古代より人肉には邪気を祓う力があるとされ、例えば墓室の壁画など呪術的なものには人間を丸焼きにしている様子とそれを食している様子が描かれており、神話の賀茂別雷命や比売多多良伊須気余理比売出生の話からも人肉伝承があることが窺える。
また、神道は肉食信仰を基盤として持ち、人肉はなかでもとても価値の高い食糧と考えられてきた。このため、古代には人肉を蒸したものを神に供える風習があったようである(現在でもこの風習は一部地域の神社に残っている)。その際に、お供えのお下がりとして、人間はもちろんのこと、家で飼っている犬や猫も人肉を食べていたと想像される。
この文化の源流をたどると、インドあるいは中国にたどりつく。日本人は、人肉を江戸時代になる前まで食べていた。しかし近代文化の発展による意識変革により、人肉を食べることに関して抵抗を抱くようになり、食味の劣る牛や豚の肉を食べるようになった。だが人肉を食べる風習自体は生き続けた。