川柳月組コミュの五月マラソン　　俳句編　　　　抹茶

001：蛇　　　　　全長を見せて蛇行く覚悟かな
002：次　　　　　新緑の次々濡れて醒めてゐし
003：燕　　　　　すいと来てすいと旅立つ燕なる　
004：階段　　　　階段の途中や春がぽつねんと
005：青葉　　　　深呼吸青葉の青は胸の中

006：干す　　　　昨日を知るハンカチをぴんと干す
007：時々　　　　増血剤時々たどる春渚　
008：卓球　　　　ピンポンは楽し五月雨は激し
009：さっと　　　さっと拭く鏡に初夏の来るごとし
010：祝　　　　　祝てふしみじみと見る花の蘂

011：ヨット　　　沖のあることを信じてヨット行く
012：浮き　　　　コロナ禍の人無き街に浮いてこい
013：ソーダ　　　おぼろ夜のバーボンソーダ忘れたい
014：黙　　　　　不機嫌に黙す五月は靴の中
015：飯　　　　　確実に過ぎる一日か生姜飯

016：蠅　　　　　一匹の蠅に会話の生まれ聖家族
017：ナイター　　ナイターや亡父はスルメマヨネーズ
018：太宰　　　　いけない人へズブズブはまる太宰の忌
019：牡丹　　　　咲ききって揮発しはじむ白牡丹
020：桜桃　　　　さくらんぼほのかな光届けたる

021：冷蔵庫　　　ため息を何度も聞いた冷蔵庫
022：弱　　　　　オルガンの弱い音また朝がきた
023：寂　　　　　一日に一語もなくて四月尽
024：老　　　　　母といふ病のありぬ老葎
025：肺　　　　　寝転べば肺の上にも聖五月

026：道具　　　　泳ぐとき身体ひとつの道具なり
027：レース　　　森へつづく小径レースの傘さして
028：ズーム　　　ひっそりとZOOM画面に芽吹くもの
029：呼　　　　　絵本から呼ばれて消える木下闇
030：低　　　　　さえずりも低いところでかわいそう

031：ポップス　　ポップスの流れて夜の水族館
032：因　　　　　ちりじりになってしまって滝の裏
033：餃子　　　　酢胡椒を効かせて餃子夏の陣
034：檻　　　　　檻の中不発の雷のほとばしる
035：縫　　　　　縫合のピンクに雨意のにじむかな

036：戒　　　　　戒めの大きさ枇杷の種光る
037：釣　　　　　釣り人も静かに烟る梅雨昼間
038：床　　　　　床拭いて夢想している星月夜
039：暑　　　　　出所を防ぐ暑さのマスクかな
040：傘　　　　　月の引力まだ信じたし傘をさす

041：沸　　　　　沸点を保って夜の新樹かな
042：マスク　　　マスクして匿名になる走り梅雨
043：端居　　　　存在の軽さ淡さよ夕端居
044：鰹　　　　　大将の陽気な店の初鰹
045：パリ　　　　パリ祭に昔のような二人連れ

046：パドック　　快哉を知るパドックに夏の暮
047：よろづ　　　好悪憎悪よろづ納めている扇
048：金魚　　　　のんびりと昼の匂いの金魚かな
049：決　　　　　決めました星屑ひとつ飲み下す
050：愚　　　　　愚かさの終りめでたき桐の花