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親方とピココミュの【第4話】残されたモノ

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街外れの教会
白い石が整然と並んでいる
そこに佇む大小の影


『どうした、ピコ。さっきから黙ったままで?』
『親方』
『あ?』
『この石って全部お墓なんだよね。
 この石の数だけ亡くなった人がいるってこと?』
『いや、その墓1つにつき1人ってわけじゃないから、
 実際はもっと多いさ。
 まぁ、お偉方はこんなとこには墓は作らないしスラムの連中は
 向こうの共同墓地に埋められるから、まぁそれを考えても
 って、おい、どうしたピコ』
『あれ、ごめん、ボク泣いてるね……
 なんだかそんなにたくさんの人が亡くなったんだって
 思うと悲しくなっちゃって。
 半年前にノーマのお婆ちゃんが亡くなったのね。
 あの時もすごく悲しくていっぱいいっぱい泣いたんだ。
 あれと同じことがこれだけの数もあったんだよね……
 なんだかもう信じられないよ。なんでなんだろうね。
 なんで……』
『……ピコ』
『うん』
『この墓、誰の墓か知ってるか?』
『……親方の……奥さん?』
『そうだ。俺の家内だ。死んでからもう12年になるかな。 
 元々身体が弱いやつでな。時々熱だしては寝込んでた。
 で、結婚してすぐの頃も熱出して寝込みやがったんだ。
 ちょうど商売が忙しい時期だったんだが放っておけなくてな。
 仕事を早々に片付けて家に帰ったんだよ。そしたらあいつ
 なんて言ったと思う?』
『なんて言ったの?』
『『心配してくれるのはありがたいけど、この程度の熱にわたしゃ
 負けないよ
 それよりあんたは、商売の心配をしな。わたしは、わたしは
 でこの腐れ病気と闘うからさっ!!』
 これだぜ?
 身体は弱かった分、心は強かったのかもな。
 看病に帰ったはずなのに、俺の方が逆に励まされることの
 方が多かったよ。
 まぁ、そんなあいつも流行り病でコロっと逝っちゃったんだけどな。
 あんだけ、強くてよ。絶対に負けない。病気なんかやっつけて
 やるって言ってたあいつがな
 あの時は正直神様も何も信じられなくって…………』
『……親方?』
『すまん、やっぱり自分でも納得できないことを人に教えよう としても無理だな。本当なんで人は死んじまうんだか」』
『……親方、でも涙止まったよ』
『ん?』
『人が死んじゃうのはまだ悲しいけど、親方の奥さんの話聞いてたら
 涙とまっちゃった。
 なんでだろう。まだ悲しいんだけど、頑張らないとってなんだか
 思えちゃって』
『そうか』
『うん』
『……』
『……親方』
『あ?』
『ありがと』
『……』
『……』
『……』
『痛っ、なんで叩くんだよ』
『いいから帰るぞ。墓参りは終り終り。仕事は待っちゃくれない』
『もうっ、置いてかないでよ』


遠ざかる大小の影
墓石に残された白い花
暖かな風が、ふたりをそっと包んだ。

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