教養ゼミナール☆上原ゼミ☆コミュの6月28日は経済というより国際政治だったな

なぜか経済学研究科という理由で発言を求められましたが・・・、議題はマーシャルプラン。端的に言って、経済じゃないだろって感じ。マーシャルプランはトルーマンドクトリンと並んでWW?後のアメリカの対ソ戦略で、政治的文脈が色濃い。つまり私なんかより法学部の政治コースの皆さんのほうが全然詳しいと思うのだが・・・。

で、教科書の方をパラパラとめくってみましたが、はっきり言ってよく分からない。なんかやたらと「ドルが基軸通貨」という用語が頻発しているが・・・。
P187にこんな記述見つけました。引用→「戦後、アメリカは自国通貨ドルを基軸通貨にすることにより世界経済を牛耳っている。例えば日本経済は、バブル崩壊後、日銀が金融緩和政策をとって資金を国内にせっせと提供しましたが、その多くはアメリカの国債や株の購入に向かってしまい、日本国内で資金が投資されないという状態が続いてきました。アメリカが世界の資金を吸い上げる構造ができてしまったために、日本の不況対策は成果をあげられなかったのです。そこにはアメリカ帝国によって資金を吸い上げられてしまう周辺国家の悲壮があったのです」だとさ・・・。つまり筆者は、「基軸通貨をアメリカに牛耳られている以上、それ以外のどの国の金融政策も無効である」「日本の不況はアメリカが起こした」と言っているわけだ。まぁ金融政策論やIS-LMなどを少しでもかじった身分で言わせてもらえば、正直アホらしくてコメントの仕様もないが・・・。少なくとも公務員試験の論述問題でこんなこと書いたら問答無用に不正解だろうな(笑)。
しかも筆者の主張が幾分滑稽なのは筆者が「基軸通貨のドルを握っているアメリカは双子の赤字に苦しむことはない」と主張しておきながら、その条件となるであろう「アメリカが双子の赤字に苦しむことがないのは、アメリカがドルをいくらでも増刷できるから」という事項に全く触れず、その要因をもっぱらアメリカの債権や社債の強さに求めているところだな。で、仮に例えばアメリカが赤字をドルの増発で賄うとして何が起きるか?まず高インフレが起きる、そしてドルが暴落する。ドルが暴落すれば当然、ドル価値の下落を嫌ってドルが世界からアメリカに返される。つまりアメリカの国債とか社債とかが嫌われるわけだ。要するに筆者が想定していることの真逆の事態が起こってしまう。つまり教科書の言葉を使えば、アメリカが赤字に苦しまないければ苦しまないほど、アメリカの国債や株は嫌われるわけだね。まぁ某経済学部の先生曰く、アメリカの政策当局が狂人でもないかぎり、赤字を賄うためのドル増発なんてしないらしいがね。
なんかこの筆者は、アメリカがやることは全て日本と世界を不幸にしていると決め付けたがっているようだね。
しかし私の印象ではこの類の経済ネタはアメリカの圧倒的政治力や外交パワーの側面を、経済までに過度に飛躍させている、一種の恣意的な反米イデオロギーのように思える。ただ経済というのは相互依存性を持つシステムの中で、アメリカだけが無理やり何かをやろうとすれば、そのツケを食うのもアメリカでしょうな。アメリカにもフリーランチはないんだよ。
あと資金の流出がどうのとか言ってるけど、基本的に一国の資金の流入や流出というのは、その国の貯蓄と投資の差額(I-Sバランス論orアブソープションアプローチ)であるから、別に日本が内需不足の不況だったバブル崩壊後にアメリカに資金が流れたのは、アメリカ経済に仕向けられたというよりも、日本それ自体に内需以上の貯蓄があったからで、これはマクロ経済学からすれば当たり前の結果だと思うが・・・。