僕の創作小説です。
興味のある方は是非☆
ロンドン郊外の大学生、マシュー・ハワース。
日本からの帰国子女で、イギリスでの生活にも少し慣れてきた彼は、ある雨上がりの日、
ハイドパークのベンチで謎の不思議な本と出逢う。
禁じられた言葉を封印しているという『worLdz』という名の本のページをめくると、そ
こには、妖精のシルエットが生きているように動いていた。
彼女の名前はクロエ・W・ウィスパー。彼女の言葉が、言語化されて記されていく。
彼もまた、白紙の本に言葉を書き連ねていき、奇妙なコミュニケーションは始まった。
そんな折、最近イギリスを賑わしている事件に巻き込まれる。
マシューの在籍しているロンドン郊外の名門大学の敷地内にある塔で、奇天烈な殺人事
件が起こったのだ。
キャンパスに荘厳と建築された哲学の塔。
窓ひとつない、円柱型のゴシック建築の塔の高さは77メートル、直径20メートルになる。
そして最も奇妙なのが、その外観の造形にある。天地逆の構造なのだ。まるで空から逆さ
まの状態で垂直に落下してきたように、地面に突き刺さっていた。
常に錠をかけられた硬く頑丈な鉄の扉を開けると、内部は空洞となっており、屋上に続
く螺旋階段が延々と天に向かって伸びていた。その階段を登りきった先に、屋上へ入る
ためのアーチ型の口が開いている。屋上には腰程の高さの手すりだけがあり、他には何
もない空間だった。そして、そこから見える景色は、広いキャンパスに広がるヒースの公
園と散在する校舎。空を覆うロンドンの雲、それ以外にこの塔よりも高い建築物もなけ
れば、木々もなかった。
その哲学の塔で、ここ数日、実に摩訶不思議で奇妙な事件が起きていた。
それが、哲学の塔の屋上でみつかる落下死体なのだ。
身元不明の男の落下死体が発見されたのを皮切りに、ロンドン中を震撼させる事件が
幕開けたのだ。
なぜ塔の屋上で、落下死体がみつかるのか?死体はどこから落ちてきたのか?
死人が残した“空が落ちてくる”という言葉の意味は?
そして、“重力に逆らってリンゴが浮上していく”伝説の謎。
天地逆さの塔の屋上でみつかる落下死体の謎。
宇宙人説、神の裁き、魔術士の仕業、延々と繰り返される机上の空論説。螺旋階段のよう
に、真実の見えない闇の中をぐるぐると彷徨っている。
その時、見えない言葉の妖精は投げかけてきた。
“謎を記せ”と。
彼は、事件のあらましを本に書き綴っていく。誰にも解けない謎を。
彼女は見えない魔法の謎に言葉をかけた。
“解を示そう”
マシュー青年と、不思議な本の妖精の新感覚ミステリー。