色彩にあふれた現代に、なぜ墨だけで描くのでしょう。
水辺に咲く蓮の花に、静かに雨が降りかかります。葉をやさしくたたく雨音。雫が水面に波紋をつくる音。雨にほのかに香る蓮華の美しさ。
この自然の醸し出すハーモニーを、はたしてどんな色をもって表現することができるのでしょう。
心の中で想像した幻想的な色彩。
イメージの中で輝く、まばゆい光や一瞬のきらめき。
この心の世界をはたしてどんな色をもって表現することができるのでしょう。
墨には無限の色があると言われています。それは作品を見た人が、心の中で様々な色を想像し、感じることができるからです。モノトーンの世界には想像させる力があります。心を重ね合わせることのできる深さがあります。
墨画の「墨」の黒と「空間」の白。
それはパソコンの原点「1」と「0」の組み合わせに似てると思えてしまう。
すべての原点は「虚」と「実」。
古くて新しい「水墨の世界」。そこには時代を超えた普遍の美しさがあるように思えます。