香港映画脇役悪役列伝コミュの【男優列伝】マイケル･ウォン(王敏德)

1965年4月16日､アメリカ合衆国ニューヨーク州トロイ出身。中国系の父親とフランス･オランダ混血の母親との間に産まれる。83年に俳優を目指し実兄ラッセル(羅素/王盛德)とともに香港へ渡る。彼らは新興勢力だったシネマ･シティ(新藝城)の撮影現場に参加､マイケルはスタントマンとして活動し『悪漢探偵２』(83年､ソフトのみ)では､主演サミュエル･ホイ(許冠傑)のスタントダブルを担当した。
180cmを超える大柄で壮健な体躯と甘いルックスで俳優としても期待され『香港スワット野獣たちの陰謀』(85年､ソフトのみ)で､香港警察の新人特務部隊員を演じる。この映画デビュー作での役どころが､後述する代表作｢飛虎｣シリーズの原点ともなった。
翌年やはり新興勢力だったD&B(德寶)制作の大作『皇家戦士』(86年)にて､主演のミシェル･ヨー(楊紫瓊)を慕う若き航空警察官を好演。その後も『ファイアー･ドラゴン』(86年)でブルース･リー(李小龍)の遺児ブランドン(李國豪)を相手に狂気あふれる悪役演技を見せ､更に『トップレディ』(87年)では､ミス香港を目指すふたりの美女を手玉に取る日本人男性に扮し､88年には念願の初主演作『シティ･オブ･フューリー』を撮るなど､D&Bの若手スターとして順調に出演作を重ねていく。
しかし90年代初頭､D&Bが映画から撤退すると一転してスランプに陥る。広東語の不得手さと香港独自の格闘アクションを体得していないことを指摘､あるいはマスコミから揶揄され､ジャッキー･チェン(成龍)映画のわき役､果てはⅢ級片(成人映画)の主演で糊口をしのぐ日々が続いた。
その後久々の一般映画主演となった『ファイナル･オプション ―香港最終指令―』(94年)で香港警察の特殊精鋭部隊"飛虎隊"の隊長をダイナミックなアクションと渋みを利かせた演技で熱演し､再浮上のチャンスをつかんだ。その後も続編で香港電影金像奨の主演男優賞にノミネートされた『ファースト･オプション飛虎』(96年)を皮切りにシリーズ化され､ダニー･リー(李修賢)､ジャッキーらに続く｢警察官の似合う俳優｣として称賛を浴びる。広東語が不得手ではあるが英語が流暢なのを買われて国際的な大作への起用も増え､『エンター･ザ･イーグル』(98年､ビデオ)では本格的映画出演となるシャノン･リー(李香凝)に胸を貸し､ブルース･リーの遺児双方との共演を果たしたほか､『ノックオフ』(98年)ではジャン･クロード･ヴァン･ダムと顔を合わせた。
一方でイギリスロケの『世界の涯てに』(96年)では､ケリー･チャン(陳慧琳)が想いを寄せる船員の男性役で静的な芝居を披露し､演技者として高い評価を受けたほか､『ビースト･コップス野獣刑警』(98年､DVDのみ)では｢飛虎｣シリーズとは違った警官像を演じている。
99年にはTVBでドラマ出演を果たし､翌年には自ら主宰する映画制作会社を立上げた。
21世紀に入っても映画やTVドラマのオファーは途切れることなく､かつては苦手と言われたカンフーや格闘アクションも進んでチャレンジするようになった。代名詞となった警官役も代表作｢飛虎｣シリーズだけでなく様々な作品で幅広いキャラクターを演じ続けている。久々のハリウッド作品となった『トランスフォーマー/ロストエイジ』(2014年)でも香港警察署長役で出演。今や中華圏の映画界になくてはならないヴェテラン･スター俳優としての地位を確立した。
俳優以外でも音楽活動や10年かけて商用パイロットのライセンスを取得するなど多趣味でも知られ､私生活ではスーパーモデルのジャネット･マー(馬詩慧)と92年に結婚。苦境の時期を支えたおしどり夫婦としても知られ､3人の子供に恵まれている。

＜主な出演作品＞
香港スワット野獣たちの陰謀(85)、皇家戦士、ファイアー･ドラゴン(86)、トップレディ(87)、シティ･オブ･フューリー(88)、クライム･キーパー～香港捜査官～(89)、堕ちていく女(91)、シティーハンター、ボディトラップ(93)、フル･ブラッド、ファイナル･オプション ―香港最終指令―、男たちの挽歌４、恋はあせらず(94)、愛よりはやく撃て、デッドヒート(95)、ファースト･オプション飛虎、世界の涯てに(96)、裏切りのメロディ、Ｇ４特工(97)、ノックオフ、ビースト･コップス野獣刑警、エンター･ザ･イーグル(98)、新･八仙飯店之人肉饅頭(2001)、ドラゴン･プロジェクト、セブンソード(2005)、盗聴犯死のインサイダー取引(2009)、トリプルタップ(2010)、コールド･ウォー香港警察二つの正義(2012)、セブン･アサシンズ清朝の暗殺者(2013)、風暴ファイヤー･ストーム、ゴッド･ギャンブラーレジェンド、トランスフォーマー/ロストエイジ、Ｚの嵐、ゾンビ･ファイト･クラブ(2014)、スキップトレース(2016)、イップ･マン宗師(2019)