル)
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