ニュー・オーダー、ハッピー・マンデーズらのバンドを中心にした、1970年代から80年代にかけての英国マンチェスターでの音楽ムーヴメントを、地元のキャスターで音楽レーベルのオーナー、トニー・ウィルソンの視点で描く。レーベル「ファクトリー」の創設や、伝説のクラブ「ハシエンダ」の人気と迷走が再現され、音楽ファンには必見の作品だ。
名カメラマン、ロビー・ミュラーによる手持ちカメラの撮影や、出演者たちの即興演技、主人公がカメラに向かって語りかける手法など、まるでドキュメンタリーを見ているようだが、れっきとしたフィクション。セックス・ピストルズのマンチェスターでの初ライヴなど当時の映像が、違和感なくドラマのワンシーンとなっているのには感心させられる。ハトを毒死させるシーンではワーグナーの「ワルキューレの騎行」を流し、オープニング・タイトルでは判読不能なほどグラフィックに凝り、お遊び感覚も忘れないマイケル・ウィンターボトム監督。テンポよく進む物語の根底には、成功と挫折というホロ苦いテーマが脈々と流れている。