フランスのアルザス(エルザス)地方は、ドイツ国境に隣接する地方として有名。
そのアルザスの地元の言葉であるアルザス語はフランス人には完全な外国語。それもそのはず、アルザス地方は、現代はフランスの一部ですが、元々はドイツの神聖ローマ帝国のエルザス地方。近代初頭にフランスが侵略・併合し、以降、フランス化が進められ現在に至っています。
しかし、言語や料理、家の造りという基本的なものは、政治や支配国がどのように変わろうと、なかなか変わるものではなく、アルザスもまたフランスにより非アルザス(フランス)化が進められてきましたが、根源にあるドイツ的なものは厳然と存在しています。
この地方で話されるアルザス語もまたそうで、アルザス語は、高地ドイツ語の中のアレマン語に属するれっきとしたドイツ語の方言で、ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州のシュヴァーベン地方で使用される方言や、スイス国内で使用されるドイツ語方言に近いのです。
つまりアルザス語とは、言語系統的には、インド・ヨーロッパ語族に属するゲルマン系の言葉で、「話し言葉としてはアルザス方言」、そして「書き言葉としては標準ドイツ語」と、2つの要素からなっている言語です。
文法的には標準ドイツ語と大差はありませんが、他のドイツ語方言に比べて、個々の単語にフランス語からの外来語が多く、また読み方もフランス語の影響が多くなり、筆記では標準ドイツ語との意思疎通は可能ですが、会話となるとドイツ人にはかなり理解困難だともいわれているようです(日本でも鹿児島弁と青森弁では会話による意思疎通は簡単ではないでしょう)。
フランスは戦後の反独感情から、第二次世界大戦後長い間にわたって、アルザスでは初等教育の段階でアルザス語やドイツ語教育を禁止状態にし、フランス語教育を強制し、言語面でのアルザスのフランス化を強化しました。例えば、アルザスで流通する新聞の児童向け紙面など、児童向けや若者向けの出版物では専らフランス語が使用されるなど、公の場でのドイツ語やアルザス語排除の風潮が続きました。このため、幼稚園や初等教育の段階でドイツ語教育が行われるようになった現在でも、世代が下るほどアルザス語を母語とせず、フランス語を母語とする者が多くなる傾向が続いているのが現実です。
しかし、地元の住民から母語を奪うことはアルザスの文化を破壊するに等しいという声が近年では上がりつつあります。
アルザス好きの人は、アルザスの人々が母語とするアルザス語を覗いてみよう。フランス語的な装いをしているドイツ語というアルザス語は、やはりドイツ語のルクセンブルク弁ともいえるルクセンブルク語などと同じように、異なる言語が地続きに隣接しているヨーロッパの言語の面白さを表わしているともいえます。
関連コミュニティ
アルザス(エルザス)
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●アルザス語のウィキペディア
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●アルザス語ウィキによるアルザス(エルザス)の紹介
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