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オリジナル小説を目指せ!コミュの秘めた思い/作rei

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視点を変えるのを書いてみました。
よかったら、感想お願いします_(._.)_

**********************
○忠志の章

「・・・高野くん!聞いてるのかね!」

課長の柴崎に呼ばれているのに気付いて、
高野は、あわてて返事をした。

「はっ、はい!!」

「なに、ぼぅーっとしてんだ?仕事しない
 人に払う給料はないんだよ!」

(また、嫌味か。いい加減にして欲しいなあ。
 それにしても、平田さん今日は機嫌よさそうだ)

高野忠志は、入社5年目の27歳。会社では経理部
に所属している。

彼が、見とれていたのは、同期入社で総務部に
所属する平田恵子。高野より二つ年下の25歳で、
会社でも評判の美人だ。

(今日は、言うぞ。この日のために、マライヤキャリーの
 チケットをやっとのことで、手にいれたんだ。
『チケットが2枚あるんだけど、一緒に行かない?』
 こういうだけだ。絶対言える!!)

高野は、昼休みをじっとまった。
いつもなら、すぐに過ぎ去る数時間も、いまの彼に
取っては、ひどく長く感じられた。

「ボーン。ボーン」

(じゅっ、12時だ。言うぞ!いましかない!)

恵子に声をかけようと、2M後方まで近づいた時、思いも
よらぬことが起こった。総務部の女性達が恵子に声をかけ、
食事に行こうと誘っている。

(あああっ・・・。いつもは12時10分過ぎに食事に行くのに・・)

しかし、落胆する彼の耳に、幸運を呼び込むであろうキーワードが
飛び込んできた。

「恵子、今日教室行くでしょ?」

「行く行くー!テニスって楽しいもんね!」

(テニス?恵子さんテニス教室に通っているのか?)

「博多の森だと会社帰りにちょうどいいしねえ。
 なんだか、私はまりそうよ!」

(テニス。テニスか。だいぶ時間経ってるし、なんとかできるかな)

高野は、中学、高校とテニスにはまり、インターハイのベスト
4に入ったこともあった。
一時は、プロを目指していたが、大学時代に膝を故障し、
それ以来ラケットをもったことがない。

本格的にやるなら問題だが、初心者に教えるぐらいはできるはずだ。

(これだ。このチャンスを活かすんだ!)

遠ざかっていく恵子達の後姿を見つめていると、不意に
後から声をかけられた。

「なぁに、真剣な顔してるのよ?あ、また恵子ちゃんか。
 もう、早く告白しちゃいなよ。」

「もう、からかわないで下さいよ。早苗さん!」

「あはは。早くしないととられちゃうわよ。
 まあ、がんばんなさーい!」

声をかけてきたのは、白石早苗。経理部の2年先輩だ。
短大卒のため、年は高野と一緒だが、何かと子供扱い
してくる。
新人の頃からよくしてもらっていて、恵子のことも
相談していた。年は、一緒だが、高野に取っては、
姉のような存在だ。

(早苗さんの言う通り、がんばんなきゃな!よし、戻ってきたら
 いってみよう。)

高野は、食事も取らず、そわそわしながら席で待った。
時間がすごく長く感じられる。

(なんて、いおう。「テニスするの?僕もなんだ!」とか
「さっきテニスって聞こえてさ。僕も昔してたんだ」とか・・
 あー、考えがまとまらん!)

あれこれ考えているうちに、時間は過ぎていき、後10分で
昼休みも終わるという時になった。
話し掛ける時間があるのか?と高野がじれて、廊下に様子を見に
行こうかとしていた時、恵子が席にもどってきた。

恵子の方に行こうとすると、食事から戻ってきていた早苗と
目があった。

早苗は、恵子の方に目配せしたあと、ガッツポーズを作った。
高野のことを応援してくれているのだ。

(よし、気合いれるぞ!)

恵子の後ろに歩みより、声をかける。

「ひっ、ひ、ひ、ひらったさん!」

(ぐっ。なんて声出してんだ・・。落ち着け・・)

恵子がこちらを振り返る。シャンプーのにおいなのか、
香水のにおいなのか、高野にとってはこの世でもっとも
よいと思える香りが鼻腔に充満する。

(なんて良いにおいなんだ・・。はっ、いかん言わなきゃ!)

「なに?」

「いや、あのさ。さっきテニスの話してたじゃない?
 テニスはじめたのかなあと思って。」

「うん!良子達と始めたのよ!もうおもしろくってさ。
 まだバックが上手く打てないんだけどね」

(よーし、いい展開だ!ここでいうぞ!)

「あっ、あのさ・・」

(いえ、いま言わないでどうする!)

「実は、僕も昔テニスしててね・・」

「へー。そうなの?テニスっておもしろいね!」

(くー。なんて良い声なんだ・・。はっ、いかん言わなきゃ!)

「でさ、久しぶりにしたいから、する時混ぜてもらえないかなあ
 とか思って・・・」

(だっ、駄目か?大丈夫なのか?)

「うん。いいよ!今度の日曜日、みんなでするから高野くんも
 おいでよ」

(やっ、やったー!上手くいったぞ!)

天にも上る気持ちで席に戻ると、早苗が耳打ちしてきた。

「やったじゃない。おめでと」

「はっはい!」

高野に取って、その日は人生最良の日に思えた。

***************************
○恵子の章

恵子は定時後が楽しみでならなかった。
今日は、テニス教室の後に、矢野と食事の約束があるのだ。

恵子も入社して、5年が経ち、はや25歳。
そろそろOL生活にも飽きてきていたし、この美貌に
かげりが見え始める前に、いい男を掴まえて、裕福に
暮らしたかった。

今度の相手、矢野は世にいう青年実業家。35歳という若さで会社を
3つも経営し、持っている車は高級車。住まいも数億円はする
であろうマンションであった。

まさに、恵子が待ち焦がれていた相手だ。
結婚相手としては申し分ない。

(絶対私の虜にしてやる)

今日のために、矢野が好みであるという清楚な女性を演じて
きたのだ。この機会を逃す手はない。

「ボーン。ボーン」

(あ、12時か。今日は、何にしよう)

財布をだしていると、同期の良子たちが席にやってきた。

「お疲れー。今日は、どこいこっか?」

「今日は、パスタがいいなあ」

「じゃ、駅前まで行こう」

「恵子、今日教室行くでしょ?」

「行く行くー!テニスって楽しいもんね!」

恵子は、最近同僚の良子達とテニス教室に行き始めた。

もともとは、テニスをやっているという矢野にあわせる
ため始めたのだが、コーチはスポーツマンタイプで、
恵子の魅力にまいっているようだし、運動ができて、
男がついてくるなら申し分ない。

深く付き合うつもりはさらさらないが、まあデートの
一回ぐらいはしてやるつもりだ。

「博多の森だと会社帰りにちょうどいいしねえ。
 なんだか、私はまりそうよ!」

席を立って廊下を歩き出すと、良子が肘でつついてきた。

「ほら、また高野くんあんたのことみてるわよ」

「えー?またぁ?勘弁してよまったく」

高野が恵子に気があるということは、以前から気付いていた。

しかし、取り立てて顔がよいわけでもなく、金持ち
なわけでもない高野は、恋愛の対象には到底ならない
相手だった。

(もうちょっとかっこよかったら、相手してあげても
 いいんだけどねえ)

そんなこともロビーからでるころにはすっかり意識から消え、
恵子は、再び定時後の矢野とのデートに思いを馳せていた。

昼食を終え、席に戻ると高野が声をかけてきた。
相変わらず、落ち着きのない声をだす。

「ひっ、ひ、ひ、ひらったさん!」

(少しは落ち着いたらいいのに)

「なに?」

「いや、あのさ。さっきテニスの話してたじゃない?
 テニスはじめたのかなあと思って。」

「うん!良子達と始めたのよ!もうおもしろくってさ。
 まだバックが上手く打てないんだけどね」

「あっ、あのさ・・」

「実は、僕も昔テニスしててね・・」

(へー。意外。そうは見えないけどなあ)

「へー。そうなの?テニスっておもしろいね!」

「でさ、久しぶりにしたいから、する時混ぜてもらえないかなあ
 とか思って・・・」

(そういえば、日曜日でのテニス奇数だからダブルスの組み分けが
とかいってたっけ)

「うん。いいよ!今度の日曜日、みんなでするから高野くんも
 おいでよ」

(まあ、そんなに上手くないんだろうけどさ)

「え?うん絶対行くよ!」

恵子が誘ってやると、高野は喜びいさんで席に戻っていった。

(おーおー、よろこんじゃってまあ。あんたじゃ私は落ちないよーだ)


*********************************
○忠志の第二章

高野は、恵子に誘ってもらえた喜びで、午後の仕事は手につかな
かった。

(もしかして、テニスの後に食事なんかできたりして、
それで、それをきっかけに付き合えたりしないかなあ)

にやにやしていると、早苗が話し掛けてきた。

「なににやついてんのよー。まだ上手くいったわけじゃ
 ないでしょうが?」

「あははは。そうですね。でも、なんかうれしくって」

「でも、高野くん膝いいの?」

「はい。軽く走るぐらいは問題ないですから」

(あ、そういえばテニスやめる時、用具一式捨てちゃったなあ。
 久しぶりに山内のおじさんとこ行ってみるか)

定時後、高野は以前足繁く通ったスポーツ用品店に
立ち寄ることにした。

高野が店に入ると、店主が走りよってきた。

「高野く〜ん!久しぶりじゃないかぁ?元気してたか?」

「ご無沙汰してます。またテニス始めようかと思いまして」

「え?膝はもういいの?」

「全力で走ることは無理ですが、エンジョイテニスならできるかなと」

「うんうん。そうだね。テニスは色々なレベルでやれるからねえ。
 腹がこんなにでている私でもできるんだから、君だと十分だよ。
 あはははは」

そういうと、店主の山内は、大きくでている腹をなでた。

(なんか、昔に戻ったみたいだな。来るのは、気がひけたけど、
 きてよかった)

「あれだよ。ラケットも変わったからね。ちょうど新製品がたくさん
 でてるから、いろいろみていってよ」

山内に促がされ、テニスのコーナーに行くと、所狭しとラケットが
飾ってあり、"新製品"とかかれた文字が書かれた紙が貼り付けてある。

ラケットを数本もってみたが、どれも軽い。

山内によると、最近は軽く高反発のラケットが流行っているとの
ことだった。

「高野くんみたいなパワーヒッターには、どれがいいかなあ。
 これとか、これとかどう?」

山内は、高野に数本のラケットを選んでくれた。

「この先のオートテニスで打ってみなよ。テンションあんまり高めじゃない
 から、高野くんだと飛びすぎると思うけどね。」

「じゃ、お借りしますね」

高野は、数本のラケットを持って、オートテニスへと向かった。
久しぶりにラケットを振るかと思うと、それだけで気持ちが
高ぶってくる。

(ちゃんとあたるかな?ちょっと不安だ)

数分歩くと、オートテニス場についた。平日ということもあり、
人はまばらで、スーツ姿でも気兼ねなく打てそうだった。

(革靴じゃなあ。踏ん張りきかないけど、まあいいか)

高野は、すぶりもそこそこに、早速料金をいれ球を打ち出した。
少しでも早く、球を打つ感覚を手に感じたかったのだ。

"ぱこーん" "ぱこーん"

数年ラケットを振っていなくとも、一旦しみついた体の動作は
そう忘れるものではない。

軽めに中ロブを暫らくうち、肩があったまってくると、7割ほどの
力で、球を打ち出した。

"カコーン" "カコーン"

高野の打球音は、乾いた音となっていき、だんだんと球足も
早くなる。

(これだこの感じだ。ああ、やっぱりテニスは忘れられない)

ラケットを替えながら打ちつづけていると、しらない内に30分も
経っていた。

(げげ。山内のおじさん待ってるぞ。早く戻らないと)

急いで店にもどると、山内はにこにこしながら待っていて
くれた。

汗だくになった高野を見ると、満足そうな表情を浮かべる。

「どう?久しぶりのテニスは?楽しかったろ?」

「はい。やっぱりテニスはいいですね。楽しかったです」

「で、いいのあった?」

「どれも使いやすいですね。軽いし、振りぬきやすいです。
 これだと、フレーム固めだったらどれでもよさそうです」

そう話している内に、高野は壁にかかっているブルーのラケットを
見つけた。

「おじさんこれは?」

「ん?HEADのリキッドメタル4か。フレーム硬いけど、初級者から
 中級者向けだよ?」

(恵子さんブルーが好きだったな・・。そういえば早苗さんも・・
 いかん、早苗さんのことは諦めると決めたじゃないか)

「おじさんこれ下さい」

「あいよ。普通は24000円で売ってるけど、高野くんは8000円で
 いいや」

「え?悪いですよ。昔は金なかったけど、いまは社会人ですし」

「いいっていいって。お祝いだよ。お祝い。テニスに戻ってきて
 くれたお祝い」

「すいません」

ラケットの他に、シューズ、ウェア一式を揃え、高野は店を
後にした。

(何だか、昔に戻った気分だ。膝をやった時は、一生テニスなんか
するもんかって思ったけど、そうだよな。試合に勝つだけが
テニスじゃない)

またテニスができる喜びと、恵子のことで自然と口元が弛む。

(日曜は楽しくなりそうだ)

帰宅する足取りも軽く、幸せいっぱいの高野であった。

*****************************
○恵子の第二章

テニス教室が終った後、恵子はシャワーを浴びていた。
ボディソープをたっぷりとつけ、念入りに体を洗う。

この後は、矢野とのデートが待っているのだ。

(今日は、やるわよ。絶対にこの獲物は逃がせない)

シャワー室からでると、更衣室に置いてある姿身の鏡に、
体を映した。

引き締まったウエストに日本人離れしたスラリと伸びた脚。
この肢体を見せられれば、男は夢中になるであろうという
素晴らしいプロポーションだ。

(私は、お母さんのようにはならない。絶対幸せになってやる)

恵子の母も若い頃は、評判の美人であった。

しかし、恵子の父という働きもせず博打ばかりして
いる男と、一緒になったばかりに、幸福とは言い難い
生活を長年味合わされたばかりか、挙句のはては、
借金だけ残して蒸発されてしまい今もその返済に追われている。

恵子は幼少の頃から、裕福な家庭に産まれてこれなかった
自分の境遇を嘆く日々が続いたが、ある時期、自分に他人には
ない武器があることに気付いた。

それは、中学に入学した頃だ。

成長期に入った恵子は、それまでの"かわいさ"から"うつくしさ"
に変貌を遂げて行き、それに伴って恵子の周りには、吸い寄せられる
ように男が寄ってきたのだ。
頭がよく皆から一目置かれているような秀才も、スポーツ万能で
女子生徒から人気のある生徒も、恵子の前になると借りてきた猫の
ように大人しくなり、恵子が願望を口にするだけでそれをかなえようと
必死になるのだ。

中学、高校、短大と色々な男を手玉に取ってきたが、これといった
金持ちにあたることがなかった。

せいぜいが、町医者の息子ぐらいでちょっと付き合って、プレゼント
を買ってもらう分にはよかったが、恵子を満足させるまでには
いたらなかった。

(今度は違うわ。矢野さんを絶対私の虜にさせてやる)

今夜の計画を頭に描きながら入念に化粧をする恵子だった。

*******************************
○忠志の第三章

いよいよ待ちにまった日曜日。
テニスができる喜びと、恵子に会えるうれしさで、
高野は気が気ではなかった。

(いいとこ見せたら、食事なんかいけたりして。
そいでもって、付き合うとかなったら・・
くーっ。どうしよう!)

買ったばかりのテニスウェアに袖を通し、身支度を整える。

(テニスウェアを着ることなんてもうないと思ってた
 けどなあ。わからないものだな)

喜び勇んでコートに付くと、まだ約束時間の30分前であった。

(10番、11番のコートっていってたかな。ちょっとアップして
 おこう)

コート脇で柔軟体操をしていると、少し遠くから男女の会話が
聞こえてきた。

(ん?恵子さんの声だ!やった早くきて正解だ!)

「恵子ちゃん。今日は帰り付き合ってよ。おいしい店見つけ
 たんだ」

「もう、吉井コーチったら。生徒をくどいちゃ駄目ですよ」

(え?男と話してる。しかも、誘われてるじゃないか!くそー、
 相手は誰だ!)

コート脇から声のする方向を睨んでいると、恵子と吉井コーチ
なる人物が姿を現した。
吉井は、恵子の腰に手をまわして、何やらしたしげな様子だ。

(恵子さんの腰に手をまわしてやがる・・・)

高野の姿に気付いた恵子は、吉井の手をはずし声をかけてきた。

「おはよー。高野君早いじゃない」

「お、おはよ・・」

(恵子さんの彼氏なのかな・・・)

「あっ、こちらは吉井コーチよ。テニス教室で教えてもらってるの」

「はじめましてって、初めてじゃないよな。高野元気してたか?
 テニス止めたと思ってたけどな」

「は?よっ、吉井?!なんでおまえがここに・・」

高野と吉井は、高校、大学と同じクラブに所属し、ダブルスを
組んだ仲だった。
息のぴったり合ったプレーは相手を圧倒し、プロの出場する大会に
でて、ファイナルまで進んだこともある。
チームメイトであり、よきライバルであったのだ。

(まずいぞ。吉井は女に手が早い・・)

昔を懐かしむ会話をしていると、その内他のメンバーも集まってきた。

「よっ、うまくいってるかい!」

「あれ?早苗さんも来たの?」

「きちゃ悪いの?んー?」

(へー。早苗さんもテニスするんだ)

「じゃ、皆さん集まってください」

早苗と会話をしていると、吉井が集合をかけた。
昔から、しきるのが上手いのだ。

「えー、今日は私吉井がコーチさせていただきます
 最初の球出しは、私と高野でやりますから」

最後の「高野」という言葉に、皆一斉に高野を見る。

「皆さん知らなかったのかも知れませんが、この高野とは
 高校、大学と同じクラブに所属していました。
 こいつも、インターハイでベスト4とかに入った実力者です」

皆一様に感心した風で、高野を見る。

(吉井、おまえはいい奴だ!これで恵子さんの見方も変わる)

しかし、練習を開始すると高野のそんな思いは、霧散した。
初心者への指導は、高野にまかせっきりで、吉井は、
ことあるごとに「フォームが」「にぎりが」と言っては
恵子に触れるのだ。

(吉井!てめえ許さん!)

休憩の時、高野は吉井を裏に連れて行き、問いただした。

「吉井!おまえどういうつもりだ!恵子さんにべたべたしやがって!」

「どうって、いい女だからいただこうと思ってるよ」

(この野郎!やっぱりか!)

「あのなー、あの人とは、同じ会社なんだぞ!そんなことさせるか!」

「はん?おまえあの娘に惚れてるな?やめとけよ。あれは
 かなり男を知ってるぜ。奥手のお前には、無理無理」

「うるさい!絶対あんなのもうやめろよ!わかったな!」

「おいおい、こういうことは言って聞かせるもんだったか?
 しばらくテニス止めて頭ぼけちまったのか?」

(うっ。そうだった。試合で決めるんだった)

高野と吉井は学生時代、なにか意見が分かれると試合で
決着をつけるということをやっていた。

しかし、数年テニスを離れ、しかも膝が悪い、
いまとなっては勝てる気がしない。

「お、なんだ?えらい弱気だな?ハンデやるか?」

(くっ。こいつだけには負けたくない!)

「よしやってやる!」

「おし、決まり。3セットマッチな」

吉井は、一方的に話を打ち切ると、コートに戻り、
早速、皆に伝え出した。

「えー、高野と話している内に、懐かしくなりまして、
 こっちのコートお借りして、軽くゲームやります。
 皆さんは、隣で自由にされてください」

ぞろぞろとメンバーが移動しようとすると、吉井は恵子に
声をかけた。

「あ、恵子ちゃんはこっちきてみてて。参考になるから」

(くっ。恵子さんの前で恥じはかけない。最初から全力だ!)

吉井の得意なショット、戦法はもうわかっている。
強烈なサーブを武器に、ネットにつめてのボレーでポイントを
重ねるやりかただ。

(スタミナはむこうが上だ。息があがるまえになんとかあげないと)

ゲームは、高野のサーブではじまることになった。「ハンデやるよ」
との一言で、吉井はサーブを譲ったのだ。

(なめやがって。学生時代は俺が勝ち越してんだぞ!)

トスを上げ、フラットサーブを思い切り打つ。

"シュコーン!!"

いままでとは、全く違う打球音と球のスピードに隣のコートに
移っていた連中も釘付けになった。

サーブは、右コーナーぎりぎりに入り、取ろうとする吉井の
横を抜けた。

「おしっ!」

高野の口から、気合が入った声が飛び出る。

「なんだ?おまえなまってないなあ。こっからは本気で行くぞ!」

吉井も高野のサーブをみて、顔つきが変わった。

(吉井相手に、サーブは落とせん。我慢すれば、絶対チャンスがくる!)

その後のゲームは一進一退となった。高野が強烈なサーブを
打ち込み、吉井が繋いだ球をコースに決めれば、吉井はサーブの
後に、ネットダッシュして、ボレーでポイントを重ねる。

1セット目は6−4で高野が取り、2セット目は6−3で吉井が
取った。
そして、3セット目も終盤に差し掛かり、吉井リードの第10ゲーム
ゲームカウント5−4、カウント40−30のマッチポイントとなっていた。

(くそ、もう少しなのに足の踏ん張りがきかなくなってきた・・。
いや、ここで弱気になってどうする!このポイントは絶対落とさん!)

一緒にわいわいとテニスを楽しむためにきた会社の人達も、あまりの
熱戦に釘付けとなっている。

「ねね、恵子。高野くんってかっこよくない?なんかすごいよ」

「うん。なんか意外。勝ったほうとはデートしてあげても
 いいかも」

「でたよー。恵子の得意技」

恵子と良子がそんな話をしていると、早苗がその話に
割って入った。

「平田さん。あなた男を見る眼がないんじゃないの?
 金もってたり、顔がいいだけが男じゃないわよ」

「え?それってどういう意味ですか?」

「さあね。年増のいっていることだとおもって忘れて」

その言葉が聞こえたのか、聞こえていないのか、
高野は、サービスエースを連発し、辛くもキープした。

「高野、やるじゃないか。俺はこれでも去年の全日本でベスト8
 にはいってんだぞ」

「ハァ、ハァ、ハァ、それぐらいで、ハァ、ハァ、ベスト8?
 日本のテニスも、ハァ、ハァ、レベルが落ちたな」

「ぬかせ。肩で息しやがって、限界じゃないのか?」

「なにいってやがる。ハァ、ハァ、いまから、ハァ、ハァ、
 5セットマッチにしても、ハァ、ハァ、いいんだぞ」

「あははは。へらず口は、健在か。うれしいよ」

その後、吉井は危なげなくサービスゲームをキープし、
高野も何とかキープし、ゲームはとうとうタイブレーク
に突入した。

(膝ががくがくして、痛みが走る。あとたった7ポイント
 なんだ。ここで気合いれなくてどうする)

吉井は、3セットに入った疲れを感じさせない、
力強いサーブを依然としてうつ。

"シュコーン!"

サーブがコーナーに決まるが、高野は追いつくことが
できない。

(くそ、脚がついていかない。サーブはおとせん)

気合をいれなおそうとする高野だったが、痛みのましていく
足は思うように動いてくれず、タイブレークは7−1とあっけない
幕切れとなった。

試合が終って、2人はネットに歩み寄る。
足を引きずる高野の姿を見て、吉井が声をかけた。

「痛むのか?」

「いや、全然」

「あははは。おまえの負けず嫌いにも困ったもんだな。
 でもさ、ホント試合できてうれしかったよ。
 本格的に試合するのは無理だろうけどさ、テニスやれよ」

「そだな。相手してくれてありがとな。手加減してくれたろ?」

「まあな。ははは」

高野がベンチに座ろうと移動すると、見ていた会社の人たちが
声をかけてきた。

「すごいじゃない!高野くんあんなにうまかったの!」

「かっこよかったー!」

賞賛の声にも、高野は苦笑いを返すのが精一杯だった。

「ほら、恵子あんたもなんかいいなさいよ。」

良子に促がされて、恵子がそばによってきた。

「高野くん。かっこよかったよ」

あれだけ夢中だったはずの恵子に声をかけてもらっても、
なぜだか高野の心は高鳴らない。

なによりも、いまはテニスを体全体で楽しんだ余韻に
浸っている方がいいのだ。

あこがれであった恵子の言葉にも、生返事を返すだけで高野は、
ベンチに座り込んだ。

熱戦が繰り広げられたコートでは、会社の人たちが、
先ほどの2人のプレイを真似しながら、きゃーきゃーわーわーと
テニスを楽しんでいる。

その様子を眺めていると、不意に首筋に冷たさを感じだ。

「うわっ」

振り返ると、早苗がジュースを持って立っていた。

「はい。お疲れ様」

「どうも」

「膝だいじょうぶ?」

「ちょっと、無理したみたいです。明日は、
 たぶん歩けないですよ。あははは」

「でもさ、高野くんの本当の顔を久しぶりに見た気がした」

「え?」

「実はあたしさ、高校の時テニス部にいたのよねー」

「へー。早苗さん、テニスしてたんですか?」

「わたしは、下手で試合でもいつも負けてたんだけど、
 その頃、すっごく強い人がいてね。あこがれだったわ」

(なんか、唐突だなあ。それに、なんか早苗さんいつもと
 雰囲気が違うぞ。どうしたんだろう?)

「はぁ」

「その人にはさ、学生時代は声をかけることができなかったんだけど、
 なんでか、同じ会社に就職してきてね。私うれしかったんだあ」

(へー、そんなことがあったのか。そういえば、早苗さんの学生時代の
 事とか聞いたこと無いな)

「でもね。その人、学生時代の元気をなくしちゃっててね。
 なんとか力になろうと思ったんだけど、どうしようも
 なくてね。
 その人がテニスへの思いを絶つため苦悩しているのが感じられて
 どうすることもできない自分が何だか歯痒かった」

そういうと、早苗は高野の顔を直視した。

(え?それって俺のことか?)

*********************************
○早苗の章

(また、あの娘のことみてる・・。そんなに
 好きなのか・・)

学生時代あこがれだった高野が自分の所属している
経理部に配属されるとわかった時、早苗は天にも
上る気持ちだった。

学生時代は、話し掛けることすらできなかったが、
同じ職場ならいつでもチャンスはある。
彼の色々なことを知りたかった。

しかし、配属されてきた高野は学生時代とどこか
違っていた。
学生時代に持っていたエネルギッシュなところが
感じられず、どこか落ち込んでいるように見える。

その理由が、怪我によって、テニスを断念せざるえなかった
ことにあるとわかると、早苗はなんとか元気ずけようと
いろいろと手を打ってみた。

「恋人でも探したら?」と高野をたきつけたのもその一つだ。
自分に振り向いてくれるのでは?という淡い期待を持っていたが、
高野は、次第に平田恵子に夢中になっていくようだった。

あまつさえ、高野に平田恵子との恋の悩みを打ち明けられ、
早苗は、いままで良きアドバイザーとして振舞ってきたのだ。

(いまさら、高野くんが好きとかいえないよなあ。ああ、私って
 なんて馬鹿なんだろう)

「ボーン。ボーン」

昼休みのチャイムがなると、高野がいきなり席をたって、
平田恵子の席の方へと歩いていく。

(デートに誘うのかな・・)

しかし、高野が声をかけようとする前に、総務の女性達は連れ立って
食事に行ってしまった。

高野は、その後姿を残念そうに見ている。

(あっ、失敗したんだ。元気付けてあげよう)

早苗は、高野のそばまで歩いて行って、声をかけた。

「なに、真剣な顔してるのよ?あ、また恵子ちゃんか。
 もう、早く告白しちゃいなよ」

「もう、からかわないで下さいよ。早苗さん!」

「あはは。早くしないととられちゃうわよ。
 まあ、がんばんなさーい!」

(ほんとは、上手くいってほしくないんだけどね・・)

食事から戻ると、高野はまだ席にいた。
そわそわして、平田恵子を待っているようだ。

(また誘うつもりなんだ・・)

平田恵子が席に戻ってくると、高野はあわてて、
立ち上がり、平田恵子の方へ歩いていく。

早苗は、てっきり高野がコンサートに誘うのだろうと思っていたが
、思わぬことがやりとりされていた。

「でさ、久しぶりにしたいから、する時混ぜてもらえないかなあ
 とか思って・・・」

(え?高野くんまたテニスするの!!)

「うん。いいよ!今度の日曜日、みんなでするから高野くんも
 おいでよ」

(やった!それ私も行くのよ!高野くんのプレイがまた見れる!)

高野は、足取りも軽く、席へともどってきた。
その無邪気な顔をみると、早苗は抱きしめたくなる衝動にかられた。

(私もはしゃいでどうすんのよ!落ち着いて、おめでとうって
 いってあげなきゃ)

「やったじゃない。おめでと」

「はっはい!」

うれしそうな高野の笑顔を見て、早苗も喜ばずにはいられなかった。
午後になっても、高野は、にやにやしている。

(平田恵子と一緒にテニスできるのがそんなにうれしいのかな・・。
 高野くんのテニスがみれるのはうれしいけど、なんか複雑・・。
 えーい!私が落ち込んでどうする!)

早苗は、ともすれば落ち込みそうになってしまう自分をなんとか
奮い立たせ、高野に声をかけた。

「なににやついてんのよー。まだ上手くいったわけじゃ
 ないでしょうが?」

「あははは。そうですね。でも、なんかうれしくって。」

(ほんとにうれしそう。この顔がみれただけでもよしとするか・・)

「でも、高野くん膝いいの?」

「はい。軽く走るぐらいは問題ないですから」

(そか、そうだよね。前みたいに全力でプレーするわけじゃないんだから。
 私も、打ち方ならったりしてみようっと。うふふ)

それから、平凡な数日が経ち、いよいよ待ちにまった
日曜日となった。

この日のために、早苗はウェア一式を購入していた。
真新しいポロシャツに袖をとおすと複雑な思いがしてきた。

(高野くんは、平田恵子目当てでくるんだよねー。
なのに何期待して、あたらしいウェアとか買ってんだろ。
なんか馬鹿みたい・・。いくのやっぱりやめようかな・・)

早苗が迷っていると、携帯がなった。
今日、一緒にテニスをすることになっているメンバーの一人
からだった。

「おはよー。石井さんもう家でた?」

「おはよー。あのさ、あたしやっぱ・・」

「あ、そうそうボールを半分石井さんに預けてたよね。
 忘れずにもってきてね」

(あっ、しまった。ボールを一かご分預かってたんだっけ・・)

「う、うん持っていくね」

電話を切ると、早苗は着替えを再開し、身支度を整えて、
家をでた。

コートにつくと、既に数人のメンバーが到着していた。
高野の姿もその中にある。

(やっぱり彼にはスーツ姿より断然こっちの方がいい。よし、
 元気だしていこう)

早苗は、気合を入れなおすと、後から高野に声をかけた。

「よっ、うまくいってるかい!」

「あれ?早苗さんも来たの?」

(そうだよね。私がテニスしてたって言ったことなかったもんね)

「きちゃ悪いの?んー?」

高野との会話を楽しんでいると、集合がかかった。

(あ、もうはじまるんだ。高野くんに教えてもらえるかなあ)

「じゃ、皆さん集まってください」

「えー、今日は私吉井がコーチさせていただきます
 最初の球出しは、私と高野でやりますから」

(だよね。当然、当然。高野くんの球見たらみんな驚くぞー)

「皆さん知らなかったのかも知れませんが、この高野とは
 高校、大学と同じクラブに所属していました。
 こいつも、インターハイでベスト4とかに入った実力者です」

(うふふ。私、しってたもん)

練習が開始されると、高野は球出し、初心者への打ち方指導と
忙しく動き回る。

(さすがうまいわ。すごくうちやすいポイントに球出ししてくれる)

あっというまに、1時間余りがすぎ、高野は吉井と話しながら
裏にいってしまった。

(あれ?なんか変な雰囲気だぞ。どうしたんだろ?)

早苗は、なんとなく気になって、目の前で行われている
テニス談義にも何となく身が入らない。

(あ、帰って来た)

再び姿を現した吉井は、突然皆に聞こえるような大きな声で
こんなことを言い出した。

「えー、高野と話している内に、懐かしくなりまして、
 こっちのコートお借りして、ちょっと軽くゲームやります。
 皆さんは、隣で自由にされてください」

(え?試合?高野くん大丈夫なのかな?でも軽くやるなら
 大丈夫か)

高野のサーブでゲームは始まった。

"シュコーン!!"

(え?このスピード、全力で打ってる・・)

いままでとは、全く違う打球音と球のスピードに、早苗だけでは
なく、その場にいた全員が釘付けになった。

サーブは、右コーナーぎりぎりに入り、取ろうとする吉井の
横を抜けた。

「おしっ!」

高野の口から、気合が入った声が出る。

「なんだ?おまえなまってないなあ。こっからは本気で行くぞ!」

吉井も高野のサーブをみて、顔つきが変わった。

(高野くん、無理しないで・・)

そんな早苗の思いも虚しく、高野は全力のプレーを続ける。
これが数年間もブランクのあった男のプレーだとはとても
思えない。素晴らしいスピードとパワーに早苗も息を呑んだ。

しかし、2セット目の途中から、高野はすこし足をひきずりだした。
時折、苦痛に顔をゆがめている。

(痛むんだ。むりしないで)

その時、横でみていた総務の2人がこんな会話をしだした。

「ねね、恵子。高野くんってかっこよくない?なんかすごいよ」

「うん。なんか意外。勝ったほうとはデートしてあげても
 いいかも」

「でたよー。恵子の得意技」

(この女ー!高野くんをこんなやつに渡せるかー!)

早苗の頭には、一気に血が上り、嫌味を言わずには
おれなかった。

「平田さん。あなた男を見る眼がないんじゃないの?
 金もってたり、顔がいいだけが男じゃないわよ」

「え?それってどういう意味ですか?」

(そのまんまの意味だよ!)

「さあね。年増のいっていることだとおもって忘れて」

その後、高野の足の状態は悪くなっているようで、動きも
目に見えて悪くなっている。

(つらそう。息もあがってるみたい。早くおわって)

2時間に及ぶ熱戦も吉井の勝利で幕を閉じた。

(やっとおわった。あ、こっちにくる)

足をひきずりながら、辛そうに移動する高野に、その場に
居合わせたメンバーは次々と声をかける。

「すごいじゃない!高野くんあんなにうまかったの!」

「かっこよかったー!」

賞賛の声にも、痛みがひどいのか、高野は苦笑いを返している。

(大丈夫かなあ。氷もってきてあげたほうがいいかなあ。
 あ、あの女!)

平田恵子も髪を整えながら、高野のそばに歩みよっている。

「高野くん。かっこよかったよ」

(くー。高野くんに近づくなー!あれ?高野くん平田恵子に
 声をかけてもらっても全然よろこんでない)

皆が空いたコートに戻っていく頃になって、高野は満足げな
表情を浮かべ始めた。

(あ、テニスができてうれしかったんだ)

早苗は、コート近くの自販機に走り、スポーツドリンクを買うと、
大急ぎで、コートへ戻った。

ベンチでは、まだ高野が休んでいる。早苗は、高野の首筋に
冷えた缶を押し付けた。

「うわっ」

高野が、驚いて振り返る。

(いい汗かいてる・・。かっこいいぞ・・)

「はい。お疲れ様」

「どうも」

「膝だいじょうぶ?」

「ちょっと、無理したみたいです。明日は、
 たぶん歩けないですよ。あははは」

(そんなに無理しちゃって。心配したんだから)

「でもさ、高野くんの本当の顔を久しぶりに見た気がした」

(学生時代の高野くんみたいだったよ)

「え?」

「実はあたしさ、高校の時テニス部にいたのよねー。」

(あれ?あたし何言ってるんだろ?)

「へー。早苗さん、テニスしてたんですか?」

「わたしは、下手で試合でもいつも負けてたんだけど、
 すっごく強い人がいてね。あこがれだったわ」

(あ、駄目。これ以上いったら今の関係がこわれちゃう・・)

「はぁ」

「その人にはさ、学生時代は声をかけることができなかったんだけど、
 なんでか、同じ会社に就職してきてね。私うれしかったんだあ」

(駄目。もう抑えられないよ)

「でもね。その人、学生時代の元気をなくしちゃっててね。
 なんとか力になろうと思ったんだけど、どうしようも
 なくてね。
 その人がテニスへの思いを絶つため苦悩しているのが感じられて
 どうすることもできない自分が何だか歯痒かった」

(そう、本当に何も力になれない自分が歯痒かったの・・)

そういうと、早苗は高野の顔を直視した。

「早苗さんそれって俺のこと・・」

「好きよ。高野くん」

そういうと、早苗は高野に抱きつき、キスをした。

コートでテニスを楽しんでいた連中もその事に気付き、
皆一様に驚きの声を上げている。

「えーーー!」

「キスしてるよおい!」

「なんでー!石井さんと高野くんつきあってんのー?!」

そんな声も、いまの2人には届かない。

数秒間、唇を重ねたあと、早苗は涙を流しながらこういった。

「ごめんなさい。ずっと好きだったの」

「いえ、こちらこそ、ごちそうさま。あっいや、驚きました。あはは」

「付き合って」

「はい。喜んで」

(え?いまなんていったの?OKされたの?)

驚いた早苗が、きょっとんとしていると、高野は続けた。

「早苗さん。こちらからお願いします。付き合ってください」

「いいの?本当なの?」

「はい」

「でも、何で?」

「入社した頃から好きでした。でも、俺なんかじゃつり合わない
 と思って、あきらめてたんです」

2人が見つめ合っていると、吉井が近づいてきた。

「おー、おー、やるじゃないか高野。今日はテニス再開と
 恋の成就のお祝いだな!」

テニス後に飲んだお酒は、早苗と高野にとって、人生で最高の
味となった。

誰もが、胸に秘めた思い抱いているものだ。
気付かないだけで、あなたに思いを寄せる人が、すぐそばに
いるのかもしれない。

コメント(2)

読ませて頂きました。
別々の視点からの書き方ってタイミングが難しいんですよね。
僕もHPで主人公を2人して、尚かつ両方とも1人称で書いていますが、かなりめんどくさいです。

全体的な構成としては恵子の章がちょっと密度が薄かったような気がします。あと、早苗の章は分けて試合の前と後ろに入れた方が臨場感があって良かったんじゃないでしょうか。
なぜかというと、早苗が登場した時点で彼女が忠志の事が好きなんだろうなという予測がついてしまったからです。
流れとして試合の後に早苗視点で会社の場面に戻ってしまうと、ちょっと勢いが削がれる感じがしました。

内容についてなんですが、最後に忠志が早苗に「入社した頃から好きでした」と言ってしまうと、最初の忠志の章で「姉のような存在だ」と説明している部分が矛盾してしまうと思います。
どこかに忠志が早苗を好きだった、もしくは想いを抱いていたというような表現を入れたらいいんじゃないかと思います。
>ショウセイさん

ご意見ありがとうございます。今後の参考に
いたします。m(__)m

>流れとして試合の後に早苗視点で会社の場面に戻ってしまうと、
>ちょっと勢いが削がれる感じがしました。

なるほど。一気にラストに!という感じがなくなってしまいますね。
私としては、サスペンスドラマとかにある最後の刑事の謎解きシーンみたいなのをやってみたくて、最初からの流れを書いてしまいました。話の流れを持続させるのって難しいですね。
勉強しないとなあ。

>内容についてなんですが、最後に忠志が早苗に「入社した頃から
>好きでした」と言ってしまうと、最初の忠志の章で「姉のような
>存在だ」と説明している部分が矛盾してしまうと思います。

いえてますね。最初のほうにもうちょっと説明いれといたほうが
よかったかなあ。最初は、人物の関係とかちょこちょこ書いて
いたんですが、説明っぽくなってしまったので、ずばっと
切ってしまいました。
ここらへんのさじ加減は難しいですね。

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