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親方とピココミュの【第7話】積み木遊び

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<バルス街 細路地にて>

『こんちには、フェリックスさん』
『やぁ、ピコ。また遊びに来たのかい』
『うん、配達思ったより早く終わっちゃって、今日は何してるの?』
『見ての通りさ。』
『えっと、これって……積み木?』
『その通り。積み木じゃ』
『フェリックスさんが作ったの』
『うむ、大工のトマがあまった角材をもらってね』
『ふぅん……わぁ、すごい、それで立つんだ、って、うわっ、まだ重ねるの』
『まだまだ、こんなもんではないぞ。ほれ、ほれ』
『わわわわっ、すごい、すごい』
『どうじゃ、立派な「塔」じゃろ』
『うん、すごいね。積み木なのにミティア街の教会より立派にみえるよ』
『うんうん、金に汚れた教会よりも、泥に汚れた積み木の塔の方が立派なのじゃ。
 さて、ピコ。ここで質問じゃ。
 ワシがこの「塔」を放っておいて自分のねぐらに帰ったとしよう
 夜は冷えるのでワシもいつまでもここにはおれん。
 そしてそんな時にどこかの酔っ払いがこの「塔」を見つけたとする。
 さて、どうなるかね?』
『え、え、えっと……壊しちゃう?』
『その通り。酔っ払いにはげーじゅつなんてものは理解できんからの。
 朝になってワシが戻ってくる頃には…ほれ、こうなっとるじゃろ』
『ああっ!!崩しちゃった』
『なぁにピコ、心配はいらん。積み木の「塔」は教会と違って立て直すのに金はかからん。
 こうすれば、ほれ、ほれ、ほれ。』
『わわっ、わわっ』
『ほれ、ほれ、ほれ、っとまぁこんな感じだ』
『すごいね。』
『うむ。しかし、世の中とはままならんもんじゃ。「塔」を狙うのは酔っ払いだけではない。
 例えば自然の力、そうじゃな、突風なんかが吹いてみろ、『塔」はまた……こうなる』
『ああっ、また崩れちゃった』
『積み木の「塔」は何度でも蘇ることができる、しかし……』
『何度でも壊される?』
『その通り』
『……フェリックスさん』
『なんじゃね、ピコ』
『それ、悲しくない?』
『なぜ君は悲しいと思うのかね』
『だって、せっかく頑張って積み上げて、こんなに立派な塔にしたのに、
 ほんの簡単なことでこれは壊されちゃうんだよ
 どんなに頑張っても頑張ってもすぐにまた全部なくなっちゃうんだよ?』
『ふむ、ピコ。たしかに積み木の「塔」は簡単に壊される。
 立てても立てても壊される。それは一見無駄で無意味で悲しい
 ことかもしれない。だけどね、ピコ。
 「塔」が壊されても、残るものはあるんだよ』
『え?』
『見ててごらん、ほれ、ほれ。』
『わわっ』
『ほれ、ほれ。さて完成じゃピコ。どうじゃ、気づいたかの』
『えっと、全部同じだよね、最初に作ったのと……えっと』
『「塔」は同じじゃな。だがピコ、最初にワシが「塔」を建てた時と、今、違うところがあったじゃろ?』
『えっと……塔を建てる……速さ?』
『その通り。速さじゃ。壊されても壊されてもワシは「塔」を立てた。
 それは一見、何も残らない無意味なことにみえる。しかし
 ワシの中にはその度に、この塔を建てるという技術が身について
 おるのじゃ。あきらめずに繰り返す、そうすることによって
 手に入る「知恵」じゃ。そしてこの知恵があれば、
 ワシが家を持った時には、誰にも崩されない場所に立派な「塔」を
 すぐに組み立てることができる。
 いいかい、ピコ、覚えておくがいいぞ。』
『うん』
『努力とは、こういうことを言うのじゃ。世の中に、無駄なことなど
 何一つないのじゃよ』


路地の隅にひっそりと立つ偉大な「塔」
塔を囲んではしゃぐ、老人と子供
二人の努力は、もうしばらく続く



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