川柳月組コミュの五月マラソン　短歌編　　　　抹茶

001：蛇　　　輪郭を一日一日と失って排水溝へ戻りゆく蛇
002：次　　　次々に景色を変えていくのだね雲の分布は私を残し　　
003：燕　　　人生を変えるセミナーびっしりと口開いている燕の子たち
004：階段　　階段の踊り場あたり少女らは黄色い羽根をこすり合わせて
005：青葉　　昨日より今日の青葉の抱く光大事なモノはみんな違うと

006：干す　　パンパンと叩いて四隅ひっぱってガアゼマスクを大切に干す
007：時々　　時々は古い手紙の中にある理念のような青いしたたり
008：卓球　　写真にはパパママおとうと卓球台　卓球台だけ動かずにいる
009：さっと　あの人は悪い人ですさっと来て忘れられない夏を置いてく
010：祝　　　お祝いの拍手繰り出す漣よみんな上手にグルになってる

011：ヨット　夕暮れはヨットするりと飲み込んでまっすぐだったね信じていたね
012：浮き　　3センチ浮けば上手に剥がせます私の今日と明日のわたし
013：ソーダ　蜜蜂の羽音まひるを倦みながらソーダの泡は上昇志向
014：黙　　　飲み込んだ言葉の胞子致死量かこんこん眠る王国はある
015：飯　　　叱られた後のおにぎり俵型ラップかかったまんまの気持ち

016：蠅　　　一族を連れて報復するつもり蠅が手をする蠅が足する
017：ナイター　ナイターのビールの友は柿ピーで未決事項のまだたんとあり
018：太宰　　青森は太宰　寺山　我が父の生まれ在所で忘れ物ばかり
019：牡丹　　ぼうたんはとろりと咲いて美しい多少の詐称大目に見てよ
020：桜桃　　空近く梯子をかけてさくらんぼ甘酸っぱさは少女の特権

021：冷蔵庫　少しずつ傷んでいくの何もかも冷蔵庫だって例外じゃない
022：弱　　　不器用は弱さでしょうか抽出の小指かすかにうずく夜がある
023：寂　　　奮い立つときグーの拳だったやがて開いて掌さびし
024：老　　　緑陰に順番を待つハンモック老いのまどろみ揺れながら来る
025：肺　　　はつなつの窓を開ければ蒼き風　肺すみずみを新しくする

026：道具　　手になじむ道具はもはや相棒よひそかに育つくやしさも知る
027：レース　さまざまな思いからまりあってこそ最終レースこんなに重い
028：ズーム　反応が見えず届かずひたすらにズーム講義の大きな暗渠
029：呼　　　呼びに来てくれたタンポポ遠くから月に行きたいきもちは同じ
030：低　　　いつからか低空飛行わたしたちこれでいいのだここがいいのだ

031：ポップスベスト50ポップスって言うけどそれは私の外の50だ
032：因　　　稲妻のような痛みが走ったらそれに因んでマヒ終わります
033：餃子　　酢胡椒がいいとあなたが言ったから餃子のルール今日から変わる
034：檻　　　ひとりずつ家族が減って檻の中幸せ古くなりました
035：縫　　　返し縫い念には念を入れており昼間に夢が溢れないよう

036：戒　　　唇に人差し指を立てました今しばらくを透けてゆく人
037：釣　　　あいまいな岸辺に座りおじさんは釣られることを待ちわびている
038：床　　　三色がくるくる回るラビリンス村の床屋の進まぬ時計
039：暑　　　処暑の風すっとひとすじ来たりなば愛の向こうに人影動く
040：傘　　　ゼラチンの傘ふんわりとのんびりと海と交わる海月はわたし

041：沸　　　湯を沸かす朝一番の鉄瓶は無骨無口でむかえてくれる
042：マスク　マスクして行き交う人らだんだんと表情が消え人格が消え
043：端居　　端居して会えない日々は星を見るどろりと澱の溜まらぬように
044：鰹　　　初鰹蚕豆山椒季節膳　四季あることのNIPPONうるはし
045：パリ　　まだ若いワインを開けて夜を徹すパリ祭の日に降ってきた人

046：パドックパドックに蹄の音の遠のいてさよならさよならゆっくりさめる
047：よろづ　この度はよろずお任せ致しますあまえび様にスポットライト
048：金魚　　あきらめと淡い期待をごちゃまぜに癒えてゆくもの日なたの金魚
049：決　　　決められた位置に並んだ買い物のたっぷり長いレシートを見る
050：愚　　　言い訳は愚かなる日の句読点赤いペン持ち推敲をする