イズミとカオルの過剰な愛憎を描く「エンドレス・ワルツ」で思い出されるのは、アンジェイ・ズラウスキーの「狂気の愛」、ジャン=ジャック・ベネックスの「ベティー・ブルー/愛と激情の日々」、レオス・カラックスの「ポンヌフの恋人」といったヨーロッパの気鋭の監督たちの作品だ。“狂気の愛”“愛と激情の日々”と言う言葉は、まさにイズミとカオルの関係を体現してこれ以上のものはなく、そういう意味で言えば、日本映画に初めてヨーロッパ的な自我を持つ伝説的な愛を描いた作品が生まれたといっても過言ではないだろう。
この作品のモデルとなったイズミとカオルは、彼らを知る人々にとってとうに伝説的存在り、現在でも熱い思いで語り継がれている。
時代が大きく揺れていた70年代、新宿周辺で出会った宿命のカップル。
女優で小説家だった鈴木いずみと、天才的サックス奏者と呼ばれた阿部薫。
このカップルにまつわるスキャンダラスなエピソードは、映画の中でもしっかりと描かれているが、時間と空間を疾走したアナーキーな恋人たちを、単に過去の伝説としてスクリーンに再現するのではなく、現在、そして未来のカップルたちをも視野に入れて描いているの