ジョナサン・ウェルズ(Jonathan Wells)の『進化の図像−科学か神話か?』(Icons of Evolution: Science or Myth?)は、告発の書といってもよいものであるが、翻訳がないので、今この本の内容のおよその説明をしてみようと思う。 ウェルズ(のみならずデザイン派の科学者たち)が告発するのは、間違いであることがすでに証明されている事柄を「ダーウィン説を証拠立てるもの」として、執拗に教科書に載せ続けることの不当さである。彼は、学問は自由であって、どんな奇説を唱えることも旧説を墨守することも自由だという。けれどもそれを教科書に取り入れるということになれば、話は別だというのである。(これは「ジェンダー・フリー」思想についても同じことが言える。自然に存在する男女性差を差別として糾弾するのは自由である。しかしこれを低学年の教育に取り入れるとなれば話は別なのである。そしてこの両者は明らかにつながっていて、近年の陰険な文化闘争――魂の奪い合いとも言うべきもの――の一面を露呈している。このことについては稿を改めたい。) アメリカの高校・大学の生物学の教科書に登場する、事実を歪めた記述として、ウェルズが巻末に箇条書きにして「警告」している項目をあげてみよう(わが国の教科書もほぼ同じではないだろうか)。