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ジャーナルクラブコミュのephrin-Ephシグナルによる骨代謝調節

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 骨は破骨細胞(osteoclast)が骨を溶かし、骨芽細胞(osteoblast)が骨を形成することで常に新陳代謝を繰り返している。破骨細胞の働きが強すぎると骨粗鬆症(osteoporosis)となり、骨芽細胞の働きが強すぎると骨代理石症(osteopetrosis)を発症する。
 破骨細胞は単球マクロファージ系前駆細胞(monocyte-macrophage precursor)が融合して形成される多核巨細胞(large, multinucleated cell)で、酸を分泌して無機質を溶解し、蛋白質分解酵素を分泌して骨基質蛋白質を消化する。
 骨芽細胞は間葉系幹細胞(mesenchymal cell)から分化する骨形成細胞であり、アルカリフォスファターゼ(ALP)で石灰化抑制因子ピロリン酸を分解することで、骨基質蛋白質である?型コラーゲン(collagen?α)にハイドロキシアパタイトを沈着させ、石灰化する。

 破骨細胞は単球マクロファージ前駆細胞と分化支持細胞である骨芽細胞との接触に依存して形成される。この時、分化支持細胞上で発現している破骨細胞分化因子がRANKL(receptor activator of NF-kB ligand)である。破骨細胞前駆細胞上で発現するRANKと結合するとNF-kBおよびAP-1(Jun/Fos)のカスケードが動いてNFATc1による転写の活性化を引き起こす。この時活性化される遺伝子はカルシトニン受容体や酒石酸耐性フォスファターゼ(tartrate-resistant acid phosphatase:TRAP)などがあり、これらの因子により破骨細胞への分化が促進される。
 マクロファージコロニー刺激因子(macrophage-colony stmulating factor:M-CSF)は破骨細胞前駆細胞の生存に重要であり、ノックアウトマウスは前駆細胞が欠損し、骨代理石症を呈する。
 NFATc1はIL-2遺伝子のプロモータに結合する因子として同定され、免疫系サイトカインの産生に重要な転写因子である。カルシニューリンによる脱リン酸化が核移行に必要なため、FK506やサイクロスポリンAでその機能が抑制される。
http://www2.eisai.co.jp/motor/gazou/0601v5n1/01.html

 現在、骨粗鬆症の治療薬として用いられているカルシトニンやビスフォスフォネートは骨吸収抑制剤であり、骨形成促進剤は実用化されていない。骨芽細胞の分化や機能を調節する因子としてはRunx2やBMP、PTHなどが知られているがまだ不明な点が多く、今後の研究が注目されるところらしい。

 今回の論文ではephrinB2-EphB4の結合が双方向的に骨代謝を制御することを報告している。

Zhao C, Irie N, Takada Y, Shimoda K, Miyamoto T, Nishiwaki T, Suda T, Matsuo K.
Bidirectional ephrinB2-EphB4 signaling controls bone homeostasis.
Cell Metab. 2006 Aug;4(2):111-21.

 ephrinB(B1〜B3)は細胞表面に発現していて、同じく細胞表面に発現しているチロシンキナーゼ型受容体EphB(B1〜B6)のリガンドとして働いている。ちなみにEphrinA(A1〜A5)はEphA(A1〜A10)受容体のリガンドである。ephrinBは細胞内ドメインを持った膜貫通型タンパク質であり、EphrinAはGPIアンカー型のタンパク質である。
 リガンドであるephrinBによって活性化されたEphBによるシグナルは"forward signalling"と呼ばれ、逆にEphBによって活性化されるephrinBのシグナルは"reverse signaling"と呼ばれる。


概要
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 骨芽細胞上にEphB4が発現し、破骨細胞分化におけるNFATのターゲットとしてephrinB2が発現している。このephrinB2-EphB4によるbidirectionalなシグナルが破骨細胞の分化を抑制し、骨代謝のバランスを骨形成の方向へ向ける働きを持っている。


詳細
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 まず、骨髄と脾臓のM-CSF依存性のマクロファージ(MDMs)をRANKL存在下で培養し、quantitative RT-PCRにかけた。その結果、NFATによってカルシトニン受容体やTRAPと共にephrinB2のmRNAも増加していた。ウェスタンによるタンパク質の量の増加や、免疫染色による膜状のシグナルも確認されており、ephrinB2がRANKL-NFATc1によるカスケードの下流にあることが示された。

 ephrinB2は様々なEphBと相互作用するが、EphB4はephrinB2としか結合しない。そこで、EphB4をFcタンパクにしてクラスター化し、破骨細胞上のEphrinB2を刺激した。その結果、破骨細胞の分化と骨吸収が濃度依存的に抑制された。この効果はEphB2やEphB4,EphA4でも見られ、EphからephrinB2に伝わる"reverse signaling"が破骨細胞の分化を抑制していることが示された。

 ephrinB2をretroviral bector (pMC-ephrinB2-IRES-GFP)でoverexpressionしてやると破骨細胞の分化は抑制された。細胞内ドメインをいろいろdeletionしてやると、ephrinB2が細胞内に抑制性のシグナルを伝えるためにはPDZ(postsynaptic density protein, disks large, zona occludens)との結合が重要であることが分かった。
 また、siRNAを用いてephrinB2をノックダウンしてやると分化した破骨細胞が増加していた。また脊髄(myeloid)特異的にephrinB2をノックアウトしたLysMcre/ephrinB2-floxマウスの脊髄由来MDMsは破骨細胞が形成されやすくなっていた。

 逆に骨芽細胞をephrinB2-Fcで処理すると分化マーカーや転写因子の発現が増加していた。ephrinB2に結合する分子としてEphB4やEphA4, EphB6をsiRNAでノックダウンするとEphB4の場合でのみephrinB2-Fcの作用が弱まった。従って、ephrinB2からEphB4に対する"foward signaling"は骨芽細胞の分化を促進させる作用があると考えられる。

 Collagen 1aのプロモータでEphB4を発現する骨芽細胞特異的EphB4 overexpressionマウスでは骨芽細胞への分化が起きやすくなっていた。また、このマウスは骨量が増加していた。ただし、骨形成のマーカーである血中のosteocalcin濃度はほとんど上がっていなかったが、骨吸収のマーカーである尿中のdeoxypyridinoline(DPD)が減少していた事から、この効果は骨形成の増加によるものよりも骨吸収の抑制による影響が大きいと考えられる。

 以上の事よりephrinB2はRANKLによって破骨細胞が分化するときに発現が誘導される事が示された。また、EphB4は常に骨芽細胞上に発現しており、EphB4への刺激がRunx2などの発現を誘導することから骨芽細胞分化メカニズムの一部が明らかになったと言える。
 また、RANKLによって発現するephrinB2が、これを介するreverse signalingは破骨細胞の分化を抑制する。ここでネガティブフィードバックを形成しているようである。

 ephrinB2の脊髄特異的ノックアウトマウスは目立った骨の異常を示さない。これはephrinB1もB2と似たようなreverse signalingを持っているからではないか、と筆者らは考察している。ephrinB1もRANKL誘導性ではないが破骨細胞で発現しているが、EphB4とは相互作用せず、EphB2,EphB3と結合する。この2種類も骨芽細胞で発現しているためEphB4によるforward signalingを補償し合っている可能性がある。

コメント(1)

あまりにひどい概要なので書き直します。

概要
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 骨代謝は破骨細胞と骨芽細胞のデリケートなバランスによって成り立っている。骨吸収を促進するものには骨芽細胞から破骨細胞前駆細胞に対する分化刺激因子としてRANKL-RANKによるシグナルが知られているが、骨形成を促進するシグナルというのはあまり知られていなかった。
 ここではephrinB2がRANKLシグナルによって破骨細胞上に発現してくること、さらにこのephrinB2によるシグナルが破骨細胞への分化を抑制することを示す。また、骨芽細胞上ではEphB4が発現しており、破骨細胞上にephrinB2が増えてくるとEphB4によるシグナルを介して骨芽細胞を活性化させ、バランスを骨形成にシフトさせる。
 ノックアウトマウスで重篤な表現型が出ないことからも生理的な意味合いがどれほど大きいかは不明であるが、ephrinB2やEphB4のシグナルを活性化させる薬物は骨粗鬆症の治療に役立つかもしれない。

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