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ジャーナルクラブコミュのreverse genetics

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 これまでの分子神経科学は候補となる伝達物質に注目することから遺伝子の理解を進めてきた。それに対しこれからは遺伝子に注目し、遺伝子から脳全体の機能を理解しよう、というアプローチが盛んになると思われる。
 遺伝子には膨大な数があり、そもそも機能が分かっておらず、蛋白質をコードしている領域だとしか分かっていない遺伝子も多数ある。その中から候補となる遺伝子を絞り込むために使われるものの一つがマイクロアレイとなる。

 今回の論文はいくつかの種類のマウスで、いくつかの脳の領域に分けてcDNAのライブラリーを作製し、マイクロアレイで比較することで部位特異的な機能を担う遺伝子の同定や、種間で異なる行動に基づく遺伝子発現の差を探そうという試み。
 方法を調べるために読んでみました。

Letwin NE, Kafkafi N, Benjamini Y, Mayo C, Frank BC, Luu T, Lee NH, Elmer GI.
Combined application of behavior genetics and microarray analysis to identify regional expression themes and gene-behavior associations.
J Neurosci. 2006 May 17;26(20):5277-87.

8 strain:
129S1/SvImJ(129), A/J(AJ), BALB/cByJ(BALB), CH/HeJ(C3H)
c57BL/6J(c57), DBA/2J(DBA), FVB/NJ(FVB), SJL/J(SJ)

5 brain region:
prefrontal cortex(PF), ventral striatum(VS), temporal lobe(TL), periaqueductal gray(PG), cerebellum(CR)

手法:
一つのstrainのマウスを8匹使う。
二酸化炭素で窒息
   ↓
  断頭
   ↓
脳を取り出して5つの領域に分ける
   ↓
4匹分ずつTrizol reagent(Invitrogen)でRNAの単離
   ↓
RNeasy mini kit(Qiagen)でRNAを精製
   ↓
dUTP存在下でSuperscript?(invitrogen)による逆転写
   ↓
Cy3またはCy5による標識
   ↓
42℃, 18-24hでハイブリ
   ↓
SSCで洗浄

8strainで8匹なのでトータル64匹
4匹ずつに分けてRNAを精製し、dye-swapしているため
8 strain×5 brain region×2 pools×2 dye-swap
で160アレイの解析を行った。

 種間、領域間で有意に発現量の異なる遺伝子や、種間で発現が保存されている遺伝子などを統計によって見つけているようだが、詳しいデータの掲載はなし。

 また、それぞれの領域で発現している遺伝子が属するカテゴリーについて調べたところ、学習や記憶に関する遺伝子についてはventral striatumでのみ発現していた、と述べている。どういう遺伝子かというと、Ras/MAPK pathwayに属するシグナル分子なんだって。確かにRas/MAPKに関する遺伝子がVSでのみ高発現しているというデータは興味深いが、だからVSのみが学習に大事と言えるわけじゃない。
 このカテゴリー分けはどの程度の妥当性があるのか不明。

 その他に、エタノールの感受性や不安、自発行動量などについて、strain間での行動の差と遺伝子の発現量の違いから相関するものを探してきて、行動の違いを生み出している(かもしれない)遺伝子の候補を探している。
 その結果、NMDA/glutamate pathwayに関する遺伝子に相関関係が見られており、確かに無関係じゃないかもしれないけど、原因と結果を結びつけるメカニズムは全く不明。

 じっくり読めば本当はもっとおもしろい論文で、役に立つデータが詰まっているのかもしれないけど、いまいちすっきりしない。マイクロアレイのデータは実験の手がかりを探すきっかけで、これから興味深い報告が出てくるところなのかもしれない。

 こういうバイオインフォマティクス?系の論文は情報量は膨大なのに、有効に使われることがあまり多くない気がする。きっと今までもマイクロアレイのような網羅的な解析はあちこちでやられているはずなのだが、その情報はどれほど共有されているのだろうか?
 マイクロアレイを使って得たデータから新しいメカニズムが分かった、というレベルになって初めて論文としての価値が出るのだろうと思う。

コメント(1)

この論文は読んではいないのですが、説明の最後の一文に魅かれました。

マイクロアレイに限ったことではなく、どんな研究に関しても次に繋がっていくことが大事だと考えています。

やはり研究は一つ一つの断片なのではなくて、その流れこそが重要であると私は考えています。

これからの研究においてはあなたのいおう共有こそが大事なのではないかと考えています。

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