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ジャーナルクラブコミュのホスファチジルイノシトールの局在と細胞極性

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久しぶりに投稿します
あまり詳しくない分野なので間違ってたらごめんなさい

PTEN-mediated apical segregation of phosphoinositides controls epithelial morphogenesis through Cdc42
Cell, vol.128, 383-397 (2007) / PMID: 17254974

上皮細胞は登頂膜側と基底膜側の間がtight junctionによって物理的に隔てられている。上皮細胞の機能においては登頂膜側と基底膜側のそれぞれに、必要な機能分子を適切に配置することが重要であるが、このような登頂膜側−基底膜側方向(apical-basolateral)の細胞極性を形成する機構については未解明の部分が多く残されている。

細胞極性の形成で重要な役割を果たしている分子群として、Par3/Par6/atypical PKC(aPKC) complexが知られている。Par3とPar6は線虫卵の不等分裂に関わる遺伝子として同定されたPDZ domainを持つ分子で、aPKCはPar3/Par6 complexと相互作用する分子として同定された。Mammalにおいてもこれらの分子は複合体を形成し、上皮細胞のapical-basolateral極性の形成や、astrocyteや神経細胞のmigration、神経細胞のaxon形成など様々な細胞極性の形成に関与していることが示されている。(ただし、Par3は常にPar6/aPKC complexと相互作用しているわけではないらしく、現在はPar6/aPKC complexを局在化させるための足場タンパク質として働いているかもしれないと考えられているらしい)
酵母を用いた研究から細胞極性に関与することが示されていたRho family分子のCdc42はGTP依存的にPar6と相互作用し、このCdc42-Par6の相互作用がPar6と複合体を形成しているaPKCの活性化に重要な役割を果たしているらしい。
aPKCの基質として、LglやGSK-3betaが知られている。Lglの機能はよく分かっていないらしいが、GSK-3betaはmicrotubuleを制御したり、CRMP-2を介してactin骨格やexocytosisを制御することが知られており、これらの経路を介して極性形成が行われていると考えられているらしい。
(参照/ PMID: 12888006, 17050699, 17050700)

この論文の筆者らは昨年、リン酸化フォスファチジルイノシトール(PI)であるPI(3,4,5)P3のbasolateral側への局在が上皮細胞におけるapical-basolateral極性の形成に重要であることを示している。
Phosphatidylinositol-3,4,5-triphosphate regulates the formation of the basolateral plasma membrane in epithelial cells
Nat. Cell Biol., vol.8, 963-970 (2006) / PMID: 16921364
この論文ではbasolateral側のPI(3,4,5)P3にのみ着目し、apical側がどうなっているのかについては触れていなかった。今回の論文は去年の論文の続き?というかcounterpartみたいな論文で、apical側のリン酸化PIについて調べている。

MDCK cellをcollagen gel中で培養すると、細胞塊を形成する。この細胞塊は単層からなる中空の構造となっており、すべてのMDCK cellは細胞塊の内側にapical側、外側にbasal側を形成する。この論文ではこのMDCK cellの細胞塊の形成過程を観察することによって、apical-basolateralの極性形成機構について調べている。

論文の前半では、このMDCK cellの3D培養系において、各種リン酸化PIの局在がapical-basolateral極性形成に重要であることを示している。
前半部分で示してある概ねのデータを以下に示す。
1)リン酸化PIの局在確認
-PI(4,5)P2/PI(3,4,5)P3に高親和性で結合するPH domainを用いて確認
-PTENもapical側に局在することを免疫染色およびGFP-fusion proteinで確認
2)PTENをKnockdownもしくはPTEN阻害剤で細胞塊を処理
-細胞塊内側にapical domainを形成できなくなり、中空構造を維持/形成できなくなる。
-PI(4,5)P2がapical側へ局在しなくなる
3)人為的にbasolateral側のPI(4,5)P2量を増やしてやる
-細胞塊は中空構造を維持できなくなる
-apical側に局在するタンパク質やTJを形成するタンパク質がbasolateral側へ移動する
ここまでのデータで、apical側へのPI(4,5)P2の局在は、apical-basolateral極性の維持/形成に重要であることがわかる。PI3 phosphataseであるPTENによりPI(4,5)P2の局在が説明できるとの趣旨だけれど、PIP-5 kinaseの局在はどうなっているんだろうか?

論文の後半ではこのPI(4,5)P2の局在が、apical側タンパク質の局在化を引き起こす機構について調べている。
1)Annexin2(Anx2)の重要性
-PI(4,5)P2とdirectに相互作用するAnx2はapical側に局在している
-Anx2をKDもしくはAnx2のDNを発現させると、細胞はapical-basolateral極性を形成できなくなる
2)Apical側におけるAxn2によるCdc42のrecruitment
-Cdc42は活性化した状態でapical側に局在化している
-Cdc42はGTP依存的にAxn2と相互作用する
-Cytosolにおいてanx2-Cdc42相互作用を引き起こすとapical側のactin骨格に異常が認められる
3)Apical側へのCdc42の局在化によるapical-basolateral極性形成
-Cdc42をKDすると細胞はapical-basolateral極性を形成できなくなる
-Cdc42のeffectorであるPar6のapical側へ局在する
-Par6と複合体を形成するaPKCもapical側にCdc42依存的に局在している
-aPKC阻害剤で処理すると、細胞はapical-basolateral極性を形成できなくなる

Cdc42などのRho family分子はPHドメインを有しているが、PI(4,5)P2への結合能が低いことから、筆者らはCdc42をapical側へ局在化させるのを助けるタンパク質を想定した。Anx2は筆者らの想定通りの挙動を示すことから、Cdc42はAnx2を介してPI(4,5)P2の豊富なapical側へ局在化すると考えられる。Cdc42の局在化以降は細胞極性形成の分野ではおきまりのpathwayらしい。しかしながら、mammalでは通常Par6/aPKCと共に働くPar3はapical側ではなくtight junctionへと局在していることから、MDCK cellを用いたこのシステムではPar6/aPKCはPar3と複合体を形成することなく、機能しているらしい。Par3非依存的なPar6/aPKCの作用はDrosophilaでも観察されているとのこと。

データから立てた彼らのモデルは以下のようになる
Apical側へのPTENの局在化→PI(4,5)P2の局在化→Anx2のrecruitment
→Cdc42のrecruitment→Par6/aPKCのrecruitment→極性形成
そうなるとやはり最初のPTENを局在化させるシグナルがなんなのかは気になる。Lamininの分泌がこの実験系における極性形成に重要であることを示す結果を発表しているが(PMID: 11533663)、じゃぁどうやってlamininの分泌位置を決めてるのかという疑問も残る。Cell-Cell contactのない部分がbasal側になることから、細胞分裂の位置が重要かもしれないとも言っている(PMID: 15574881)。

あと、これらのデータはほぼすべてKDやO/Eによるものであることから、TGNから先のprotein sorting経路の異常によってこれらの結果が得られたのではないかということも彼らは気にしている様子でした。


寝れないついでに自分の勉強のために読んだので、なんか間違ったところとか補足とかあったら指摘していただけるとありがたいです
昨年、Mostovがこの話をネタに講演するのを聞く機会を持ちました。論文の中だといきなり何の前触れもなくannexin2が出てきますが、これはこのポスドクがいくつか試したらたまたまうまくいった、と言ってました。彼はそのポスドクのこといいセンスしてる!と絶賛していました。しかし、あんなぶっきらぼうにお話しするオッサンのラボから出た論文とは思えないほどきれいに話できてますね。

コメント(2)

面白い論文の紹介、ありがとうございます。
細胞の極性というと月田先生を思い出します。
専門外なので、ちょっと論文を読んでみたいと思います。
3D培養系だけでなく、実際の個体でも成立する話なのかどうかに興味がありますね。
この3D培養系でも通常の2D培養系でも
MDCK cellはAP極性を形成するようですが、
2つの培養系は全く同じではないようです。
今回の論文ではCdc42をKDしたときに
AP極性形成が阻害されていますが、
2D培養系では目立ったphenotyeは出ていません。
(supp. figに彼ら自身が行った実験結果があります)
どちらがより実際に近いかは私にはちょっとわかりません。

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