チェダゼミナールコミュの現代経済の仕組み学習指導案

第一学年七組　公民科　政治・経済学習指導案
福岡県立筑紫高等学校
指導者　与田　光将
実施学級　一年七組
場所　一年七組
?　単元　
１　単元名(教材名)
現代経済の仕組み

２　単元設定の理由

・教材観　
この単元は主に経済をマクロ的に大観させるために設定した。現代日本に生きる我々の生活は分業によって成り立っている。我々の着ている服は、自分自身で生産したものではないし(蚕を飼う段階から)、水や電気も自ら作り出して、使っているわけではない。これらの財・用役（ようえき・サービスの意）を市場(しじょう)で調達する仕組みを資本主義経済と呼ぶ。この資本主義経済は、封建時代末期の第一次エンクロージャームーブメント(囲い込み運動)、第二次エンクロージャームーブメントを経て、19世紀の半ば、イギリスで確立されたとされる。そして資本主義経済の黎明期は、自由競争(レッセフェール・レットイットビー)を原則とする自由競争的資本主義であった。特にその自由競争に多大な影響を与えたのが経済学の創始者でもあるアダム・スミスの諸国間の富（An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations）に示されている、いわゆる「神の見えざる手」であった。見えざる手が市場の自動調節作用になる根拠は、お金を得るためには、人に喜ばれることをしないといけない仕組みになっているからである。この考え方は当時、科学的根拠に基づくものではなかったのだが、新興ブルジョアジーに支持され、当時の経済政策の主流となった。しかし、イギリスの経済が肥大していくと共に神の見えざる手ではカバーしきれない問題が発生する。それが失業問題である。特に1929年の世界恐慌以来、世界中に失業者が溢れ出し、政府が市場に介入せざるを得なくなったのである。この政府の積極介入（大きな政府）を推し進めたのがイギリスの経済学者ケインズであり、彼の理論(乗数理論など)は戦後、各国の経済政策の基本となっていくのである。しかしながら、1990年代前半の冷戦終結により、資本主義経済の対立軸であった社会主義経済圏のイデオロギーの崩壊が相次ぎ、世界は再び小さな政府を標榜し、世界全体がマーケットとなるメガ・コンペティション（大競争）時代へと突入した。社会主義経済の計画経済は、発展初期には有効な政策となりうるが、経済が成熟してくると、様々な非効率が生じ、経済が停滞・後退していく。かつて社会主義国であった中国も、1978年末から鄧小平が「改革開放政策」を唱え、市場原理が徐々に取り入れられ、年平均７～8％の高度経済成長を現在も続けている。ただ、この市場原理も万能ではなく、上に述べたように失業の問題や、環境問題など様々な課題もある。また独占・複占・寡占によって競争が阻害され、消費者が価格やサービス面において不利益を被る問題や、購買力を無駄に煽り立てる企業のアジテーションの問題も見逃せない。また、競争に負けたものへのセーフティーネット問題、若者の失業率の増加問題(ニート問題)も、結局は市場の失敗の一種なのである。わが国は戦後、高度経済成長を遂げることによって、国際社会にそのプレゼンスを示してきた。しかしながら、最近では「本当の豊かさとは何か」ということが問われ始め、国民福祉指標という言葉も出てきている。国民福祉指標とは、国民所得では評価されない余暇増大などのプラス要素や、公害などのマイナスの要素を計測し、それらを国民所得に加減して国民の福祉水準を示すものである。
この教材を通じて資本主義・社会主義経済の特徴、市場メカニズムを理解させたい。そしてスミス・ケインズ・マルクスの考えたこと、彼らの理論から、当時がどのような時代であったのかを理解させたい。さらにわが国の経済成長の歴史を通じて、経済成長がもたらしたもの（プラス面、マイナス面含めて）、今後の課題、本当の豊かとはなにかを考えさせたい。

・生徒観
高校一年生の彼らは、中学時代に「資本主義」「社会主義」などについて学びはしただろうが、おそらくその中身は忘れているだろう。経済活動をあまり行っていない彼らには抽象度の高い単元であるかもしれない。そこで、その曖昧さをなるべく具体的に説明できるよう、教科書の文章に書かれてある真の意味合いを解き明かし、生徒に説明していくこととする。社会科が嫌いな生徒は、その抽象度が高いものを分からないままにしておくから、さらに嫌いになっていくのである。その際、イデオロギー煽動型の授業にならないように留意する。抽象度の高い教科書の表現として、P80の26行目、「労働力の商品化」、P81の9行目「化学工業」「重化学工業」、P83の5行目「有効需要政策」、P92の25行目「持株会社」、P93の13行目「付加価値」、P95の3行目～5行目「フロー」「ストック」などが挙げられる。経済学にしても地理学にしてもそうだが、その分野独特の専門用語的言葉があり、時としてその言葉は、同じ言葉でも解釈が異なるときもあれば、中身が分かりづらくなっているものもある。こういった用語を分かりやすく教えることに努める。
・指導観
指導の際には、単に教科書を読ませるだけの授業、暗記主導型の授業にならないように留意する必要がある。生徒観で述べたような抽象度の高い言葉、経済学独特の専門用語を解説するほうに、時間配分を重点的に配置する。そしてこちらが一方的に説明する講義では、たとえどんなに分かりやすい説明であったとしても生徒が退屈してしまうので、主に対話型（発問重視）の授業にしていく。発問は、特定の答え・正解があるようなものばかりではなく、答えがいくつも考えられそうなものを発問する。
授業開始の5分は、雑談から入ることを絶対とする。いきなり授業に入ることはせずに、慣らし運転から入る。
３　（小）単元の設定理由

４　指導計画
? 資本主義経済の発展と変容　　２時間　本時１/２
? 社会主義経済の形成と変容　　１時間
? 市場の働きと企業　　　　　　１時間
? 経済成長と景気変動　　　　　１時間

?　本時
１指導計画
「資本主義経済の発展と変容」
２本時の指導観
私たちは生活の中で必要なものを「市場」を通して調達している。すべてのものを自給自足でまかなっている人はほぼ皆無である。市場を通して財・用役を調達することの具体的メリットを理解させる。
そして封建社会の後に登場した資本主義社会・産業革命がどのような経緯で起こり、どのような国から発展していったのかを理解させたい。資本主義の主な特徴である、私有財産制度、財・サービスの商品化、私企業による利潤最大化行動説を具体例を交えて説明し、理解させたい。そして、資本主義経済が発展するにつれて、資本の独占が起こり、政府の市場介入の必要性が出てきたことを、アメリカのニューディール政策を例に解説する。当時のアメリカの失業数やGDPの統計を出すのであれば、日本の数字と比較して出し、具体的なイメージがつくようにしたい。

3本時の主眼・指導目標

?スミスの「見えざる手」が正しいかどうかは別として、神の手が経済厚生を促進する過程を説明し、スミスの言わんとした事を理解させる。
　
?電力会社、鉄道会社、上下水道会社の例を出し、資本蓄積が独占を生む過程を説明し、企業の資本の集中に至るプロセスを理解させる。
　
?スミスの見えざる手は「失業」の問題まで把握されていなかったことを、ニューディール政策の学習を通して理解させる。

教材

テキスト

資料

板書計画
今日の目標
? 資本主義経済はどのように発展してきたかを知る。
? 資本主義の特徴を知る。

市場（いちば）　　商品が売買される一定の場所　　　　ex.　デパート　

市場（しじょう）　商品ごとにそれが売買される場　　　ex.　野菜市場　労働市場　金融市場　

資本主義　１９世紀半ばにイギリスで成立

資本主義の特徴

? 生産手段の私有
? 財・サービスの私有化
? 利潤追求の自由

アダム・スミス　経済学の創始者

台本・細案

板書　今日の目標
?資本主義経済はどのように発展してきたかを知る。
?資本主義の特徴を知る。

今日は資本主義経済の発展と変容について勉強します。

私たちは普段、経済システムのことを意識しているでしょうか。

普段なんとなく買い物をしている行為そのものが、実はすごい発明なのかもしれません。

お金を通じて物を買うという行為は、当たり前のことのようで、実はこういう制度が定着したのはつい最近のことで、しかも理にかなった合理的なことなのです。

たとえばすべてが自給自足の生活を想像してみましょう。

テレビ番組で「銭型金太郎」という番組があります。

お金の無い人たちが、自給自足をしている生活ぶりなどがしばしば紹介されますが、あのような生活が如何に不便かわかるでしょう。

それでは今日の授業に入りますが、今日は教科書８０ページの「資本主義経済の発展と変容」という部分の前半部分をやります。

でははじめに資本主義経済とは何なのでしょうか。

資本主義に対する対義語は何なのでしょうか。（発問）

それではここでは資本主義の勉強をするので、資本主義のイメージを発表してもらいます。（発問）

ではまず教科書を読んでください。（私たちの暮らしと経済）

板書　市場（いちば）　　商品が売買される一定の場所　　　　ex.　デパート　

市場（しじょう）　商品ごとにそれが売買される場　　　ex.　野菜市場　労働市場　金融市場　

ここまで読んでも資本主義とはなにかのイメージがあまり浮かびませんよね。

ただ、この文章で市場と言う言葉が出てきますが、皆さんは市場を（いちば）と読むときと、市場（しじょう）と読むときの違いを知っているでしょうか。

基本的にはほとんど同義語なのですが、微妙に違います。

「いちば」と読む場合では、品物を売り買いする場所のことを言います。

例を挙げるのなら、デパートなどがそうです。

売り買いする具体的な場所のことを言います。

ちなみに福岡にある二日市、三重県にある四日市、千葉県にある五日市などはその名残とされています。

一方「しじょう」と読む場合には、その個別の商品ごとに売り買いされている場のことを言います。

例えば、野菜市場だったり、労働市場だったり、金融市場だったり、とにかく商品として売られているものであれば、「～しじょう」と呼べるわけです。

でも資本主義経済とはなにかについて、具体的に弁明されていませんね。

では次の（資本主義経済の成立）というところを読んでください。

板書　資本主義　１９世紀半ばにイギリスで成立

資本主義は１９世紀の半ばにイギリスで確立されたとありますね。

資本主義の歴史については少々わかりましたが、資本主義の具体性はまだいまいちわかりませんよね。

では（次の資本主義経済の特徴）というところを読んでみてください

ここでやっと具体的な資本主義の特徴が出てきましたね。

板書　資本主義の特徴

? 生産手段の私有
? 財・サービスの私有化
? 利潤追求の自由

? 生産手段の私有とは、モノを生産するために必要な、機械設備や原材料を個人のものとできること
です。つまり、国が管理するのではなく、個人が管理するということです。

? 財・サービスの商品化というのは、ちょっと具体例を説明します。

たとえばお母さんがあなたたちのために作ってくれた弁当と、弁当屋にある弁当は、同じ弁当でもわけが違います。

弁当屋にある弁当は商品として売られていますが、お母さんの作ってくれた弁当は、商品ではありません。

? 利潤追求の自由とは、企業家たちが営利目的のために、資本（土地・お金・労働力など）を使って、
物を生産していくことをいいます。

この三つをまとめると、個人が国に干渉されずに、商品を生産し、利潤を追求していく世の中を資本主義経済と呼んでいるようです。

それでは次に（競争と独占）というところを読んでください

板書　アダム・スミス　経済学の創始者

アダム・スミスという名前は聞いたことあるでしょうか？

スミスは経済学の創始者でもあり、教科書にもあるように市場での自由競争を通じて社会全体の需要と供給が自動的に調整される仕組みを明らかにした人物です。

ただ、競争を自由にさせておくと、強いものだけが生き残る社会になってしまいます。

それがこの教科書にある、資本の集積・集中、もしくは独占資本主義と呼ばれるものです。

ここで皆さんに質問なんですが、皆さんの家の電気はどこの会社からとっているでしょうか。

おそらく九州電力だけだと思います。

言い方を代えれば、九州電力が市場を独占しているともいえます。

また水道会社やガス会社、鉄道会社もほとんど同じことが言えます。

例えば福岡の場合だと、JRや西鉄、地下鉄などがありますが、JRは民営化されたとはいえ、もともとは国営ですし、地下鉄も市営です。

つまり鉄道会社も私企業だけで考えるのなら、西鉄がほぼ市場を独占しているのです。

こういった電力会社や鉄道会社などは、初期投資にたくさんのお金が必要なので、ひとつの会社が線路を引いたり、電線を張り巡らせたりすると、ほかの企業は新規参入しにくくなり、独占が起こっていくというわけです。

そして、教科書にもあるように先進資本主義国同士の、植民地再分割をめぐる帝国主義的な競争が激しくなり、そのことがWW?を引き起こした一因ともなった。

それでは次の（政府の経済への介入）というところを呼んでもらいます。

アメリカ発の経済不況が１９２９年に起こり、大量の失業者がでて、社会問題となりました。

アダム・スミスの理論は間違っていたのでしょうか。

その理論の是非はともかく、政府としては、失業者をそのまま放っておくことはできませんから、政府が経済に積極的に介入するようになりました。

政府が介入することをよしとしたのが、イギリスの経済学者ケインズですが、彼の理論や、今後の資本主義経済の課題は次回講義します。