諫早の森さんからメールが届いたのは、去年の秋だった。
森さんは別名ガムテープ男といい、背広姿に頭をガムテープでぐるぐる巻きにした風体で自作の詩を詠む、前衛表現に身を捧げた人だ。以前は福岡の同好の士が集う場所で時折顔を合わせていたが、最近は奥さんとともに、故郷である長崎の諫早に戻っている。
森さんのメールには、「自分の家内も詩作を趣味としており、先日書いた詩を雑誌に投稿したところ没になってしまった、家内はそれをとんちさんに贈りたいと言っている」という旨が書かれており、詩が一篇添付されていた。早い話が没作品を僕にくれる、というのである。僕は苦笑いしながらその詩に目を通した。
夫婦げんか、と題されたその詩は長崎の方言で書かれていた。どんな夫婦にでもある、些細な心の行き違いが諫早の言葉で温かくつづられている。血の通った表現とはこういうことを言うのだろう。「ぼぼとちんこの間柄」という言い回しも、あけすけだからこそ柔らかい現実味を帯びて立ち上がってくる。僕はこの詩を書いた奥さんと森さんの、二人で過ごしてきた時間に想いをはせた。
誰もが共鳴する感情、その言葉をメロディーという器に入れるなら出来るだけ大きいものが良い。小細工をせず、言葉が、心にズドンと伝わる素直なメロディー。そんなことを考えながら、僕はウクレレを爪弾いていた。
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