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お話の国コミュの『巨人vs黄金兄弟(15)』

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往来に視線を繰ると2人の男が激しく言い合いをしている、それはもう罵倒を通り越し、ただひたすら奮起のままに怒声を浴びせているとしか言い様が無い

どちらも鍵を集め着いた旅人だというのは一目で分かった
だがその実力の程と言えば視線や細やかな動作、身体つき、何よりも怒声を張り上げる“嘆”の時点でそれほど高くない事が伺える
尤も、ここに辿り着いたというだけで幾百の者達の上に君臨する実力を備えているのは当然なのだが、斉藤の目からすれば有象無象の小競り合いに見えた、それだけの実力差が目に見えず存在していた


阿鼻を挙げて自らを誇り高ぶらせるのもそう長くは続くはずも無く、既に目の前では取っ組み合いが始まり、瞬間的に一方がもう一方を押し倒して地べたを引きずり回って絡まっていた

またも怒声を挙げながら殴り合い、マウントポジションの取り合いをする雑魚2人、これはこれで見ごたえがあるとばかりに旅人だけでなく店の主人や通りすがりの商人やガキ共までがぐるりとその小競り合いを見物し始めた
ヒートアップする両者、観客がいると燃えるタイプなのか大技を繰り出すわ翻しては攻撃と防御が一転する好試合、見てるこっちが馬鹿らしくなってくると感じたのは斉藤だけではなかったのだろう、だが見世物としては最高だった故にその場が一層沸いたのは言うまでもない


拮抗する実力、瞬間締め技から脱出すると同時に間合いが離れる、立つ両者、再びスタンディングに持ち込まれる、ここで決めるつもりだろうか、マジマジと本気でファイティングポーズを構える姿に観客も「おぉぉおー」と合いの手を入れる

斉藤は顔を背けた、馬鹿らし過ぎる
それでも、歓声を横面で聞きながら笑みがこぼれたのはそれまでの旅の疲れからだったせいだろうか、どこか不思議と安堵を感じた

けたたましくも緩やかなBGM、侘しい飯屋の中に視線を泳がせてこれまでの道程を思い返す
生まれ育ったあの村、良い思い出が多いわけでもなかったのに、どうしてかいつもあの村での光景が浮かんでしまう


外での歓声が悲鳴に変わった
天を突く奇声、それは一人ではなく複数のもの


その緊張感が只ならぬものだとは斉藤でなくとも感じただろう、明らかに空気が一転したその場に目をやると輪を作る群衆の真ん中に一人の男が立っていた
その足元には先ほどの男2人、ただ一つ違うのは、首が無い

血まみれの両腕から滴り落ちる血の雫が、弾けて、均一な響きを轟かせる
さっきまでの騒ぎが嘘のようにその音がキンと耳に届く、そしてその男は一片の迷いも無く、並み居る群集をすり抜けるように全くはっきり直線的な視線でもって斉藤を観た

それと同時に、向側の店の奥の席、暗くてよく確認することも出来ない様な店の片隅に意識が搾り取られた、そこに座す2人の大男の姿に視線を惹きつけられた

奴らもこっちを観ている、薄ら笑いを浮かべながら、確かに観ていた

意識が交差する、焦燥と嘲笑、歓喜と喚起、交じり合う2つの感覚に奥底から呼び出されるあの感情、鮮血を浴びる男の姿に体内から再びそれを感じる斉藤

血を浴びたその男の名はタナカ、そして2人の男達こそが黄金兄弟と呼ばれる戦士達だった

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