蛸(タコ、鮹、章魚、鱆、学名:octopoda)は、頭足綱 - 鞘形亜綱(en)- 八腕形上目のタコ目に分類される動物の総称。
海洋棲の軟体動物で、主に岩礁や砂地で活動する。淡水に棲息する種は知られていない。
英名octopusは、直接的にはラテン語「Octopus;オクトープス」の借用である。
これは古典ギリシア語で「8本足」ὀκτώπους(oktōpous)を意味している。
日本語では、標準和名の他にたこ、蛸、鮹、章魚、鱆とも記す。
複数の吸盤がついた8本の触腕を特徴とする。一般には「足」と呼ばれるが、学術書などでは「腕(触腕)」と表現されることが多い(英語でも arm [腕]と呼ぶ)。
見た目で頭部に見える丸く大きな部位は実際には胴部であり、本当の頭は触腕の基部に位置して眼や口器が集まっている部分である。すなわち、頭から足(触腕)が生えているのであり、同じ構造を持つイカの仲間とともに「頭足類」の名で呼ばれる理由がここにある。
その柔軟な体のほとんどは筋肉であり、ときには強い力を発揮する。
体の中で固い部分は眼球の間に存在する脳を包む軟骨とクチバシのみである。
そのため非常に狭い空間を通り抜ける事ができ、水族館で飼育する場合は逃走対策が必要である。
比較的高い知能を持っており、一説には最も賢い無脊椎動物であるとされている。
形を認識することや、問題を学習し解決することができる。
例として、密閉されたねじぶた式のガラスびんに入った餌を視覚で認識し、ビンの蓋をねじって餌を取ることができる。
また白い物体に強い興味を示す。
身を守るためには、保護色に変色し、地形に合わせて体形を変える、その色や形を2年ほど記憶できることが知られている。
また、1998年には、インドネシア近海に棲息するメジロダコが、人間が割って捨てたココナッツの殻を組み合わせて防御に使っていることが確認され、2009年12月、「無脊椎動物の中で道具を使っていることが判明した初めての例」として、イギリスの科学雑誌『カレント・バイオロジー (Current Biology) 』に掲載された。
血液中にはヘモシアニンという緑色の色素が含まれており、そのため血液は青く見える。
ヘモシアニンは魚類のもつヘモグロビンに比べ酸素運搬能力に劣るため、長距離を高速で移動し続けることができない。
さらに、海水のpH濃度にも影響を受けやすく、海水が酸性化すると酸素運搬能力が低下する。
危険を感じると黒い墨を吐き、姿をくらます。
タコ墨はイカ墨より美味しくないため料理に適さないと言われるが、実際はタコ墨の方が旨味成分であるアスパラギン酸やグルタミン酸等のアミノ酸を豊富に含む。
タコ墨が料理にあまり用いられないのは、イカ墨と比べて墨汁嚢が取り出しにくく、さらに一匹から採れる量もごく少量であることが理由である。
外敵に襲われた際、捕らえられた触腕を切り離して逃げることができ、その後、触腕は再生するが、切り口によって2本に分かれて生えることもあり、8本以上の触腕を持つタコも存在する。
極端なものでは日本で96本足のあるタコが捕獲されたことがあり、志摩マリンランドに標本として展示してある。
マダコでは自分の触腕を食べる行動が観察されている。
この行動は何らかの病原体によって引き起こされると考えられており、触腕を食べ始めたタコは数日以内に死亡する。