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時尚産業コミュの中小企業が目指すべきブランド戦略とは

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●ブランド商品が支持される思考回路
 日本の製造業、特に中小企業は安価な中国製品の輸入や中国への生産基地移転により空洞化が進展している。しかし、その一方で高額品も売れていることを見逃してはなるまい。「高額でも売れる商品=ブランド商品」という定義が成り立つのであれば、高コストの日本製造業こそブランド商品開発に取り組むべきではないだろうか。
 ここでブランド商品について整理してみたい。
 ブランドとは単なる商標ではない。商標は商標登録さえ行えば取得できるが、多くの商標にブランド価値はない。ブランド価値とは「老舗ののれん」のようなものだ。あの老舗が販売している商品だから間違いはない。このブランドがついているのだから間違いはないという信用である。
 更に、一流ブランドと言われているブランドは、その商品を所有するだけで特定のステイタスを感じることができる。一流ブランドとは消費者の所属欲求を満たす存在であり、名門ゴルフの会員権を所有することや、特定の会員制組織に所属することに等しい。
 ブランドの価値は、商品に付加しているというより、顧客の頭の中にある。顧客の頭の中に特定のブランドを刷り込み、その「ブランドがついている商品=信頼できる商品」という思考回路を作り出さなければならない。
 更に、「憧れの対象となる社会的地位の高い人やお金持ちは、皆、特定のブランド商品を愛用している」ことを刷り込み、「その商品を所有することが、特定の階層に所属することを意味する」という思考回路を作り出すのである。
 ブランド戦略とは、社会心理学の要素が強い。ブランド価値を浸透させるには、通常、膨大な時間がかかる。しかし、戦略的にブランド価値を創造しようとすれば、大幅に時間を短縮することができるだろう。

●4段階の差別化
商品の差別化は4段階に整理できる。
 第1段階は、「性能・機能の差別化」である。多くの工業製品の場合、この要素が最も重要だろう。しかし、技術的に成熟している商品分野では、性能や機能の差別化は困難である。
 第2段階は、「デザインの差別化」である。「性能・機能の差別化」が「ハードウェアの差別化」とすれば、「デザインの差別化」は「ソフトウェアの差別化」である。
 例えば、携帯電話が誕生したころは、性能や機能の差別化で十分だった。しかし、新規機能も出尽くし、商品として成熟してくると、今度はデザインが重要なファクターとなる。
 第3段階は、「トレンドによる差別化」である。アパレル製品は、性能・機能だけでなく、基本的なデザインも出尽くしている。デザインは常に変化を要求され、常に変化を続けるために「流行」という要素が入ってくる。年に2回のコレクションを発表し、常に新しいテーマを設定して、新しいデザインを発表する。
 その際、それぞれのメーカーやデザイナーが勝手に新しさを打ち出すよりも、ある一定の統一テーマ訴求した方が市場をコントロールしやすい。そこで、主要な見本市等ではトレンド情報を打ち出し、市場の情報操作を試みている。アパレル分野では、糸の段階、生地の段階、製品の段階でそれぞれ見本市が開催され、それぞれの段階でトレンドが発表される。糸のトレンドは、生地の企画に影響をあたえ、生地のトレンドは製品の企画に影響を与える。そして、製品のトレンドは市場に影響を与えるという構造である。
 アパレル製品だけでなく、パソコンも半年に一回、新製品を発表することが一般化している。その意味では、パソコンはファッション商品の要素を強く持っているといえよう。
 第4段階の差別化が「ブランドによる差別化」である。厳密にいうと「ブランドの差別化」と「商品の差別化」は異なる。むしろ「顧客の差別化」といった方が正確だろう。
 特定のブランドを所有することにより、顧客自身が特定のステイタスを感じること。あるいは、特定のコミュニティに所属していることを感じることに意味がある。

●「工業デザインのアプローチ」と「ブランドのアプローチ」
 一般的に「工業デザイン」は大量生産を基本にしている。良い工業デザインとは、大量に売れるデザインである。(コカコーラの瓶のは有名な事例)
 ファッションの分野でいうと、ニューヨークのデザイナーは、一般的にファッションデザインを工業デザインの一部と考えている。したがって、大量に売れるデザインが良いデザインということになる。
 ヨーロッパのデザイナーにとって、良いデザインとは社会的な階層の頂点に位置する人たちに評価されることを意味する。彼らにとって、ファッションとは工業ではなく手工業であり、量産よりもオーダーメイドが基本なのだ。
 日本の製造業も、かつてはヨーロッパ型だったが、70年代以降急激にアメリカ型に移行した。手工業から大量生産へと脱皮し、中小企業が大企業へと成長した。職人仕事から脱し、薄利多売に転換することが成功モデルだったのである。
 日本が経済成長に成功し、中小企業が大企業へと成長していった70年代、イタリアは大企業を生み出すことができず、経済成長もなし得なかった。大量生産大量販売モデルを生み出せなかったイタリアは、手作業を残した生産工程を維持し、高級品を輸出するしか生き残りの方法が残されていなかったのだ。
 90年代になって世界的な供給過剰が目立ってくる中で、メイド・イン・イタリー製品は希少価値を訴求し、世界の高級品市場を制覇していった。
 「日本の成功モデル」と「イタリアの成功モデル」は対照的である。優秀な大量生産商品を世界中の人々に大量販売するモデルと、限定された人たちに決定された商品を販売するモデルとは根本的に発想が異なっている。
 工業デザインのアプローチは、あくまで「まず大量生産ありき」「まず商品ありき」である。大量生産が可能な優秀なデザインにより、ブランド価値を高めようという「ボトムアップのアプローチ」である。ソニーやトヨタが典型的な事例だろう。
 ブランドのアプローチとは、世界中の人に売ることではない。まず、限定された頂点の人に売り込み、それにより最終的にブランド価値を高める。そのブランド価値を基本に、ディフュージョンブランド(普及版のブランド)を展開し、普及品を大量販売する。あくまで「まずブランドイメージありき」であり、「トップダウンのアプローチ」である。

●中小企業にブランド戦略を勧める理由
 圧倒的な性能・機能の差別化が可能な商品分野では、ブランド戦略は必要ない。商品そのものの魅力で勝負できるからだ。この種の商品を開発できるのは、多くの場合、大企業だろう。
 性能・機能で差別化できない時には、まずデザインによる差別化を試みるべきだ。しかし、いわゆる工業デザイン的なアプローチなら、やはり大企業が有利手ある。優秀な工業デザイナーはデザイン料も高額であり、中小企業にとって非常に大きな負担となる。
 大衆向けに販売するのではなく、特定の顧客を対象に考えることは、中小企業にとって有効である。趣味性の高い商品は顧客の幅も狭いが、固定客となる可能性も高い。大量生産を基本にする大企業では扱いにくい分野である。
 イタリアのメーカーは、日本やアジアのメーカーと差別化するために、高級品に特化した。高級品とは性能・機能が全てではない。むしろ、性能・機能以外の魅力、感性や美意識に訴求することが重要である。性能・機能で差別化ができなくても、手作業や希少価値により高級品のイメージを訴求することも十分に可能である。
 現代社会には、性能・機能の優れた安価な商品があふれている。逆の言い方をすれば、安定した品質は大量生産の象徴である。イタリアの成功は、最新鋭の設備、技術がなくても、一流ブランドを創造できることを証明した。その意味では、日本の中小企業でも十分に実現可能だと考えられる。
 ブランド戦略とは、その大部分がイメージの世界であり、効率追求の世界ではない。目に見えないイメージに投資し、目に見えないイメージで利益を上げる。生産効率を考えたら、こんなに割りの合わないこともないだろう。過去の成功体験を持つ人ほど、設備投資には抵抗がなくても、目に見えないことに投資することに大きな抵抗を感じるに違いない。
 しかし、冷静に考えて欲しい。中小企業の競合相手は莫大な資本力を持つ大企業である。大量生産大量販売が可能な分野で正面から戦いを挑んでも勝てる可能性は低い。しかし、店頭での1対1の勝負ではどうだろう。大企業が生産した商品でも、中小企業が生産した商品でも顧客には関係ない。大企業の商品がぎっしり並べられた店頭と、中小企業の限定商品が贅沢に演出された店頭では、明らかに顧客は後者に高級なイメージを持つに違いない。

●ブランドを育てるための情報戦略
 ブランド戦略の中枢をなすのは、情報戦略である。情報戦略というと宣伝広告を思い浮かべる人が多いだろう。マスメディアを対象に圧倒的な物量作戦で宣伝広告を打たれたら勝負は見えている。しかし、こうした宣伝広告の手法は「大衆」を対象にしたものである。
 前述したように、ブランドのアプローチは限定された人々を対象にトップダウンで進められる。その場合、マスメディアを利用するよりも、限定された人々に限定されたメッセージを届けることの方かはるかに有効である。限定されたメディア、特定のコミュニティを対象にした口コミ、イベント等が有効なのだ。
 限定された顧客に対して、限定された商品を供給する。したがって、効率追求の大量生産よりも非効率な機械や手作業による生産が重要になる。コンピュータを活用した小ロット生産、一点生産も同様の意味で重要である。
 メディアもマスメディアよりも、インターネットのような1対1のメディアの方が効果的である。
 問題はどんな顧客に限定するかである。ファッション以外の分野では、顧客を限定するという発想はあまりないだろう。顧客を限定したら販売チャンスが減少すると考えるからだ。しかし、前述したようにブランド商品の魅力は顧客の所属願望を満足させることにある。選りすぐりのコミュニティに所属するから嬉しいのであり、誰でも入れるコミュニティに所属しても喜びは得られないのである。
 ブランド戦略に有効な情報戦略とは、いかにターゲット以外の顧客を排除するかである。そして、ターゲットだけには十分以上に満足してもらわなければならない。

●イメージはトータルに演出するもの
 ブランド戦略においては、商品そのものよりもブランドを演出するものが大切である。ブランドのネーミング、ブランドのロゴタイプ、ブランドのシンボル。パッケージデザイン。ショップのサイン、ショップデザイン、そしてショップに立つ販売員・・・。
 商品には寿命があり、次から次へと新しい商品を出すことができる。しかし、直接的にブランドを表すものは半永久的に使用される。商品デザインよりも、ブランドのロゴタイフの方が重要であり、そちらにより多くの投資を行うべきなのだ。
 また、これはアパレルの分野にも言えることだが、顧客が「センスの良い店」と感じるのは、主力となる洋服ではなく、ベルトや帽子などの雑貨である場合も多い。レストランでも、料理よりもインテリアや食器そのものにセンスの良さを感じることは多いだろう。百貨店のイメージがトイレで決まることもある。これらの事例は、細かいディティールに気持ちが行き渡っていることが、その店全体のイメージを向上させるのであり、それがブランド価値を高めることを示している。
 ブランドイメージを表現するには、特定の空間が重要である。多くの場合、それはショップとなる。空間を構成する素材、色彩、形がある価値観やセンスを訴求する。勿論、そこに並べられた商品も重要だが、ブランド戦略では商品もまたその一要素でしかないのである。その意味では、経営者もその例外ではない。経営者の外見、メッセージもまたブランドを演出する要素である。
 様々な要素をトータルに演出するには、できれば一人の人間の目でコントロールすることが望ましい。ファッションの世界ではデザイナーであり、他の分野ではクリエイティブディレクター、プロデューサーである。イタリアでは社長がその役割を果たすことも多い。こうした機能を考えても、大企業より中小企業の方が有利であると言えるだろう。
 ブランド戦略とは、商品ではなく顧客心理をコントロールするものである。したがって、通常の製造業とは異なり、人件費が安い国が有利とは限らない。むしろ、憧れの対象となるリッチ層が存在し、美意識や価値観が成熟していること。また、豊富な情報も重要である。その意味でも、日本はブランドビジネスに適していると言えよう。◆

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