ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

将軍様の下僕の日記集 コミュのLIFE CRUSADERSの夢 ベーシックまとめ 2

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
SCENE・17 再会・松爺

ライブハウスでのワンマン・コンサートが決まったこともあり、レーベルを運営するプロデューサーの好意により、LIFE CRUSADERSも本番を控えた数回は、音楽スタジオへ場所を変え、本格的なリハーサルを行える環境を得ていた。
余談だが、練習スタジオで匂っては…ということから、プロデューサーはポケットマネーでスタジオ近くにある銭湯へメンバー全員を連れていき、身体をサッパリさせてから、毎回スタジオへと入れていた。。。
今日も、そんなスタジオ練習の前に、メンバー全員でひとっ風呂浴び。意気揚々と練習スタジオへと乗り込んでいった。。。

妻:とっ、とぉ〜ちゃんっ!!
娘:おとうさん、わかる? 幸美だよ。おとうさんが、幸せに美しなれって命名してくれた幸美だよっ。
幸美の腕には、小さな赤ん坊がスヤスヤとして寝息をたてていた。。。
妻:幸美は2年前に結婚。こぉ〜んな可愛い息子を、つい3カ月前に産んだばかり。息子の浩一だって、3月に高校を卒業し、今年から「おとうさんの意思を継ぐんだ」って、今、庭師の会社で働き始めたばかり。ホントお父さんも…。
嗚咽したまま、言葉にならない妻。
松爺:なんで、なんで今更わしの前になど現れたんじゃ…。
娘:お父さんのやってるバンドがテレビに出たじゃろ。それを観た親戚の寿朗おじさんが、お母さんに報告うしてくれたんだよ。「お父さんがテレビに映ってた」って。。。
松爺:そっ、そんなっ……。
妻:あれから必死で問い合わせたさ。いろんな雑誌も買って読んだら、お父さんじゃない。も〜びっくらこいて…。テレビ局へ連絡を入れ、事情を話して、お父さんに会えるよう繋いでもらったんだべさっ。
再会した家族の後ろでは、2台のカメラが、待ち構えてたようこの光景を映し出していた。
プロデューサー:こんな愛でたい話はないだろうということで、テレビ局の人たちが、僕のところへ連絡をよこしたついでに、再会の模様を撮影させてくれっていうことで、松爺には何も言わず、こうやっていきなり再会の舞台を用意してしまったんだ。事後承諾になってしまうけど、松爺だいじょうぶだよね。
ボブ:よかったなぁ松爺!! 家族と再会できたなんて、LIFE CRUSADERS様様だなっ。ホントに松爺の人生の十字軍になっちまたっな、このバンドはよっ!!
松爺:わしゃあ、わしゃあ……とっとと帰ってくれっ!
プロデューサー:松爺、なんてことを言うんだよ。
閣下:そうだよ、松爺。せっかく家族と再会できたんだぜっ。
松爺:なんでわしがホームレスになったと思ってるんじゃ。家族のためにと出稼ぎし働き、好きな庭師の仕事も休んで、必死で鉄パイプを運び、危険な足場へも積極的に乗り込んでいって何度鳶まがいの仕事もしたことか。。。ホンマならわしも帰りたかったさぁ。まとまった金を持って、お前のとこへ帰りたかったさぁ。。。
妻:もぅ帰ってきていいんだよ、あんた…。
松爺:ある日わしは、足を滑らせ鉄骨台の上から荷物ごと落ち、足の骨を降り、腰や背中の骨にも何本もヒビを入れちまったんだよ。それから2カ月半も入院。その後も半年間はリハビリを続けてたかな。ようやく身体は動くようになり、普段の生活は何不自由なく過ごせるまでに回復したときはいえ、、、せっかくお前らのためにと貯めたお金も使い果たし。それどころか借金まで背負うことになり、身ぐるみすっぱり剥がされちまったわさぁ。閣下、わしもお前と同じよう、街金の金を踏み倒してる男じゃ。
妻:おとうさん…。
松爺:わしゃあ、再び現場へ戻ろうと思ったんじゃよ。でもな、こんな一度身体を故障させた老いぼれの身体など、だぁ〜れも使ってはくれんかった。そして辿り着いたところが、東風山公園ってなわけよ。。。わしゃあ、ここに辿り着いた時点で、一生家族のことなど考えまい、街金からお金を借りるときにも、家族に迷惑かけまいと素性を隠し通してきたわけなんじゃ。このままひっそりと、誰にも迷惑かけないよう、この公園へ身を埋めようと決めたんじゃ。もぅ一生家族のことなど思い出さないよう、写真から何から全部焼き払ったというのに……。
ボブ:松爺…。
妻:おとうさん、もういいのよ。これまでどんなことがあったとしても、うちら家族は、ズッとおとうさんを必要としてたし、これからだって必要としたいのさ。だから、だから…戻ってきてよ。そしてもう一回、田舎で家族を築き直そうよ。
娘:おとうさん、帰ってきて。私たちもみんなもぅ大人だし、今度は私たちがお父さんへ親高校してくからさっ。
息子:親父、剪定バサミの使い方、俺に教えてくれよ。親方だって、手伝ってくれるなら歓迎するって言ってたしさっ。だから俺に仕事を教えてくれよ、親父っ!!
松爺:……。しばし男泣きしていく。。。
プロデューサー:おかあさん、そして娘さんに息子さん。松爺は…いえ、お父さんは、僕がワンマン・ライブを終えたら、責任持って田舎へ帰します。なぁみんなどうだい? LIFE CRUSADERSのファースト・ワンマンの内容を、松爺を送り出す、記念の脱退ライブにするって言うのは。。。
ジェイク:その意見なら、俺は賛成するよ。俺も一緒に抜けるかも知れないけどな。
ボブ:ジェイク…ジェイクの件はともかく、俺も松爺のためなら一肌脱ぐぜッ!!
ヤッシー:俺も、賛成だっ!
閣下&台湾:俺もっ!!
プロデューサー:よぉ〜し、これでみんなの意見はまとまったな。松爺いいだろっ?!
松爺:…ありがとう、ありがとう…泣き崩れる。
 松爺のそばへと寄り添い泣きぬれる家族たち。
プロデューサー:ところでだ、テレビ局の方々がな、この姿をドュキメンタリー番組にしたいと言ってるんだ。すでにカメラは廻り始めてるけど、こちらもよろしくってことで。番組プロデューサーは、ヤッシーとは旧知の仲の忠さんだ。
 忠,ゆっくり登場。
忠:泰、おっと、今はヤッシーか。ヤッシー、そしてみなさん、これから僕が陣頭指揮を取ってみなさんの姿を追いかけますので、よろしくお願いします。
ジェイク:おいプロデューサー、どういうことだ? 俺らは、お前らに肖像権までは預けちゃいねぇんだよ。松爺の再会シーンならともかく、俺ら自身の姿を人前にさらけ出す協力なんて、俺らはできるわけないじゃねぇかっ!
テレビ局プロデューサー忠:おいおいヤッシー、この間ドキュメンタリーの件はOKって言ってたじゃないかっ。みんなには話をしたんだろっ。だから今日から撮影がスタートしたわけだろっ。
ボブ:ヤッシー、どういうことだ?
ヤッシー:…すまん、早く言おうとは思ってたんだが、、、なかなかタイミングが難しくって。。。
ジェイク:言っとくけど、俺は絶対に撮影になど協力しないからなっ。
そう吐き捨てながら、スタジオを出ていったジェイク。
ボブ:今日はもぅ練習になんねぇな。せっかく松爺の家族も再会したことだし、松爺、今日は練習を中止にするから、家族水入らずで何処かで飯でも食ってきてよ。きっと、そこのプロデューサーさんや裏切り者が、飯代くらいはどうにかしてくれると思うからさっ。
ヤッシー:どういうことだよ、裏切り者って!!俺は、みんなのためを思ってやってるんだぜっ。
ボブ:お前が再び芸能界に戻るためだろっ。お前自身が戻りたいのは構わないし、誰も止めやしない。俺らだって、この間お前が言ってたよう、できることなら音楽界へ復帰したいよ。でもなぁ、あくまでも俺らは音楽を通して、もう一度道を切り開きたいんだ。お前のような芸能界育ちのボンボン崩れとは、根本から志が違うんだよっ! 俺も今からジェイクの後をおっかける。。。とにかく、今日の練習は中止だ。

一気に崩壊の様相を呈し始めたLIFE CRISADESRSの面々。その様相を観ながら。。。

テレビ局プロデューサー忠:おやおやおや、果たしてドキュメンタリー番組になるのかねぇ。まぁ最初から波瀾万丈なネタが満載で、なんか面白くなりそうな予感はしてるけど…。なぁ、忠。。。
ヤッシー:……。


SCENE:18 夜の公園の寂しい宴

沈痛するメンバーたちを前にしながら。。。

ボブ:とにかく、予定の決まっているワンマン・ライブまではこのバンドを、このメンバーで続けようぜ。そして松爺へ最高の思い出をプレゼントしながら、田舎へ送り出してやろうじゃないか。せっかく松爺が明日へ羽ばたく翼を手に出来たんだぜっ。みんなで盛大に送り出してやろうじゃないかよっ!!
閣下:俺は賛成だ。松爺のためにも、最高の晴れ舞台を作ろうじゃないか。
台湾:俺も賛成だ。
ボブ:ヤッシーはもともと賛成だろうしな。ジェイク、お前もノッてくれるか??
ジェイク:……
ボブ:わかってくれよ、なっ、ジェイク…。
ジェイク:俺も松爺のためなら一肌脱ぐのは構わない。そのためなら、つらい視線を浴びるのだって我慢する…ただし、ただし、俺はワンマンまでだ。それ以降は、もぅこのバンドを続けるのは辞めにする。。。
ボブ:…とにかく、ワンマンまでは、俺たちはLIFE CRUSADERSを動かす同じ乗組員なんだ、本番まで残り少ないんだから、精一杯頑張ろうぜっ。。。

そんな彼らの姿をヤッシーが仕込んだカメラが映し出していた。。。


SCENE・19 ワンマン・コンサート

演奏を終えた後のMC…

ジェイク:俺らの演奏、楽しんでくれてますか?
客:もちろんだぜ〜っ!!
ジェイク:ありがとう。まさか俺ら自身、こうやって音源を出せるなんてことが現実に起きようとは夢にも思ってませんでした。もちろん、ライブハウスを舞台に、、、しかも、俺らだけのステージ…ワンマン・コンサートを開けるなんて、絶対にあり得ない話だと……いや、そんなことさえ想像もできませんでした。それが、今日は後ろまでビッシリとお客さんたちが集まってくれた。。。みんながここに足を運んだ理由…それはいろいろあると思う。たとえ、興味本位でもいい。酒のネタとして足を運んだでも構わない。とにかく、どんな理由であれ、俺のステージを、ここに来てくれた人たちの瞼に、心に焼き付けられてることを、何よりも感謝したいです。ありがとう。。。
客2:俺らはLIFE CRUSADERSの音楽に惚れて足を運んでるんだぜっ!!安心しなっ!!!
客3:ズーッと付いていくからよぉ〜!!
ジェイク:ありがとう。たとえお世辞でも、嬉しいよ。本当にありがとう。
客4:ジェイク〜、水くせぇよ〜!!
女客1:そうよジェイク!! 私たちは、どんなことがあってもあなたを見捨てないからっ!!
客5:見捨てないのはジェイクだけかよ〜!!
客:笑い!!
女客2:うっさいわねぇ〜、あんたらとは接してるキャリアが違うのよ、キャリアがっ!!
客6:ただの年増ババアってことじゃねぇかよ!!
女客:最低だわっ、あんたらっ!!
ジェイク:おいおい、そこまでにしてくれ。確かにこの会場には、昔一緒の時間を過ごしてた懐かしい顔ぶれも意外と多いのも事実。もちろん、東風山公園で演奏を始めた頃からズッと応援し続けてくれてる人たちもたくさんいる。きっと、初めて俺らの姿を観る人たちだって多いことだろう。でも、こうやってまたここからら、みんなとの絆を作り上げてゆくための、確かな最初の一歩を踏めたら、すごく嬉しいと俺らは本気で思ってる。
女客1:私たちの絆は、ズーッと繋がりっぱなしよっ。
客2:化粧が濃くて、眉毛も繋がってるけどな(笑)
女客1:ウキ〜ーッ!!
ジェイク:まぁまぁまぁ(笑)。ところで、みんなもすでに知ってるとは思うんだけど、今日のステージを最後に松爺がLIFE CRUSADERSから卒業することになった。今日この会場には、松爺の家族も観に来ている。

家族にスポットライトが当たる

ジェイク:松爺が住んでた青いビニールシートで囲った小さな部屋も、今日ここへ来る前までにすっかり中身を整理し、小さいながらもガラ〜ンとした部屋になってしまった。。。
人生の道を外れ、やさぐれたまま流れ着いた俺たち一人一人を、最初に優しさで包んでくれたのが松爺だった。彼がいなかったら、俺らはこんな結束力なんて産まれなかったと思う。松陣が一人一人に酒を注ぎ、一人一人に言葉を投げかけてくれたからこそ俺たちは、、、この落ちぶれたと思っていた俺たちは、再び「絆」という言葉を知ることが出来た。
この日のステージを最後に、松爺はそのまま深夜バスへと乗り、家族と一緒に、家族の住む…松爺の産まれた町へ帰っていくことになった。
一度は音楽を捨てたはずの俺らが、音楽に救われ。その音楽を通して、松爺の家族と松爺とを再びめぐり会わせる軌跡を産み出した。俺らは、そんな音楽に感謝したい。
今日は、俺らにとって飛び立つための記念となる日。そして、松爺の新しい人生を祝うための最初のパーティの時間。まだまだ演奏は続くからよっ、一緒に盛り上がっていこうぜっ!!
客:お〜っ!!
ジェイク:松爺を笑顔で送り出そうぜっ!!
客:お〜っ!!
ジェイク:よっしゃ〜!! 松爺、カウントだっ!!
松爺:おっしゃあ〜!!

松爺の洗濯板を鳴らす音をカウントに演奏がスタート。熱狂の宴は続いていく。

SCENE・20 楽屋にて。。。

手に手にビールを持ちながら…。
ボブ:松爺おつかれっ!!
「おつかれ〜」そばにいた連中の誰もが、松爺に乾杯の挨拶をしていく。
ボブ:本当なら松爺と朝まで飲み明かしたいところだけど、今夜が旅立ちだもんな。こんな一瞬の飲み会だけでサヨナラしちまうことを許してくれっ。
松爺:何言ってんじゃよ。わしゃあ、みんなのおかげで思わぬ夢をもらったんじゃからな。けっして観ることのなかった、わしにとっては想像もつかなかったこんな楽しい夢を、短い期間じゃったとはいえ、ほんとに楽しませてもろぅ〜たわ。
ジェイク、さっき舞台でわしのことしゃべってくれたけど、わしこそみんなに感謝せなぁいかん。みんなと合わなかったら、、、ジェイクと、ボブと、台湾と、ヤッシーと、閣下と出会わなかったら、わしゃあ〜今でもあのちっこいビニールシートの家で、チビチビ拾った酒を呑みながら、漁った残飯食いながら、忘れたくても頭に浮かんでくる故郷や昔のことを思い出し、泣きたくもないのに涙しながら、野垂れ死ぬことを待ち続けるような人生を送ってたに違いない。そんなわしに、みんなが希望をくれたんじゃよ。こんな老い先短いおいぼれにも、明日がくる楽しさってェのを教えてくれたんだよ。わしゃあ、感謝しても感謝しきれんほどじゃよ。しかも、二度と会うまいと思っていた家族とも、こうやって縒りを戻すことができた。。。ほんま、こんな恵まれた人生は、きっと結婚以来じゃわいっ!!
閣下:そりゃあ、結婚のほうが恵まれてるなわっ!!
ボブ:本当だったら、ここで「また会おうな」と言いたいところだけど、俺らと会うってことは、けっしていい環境じゃないってことだから、すごく寂しいけど、ここで松爺とは永遠の別れにしたいと思ってる。
松爺:そんな寂しいこと、言わんでくれよっ。
ボブ:松爺、二度と戻ってくるなよ、東風山公園なんかに。。。
閣下:松爺、笑顔で別れようやっ。
台湾:「二度とお前の顔なんて観なくていいから、せいせいする」って言いながらさ(泣きそうな声で)
ヤッシー:台湾、お前泣きながら言うなよ。俺まで泣けてくるじゃねぇかよ。
松爺:みんな、ほんまに、ほんまにありがとう。。。そしてジェイク、あんたが俺らへ希望の光をもららせてくれたのが、すべての始まりじゃ。お前さんには、みんなを光へ導いてく力がある。ほんまその光に感謝してる。。。これからも、みんなを照らしてな…辞めるなんて、けっして言わんでなっ。。。
その言葉を聴いたジェイク。涙をこらえながら。。。
ジェイク:松爺、その言葉受け止めるよ。もうちょっと頑張ってみるよっ。
ボブ:ジェイク、その言葉待ってたよ。
ヤッシー:いろいろすまんな、とにかく一緒に頑張ってくれるか?
ジェイク:せっかくこれだけのお客さんが集まったんだし、みいなにも口からのでまかせとはいえ約束しちまったし。もうちょっと頑張ってみようかな。

そこへプロデューサーが入ってくる。

プロデューサー:みなさん、今日はホントにお疲れさま。コンサートは大成功。早くも僕のところには「次のワンマン何時なんだ?」って声がたくさん届いてるから。
ボブ:嬉しいこと言ってくれるねぇ、ファンの人たちも。
プロデューサー:それより、もっと嬉しいニュースがあるんだ。この日のステージを見てくれたイベンターの方が、全国各地の施設や老人ホーム、刑務所などの慰問ツアーをしないかと言ってくれてるんだ。
閣下:そりゃあ、俺らにピッタリの内容じゃねぇか。
台湾:やろうぜ、それっ!!
プロデューサー:それだけじゃないんだよ、ニュースは。
閣下:なんだよニュースって、もったい付けずに言ってくれよ。
プロデューサー:今日幾つかメジャーなレコード会社の人たちも呼んでたんだけど、「うちでやらないか」って話が2〜3社から出てきてるんだ。
ヤッシー:マジかよっ!!
ボブ:すげぇなっ!!
プロデューサー:レコード会社の方は、後で楽屋へお連れするから。その前に一つ契約したいんだ。
ジェイク:なんだ? 契約って??
プロデューサー:うちの会社でLIFE CRUSADERSをマネージメントをさせてくれないか? 確かにうちもちっちゃな会社だから、どこまで面倒を見れるかはわからない。ただ、全員一緒に住めるアパートと、ツアーへ行ったときの交通費や宿泊費,飯代くらいはしっかり面倒を観るし、メジャーなレコード会社と契約が決まった暁には、もっといい暮らしをコーディネイトしていくからさ。どうだい、それ?
ヤッシー:ちょっ、ちょっと待ってくれよっ。
プロデューサー:なにか不満かい、やっしー? ようやくホームレスから開放されるんだぞ。
ヤッシー:契約っていうのはちょっと待ってくれ。せめて最初は預かりだけにしてくれないか?
ボブ:ヤッシー、お前また何か企んでるのか??

光が射し始めたLIFE CRUSADERSだったが、またも小さな暗雲が立ち込め始めた。。。

SCENE・21 夢魔 ジェイク・回想

マネージャー:こちらが花村遙さんです。
花村:キャ〜ッ!! 私すっごくデザイア・ヘブンさんのファンだったんです。シングル『スターマン』を聴いたときから、思いっきりときめいちゃって。。。他にも、『追憶』や『刹那に抱かれて』とか、大好きで録音したカセットを、何度も何度も聴いてるし。中でも一番好きなのが、『ただ愛しきあなたのために』というバラード。♪それでも定めと思うから/何時までもお前の温もり離さない♪というサビの言葉が、私大好きなんです。
ジェイク:ありがとう(クールに)。まさか俺らも、こんな超売れっ子のアイドルさんに、ここまで褒めてもらえるなんて思ってもみなかったよ。俺ら、まだまだこれからも羽ばたき続けるけど、遙ちゃんも、その笑顔を何時までも見せてくれよ。
花村:もちろんっ!! ねぇねぇ、みなさん連絡先教えていただいていいですか? 私みんなにお礼のお手紙を送るから。。。


ジェイク:たまたま共演した音楽番組。その楽屋裏で俺たちは、互いのマネージャーを通し、当時売れっ子アイドルだった花村遙と顔を合わせる機会を得た。当時から彼女は、気にいった男を次々と食い荒らす子羊の顔をした魔性の小娘みたいに言われてたが、あの笑顔を真正面から見て嫌な気になる男など、いるはずもないのは、この日あって十分実感した。とても男の心を刺激してくれる、しかも人前ではしっかり相手のことを立ててくれる器量の良い女性。その裏に隠された顔にさえ嫌悪感を覚えなければ、誰もが彼女へ惹かれていくのは、とても納得だ。
当時の俺たちも、そんな遙の笑顔にぞっこんだった。

ドラマー悠:おいおい、自慢していいか? 昨日、俺んところに花村遙ちゃんから手紙が届いたんだぜ。「あのパワフルなドラムに胸キュンです。今度会ったとき、その腕触ってもいいですか?」だってさぁ。も〜今度会ったときは、絶対にアプローチしてやるからな。
ギター巧:その手紙には連絡先は書いてなかったのか?
悠:なぁ〜んにも。差出人の住所は事務所だったからね。
ベース尽:俺んところにも、同じよう遙ちゃんから手紙が届いたぜ。同じよう送り先は事務所だったけどな。
悠:ってことは…
ジェイク:俺んところにも届いたよ。
巧:俺んところもだよ。
悠:なぁ〜んだ、ただの社交辞令かよっ。でも、こうやって手紙をもらえただけで、俺んとっちゃぁ一生の宝物だな。

ジェイク:後でわかったことだが、メンバー内へ送った手紙のうち2通には、彼女の住んでるマンションのアドレスと連絡先が記されていた。それが俺の手紙であり、ギターの巧へ送った手紙だった。。。
それから俺は遙へ連絡を取るようになり、何度か彼女のマンションへ出向いては逢瀬を繰り広げていた。。。と言っても、売れっ子アイドルで多忙な彼女である。そうそう頻繁に会えるわけでもなく。まして俺らがやっていたバンドの日の出の勢いということもあり、互いに少ない時間をやり繰りしながら、短い安らぎの時間とはいえ、笑顔浮かべゆく時間を過ごしていた。。。じつは同じよう、巧も何度か逢瀬を繰り返していたのだが、あの思い込みの激しい性格に遙自身が嫌気を覚え、当時彼女は必死で巧と距離を置こうとしていたらしい。
俺も、、、あわよくば…という気持ちがなかったかと言えば嘘になる。それでもちょっとした火遊び気分として遙とは過ごしていた。。。が、まさかあんな事件になるとは。。。

「発覚!! 人気アイドルの花村遙、人気上昇中のバンド,デザイア・ヘブンのヴォーカリスト,ジェイクと、マンションで一夜のお泊まり発覚」
「20時に仕事を終えた遙を、デザイア・ヘブンのジェイクが車で迎え入れ、そのまま2人は西麻布の焼き肉店へ。そこで2時間過ごした2人は、そのまま深夜のバーへ1時間ほど入店。ほろよい加減の遙さんを横に連れ、ジェイクもまたほろ酔い気分のまま運転し、遙かさんの住むマンションへ。部屋の電気が付いたかと思えばほどなく消え、朝10時には遙かさんはマンションから出て、迎えに来たマネージャーの車で仕事場へ。お昼すぎにジェイクもマンションから出てきた。そこを直撃したところ、彼は無言のまま逃げるように立ち去っていった」

ジェイク:人気絶頂のアイドルの恋愛スキャンダル。しかも未成年にも関わらずの飲酒。まぁ俺も、飲酒運転なんて都合のよい訴訟ネタのきっかけも作ってしまったけどな。それから始まったマスコミたちの異常なほどのバッシング。
でもそれは、ある程度覚悟ができてたから、そんな気にすることではなかった。それよりも問題なのが、巧だった。

巧:ジェイク、お前は俺が遙と付き合っていたのを知ってて、同じようお前も遙と付き合ってたんだろ。俺のピエロぶりもしっかり遙から聴いてたんだろっ。それをわかっていながら、俺の前で笑顔浮かべてバンド活動を続けてたなんて、、俺は悔しいぜっ、お前に裏切られた気分だっ!!

ジェイク:事件発覚後も、俺は遙との愛を育んでいた。さすがに売れっ子アイドルだけあって事務所はかなり警戒し、俺と会うことを辞めさせようとしていたが、俺も遙も、その障害が逆に互いを結びつけゆくパワーになり、僅かな時間でも見つけては逢瀬を繰り返していた。。。でもそんな姿をズッと執拗に追いかけ続けていたのが、、、まさか巧だったとは。。。
そんな巧の執念が、一つの事件を起こしてしまった。。。それはとある日の夜、広尾にある隠れ家的な店で俺と遙は待ち合わせをし、その店で食事を終えて出てきたときだった。

巧:遙っ!!

そこには、右手にジャックナイフを手にした巧がいた。

ジェイク:バカなことは辞めろ、巧!!
巧:うるせぇ、お前はすっこんでろっ。これは俺と遙の問題なんだ。遙、お前が言った、「あたしは一生巧のお人形さんだからね」という言葉を俺は信じていたのに…。
遙:たくちゃん…。
巧:今,ここでもう一度その言葉を言ってくれ。「あたしは一生巧のお人形さんだからね」。その言葉を言ってくれ。でないと、俺は、、、俺は、、、
遙:たくちゃん(ワナワナと震えながら)
ジェイク:辞めろ、巧!!
ジェイク:うるせぇ〜!!

巧はナイフを突き出したまま、遙へ向かって突進してきた。
すかさず止めにはいったジェイク。たがいにもつれあっていた二人だったが。。。

巧:うぐぁっ!!!!

他折れ込む巧。彼の身体の廻りからは赤々とした血が流れ出した。

遙:キャ〜ッ!!

ジェイク:遙の証言もあり、裁判では巧に対する防衛からの殺傷ということで俺の刑も少しは減刑された。。。とはいえ、俺は刑務所へと7年ほど服役。もちろんバンドは解散。その後,遙はスキャンダラスを肥やしに女優へと転身。今じゃ大物役者安田泰三の妻として、しっかり芸能界へ根を生やしている。
俺は今でも夢を観る。あのとき巧の身体を刺したとき、俺の腕に流れてきた生温かい血の感触と共に、あのときの日々の風景が。。。
そのたびに俺は、うなされ目を覚ます。
あれから巧がどうなったのか、それ以前にデザイア・ヘブンのメンバーたちがどうなったのかなど、まったくわからない。もともと母子家庭に育った俺。母親は俺の事件をきっかけに心労を重ね、今や養護系老人ホームで暮らしている。
出所したばかりの俺は…いまさら音楽以外のことなどできるわけもない。でも一度刑務所へ入った前科者の男など、芸能界は誰も相手してくれるわけがなく、、、昔からの音楽仲間とも何時しか連絡も途絶え、気がついたら東風山公園ていたってわけだ。。。
今でも俺は思い出し、思いきり寝汗をかいて目を覚ます。あの一時の幸せと、俺の手に流れてきた温い血の感触とが交互にフラッシュバックしながら…。

SCENE・22 どさまわり

ワンマン・ライブを成功に終えて以降、LIFE CRUSADERSには強い追い風が吹いていた。マネージメントも、ある程度の状況を整えるまでは…との条件付きで、レーベルのプロデューサーにお願いしていた。本当はヤッシー自身が、みずからの会社再建の手だてとしてLIFE CRUSADERSを使い、芸能界への復帰を画策。番組プロデューサーのの忠との共謀をきっかけに、再び芸能界へパイプを組もうとしていた。。。だが、一度ホームレスにまで落ちぶれた男を気安く拾うほど芸能界も甘くはなく。結局は、ヤッシーもバンド・メンバーの一員という立場へ落ち着くこととなった。が、この時点ではまだ、黒い交際が復活していたことまでは、誰も気づいてはいなかった。

ボブ:かんぱ〜い!!
全員:かんぱ〜い!!!
ボブ:まさか、またこうやって普通に屋根の下で酒が飲めるなんてよぉ。夢みたいな話だぜ。

ジェイク(回想):ワンマンの成功をきっかけに、俺たちは手にした養護院や施設,老人ホーム、刑務所などの慰問ライブを行いながら、時々入ってくる各地ライブハウスでのライブも平行ししやれるまでになっていた。言ってしまえばどさ回りだ。貧乏プロデューサーが買い与えてくれた20年落ちのオンボロワゴン車にメンバー全員で乗り込み、まだ高校を卒業して間もないような坊やを運転手兼マネージャー変わりに俺らへ押しつけ、俺らは飯と寝泊まりできる環境だけを最低限保障を受けながら、なんとか音楽の道へと復帰していた。

閣下:でもよぉ、俺らこんなに頑張っても、全然懐はあったかくなんねぇってのは、どういうことなんかなぁ。
台湾:閣下さぁ、こうやって毎日飯の心配も、寝る場所の心配もいらないんだぜっ。寒空や雨の中震えながら飯漁ったり、真夏の空の下、「くせぇくせぇ」って指指されながらごみ箱漁ってる生活から脱却できただけでも、喜ばなぁいかんのじゃないか。
閣下:いや、わかってるんだけどなぁ。それでもなぁ。。。
ヤッシー:閣下の言うことは間違っちゃいねぇよ。会社だって、俺らの稼ぎでまわってるわけじゃないか。どの程度もらってるのか…確かにそんないい収入はいなかも知れないが、こうやって俺らをどさ回りさせるだけの収入を得てるってことなんだぜ。何時までも飯と布団だけで騙されてくっていうのは、ちょっと違うんじゃないか。ど〜なんだよ、マネージャーそのへんっ。。。
マネージャー:僕がわかるわけないじゃないですか。僕なんかスケジュール表と僅かな経費を渡され、一週間ごとに内訳を報告。そこで次の少ない経費を振り込んでもらって旅を続けてるんですよ。僕だって最初はホテルに泊まれて、飯もいいもん食えるっていうから長い地方遠征も引き受けたのに。。。
ジェイク:別にいいじゃねぇか。施設のみなさんのところで飯をごちそうになったり、一緒に泊めてもらったり。たまにこうやってお酒まで飲ませてもらえるなんて最高じゃないか。それより何も、俺らは再び音楽で飯を食えてるんだぜっ。それに何よりも感謝すべきだって。
ボブ:そうだな。先のことはまず置いとこう。このツアーが終わったら新作のレターディングもしてくれるということだし、それからまた考えようやっ。

僅かずつだけ射し込んできた明るい光。その光をもっともっとこの身に浴びようと、5人は必死にもがいていた。。。

SCENE・23 デビュー

ある日、ワイドショーに一つのニュースが流れた。。。

「巷で話題の元ホームレス・バンドLIFE CRUSADERS。彼らがついにメジャー・レコード会社へ進出することが決まりました。しかも彼らは、今年京都で開催される「国際人権擁護EXPO」の顔として、その自立してゆく道を示してゆくパネラー・バンドとしても登場することが決定している模様です」

そのニュース後、メンバーは東京へ急遽呼び戻され、プロデューサーとの話しあいの席が設けられた。

プロデューサー:どういうことだ、あのワイドショーのニュースは。俺は一切そんな話は聴いてないぞ。
ジェイク:俺だって知らないよ、そんな話。俺ら自身がテレビで見て驚いてるくらいなんだから。
プロデューサー:こっちはレコード会社を一つ内定し、ようやくお前らにも嬉しい報告ができると思ってたのに、発表されたプリンス・レコードって、そんなところとは俺は一切接触がない。一体どういうことなんだ?

ヤッシー、すくっと立ち上がる。

ヤッシー:まずは話を聴いてくれ。これは、俺の知人のプロデューサー。そう、俺らのドキュメントを撮影してくれた忠プロデューサーをきっかけに繋がった話なんだ。
ボブ:また、あいつ絡みかよっ。
ヤッシー:いや、正確に言うと、俺が以前交際していた裏企業会社から忠プロデューサーへ連絡が入り、そして俺に話がまわってきたということなんだ。そこは俺が以前お世話になっていた会社で、「ぜひうちの会社でも、泰の社会復帰を手伝いたい」と言ってくれ、そこの会社がプリンス・レコードへと繋げてくれたというわけだ。
閣下:でも、あの環境なんたらとは、一体なんなんだよ。
ヤッシー:それも裏社会の人たちの政治的なコネクションからの話だ。これも俺らの生き方に賛同してくれたことからの出来事なんだ。せっかく大きなチャンスの芽が目の前に現れたんだぜっ。だったら大きい夢をつかみたいのが当然だろっ。もちろんプロデューサーには、音源のサウンド・プロデューサーという立場をお願いするよ。そうすりゃ文句はないだろっ。
プロデューサー:まっ、まぁな。
ヤッシー:だったら、この件は俺に任せてくれ。
こう見えても俺だって、昔は芸能事務所を背負ってた身だ。
けっして悪いようにはしないからさっ。
閣下:俺は賛成するよっ。なっ、みんなヤッシーはこれまで共に歩んできた仲間なんだぜっ。その仲間の言葉を信用しようぜっ!!

新しい風…その後LIFE CRUSADERSはメジャーへと進出。「国際人権擁護EXPO」を舞台に、社会的な弱者に対しての希望を与えゆく使者として、大きな脚光を浴びたのだったが。。。

SCENE・24 後悔

ボブ:あの喧騒の日々は何だったのだろう。。。幾つかの諍いがあったとはいえ、世間の追い風に乗り、LIFE CRUSADERSもメジャーへと進出。「国際人権擁護EXPO」という格好の話題を糧に、バンドに対する世間の関心も高まり始めていた。。。が、「国際人権擁護EXPO」の影で暗躍していた芸能プロダクションと政治団体との不正な裏金の流れや癒着的な問題。さらにはそこへ建設業者たちを含む談合的な問題が次々と重なり、あのイベント自体が、じつはその土地を巡る大きな利権ビジネスに絡んでいたことが発覚。。。それだけであれば、我々は単なる被害者バンドとして、逆に悲劇な涙を誘う存在になるはずだった。。。が、黒い影を持った芸能事務所との直接的なパイプを作っていたのが、あのテレビ局のプロデューサー忠であり、このパイプをきっかけに、みずからのプロダクションの再建を計画していたヤッシーだったことから、事件は悲劇から一転、汚辱の嵐に包まれた。

ジェイク:俺らは、ただただ音楽をやりたかっただけ。もう一度あのスポットライトの下で、今の俺ら自身の思いをぶつけた音楽をやりたかっただけのこと。確かにデビューという話をいただいたときは舞い上がったし、再びメジャー・シーンへ戻ってきたときも、「帰ってきた」という喜びを噛みしめていたのも事実。でも、俺らは昔と違っていた。けっして浮かれることなく、目の前にある可能性のための小さな道へ必死にしがみつきながら、ただただ長く音楽活動を続けていくことだけを考えていた。
台湾:そりゃあ、少しは恵まれた生活を送りたかったさぁ。毎日帰る家があり、あったかい布団で寝れる。そんな生活に最初は嬉しい満足を覚えていた。でも人というのは、最低を乗り切ると、徐々に気持ち自体も裕福を求めてしまう。デビューという嬉しい環境に、俺らがまったく溺れてなかったか…と言えば、嘘になる。ヤッシーが再び音楽ビジネスの道へ戻りたかった気持ちもわかる。そのために再び黒い癒着を産み出してしまったのも仕方ないことかも知れない。彼がその手を握ってしまったことを攻める気はない。俺だって、奴と同じ立場だったらそうしていかも知れない。。。

ヤッシー:しょうがなかったんだ。以前懇意にしていた闇社会の連中がLIFE CRUSADERSの存在を知り、これはお金になると判断をしたのもわからなくはない。俺はとにかく戻りたかったんだ。再びあの世界へ戻りたいがために、そして何よりも、もう一度太いパイプを作りあげたいがために、奴らの誘いへフラフラッと応じてしまった。「LIFE CRUSADERSの今後のビジネスについて、すべて俺らに任せてくれないか? もちろん、お前のプロダクション再建には、俺らが全面的にバックアップする。閣下の借金という問題も俺らが手をまわせば大丈夫。そうすれば誰に追われることもなく堂々とみんな表舞台に立てるだろう」。俺はその言葉が、みんなのためになるとも本気で思った。きっと奴らのことだ、何かしら裏があるだろうというのは容易に想像がつく。それでも再び浮上できるなら、きっと新しい道を築けると思ったんだ。。たとえ俺らがピエロになろうとも。。。とっくにここまでピエロとして晒されてきた俺たちだ。今更そんなことは怖くないと思ってたんだ」
閣下:借金をすべて清算し、それで憧れていたメジャーの舞台に立てるなら、、、俺はヤッシーの問いかけに喜んで賛同した。一緒に会った人たちに何か黒い影を感じたとしても、そんなこと俺にはどうでも良かった。ただ,もう一度音楽を背負って活きていける道が見えてきたのが嬉しかったんだ。。。ホント,ただそれだけだったんだ。。。

ボブ:すべては夢だったのか…。俺らは長い長い、ひとときの夢を見ていただけなのか? この暗雲が、結局は俺らの音楽人生の歯車を、再び狂わせることになった。。。


SCENE・25 闇

新聞やテレビなどのメディアは、一切にLIFE CRUSADERSへ牙を剥け始めた。。。

「「国際人権擁護EXPO」の影で暗躍していた芸能プロダクションと政治団体との不正な裏金の流れや癒着的な問題。悲劇のバンドと称されたLIFE CRUSADERSだったが、メンバーの一人ヤッシーことと風見泰と暴力団組織と癒着、様々な契約をしていたことが発覚。芸能界を汚し地に堕ちた男が、再び黒い芸能界への復帰を画策。騙されるな、あの悲劇の善人顔に。。。」

LIDE CRUSADERSに対する様々な誹謗中傷が飛び交い、バンドを取り巻く環境も一転した。それまで温かい眼差しを送ってくれていた人たちまでもが、マスコミの喧伝に煽られ、汚い言葉をバンドへと向け始めた。

この日、人権保護イベントのゲストとして登場していたLIFE CRUSADERSの面々にも、汚い言葉が次々と浴びせかけられていく。

客1:お前ら、俺らの善意を騙してやがったのかよっ!
客2:やっぱお前らは、ど〜しようもない悪辣だぜっ。もう1回ホームレスへ堕ちてしまいなっ。
客3:って言うか、もぅ二度と楽器なんか触んじゃねぇよ。お前らのせいで、全国の擁護団体が迷惑こうむってんだからよっ。

罵声を浴びられようが、ジッとステージ上無言でたたずむメンバーたち。
その模様を追いかけるメディア連中。

ジェイク:俺らができることは音楽だけなんだ。この音楽ですべての誠意を見せていくことしか出来ない。だから聴いてくれ。俺らの歌を聴いてくれ。
客4:お前ら、聴いてくれって何偉そうに上からの視線でしゃべってんだ!
客5:聴いてくださいだろっ!!
ジェイク:…そう、聴いてくださいでしたね。でも、これだけは信じて欲しい。俺らは、ただ「俺らの活きてる場所」を求めて歌い始め、「活きてる実感」を覚えたくてバンド活動を続けてるんだってことを。。。

後ろを振り向きながら。。。

ジェイク:次の曲行こうや。

メンバーみんな無言で頷く。

ジェイク:聴いてください。『LIFE CRUSADERS』の夢。

その歌う姿に対し、次々飛び交ってゆく罵声。次第にその声は、物を投げつける行為へと発展。ステージ上には次々とガラクタが投げつけられいく。
そのうちの一つが、ジェイクの額へ当たり、彼は血を流し始めた。。。それでも歌い続けるジェイク。

その姿を観た閣下は演奏を辞め、客席へ飛び出していこうとする。その姿を必死で止めるボブ。
その模様をチャンスとばかりに撮影していくメディアたち。

何時しか演奏はストップ。関係者たちがメンバーらを楽屋へ誘導していく。それでも一人ジェイクはマイクを前に歌い続けていく。額から血を流し、いくつもの罵声を浴びせられようが、彼は一人歌い続けていた。

失くしたわけじゃない 忘れたくもない
だから活きて響くんだ この歌声たちが
背中に生えた翼を見つけたから
それが僕らの証 
LIFE SRUSADERSの夢

その姿を観たヤッシーが再びステージへ戻り、ギターを弾きだした。。。その姿を観たボブと閣下もステージへ戻り、再び物や罵声飛び交う中、必死に演奏し始めた。。。

相変わらず一部からは罵声が飛び交っている。でも大半の観客たちは、真剣に彼らの演奏へ視線を注ぎながら、いつしか優しく手拍子まで始めていた。。。

SCENE・26 数年後 あれから。。。

ジェイク(回想):結局LIFE CRUSADERSは、大きなスキャンダルに巻き込まれ、解散した。あれ以来メンバーも、みぃ〜んなバラバラになっちまった。
結局ヤッシーは会社の再建どころか、芸能界への復帰も夢と消えてしまったらしい。
ヤッシーと行動を共にしようとした閣下も、その後の消息は不明だ。
ボブと台湾は、あの後再びバックバンドの仕事をつかみ、しばらくはミュージシャン活動を続けていたと聴いたが、果たして今は何をしているんだろう。。。
俺? 俺はあの後、ソロとして活動しないかという話をいただいた。幸い昔からのファンたちの支持もあり、みんなには申し訳ないと思いつつも、ソロとしての道を歩み始めた。。。
でも、一度落ちぶれたアーティストが、再び大きな羽根を羽ばたくようなほど甘い舞台でないのも事実。
結局は俺もアルバム1枚を発売し、多少まとまったお金を得たことをきっかけに、改めて自分を見つめ直そうと、数年回海外を彷徨い続けてきた。。。

SCENE・27 雷電谷公園

そこにはジェイクがいた。夕方の公園。彼は手にしたハーモニカを吹きながら、一人焦燥な想いへと包まれていた。

男:おい、そこのおっさんよ。今のメロディってあの伝説のバンドLIFE CRUSADERSの名曲『LIFE CRUSADERSの夢』じゃねぇのか?

 懐かしい響きを持った声。。。振り向いた先には。。。

ジェイク:ボブさん…。
ボブ:なんだお前もまた、こんな場所へ戻ってきちまったってぇのか?
閣下:寂しいじゃねぇかよ、お前こそ俺らの希望の星だとズッと思っていたのに。。。

 そこには、懐かしい面々が顔を並べていた。。。

ボブ:うちらな、またバンド活動を始めようと思ってるんだ。もちろん舞台は、この青空の下さ。やっぱ俺らには、これしか生きざまがないんだよな。どうだい? 一生青空の下で俺らと一緒に歌い続けてくっていうのは? ちょうど今ヴォーカルを探してたところだったしさ。お前さんは、かなり歌えそうだからよっ。

 その言葉を聞き、胸へ込み上げくる想いを感じたジェイク。

ジェイク:俺みたいなおっさんの歌い手で良かったら、ぜひ一緒に参加させてくれないか?
台湾:歓迎するぜっ!!
ヤッシー:っつ〜ことは、今日は歓迎会ってことだな。
ボブ:そのみなりじゃ、どうせ泊まるとこもないんだろう。一緒に今日はパーティしようやっ。
ジェイク:どっかで聴いたセリフだな、それって(笑)

 夕闇が5人を包んでいく。。。

ジェイク:ところで、バンド名はどうするんだ?
ボブ:決まってるだろ、LIFE CRUSADERS FLIGHT AGAIN!!

ジェイク:俺らの背負った翼は萎えてなどいなかったんだな。
ただ休めてただけだったんだな。もう一度…いや、これからは何度だって羽ばたいてやるよ。それしか俺らは出来ないんだからな。それが俺らにしか築くことの出来ない道なんだからな。


END。。。。。


と言うことで、ベーシックは作りあげました。
これから本格的に小説にでもしていこうか…と思案中。
後半はかなり駆け足で辻褄のあわない展開も多いので、
現状じゃダメダメな内容です。
まずは書き上げなきゃということで書き上げました。
チャンチャン






コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

将軍様の下僕の日記集  更新情報

将軍様の下僕の日記集 のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング