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将軍様の下僕の日記集 コミュのLIFE CRUSADERSの夢 ベーシックまとめ 1

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SCENE・1 昼下がりの公園 
           
 ホームレスたちが暮らす公園の、とある昼下がり。園内に響くハーモニカの調べ。それを聞きつけた、一人の男。
               
ボブ:おっ?! なんだろう、この音色は? どっから流れてくるんだ?!っつ〜か、誰がハーモニカなど吹いてるんだ?? 今日は救世軍の食事配給へ並ぶため、みぃ〜んな出っ払ってるはずなんだか…。こんな滅多にないラッキー・デーに腹を壊し、トイレを往復しているワシじゃあ、あるまいし…。
               
ハーモニカの調べへ引き寄せられるよう、ボブは流れる音のほうへと歩いてゆく。ボブの視界に入ってきたのは、大空を見上げながらブルースハープを吹く、一人の男。
               
ボブ:いい音色してんなぁ。その曲って、昔噂を巻き起こした歌だろっ。ほらっ、なんだっけかなぁ…。彗星のごとくデビューして、瞬く間にスター街道を驀進していったんだけど、なんか事件を起こして消えちまった…。えっと、えぇ〜っと…
               
 男は吹いていたブルースハープを口元から外し、ジッとボブを見つめている。。。
               
ボブ:う〜ん、すまんっ、忘れちまったよ。そんな昔の話でもないだけどな、ここでの1日は、世間で流れる1日とは違って、一週間ぶんの悲しみを背負うことになるから、どんどん過去の記憶を風させちまうんだよっ。まぁ、そうでもしなきゃ、誰もここにはこないって。みぃ〜んな、何かを早く忘れたくて、ここへ足を踏み込んだ連中ばっかだもんなぁ。。。わしもそうだけど、お前さんもそうなんだろう…。

 ジッと黙り込んでいる、ジェイク。。。

ボブ:おっといけねぇ、ここじゃあ”他人の過去を聴く”のは御法度だったな。誰も綺麗な身体して、ここへ流れ着いたわけじゃあないし。お前さんがどんな理由でここへ来たのかも、俺らにとってはどうでもいいことだな。でもお前さん、最近ここへ越してきた新入りさんだろっ。あんまし見かけない顔だし、まだ一度も、うちらのパーティへ参加したことないよなっ。まぁパーティなんて言ったって、みんなが集めた残飯や、誰かが働いて稼いだ金で買った日本酒を、みんなで囲みながら一杯やってるだけの、ただの飲み会だけどな。ところでお前さん、何時ここの楽園(公園)へ来なさったんだ?
               
ジェイク:まだ一週間経ってないかも…。
               
ボブ:そうかぁ、それじゃあしょうがないよなぁ。今日はな、月に2回ある救世軍とやらの人たちによる、食事無料配給の日なんだ。仕事にありつけた奴以外は全員、かならず並んで飯をもらいに行くんだよ。まぁ俺のよう、肝心な日にお腹壊して、公園のトイレを何往復もしているど〜しようもねぇ奴もいるけどよぉ。
 まだここのしきたりを知らない新入りさんだから、教えといてやるよ。ここ周辺の公園ではな、毎月第1第3土曜日のお昼から、救世軍と名乗る教会の方々が、俺らのよう働く術を持たない連中のために、中央公園に集まったホームレスの連中らに向けて、ただであったかい白飯とカレーを食わしてくれるってぇわけよ。まぁ、うちらのような年齢の若いホームレス軍団は、年配者へ配り終わってから配給がまわってくるぶん、朝から並んでも、昼過ぎになっちまうんだけどな。
               
 ボブの話に聞き入っていたジェイクだったが、再びブルースハープを口元へと当て、大空へ向かって吹き始めてゆく…。側の椅子へ身を横たえながら、その音色へ耳を傾けていくボブ。
               
ボブ:お前さん、昔そうとう音楽をやってた口だな、その音色は、そんじょそこらのお遊びミュージシャンには出せない響きだぜ。俺も昔は音楽を齧ってたから、そのくらいの耳は持ってらぁ。
               
 ボブの声が耳障りと感じたのか、ジェイクへスクッと立ち上がり、ボブのもとから離れようと歩き始めた。。。
               
ボブ:おいっ、いっちまうのか? 今度うちらのパーティへ顔出しなよ。うちのまわりには、昔音楽で一旗振った連中がけっこう集まってるからよっ!!

SCENE・2 夜の宴会場 

 夜の公園。数人の男たちが、たき火を囲みながら宴会を行っている。。。

閣下:いや〜、今日は大漁やで大漁。三丁目のコンビニあるやろっ。あそこのコンビニが改装するらしいんよ。で、昨日がちょうど改修前最後の日…っつ〜わけで、救世軍の列へ並ぶ前に、しっかり3袋分もしっけいしてきちまったってわけよ。今夜は飯もんだけじゃなく、いろ〜んなお菓子や酒も入っと〜からな。

松爺:わしゃあ、お菓子はいらんなぁ。あのパリッパリッとしてしょっぱいだけのポキチとか、わしの口にはあわんわ。

閣下:松爺、それはポキチじゃなくてポテチって言うんや。正確にはポテトチップスやけどな。原材料は、松爺の故郷の名物、じゃがいもやでっ!!

松爺:じゃがいも言われても、わしの知ってるじゃがいもは、もっとゴッツゴツして丸っこいもんだし。。。そうや、台湾の顔みたいにな。

台湾:なんで、おいらの顔がじゃがいもなんや。確かにどっかの野球選手みたいに、デコボコッとした顔だけどな。
                            ボブ:確かに台湾の顔は、じゃがいもだっ。今にもニキビの間から芽が生えてきそうなくらいだからな。

台湾:ボブさんよぉ、相変わらずきっついなぁ。。。

ボブ:そうそう、みんな最近この公園へ住み着いた新入り知ってるか?

閣下:そんな奴いたっけ?

台湾:いや〜、俺はまだ出会ってないなぁ。。。。

ヤッシー:あの茶髪でロンゲの奴やろっ。どっかミュージシャン崩れしてる風貌の、、、最近よくこの辺ブラブラしながら飯漁ろうとしてるから、「ここには縄張りってものがあるんだ。新入りは2駅くらい先まで探しに行きなっ!」って、怒鳴ってやったよ。そうしたら、スゴスゴと、どっかいっちまったけどな。そいつが、どうかしたんかい?

ボブ:今日、わしは腹壊して救世軍の配給へ行けなかったのは、みんなも知っとるやろっ。も〜何度目かなぁ、トイレへ駆け込み出てきたと思ったら、そのロンゲの金髪がハーモニカ吹いとったわけさ。

ヤッシー:茶髪でロンゲ…やろっ。

ボブ:そう、茶髪でロンゲ…って、そんなのどっちだっていいんだよ。ロンゲの茶髪だろうが、茶髪のロンゲだろうと…。そんなことよりあいつも、なんか深い傷持つ男なんやろうなぁ。あいつの吹くハープの音色には、なんや哀愁があふれとったんよ。

閣下:そんな、俺らだってみんな傷持つ関係やないか。哀愁なんかいっくらだって出したるでっ! 愛人は,チッと出せんがなっ!!

台湾:愛人って……そんなの何処にいるんだよ(笑)

ボブ:いやいや、わしが言いたかったのはな、あの腕前は、そんじょそこらのミュージシャンには出せん音やということなんよ。閣下もヤッシーも台湾も、もともと楽器を触ってた過去があるから、聴けば一発で察知しちまうと思う。

松爺:なんや、わしの名前だけ呼ばれてないぞっ。

ボブ:松爺はロックわかるんか? 

松爺:知っとるぞ、ロックくらい。「シェケナベイベ〜!」ってな…。

 一同沈黙。。。

ボブ:すまん松爺、うちらこんな生活しとるけど、みんな60〜70年代生まれなんで、「シェケナベベンベベン」だか「シェケラッチョ」だか言われても、わからんわ。

松爺:せやから「シェケナベイベ〜!!」だって。。。

ボブ:一応、うちらのパーティへ誘いはかけたんだけど、、、また顔を見かけたら、誘ってみようと思うんだ。なんか同じ臭いを奴からは感じるって言うかさ。。。みんなも見かけたら、ぜひ声をかけてやってくれよ。

閣下:なんやボブさん、久々に昔取った杵柄が疼いてきたか?! わしも部屋ん中にスティックが眠ってるから、今度久々に合わせたろうか?? っつ〜ても、ドラムは空き缶くらいしかねぇがよっ(笑)

ヤッシー:おっ、いいねぇセッションかぁ。。。。なんか今日は閣下のおかげで飯も酒もたくさんあるし、唄いたい気分やな。俺も、部屋ん奥からギターでも引っ張りだすかっ!!

松爺:お前ら、部屋部屋って、ただのほったてビニールハウスじゃねぇかよ。まぁ、あの汚さでも、住んじまえば一国一城の主だからな。

ボブ:松爺、言いこと言うなぁ。。って言うか、ヤッシーのギターの弦錆びてて使えねぇじゃんかよっ。

ヤッシー:それ、わかってて言ってんだよ。いいじゃねぇかよ、酒も入ったことだし、ミュージシャン気取って一気飲みでも、やからしますかっ、今日はっ!!

閣下:いいねぇ〜、さすがのんべぇギタリスト(笑)

ヤッシー:そんじゃあ、一番手やらしていただきますっ!!

住処から持ってきたコップに並々と日本酒を注ぎ、一気飲みをするヤッシー。そして、ヤッシーを煽りたててゆく仲間たち…。

全員:ヤッシーの飲むとこ、観てみたいっ!! そ〜れ、一気!!一気!!一気!!!

ポツンとたき火の灯が見える公園の片隅で盛り上がってゆく宴会。その姿はやけに寂しそうでもあった。

SCENE・3 昼の公園 

 昼過ぎの公園。この日は土曜日ということもあり、お昼過ぎから幾グループもの若者たちが公園へと集まり始める。簡易に設えたバスケットコートで、3on3をやるチームもいれば、ラジカセから大音量でHIP HOPを流しながら、ダンスの練習に明け暮れる女子チームたちもいる。少し離れたところでは、アコギ片手に歌うストリート・ミュージシャン。他にも、デート中のカップルや家族連れなど、とてもほのぼのとした風景が目の前には広がっている。
 そんな日常の風景の中へ、同じく非日常でありながら日常な風景の一部として溶け込もうとしているホームレスのテント村。ちょうどブランコに座りながち、ヤッシーが日向ぼっこがてら、久しぶりに取り出したアコースティック・ギターの弦を磨いている。

ボブ:ヤッシー、久しぶりじゃないか、そのギターを手にするのは。。。

ヤッシー:おっ、な〜んだボブさんかよ。なんや昨日バンドの話などしちまったもんだからさぁ、ついつい懐かしくなってなぁ、大切に閉まってあったギターを引っ張り出してきちまったってぇなもんよ。

ボブ:これ、オベーションのアコギだもんなぁ。しかも30年以上も前の型だろっ。これ売ると、けっこうなお金になっただろうよ。

ヤッシー:ボブさんも、きっついこと言うなぁ。いくらどん底の生活に堕ちたと言っても、楽器は俺らの魂じゃねぇかよ。これを売っ払っちまったら、俺自身のプライドもすべて捨てることになっちまうからよぉ。。。まぁそんなこと言いつつ、エレキは全部売っ払っちまって、すべて呑み代へ消えちまったけどな(笑)

ボブ:こんなとこに電気楽器持ってきても、音出せないからな(笑)

ヤッシー:そう言ってるボブさんだって、ズッとベースを捨てずに持ってるじゃねぇかよ。確かにここに住んでる限り、音なんか出せねぇけどな(笑)

ボブ:そうなんだよなぁ。俺もたまには竿4弦でも触ってみるかな。。。

ヤッシー:いいんじゃねぇ、いいんじゃねぇ。ここらで弾いてる下手っぴぃ〜な連中に聴かせてやんなよ、俺らの筋金入りの演奏ってぇやつをよ(笑)

錆ついた弦を手入れしながら、話しかけてゆくヤッシー。やがて磨き終わったのか、一弦一弦鳴らしながら、ヤッシーはギターのチューニングを行っていく。

ヤッシー:おっ、まだまだいい音してんじゃん。

やおら手にしたギターを爪弾きながら、ヤッシーは歌い始めた。楽曲はRCサクセションの『雨上がりの夜空に』。

ヤッシー:♪この雨にやられてぇ〜、エンジンいかれちぇったぁ。おいらのポンコツぅ、とうとうイカれちまったぁ♪

ボブ:イカれちまったかぁ。。。。まぁ本当にイカれちまったのは車じゃなくて、ここにいる俺ら自身だけどな。

ヤッシー:♪ど〜したんだい、ヘイヘイベイベェ〜!バッテリーはビンビンだぜぇ〜♪

ボブ:なんで俺は、こんなとこに居るんだろうなぁ。たかだか数年前までは、俺だってバッテリービンビンな生活をしてたはずなのに。あの重低音を響かせながら、ちっこいながらもステージの上でスポットライトを浴びてたはずなのに。。。

何時しかヤッシーの元へ、それまで歌っていたストリート・ミュージシャンが近づき、ヤッシーの歌声へ耳を傾けている。
歌い終わったヤッシーに向けて…。

ストリート・ミュージシャン:それ、いい曲っすね。おじさんのオリジナル?

ヤッシー:あん? オリジナルやと?! お〜い、ボブさん、このガキに言ってやれっ、「お前はRCサクセションも知らないのか」って。街ん中で歌うミュージシャンなら、それくらい勉強しとけって!!

 ムッとするストリート・ミュージシャン。

ボブ:すまんなぁ、こいつ久々に演奏したもんで浮かれてんだよ。こいつの汚い言葉、許してやってくれ。

ストリート・ミュージシャン:まっ、まぁいいっすけど。。。

ボブ:さっき演奏してたのは、RCサクセションと言って、日本へロックを根づかせた偉大なロックバンドなんだ。忌野清志朗って知ってるか?

ストリート・ミュージシャン:あっ、あ〜名前くらいなら。

ボブ:彼が歌ってた楽曲でな。俺ら世代のミュージシャンを目指してた連中は、誰もがこぞって真似してたもんさっ。

ストリート・ミュージシャン:おっさんも、昔はミュージシャンだったの?

ボブ:ミュージシャン…かぁ。。。そんな響きを毎日浴びてた頃もあったっけなぁ。。。。

 回想していくボブさん。

SCENE・4 ボブさんの回想

ボブ:今じゃ俺もしがないホームレスに陥っちまったけど、こんな俺だって、一時期はスポットライトを浴びて、派手な生活をしてたことだってあったんだよなぁ。と言っても、俺自身のバンドでのスポットライトではなく、しがないバックバンドのメンバーとしてだったけど…。それでもいろんなプロのシンガーをサポートする仲間の一人として、何度全国をまわったり、スタジオでレコーディングしたことか。。。それが俺の分相応…っつ〜か、実力の限界だったのに、表の顔を支える裏役って役割を、何時しか俺、忘れてしまってたんだよなぁ。。。


 場面は一転、コンサートホールの楽屋にて。。。

シンタロー:おいボブ、今日もキメてんのか?
ボブ:やっぱこいつをキメとかないと、いい演奏が出来ないんだよなぁ。
シンタロー:お前も今は売れっ子ベーシストなんだから、そこそこにしとかないと、後で大変なことになっちまうぞっ!
ボブ:わかってるって。俺もいい大人だから、抑えるところは抑えておくって。それよりも昨日、あの六本木のバー「マスタード」でさぁ、例の外人からいいネタ仕入れてきたんだ。これがまた交じりっ気なしだから、けっこういい感じで気分をアゲてくれるんだよ。
シンタロー:って、お前ここには持ってきてないだろうなぁ。
ボブ:大丈夫、大丈夫。。。バレないようにトイレでキメとくからよっ。
シンタロー:って、お前また持ってきてんのか?! お前がハッパやるぶんには構わんけどなぁ、俺らまで巻き込まれたくはないんだよ。俺だって2歳の子供を抱えた身で、まだまだ稼がなきゃいけないし。何よりもシンガーのHIROが今メチャクチャ売れ出した頃じゃない。この波に俺も一緒に乗って、もう一度おっきな夢を描きたいんだよ。
ボブ:俺だってそうだよ。一度はプロへの道を絶たれ、趣味でやるしかないかな…と思ってた俺を救ってくれたのが、今のHIROのプロデューサー,ジマーさんだったからなぁ。今はしがないバック・ミュージシャンだけど、また何時か、俺自身も華やかなスポットライトを浴びてぇんだよ。
シンタロー:だったら、ガキの頃みたいに「SEX/DRUG/ROCK’N’ROLL」なんて幻想は、とっとと消し去れよ。俺らは職業としてミュージシャンをやってるんであって、けっしてアーティスト様ではないんだからな。そんなハッパに頼った人生なんて、若い頃の幻想や憧れか、現実からの逃避にしかなんねぇからな。

 そこへ現れたのが、HIRO

HIRO:おはよ〜。
2人:おはよ〜っす。
HIRO:今日もよろしくね。あれっボブさん、今日はやたらツヤツヤした笑顔してるねぇ。なんかいいことあったの?
ボブ:いや〜、そんないいことなんて、ここで演奏してる以上にいいことなんて、今の俺にはないっすよ。
HIRO:嬉しいこと言ってくれるなぁ。僕だって、ボブさんのベースを腰で感じてると、いい感じで身体がリズムを刻んでくんだよね。
シンタロー:か〜っ、ありがたい言葉だねぇ。なんかボブの野郎、昨日は六本木のお店でお姉ちゃんといいことあったらしいんだよ。だから今日はウキウキらしいんだってさ。
HIRO:それって羨ましいなぁ。ねぇ今度僕もそのお店連れていってよ。
ボブ:そんなHIROさんなんかがお店に入ったが最後、みぃ〜んなHIROさんのところへいっちゃうでしょ。も〜俺の出番がなくなっちまうよっ。
HIRO:ハハハッ。もちろん、今日のライブが終わったあとも打ち上げ行くんでしょ。そこで打ち合わせしようよ。
ボブ:OKさっ。まだ来てない他のメンバーにもいろいろ都合は聴いておくから。なぁシンタローも来るよな。
シンタロー:おっ、おぅ。。。
HIRO:あれっ、シンタローさんテンション低いねぇ。
ボブ:こいつは今、子供の面倒のことで大変みたいなんだよ。まぁ、でも絶対に連れていくからさ。それより、リハーサルよろしくっ!
HIRO:こちちこそ、後でリハーサルよろしくねっ。

 立ち去るHIRO。再び楽屋にはボブとシンタローのみが居残る。

ボブ:さぁ〜てと、もういっちょテンション上げるためにも、一発トイレでキメてくっかな。
シンタロー:やっぱ持ってきてたんだ。いい加減、それで辞めとけよ。ラリッたベースと合わせる気なんて、俺はないからなっ。
ボブ:シンタローの実力なら、どんなベースやギターが加わっても大丈夫だって。俺もすっげぇ信頼してっからよ。

 楽屋から出ていくボブ。彼は一人トイレへ籠もり、持参したコカインを鼻から吸い、便器に座りながらマリファナをくゆらせ始めた。。。

ボブ:ふぅ〜。。。

 紫煙に囲まれながら、しばし余韻に浸るボブ。。。
と、突然。。。。

 ジリジリジリジリ〜!!!

警備員:どっ、何処で鳴ってるんだっ?!

ボブ:んっ、どっかで警報機が鳴ってらぁ。まぁ、俺には関係ねぇやっ。

 すると、トイレへ警備員2人が飛び込んできた。
一つだけ閉まったドアを確認するや、警備員たちは、ドアをガンガン叩き始めた。

警備員:大丈夫ですか? 大丈夫ですか??

 驚くボブ。。。

ボブ:えっ?!

警備員:ここの警報装置が火事を察知してベルを鳴らしたんですよ。
 
 あわててマリファナを消す、ボブ。。。

ボブ:すっ、すまん。ここ禁煙だなんて知らなくて、つい煙草を吸っちまってたもんで。。。

 普通の煙草の臭いとは違うことを察知した警備員。

警備員:とにかくすぐに開けてください。
ボブ:でっでも、まだおっきいほうをやってる最中だから。
警備員:とにかく開けてください。でないと無理にでもこじあけますよ。

 いそいで吸引機を仕舞い、ガチャッとドアを開けたボブ。

警備員:ちょっと身体検査させてもらっていいですか?
ボブ:なっ、なんでだよ。俺はただ煙草を吸ってただけだぜっ!
警備員:いいから言うことに従ってください。

 そう言い放ちながら警備員2人は、ボブをはがい締めにし、ポケットをまさぐっていく。。
 出てきたのは、コカインの袋と吸引機、そしてマリファナと、草を巻くための紙切れだった。

警備員:これはなんですか?
ボブ:なっ、なんですかって…。煙草だよ。
警備員:おい、すぐに警察へ連絡入れて。
ボブ:警察って、俺はこれからHIROのバックで演奏するんだよ。お前らもそのためにいるんだろっ。
警備員:我々はホールに雇われた警備員です。
ボブ:だからって、これから大事な本番が始まるんじゃねぇかよ。俺がいないことには、ライブも始まんねぇっていうのがわかんねぇのか?!
警備員:とにかく連れ出して、警備員室へ連れてけ!

 ピーポーピーポーと響くサイレンの音。その音を聞きながら、がっくりうなだれているボブ。。。

SCENE・5 夜の宴会場

ボブ:なぁ、じつは昼にヤッシーと話をしてたんだがよ、うちらみんなもともとバンドマンをやってたじゃねぇか。
松爺:わしゃあ、バンドマンなんかじゃないぞ。
ボブ:まぁまぁ、松爺も話だけでも聴いてくれよ。じつは今日の昼な、ヤッシーが久々にギターをひっぱりだして演奏してたら、意外にも若いミュージシャン志望の連中が、ヤッシーの演奏に食いついてきたんだよ。それを観たとたん、「まだまだ俺らの音楽も通用するんじゃないの?」と思っちまったわけよ。
閣下:俺ら、誰も通用しなかったから、ここに居るんじゃないの? ボブさん、それはおっきな勘違いだよっ。
ボブ:なにもプロのミュージシャンを目指そうってわけじゃないんだよ。今や道行く子供にまでバカにされてる俺らだけどな、培った歴史ってものの重みには、まだまだ説得力があるんじゃないかと思ってるんだよ、俺は。確かにバンドをやったからって、何が変わるわけじゃない。でもな、俺らをバカにしている若い連中の鼻ッぱしらを折るくらいの力は、まだまだ持ってんじゃないかと思ってるんだ。
ヤッシー:確かにな。俺も今日演奏してて、それは確信したぜっ。
ボブ:俺も久々にベースを引っ張りだそうと思ってるんだ。
閣下:だけど、電源やアンプはどうすんだよっ。
ボブ:なぁ〜に、空き箱でも塗り抜き、ネックをくっつけ、その上に弦を張った簡易ベースでも設えようかなと思ってさ。ちょうどヤッシーは、そういう日曜大工が得意だし。閣下も、箱をくり抜いてカホンでも作ってもらいなよ。そうすりゃあ、簡単なアコースティック・バンドくらい出来ちまうぜっ。
松爺:わしは、何をやりゃあいいんだ?
ボブ:そうだなぁ、松爺は拾った洗濯板をぶら下げてくれよ。
松爺:それでどうするんだ?
ボブ:閣下のドラムスティックを借りて、洗濯板を上下しながら叩くんだよ。
閣下:おっ、ラスティックをやっちまうってことだ。
ボブ:そう。それだったら松爺だって出来ると思うんだ。
閣下:そりゃあいいなぁ。ところで、誰が歌うんだ?
台湾:俺、俺に歌わしてよ。
閣下:お前はヴォーカルって顔じゃねぇからなぁ。台湾はもともとSAX吹きだろっ。俺んところによ、拾った縦笛があるから、それでも吹いてくれよ。
台湾:縦笛って、、、俺は小学校の鼓笛隊じゃないって。
閣下:お前の歌聴いてるよりは、よっぽどましだろっ。
松爺:そうじゃ、そうじゃ。
台湾:松爺まで。。。。
ボブ:とにかく、閣下はカホンを叩いたパーカッション、俺がベースで、ヤッシーがアコギのギター。台湾が縦笛に、松爺は洗濯板のパーッカョン。これで決まりだな。
台湾:ところでボーカルは?
閣下:それは,さっき俺が聴いたセリフだって。
ボブ:ボーカルはあのハーモニカ吹き…あいつを口説いてみようと思うんだ。
閣下:大丈夫なのか、そいつは?
ボブ:正直まだ歌声を聴いたわけじゃない。でも、わかるんだよ。あいつがヴォーカリストだってことは。。。それよりも、何からセッションしようかっ。。。
ヤッシー:RCサクセションでいいんじゃねぇ? 今日ウケが良かったしよ。
閣下:いいなぁ『トランジスタラジオ』かぁ。
ヤッシー:『雨上がりの夜空』だって。
閣下:何言ってんだよ、RCサクセションといえば『雨上がりの夜空』だろうが。。。
松爺:わしゃあ、松山千春の『長い夜』がええなぁ。
台湾:それはロックじゃないって…。

楽しそうに会話が続いていく宴会場。その風景を遠くから見ていた男がいる。ジェイクだった。。。

SCENE・6 セッション

 昼下がりの公園。相変わらず園内では、ダンサー志望の子たちが踊ったり、バスケットコートではバスケに興じる若者たちがいたり、ストリート・ミュージシャンが演奏してたりと、何時ものような風景が広がっている。そんな公園の片隅に、異様な楽器を携えたホームレスの集団がいた。。。

ボブ:さっそく練習開始だな。何度か合わせてみて上手くグルーヴが産まれたら、もっと表舞台へ登場してやろうぜっ!
全員:お〜!
ボブ:まずはREサクセションからキメてくか。もちろん曲は『トランジスタラジオ』と『雨上がりの夜空』な。
閣下&ヤッシー:いえ〜っ!!

閣下:ワン、ツー・スリー・フォ〜!!

閣下の叩くカホンのカウントに合わせ、セッション演奏がスタート。簡易楽器とはいえ、さすがみんな昔取った杵柄。演奏は心地よいグルーヴを描きあげていく。ちなみにヴォーカルは、ヤッシーが仮ヴォーカリストを担当。

閣下:なんか、いい感じじゃねぇ?!
ヤッシー:久々に合わせたとは思えないノリだよな。
ボブ:やっぱ、みんなさすがだな。
松爺:わっ、わしゃあ。。。
ボブ:松爺は、それでOKだよ。無理に演奏へ加わらず、気が向いたときにジャカスカ鳴らしてくれれば、それでいいからさ。
松爺:うんにゃ〜。

気をよくしたメンバーたちは、次々に青春時代の音楽をセッションし始めていく。MODSにARBのようなロックから、吉田拓郎やかぐや姫のようなフォークまで。もちろん松爺のリクエストだった松山千春の『長い夜』だって、チョチョイと演奏してしまうほどだ。

その楽しげな演奏。心地よい風に乗ったセッション演奏は、何時しか公園中へも響いていた。その音色を耳にし、次第に若者連中がホームレスの集団を取り囲み、演奏風景を眺めていく。。

バスケ男1:いえ〜っ、おっさんらメチャメチャ格好いいじゃんかよぉ〜!
ダンサー女1:ホームレスにしとくのもったいないんじゃない? これで匂わなきゃ、私メロメロよ〜!
バスケ男2:か〜っ、そりゃあいいわっ。

思わぬ反響に、とまどい萎縮してしまうメンバーたち。

バスケ男1:おっさ〜ん、もっと何か聴かしてくれよ。俺ら、マジに痺れてんだぜ、その演奏によぉ!!
ダンサー女2:そうよ、そうよっ!!

 そこへ、一人のストリート・ミュージシャンがギターを抱えやってきた。

ストミュ:あの〜、俺もセッションに混ぜてもらっていいっすか? 俺もRCサクセションは覚えましたから。
ボブ:おっ、あんときの青年かっ。いいさいいさ、大歓迎さっ。

その姿を遠くから見ているジェイク。
その視線を発見したのは、ボブだった。

ボブ:おっと、セッションを始める前に、うちのヴォーカリストを紹介しなきゃな。おいっそこのハーモニカ吹き、ここに来て歌ってくれよっ。

ジェイクを発見した若者連中。

若者連中:歌え、歌え、歌え、歌えっ!!

その声へ無理やり呼ばれ、重い腰を引きずりながら、本当に仕方なくという表情でバンドの前に現れたジェイク。

ダンサー2:おじさ〜ん、名前はぁ??
ジェイク:(ぼそっと)ジェイク。。。
ダンサー2:キャ〜ッ、格好いいぃ〜!ジェイクさ〜んっ!!

ボブがジェイクへ耳打ちする。

ボブ:RCの歌は知ってるよな。いきなりぶっつけ本番で申し訳ないけど、歌ってくれよ。頼むっ!!

無言で頷くジェイク。そして演奏は始まった。
いきなり合わせたとは思えないほど、ピッタリ重なりあった演奏と歌声。何よりも本格派ヴォーカリスト然とした歌声に、若者たちも圧倒されつつ、次第に興奮し踊り出していく。
そして演奏が終り、公園中が大きな拍手に包まれてゆく。

バスケ男1:すげぇよ、このおっさんらっ!!
バスケ男3:最高だぜっ、すげぇクールだぜっ!!

本気で感動していく若者たち。憧れの眼差しをメンバーらへ向けていく若者たちの姿を見て、メンバーらも照れを隠せずにはいれなさそうだ。

閣下:まっ、まぁ〜俺らが本気を出せばこんなもんよ。
また聞きたかったら、週末ここに来いよ。今度はもっといい演奏を見せてやるからなっ。
バスケ男2:お〜、また来らぁ…って言うか、俺らこそ毎週末はここにいるけどな(笑)
ダンサー女2:あたしらもっ(笑)
ストミュ:(ヤッシーに向かって)この弦セット幾つかあるんで、良かったら使ってください。またぜひ一緒にセッション混ぜてください。またレパートリー増やしておきますから。
ヤッシー:おっ、あっ、ありがしょ。

 言葉にならないヤッシー。一瞬にして公園の人気者になってしまったホームレスのバンドたち。
 立ち去る若者たち。その中の一人が振り向きながら…。

ダンサー女1:ねぇ、おじさんらのバンド名はなんて言うの?

とまどうメンバーたち。

台湾:バッ、バンド名だってよ。。。
閣下:どうすっべぇ〜。。。
ボブ(女の子へ声をかけるよう)今度来たときに発表してやるよ。だからまた演奏聴いてくれよっ。
ダンサー1:OK〜!!

ポツンと夕暮れの公園に取り残されたメンバーたち。

ボブ:そろそろミーティングでもやるかっ、バンド名も決めなきゃいけないし。新しいメンバーも加わったし、これから歓迎会も兼ねてパーティやんなきゃなっ。閣下、まだ酒はたんまり残ってんだろっ。
閣下:任しといてくれよっ、つまみだってまだまだたんまりあるぜっ。
台湾:あっ、俺も今日仕入れた飯持ってくるよ。

沈む夕陽…公園はゆっくりと闇に包まれていく。


SCENE・7 打ち上げパーティ


お馴染みの夜の公園。。。

閣下:かんぱ〜いっ!!
全員(ジェイク以外が声を出す)かんぱ〜い!!!
閣下:まさか、あんなにウケるとはなっ。そりゃあボブさんやヤッシーがその気になるのもわかるよ。俺だって、久々に魂の疼きを感じてしまってたかんなぁ。あ〜、せっかく吹っ切った夢だったのによぉ。またぶり返しちまったぜぇ〜、音楽の病ってやつがよぉ。
松爺:その割には嬉しそうな顔しとるのぉ。
ボブ:それは、ここにいるみんなも一緒よ。曲がりなりにも俺ら、あのスポットライトの快感を知ってる連中だからさ。やっぱ黄色いい歓声を受けて疼かない奴はいないぜっ。って言うか、それで心が動かない奴は、ミュージシャンの風上にもおけねぇよ。
台湾:俺らを風上に置いちゃ、みい〜んな「臭い臭いっ」て逃げちまうけどな(笑)
閣下:その通り(笑)
松爺:わしも、なにやらやってて楽しかったよ。
閣下:松爺、それが音楽ってぇやつよ。この魔物にかかっちまったら、どんなに生活が落ちぶれようが、逃げられないんだよ。堕ちるところまで堕ちた俺ら自身が、結局このざまだかんな。
ヤッシー:確かに、間違いないっ!!

楽しそうに会話を眺めているボブ。一緒にポツンと座っていたジェイクに、ボブは声をかける。

ボブ:おいハーモニカ吹き。お前すげぇ実力者だな。やっぱプロで活躍してたのか?

黙りこくるジェイク。

ボブ:そういやぁ、まだ名前聴いてなかったな。良かったら教えてくれよ。
ジェイク:(ポツリと)ジェイク…。
閣下:ジェイクかぁ。格好いい名前だなぁ。意外と本名は淳一だったりしてな(笑)
台湾:閣下こそ、本名とまったく関係ないニックネームじゃんかよっ。
閣下:お前もなっ(笑)
台湾:言っちゃあ悪いが、このニックネームはあんたらが付けたんだぜっ。俺は閣下みたいに、最初から台湾なんてみずから名乗ったりしてないって。
閣下:そんなの気にすんなよ。お前のゴツゴツとしたデコボコ顔は、ど〜みても南国なんだよ。だから台湾なんだよっ。
台湾:だから、なんで南国で台湾なんだよ。普通はジャマイカとかフィリピン,マレーシアとか、そっちのほうに走るだろうがよっ。
閣下:いやな、お前が台湾バナナを持ってうちらの仲間へ入ってきた日から、俺らにとってお前は台湾なんだよ。なんなら台湾バナナと呼んでやろうかっ?!
台湾:そっ、そんな〜。だったら台湾でいいよっ。
ボブ:まぁまぁまぁ、ところでジェイク。俺と会ったときにハープで吹いてた曲あったよな。良かったら、それを聴かしてくんねぇか。。無理にとは言わねぇが、せっかく知り合った仲間なんだから、ぜひみんなにも聴かせてやりてぇんだよ、あの演奏をよ。。。
ジェイク:(ポツリと)わかった。。。

やおらハープを吹き始めるジェイク。ジッと耳を傾けてゆくホームレスの連中たち。。。
そして演奏が終わったところで。。。

閣下:それっ、幻のバンド「デザイア・ヘブン」の『スターマン』だろっ。俺、あのバンド大好きだったんだよ。っつ〜ても、シングル1枚とアルバム1枚を発売したとたん、事件を起こして、そのままバンドは消えちまったんだけどな。
ボブ:あ〜、この曲は『スターマン』だったんだ。どっかで聴いたことあると思ってたけど、ようやく思い出したよ。
閣下:確かあそこのヴォーカルが、付き合い始めたアイドルをメンバー内で取り合い、ギターのやつをナイフで刺し殺しちまったんだよな。それでバンドは解散。ヴォーカルはムショへ行き、他のメンバーは何をやってるのやら。。。
松爺:へぇ〜、そんなことがあったんじゃ。
閣下:まぁ噂だけどな、そのアイドルって言うのがど〜しようもない尻軽で、よく日の出のミュージシャンを見つけては食いまくってたらしいんだ。あの事件以来すっかり悲劇のアイドルとなり、それを機に女優へ大転身。今や大物俳優、安田泰三の奥さんってぇわけよ。
ヤッシー:さすが閣下、アイドル芸能物に関しては、なかなかの事情通だねぇ。
ボブ:そんな曲を吹くなんて、お前もけっこうマニアックな奴なんだな。

閣下,ジェイクの顔をまざまざと観ながら。。。

閣下:っつ〜かよ、こいつ、あんときのヴォーカリストじゃねぇの?
ボブ:えっ?!
閣下:(何度も確かめながら)まっ、間違いねぇよ。デザイア・ヘブンのヴォーカリストの淳一じゃねぇかよっ。
ジェイク:その通りだ。。。
ボブ:何があったのか知らないが、ここに流れ着いてきた以上は、同じ仲間だ。俺らもみんな脛に傷持つ身。これ以上詮索するのは辞めておく。な〜、閣下。
閣下:がってんよっ。俺らも人のこと言えたもんじゃないからなっ。俺だって、一時は何人も女はべらしてたほど持て持てミュージシャンだったのによ、株に手を出し、大借金のすえに、ヤクザに追いまくられて、今じゃあこのありさまよ。台湾だって似たようなもんだけどな。
台湾:おっ、俺は借金じゃねぇよ。俺は事務所も仲間にも見捨てられ、金が尽きたら住むところもなくなり、気がついたらここにいるってだけのことだから。
閣下:だけのことって、十分転落人生じゃねぇかよ(笑)
ボブ:まぁこんな仲間たちばかりだけど、よろしく頼むよ。おっとまだ自己紹介終わってなかったな。さっきも話に出てたけど、こいつが閣下で、こいつが台湾。俺はボブ。こいつはヤッシー、そして、ここの公園の主でもある松爺だ。
松爺:よろしくなっ。
ジェイク:よっ、よろしく。。。
ボブ:とにかく飲むかっ。バンド名も決めなきゃいけねぇし。
閣下:そうだそうだぁ〜。また今日も打ち上げ一気かっ!
ヤッシー:やっやめてくれよ〜。俺はこの間、そのおかけで二日酔いになっちまったんだからよぉ。
閣下:そんなヤッシーの飲むとこ,見てみたい。そぉ〜れ、一気一気一気。。。

公園内の宴会は、まだまだ続けていく。。。

SCENE・8 LIFE CRUSADERS誕生

 いく度かのライブ演奏を続けていくうちに、ホームレスのバンドは公園内でも人気を集めたバンドへと成長。ボブのベースも、観客たちからプレゼントされた、使い古されたアコギへと変貌。この日も、公園へ遊びに来た人たちや、公園の常連遊び人たちを巻き込みながら、しばし演奏会を開いていく。

ボブ:いえ〜、今日もみんなありがとなっ。
観客1:おっさ〜ん、最高だぜぇ〜!
ボブ:まさかこんなにも人気が出るなんてなぁ。これもみんなが真剣に聴いてくれるおかげだよ。
観客2:おっさんらの演奏が最高だからだよっ!!
ボブ:ありがとっ、ありがとう〜。前々から言われてたバンド名を、ようやく今日発表したいと思ってます。
観客たち:お〜っ!!
ボブ:名前は、、、命名者のヴォーカル,ジェイクに発表しておよおう。じゃあジェイク、お願いするよ。
ジェイク:何時もみんなありがとうなっ。
女性1:キャ〜、ジェイクさ〜ん、今日もクールッ!!
ジェイク:バンド名だけど、、、見てのとおり俺ら、ただのしがないホームレスじゃねぇか。まして、世の中で言えばまだまだ働ける年齢にも関わらず、こんなところで燻っちまってるど〜しようもない連中だ。だけど、こんな俺らにも夢を与えてくれたのが、このバンド活動だった。そして、こんな俺らを応援してくれるみんなの声援があったから、俺らはこうやって毎週のように楽しくライブ活動が出来てるってわけだ。俺らみんな、一度は音楽捨てたはずの人間ばかり。そんな奴らが、やっぱ再び音楽で人生を救われたんだよ。だったら、そんなどん底を見てる俺たちが、少しでも同じ痛みを持った仲間たちに幸せを与えてやりたい…そう思ったんだ。まさに音楽を通した人生の十字軍。。。俺らはそれを目指そうと思ってる。
観客1:く〜、胸に凍みる言葉だねぇ。
ジェイク:俺らは音楽を通した人生の十字軍。。。そう、LIFE CRUSADERSという名前で,俺らはこれからも「ここ」で活動していこうと思う。別におっきい夢を持ってるわけじゃない。ただ、少しでも音楽を通してみんなに笑顔を与えられたら…そして何よりも、俺ら自身が音楽を通して寂しい人生へ、少しでも生きる糧を覚えられたら、、、そのためにも頑張っていこうと思ってる。もちろんこれからは、オリジナル曲だって歌うつもりだ。
メンバーたち:え〜っ!!
ボブ:おっおい、それって俺たちも聴いてねぇよ。
ジェイク:すまん、じつはこっそり幾つかオリジナル曲を作ってるんだ。それを今度披露するから、一緒に合わせてくれないか?!
ボブ:おっ、おぅ〜。そんな話なら喜んでノッてやるぜ。だてに俺らも長年音楽やってないしな。
観客2:LIFE CRUSADERS,楽しみにしてるぜっ、オリジナル曲ってやつをよっ!!
女性1:あたしも〜っ!!
閣下:よっしゃ〜! また新しい目標も決まったし、今日はLIFE CRUSADERSの旗揚げの日だっ。思いきり楽しんでいこうぜっ!! いくぜ〜、ワン・ツ〜・スリ〜・フォ〜ッ!!!!

SCENE・9 新曲制作…そして一つ目の転機へ…

ジェイク:おい閣下、そこでビートもたれてるぞ。ヤッシ〜も台湾も、もっとビートに合わせて弾いてけよっ!
台湾:ちょっとそんなにきついこと言わんでくれよっ。こっちも久しぶりにオリジナル曲へ携わり、感覚取り戻すために四苦八苦してんだからよっ。
閣下:そうだぜっ。ましてこんな楽器と言えるかわからんような楽器を使っての演奏なんだからよっ。何処まで立派な音を出せるのか…俺らだって頑張ってんだからさぁ。
ボブ:ジェイクも、もうちょっと気持ちを緩めてやろうぜっ。俺らあくまでも趣味の延長でやってんだからさ。
ジェイク:でも、実際に見てくれる連中がたくさんいるじゃないか。せめて俺らのプライドを示そうぜっ!
ボブ:その気持ちもわかるが、もうちょっとスローペースでいこうやっ。
閣下:うちらもがんばるけどさっ、時間はたぁ〜んまりあるんだし、ボチボチッとやってこうやっ。

 少し不満げなジェイク。だが、彼も渋々納得していく。
そんな練習風景のところへ、一人の男が現れた。

記者:ちょっといいですか?
ボブ:はっ?
閣下:なんか用?
記者:みなさんですよね、LIFE CRUSADERSって。
閣下、おっ、そうだけどよ。
松爺:わしらも有名になったもんやなぁ。
ボブ:俺らがLIFE CRUSADERSだけど、それがどうかしたか?
まさか役所の人か? まさか公園から出てけってことかっ?!
閣下:そんなこと言われても、うちらここを放り出されたら、何処行けって言うんだよっ! 俺は梃子でも絶対に動かねぇかんなっ!!
台湾:俺だって、そうだっ!!ここは動かねぇぞっ!!
記者:違います、違います。僕は役所のものじゃなくて、新聞記者なんですよ。
全員:新聞記者〜っ!?
ボブ:なんで記者さんが、俺らのところに足を運んでるんだ?!
記者:最近、ここ東風山公園に住んでるホームレスの人たちがバンド活動を始め、若者たちに人気だって噂を聴いたんで、うちの新聞の日曜版の生活コーナーで紹介しようかなと思って。
閣下:マジかよっ、それっ!!
記者:失礼な言い方だけど、人生を見失った人たちが、再び音楽で新しい自立を図りつつ、若者たちと心の交流を続けてるって紹介したいなと思って。
台湾:か〜っ、嬉しいねぇ。
ボブ:こんな俺らがネタになるんだったら、喜んで協力してやらぁ。なぁ、みんなっ!!
全員:(ジェイク以外)おうよっ!!
ボブ:じゃあ、何から語ればいいんだ?
記者:まずは、バンドをやり始めたきっかけから、お聞きしたいんです。
ボブ:もともとはなっ、ヤッシーが久しぶりにアコギを持ち出して、ここの公園で弾き始めたのが、そもそものきっかけだったんだ。奴の演奏を聴いた若者がな…。

 嬉しそうな表情で語り続けていくボブ。それをメモしながら聴いている記者。

ジェイク(モノローグ):人生、何が転機になるのかわからない。一度は落ちぶれた俺たち。一度は音楽を捨てた俺たち。そんな俺たちが、再び音楽で生きる希望を得て、音楽を通し、いろんな人たちと小さな小さな繋がりを作り始めている。
 俺たちの噂を聞きつけ、小さなネタの一つとして取材に訪れた記者。彼の書いた記事は、本当にほのぼのとした、俺たちにさえ好感を抱かせる内容だった。記事の載った新聞をもらい、その内容を読んだときは、正直俺らも嬉しかった。「こんな俺らでも認めてくれる人がいるんだな」って、そのときは素直に思ってた。本当に最初のうちは、そんな素敵な出会いを重ねながら、俺らの…LIFE CRUSADERSの存在も徐々に徐々にだけど、大きくなり始めてたんだ。。。最初のうちは…な。。。

SCENE・10 口論

 小さな新聞に取り上げられた記事が小さな記事が評判を集め、その評判が次々と噂を呼び、気がついたら東風山公園で毎週末繰り広げられるLIFE CRUSADERSのライブには、物見遊山な人たちが次々と訪れるようになった。その評判を聞きつけたマスコミもまた、格好のほのぼのとしたニュースネタとして、彼らのことを取り上げるようになっていった。たとえば…。

ニュース画面

ナレーター:今や東風山公園の名物にまで話題を集めているのが、ホームレスの人たちが結成したバンド,LIFE CRUSADERSです。人生に疲れ、社会からドロップアウトした彼らが、昔取った杵柄とばかりにバンドを結成しライブ活動を始めたところ、公園内で遊んでいた若者たちがLIFE CRUSADERSの音楽へいち早く反応。ライブを重ねるごとに話題を集め、今やご覧のよう毎週末になると大勢の人たちが、彼らのライブを一目観ようと集まり始めました。中には楽器を携え、セッション参加する若者までいるほど。リーダーでベーシストのボブさんこと畠山孝信さんは、「音楽活動は、生活に張りを与える糧。これからも俺らが生きるためのプライドを保つためにもバンド活動は続けていく」と語ってくれました。

バンドのことが記事になった新聞や雑誌を幾つも床に並べながら…。

ボブ:すげぇなぁ、まこかさこんなにも評判を集めるなんてな。
台湾:俺なんかこの間、コンビニの残り物の飯を漁ってたら、コンビニで働いてる兄ちゃんによぉ、「雑誌で見ました。これ差し入れです」って、数時間後に賞味期限が切れる弁当までもらっちまったくらいだからなぁ。
閣下:俺だって、そうよ。ファーストフードのゴミ袋漁ってたら、女の子らが「閣下だ、閣下だっ」言うもんだから、なんか恥ずかしくなっちまってなぁ。ゴミ漁りもそこそこで引き上げ、その場から逃げ去ってしまったよ。有名になるってぇのも、いろいろと大変だな(笑)
ボブ:台湾も閣下も、あんまし浮かれんなよ。ヤッシーだってそうだ。サインのお礼変わりに物をたかるなんてことは、今後一切辞めてくれ。確かに俺ら、今はほんの少し注目を集めてるけど、そんなのいっときのこと。マスコミ連中がプイッと別のほうへ顔を向けちまえば、すぐに世の中なんか俺らの存在など忘れちまうんだからよ。
ヤッシー:そりゃあわかってるんだけどよぉ…。。
ボブ:実際に、今目の前を見てみろよっ、最初に俺らを応援してくれてたバスケの若者たちも、ダンサーの女の子らも、あのストリート・ミュージシャンだって、人が大勢集まり始めるに従い、みぃ〜んないなくなっちまったじゃねぇか。それが現実ってものなんだよ。
全員:沈黙…。
ボブ:今こうやってはしゃいでる連中だって、何時俺らの前から消えるかなってわかったもんじゃない。確かにオリジナル曲をやり始めてからは、「LIFE CRUSADERSの曲が好きだから」と言って応援し続けてくれてる人たちも増えている。だけど、そんな小さな盛り上がりは、俺らが何度も何度も経験してきたことじゃねぇか。「何時かおっきく広がってビッグスターになれるんだ」って思いながら、何十人しかいないファンの人たちをズッと守り続けてきた。今となっちゃあ、そういうファンの人たちを失わないようるすることが俺らの生きがいにもなっちまったけど。。。でもけっして忘れるな。俺らがなんでバンドを始めたのかってことを。俺らは「人として認めてもらうために」「俺らはこうやって生きてるんだ」ということを自分自身へ訴えかけ、前へ進むためにやってるんだってことを。
ジェイク:その通りだ。
ボブ:応援してくれる連中も、そりゃあ大切だ。でも、俺らはバンド活動を続けることで、俺ら自身の腐りきった生活の中へ潤いを与えているんじゃねぇか。そりゃあ俺だって、たまには夢を観るよ。誰かがスカウトして、再びミュージシャンとしてどっかのバンドの一員として演奏できるんじゃねぇかって。だけどもし、そうなったとしても、俺らには一生ホームレス出身という肩書がのしかかってくるんだぞ。それを背負ってまで、再び社会の荒波の中で生きていけるか? 俺は正直自信がない。だけど今は、ここで精一杯演奏しながら,毎日の生活に希望をもたせられてるじゃないか。その活力こそが、俺らには何よりも一番大切なこと。そのために…俺ら自身の生きる糧のためにやってるってことを忘れちまったら、俺たちはダメなんだよ。
閣下:その通りなんだけどな。でもよぉ、俺らだってもう一度夢見たいんだよ。俺らをこのどん底の生活から抜け出せるきっかけを与えてくれるのは、ボブさんが何度も言ってる、「俺らが捨てたはずの音楽」かも知れないんだよ。そのためなら俺は浮かれてもいい、それで少しでも昔の生活のような夢を見れるのなら。
ヤッシー:俺だって、そうさ。もしかしたらまたあのスポットライトを浴びれるかも…。その夢の光がほんの少しだけど、俺らへ射し始めてるんだぜっ。人生再浮上のきっかけをつかめるのなら、俺は今の夢にのっかりたい。
閣下:まぁ俺の場合、これ以上売れちまったら、再び借金取りに見つかってヤバいめにあいそうだけどな(笑)。だけどそれだって、また違った意味で張り合いがあっていいかもな。
ヤッシー:ボブさんだって詳しくは聴いてないけど、脛に傷ある身だろっ。ジェイクだって、そうだ。俺だって、みんなのこと言えた義理じゃねぇ。それでも俺らは、たとえ一人一人形作ってきた背景は違えど、音楽に救われながらこれまでの人生を生きてきた連中じゃないか。だったら俺は、もう一度音楽で社会に復帰したい。たとえ何言われようが、陰口や後ろ指刺されようが、俺は音楽で生きていけるんだったら、それが本望だ。それがどんな仕事だろうがよっ。こんなところで残飯食って一生過ごすよりは、人に罵られようが、音楽へ触れてるほうがよっぽど人間らしいプライドがもてるんだよ。
ボブ:ヤッシー…。そうだよな。俺らみんな、もう一度あの舞台の上へ立ちたいだけなんだよな。青空の下のだだっ広いステージも最高に気持ちいいけど、たとえ狭くてもいい、ジワッと汗を滲ませる、あのスポットライトを浴びたいだけなんだよなっ。

会話の中へ入ってくるジェイク。

ジェイク:みんながその気なら、一ついい話があるんだ。
台湾:なんだい、その話って。
ジェイク:この間から何度か足を運んでるスーツ姿の男を覚えてるか?
閣下:あ〜、どっかのサラリーマンみたいな奴だ。
台湾:俺らぁ、てっきりスカウトかと思って見てたぜ。
ジェイク:スカウトマンなんだよ、その人は。
台湾:へぇ〜、スカウトマンなんだその人は、てっきり俺はスカウントマンじゃないかと……え〜っ!!スカウントマンなのっ?!
ジェイク:スカウトマンと言っても、けっしてメジャーなレコード会社でもプロダクションでもない。ちっちゃなインディーズのレーベルらしい。大して予算もないらしいけど、レコーディングならやらせてやるって、彼は言ってるんだ。
閣下:それ、メッチャいい話じゃねぇかよ。
ジェイク:でもな、たとえインディーズと言えど、そのまま搾取されて終わっちまうかも知れない。増して、よく素性もわからないし。なのであえて名刺だけもらい、そのまま保留し続けてるんだ。
閣下:今度のライブで足運んでたらよぉ、ちっと話を聴いてみようぜっ。
ジェイク:正直、俺はこのままひっそりとし続けたかったが、実際にマスコミの連中も俺らのことを話題のネタにしてるしな。みんながその気があるんだったら、俺が細かい条件を突きつけながら交渉してやってもいいよ。せっかく遠征を始めた十字軍だしな、いろんな冒険覃も、長〜い歴史の中には必要だろうからよっ。
ボブ:みんながその気なら…俺も、乗っかってもいい。でも松爺はどうなんだい?
松爺:わしゃあ詳しいことなどわからんて。ただ、みんなが仲間として入れてくれるなら、何処まででも着いてくさぁ。どうせわしゃあ、この公園で朽ち果ててく身。ましてこんな底無しの人生だっ。たまにゃあ泥船に乗って、湖の上を進んでみるのも悪くなかろうって。
ヤッシー:おいおい泥船って。せっかく木の船にのっかれたんだからよぉ。そんな縁起の悪いこと言わんでくれよ、松爺。
松爺:おぉ〜と、そりゃあ失礼こいたわい。

ブッ…おならをする松爺。

閣下:失礼どころが屁までこいてるよ、松爺は(笑)
ボブ:まぁ、何はともあれ、なんかおっきな船出が出そうだなっ。そんな門出を祝して乾杯だなっ。
台湾:乾杯って、まだ夕方前だぜっ。
閣下:俺らにゃ時間も曜日も関係ぇだろっ。さぁさぁ、各自酒持ってこようぜっ!!
全員:(くちぐちに)ないよ、俺もないよ、俺だってすっからかんだぜっ。
閣下:しょうがねぇなぁ。。。じゃあ俺が、とっておきの焼酎を出してやらぁ。

持ってきたのが大五郎の2ℓボトル。

ヤッシー:お〜っ、こんなもの持ってたんだぁ。
閣下:じつはあの新聞記者が、「お礼の差し入れです」って、みんなが留守なときに持ってきたんだけどな。
台湾:なんや、それ独り占めしようとしてたのか?
閣下:いやいやいや、何かのタイミングのときに出そうと思ってただけさっ。それがちょうど今ってわけだ。さぁてさっそく継ぎ始めるのか、おいヤッシー、早くコップ持ってこいっ!
ヤッシー:まっ、また一気か…。
ボブ:お〜よ、当たり前だろっ!!
松爺:ヤッシーの飲むとこ見てみたい。
閣下:ほら〜松爺だって言ってるぞ。
ヤッシー:しょっ,しょうがねぇなぁ。。。じゃあヤッシーいかせていただきますっ!
全員:ヤッシーの飲むとこ見てみたい、そぉ〜れ、一気!一気!一気!!

SCENE・11 ライブ・レコーディング・その1

プロデューサー:みなさん、楽器の調子はどうですか?
ボブ:久しぶりにアコベなんて手にしてるから、感触取り戻すまでにひと苦労だよ(笑)。だけどいい音するよなぁ。やっぱしっかりとした楽器で演奏したいもんだよ。
閣下:ホントそうだな。これまで使ってたカホンなんて、一応「カホン」と言ってるだけで、ただ空き箱へ穴を開けただけのものだったからなぁ。そう考えれば、本物の楽器を手に演奏できるっていうのが最高じゃんかよ。しかも俺の場合、コンガまでいただいちまったからなぁ。も〜たまんねぇよ。次はやっぱドラムのフルセットかね(笑)
プロデューサー:いやいや、それは勘弁してくださいよ(笑)まぁ売れたら考えますけど。
閣下:おっ、その言葉、俺の記憶のメモリーチップスの中へメモしといたらんな。ホンマ売れたら、ドラムセット頼むぜっ!
プロデューサー:わかりました。ただし、売れたらですよ、売れたら。。。それと、ちなみにメモリーチップスじゃなくて、メモリーチップ。チップスじゃ、スナック菓子みたいですよ。閣下:おっと失礼(笑)
ヤッシー:プロデューサーも、気前のいいこと言ってるし。じゃあ俺も、ギターをもう一台増やしてもらおうかな(笑)。俺の場合、ただ弦が新品になった程度だからよ(笑)
台湾:俺なんかフルートだぜっ。
プロデューサー:いやいや、だってヤッシーさんのは年代物のギターですよ。しっかり手入れもしてあるし、何も問題ないじゃないですか。台湾さんは本業がSAXなのはわかるんですけど、一応LIFE GRUSADERSはアコースティックなバンドじゃないですか。本当ならそのまま縦笛でお願いしたいところなんですけど、一応フルートくらいなら演奏の中へ混じるかなと思って。。
松爺:わしがもらったのは、一体何をするものなんじゃ?
プロデューサー:松爺さんは、あの洗濯板をこするのが正統派なスタイルですから、せめてスティックくらいは新調しようかな…ということで、太鼓を叩くときのバチを持ってきました。だから、それでガシガシと洗濯板をこすってください
松爺:了解じゃ。
プロデューサー:一応、何時もの公園のところへレコーディング機材のセッティングはしておきました。なので何時ものよう演奏していただき、3回くらい演奏した中から、いくつかベスト・テイクを抜き出し、それを音源化しようと思ってます。やっぱしLIFE CRUSADERSは、あのライブ感こそが命ですからね。ついでにPVも作ろうと思ってるので、そのままライブ・シーンも収録させていきだきますから。
閣下:PVだってよ、かなり本格的じゃねぇ?
ジェイク:カメラの撮影と言っても、ハンディのビデオカメラを2台廻し、PCで編集する程度のものだから、大したことはないよ。
台湾:あいや〜、今はそんな便利な時代になっちまってたんだなぁ。ここに居ると、時間の感覚どころか、時代の流れさえもわかんなくなっちまうもんなぁ。
ジェイク:それよりプロデューサー、売れたときの印税はしっかりキャッシュでくれるんだろうな。俺ら誰も銀行口座なんてしゃれたもの持ってないんだからよ。
プロデューサー:わかってますって。もちろんプロモーションだって任せてください…って言っても、すでにみなさんいろんな新聞や雑誌、ニュースメディアが取り上げてるから、今や知る人ぞ知るの存在になってますけどね。
ボブ:まさに知る人ぞ知るなよう、まだまだ俺らの存在を知らない人たちも多いけどな(笑)
プロデューサー:あっ、後で紹介しますけど。今回のライブ・レコーディングの模様をNHKのニュース番組の人が、ちっちゃな特集枠なんだけど、ネタにしてくれるそうなんですよ。しかも発売時期に合わせて放送してくれるって言うから、これでLIFE CRUSADERSの知名度も全国レベルですよ。
台湾:じゃあ、音楽番組にも出れるのな?
ボブ:それは無理だって。俺らは、あくまでもホームレスがバンドをやってるってことで話題を集めてるだけの存在なんだから。実際にCDだって、どの程度の人が買ってくれるか、わかったもんじゃねぇんだからよ。なぁ!!
プロデューサー:いえいえ、そんなことはないですよ。目算では3千枚くらいはいけるかなと思ってますから。それくらい売れれば、インディーズなら十分OKなレベルですよ。って言うか、一部楽器も新品を提供したことだし、それくらい売れてもらわないと、うちらもしんどいんですけどね(笑)
ジェイク:別に露出がどうこうなんて、俺らは気にしちゃいない。それよりも、こうやって俺らの生きてる証を音源として残せるっていうことが、何よりも大事なことなんだよ。
ボブ:ジェイクの言う通りだぜ。俺ら、あんま有名になりすぎてもチと問題が起きたりもするしよ。まぁそこそこなヒーローとして、この東風山公園の顔になれるくらいで十分ってなものよ。。。そりゃあ、出来れば売れて、こっから抜け出したい気持ちは、相変わらず持ってるけどよ。それよりも、曲がりなりにも音源になるんだぜっ、しっかりチューニングは合わせとけよ、みんなっ。
松爺:なんか楽しみじゃの〜。
ボブ:松爺には一生の記念になるな。これで冥土へ向けた最高のお土産を手したってなもんよ。
松爺:そうじゃの〜。お主らの夢が再び叶うチャンスに、こうやって混ぜてもらえただけで、わしなんかホント幸せすぎることじゃわい。なんか、いい夢見せてもらったって感じじゃな。
閣下:松爺、演奏はこれからだぜっ。これからだよ、いい夢を観るのはよぉ。まして松爺は俺らにとって大切な仲間なんだからよ、どうせなら一緒に同じ夢を観ようぜ。これで売れたら「キャ〜松爺〜」なんていう女の子たちの黄色い声援が飛び交うかも知れないからさぁ。
松爺:ほっ、ほんまけっ?!
ボブ:閣下、あんまし松爺をあおるなよ(笑)。とにかく今はいい演奏をすることが大切だ。ぼちぼち人も集まってきてるし、今日も、何時ものようはしゃいでいこうぜっ!!
閣下:よっしゃ〜! 気合い入ってきたぞ〜っ!!

SCENE・12 ライブ・レコーディング その2

 すでに公園では、演奏が始まっている。そして1曲終えたところで…。

ジェイク:みんな、今日は一つ嬉しい報告があるんだ。周りを見てもらええばわかるよう、今、俺らが演奏している歌たちが、ライブ音源として形になることが決定した。
観客1:すげぇ〜!!
観客2:ついにLIFE CRUSADERSも売れっ子の仲間入りね。
ジェイク:と言っても、あくまでもインディーズでの発売でしかない。確かに売れるにこしたことはない。でも俺らがこうやって始めた自立への一歩が、音源という形として歴史の残るってことが、今は素直に嬉しいんだ。
観客3:CD出来たら、即効で買ってやるぞ〜!!
ジェイク:ありがとう。正直これもちっちゃな一歩でしかない。だけど今の俺たちにとってみれば、俺らの生きざまを詰め込んだ歌が、たとえ数は少なかろうが、いろんな人たちの心へ届いてくってことが素直に嬉しいんだ。俺らがここで歌い続けていたこと。歌い続けていく意味。自立してゆくための希望。何よりも俺らの背中にも、まだ飛び立つ羽根が生えてたんだってことを確認できただけでも、すっげぇ嬉しいんだ。今日は、今まで以上に魂を込めて演奏していく。だからみんなも、心を開いて、俺らの演奏を楽しんでくれっ!
観客4:もちろんだぜっ!!
観客5:俺らは、みんなを見捨てないからよっ、安心しなっ!!
ジェイク:ありがとう。じゃあ次の曲は、俺らの人生を綴った『LIFE CRUSADERSの夢』です。聴いてください。

『LIFE CRUSADERSの夢』

ガラクタの山 崩れたガレキのベッド
泣きながら歌ったあのメロディ
まだ君の心に届いてますか?

失くした夢 拾い集めた未来
戸惑いながらつかんだあのメロディ
僕らの想いに微笑んでくれますか?

失くしたわけじゃない 忘れたくもない
だから活きて響くんだ この歌声たちが
背中に生えた翼を見つけたから
それが僕らの証 
LIFE SRUSADERSの夢

演奏は続いていく。。。。
SCENE・13 事件

ヒトリート・ライブの模様を収録したライブCD『LIFE CRUSADERS LIVE』は、インディーズとはいえ、その話題性も集め、インディーズ・チャートの上位へ進出。その話題性がまたも新しい話題となり、彼らの存在を好意的に取り上げゆく記事も、徐々にだが増え始めていった。
彼ら自身も、数が少ないとはいえ、取材に応じ、雑誌へ登場する機会も得始めていた。
もちろん、短い特集ニュースとはいえ、NHKの報道番組で流された反響は、確実に大きな話題性を呼び、毎週開催しているスタリート・ライブにも、数多くの人たちが訪れるようになり、彼らを取り巻く環境も、大きく広がり始めていた。
そんな矢先の出来事だった。

 スキャンダラスな報道が、とあるゴシップ雑誌へと掲載された。

ナレーション:東風山公園を舞台にストリート・ライブ活動中のホームレス・バンド,LIFE CRUSADERS。ホームレスたちのやっているバンドとして、道行く人たちを巻き込み話題を集めている彼ら。ライブでは笑顔を振りまいてる陽気なおじさん風だが、メンバーらの過去には、ど〜しようもない汚点がたくさん隠されていた。ヴォーカルのジェイクは、過去に「デザイア・ヘブン」というバンドで、デビュー。シングル『スターマン』などを大ヒットさせたが、当時はアイドルだった、現在は女優であり、大物役者安田泰三の奥さんでもある、安田遙(旧姓・花村)をメンバー内で取り合い、ギタリストを殺傷。何年間も刑務所暮らしをしていた男。リーダーでベースのボブは、男性シンガーHIROのバック・ミュージシャンとして活躍するが、コンサート・ホールの楽屋でドラッグに手を出し逮捕。彼もまた刑務所で暮らした経験を持っている。ドラムの閣下は、インディーズで大人気のバンドに在籍するが、稼いだギャラや数多くのグルーピーから巻き上げたお金をもとに株へ手を出し、みごとに大借金。いろんなヤミ金融屋から逃げまくっている。台湾は、事務所もレコード会社も首になった落ちぶれミュージシャン。松爺は音楽とは関係なく、日雇い労働者から身を持ち崩した、ありがちなホームレス。そしてヤッシーは、過去に大物アイドル、ラブリーベイビーズをプロデュースしていた風見大悟の一人息子として放蕩三昧な少年時代を経験。みずからも親から受け継いだ事務所を経営するが、ドラッグの売買やアイドルの売春斡旋などを繰り広げ、芸能界から追放されたとんでもない男,風見泰。そんな音楽業界へ足を向けられて寝れない連中が、再び音楽を通し夢を観ようとしている。確かに今は普通のおじさんたちだ。でも彼らの背景には、そんな悪辣な心が潜んでいることを忘れてはならない。。。

SCENE 14 諍い 

 東風山公園にて。。。

マスコミ1:ジェイクさんですよね。
ジェイク:はぁ。。。
マスコミ:あなたは過去にデザイア・ヘブンというバンドで、メジャー・デビュー。でも元アイドル、現在は役者安田泰三さんの奥さんの安田遙さん、当時は花村遙さんでしたよね。彼女を取り合い、仲間のギタリストを殺傷させた。。。そんな記事が今マスコミの中で話題になってますが、間違いないですか?
ジェイク:……。
マスコミ1:もしやまだ記事をご覧になってませんね。
ジェイク:記事って、何のことですか?
マスコミ1:これですよ。

 記者が渡した幾つかの雑誌には、先に紹介した記事をきっかけにした、いくつものメンバーたちの過去を暴いたスキャンダラスな記事と、過去の写真が散りばめられていた。。。

マスコミ1:世の中やマスコミの一部では、「LIFE CRUSADERSのような存在をマスコミで祭り上げること自体が犯罪だ」という風潮が沸き起こっています。最近はテレビメディアもそのニュースへ飛びつこうとしているらしく、放映の準備を始めています。みなさんのところへワイドショーのテレビカメラが訪れるのも、そんな遅くない時期ですよ。
ジェイク:(憤った表情を見せながら)あなたは、僕らに何をしろと言いたいんだっ。
マスコミ1:むしろ僕は、LIFE CRUSADERSの支持者側なんですよ。中には過去の清算をしきれてない方もいますが、みなさん社会的な制裁は受け、一応過去を清算した方々じゃないですか。世の中には、過去に脛傷持つ人たちはたくさんいます。みなさんのようホームレスに陥ってしまう方々も、実際数多くいらっしゃいます。それでも、みなさんのよう自立してゆく術を見出したという実績を、僕らはもっともっと評価し、今の風潮へぶつけていきたいと思ってるんです。
ジェイク:……
マスコミ1:僕の携わっている雑誌で、今のマスコミ弊害による風潮へ釘を刺しながら、あなたがたLIFE CRUSADERSの存在が、今の時代の中でどれだけ貴重で大切なものかというを、僕はメッセージしていきたいんです。
ジェイク:そんなの、俺の知ったことじゃねぇ。
マスコミ1:えっ、今なんておっしゃいました?
ジェイク:だから、俺の知ったことじゃねぇんだよ、そんなことは。。。

 その場を立ち去ろうとするジェイク。マスコミ男は追いかけながら、

マスコミ1:知りませんよ、そんな態度。僕、書いちゃいますよ。「LIFE CRUSADERSのヴォーカリスト,ジェイク、世間の支持ゆく声さえ無視してのぼせ上がっている」と。

振り向きざま立ちどまったジェイクは、追いついてきた記者を思いきり殴ってしまう。
その姿を目撃した同行カメラマンは、すかさず写真を撮りまくる。
無言で立ち去るジェイク。。。

マスコミ1:ふざけやがって。今に見てろよっ、俺がこのネタを元に、お前らをもっともっとたたき落としてやるからな。


SCENE 15 嵐の前…

インディーズでの発売とはいえ、現役ホームレスたちが結成したバンドという話題性から数多くのメディアが彼らのことを取り上げ、LIFE CRUSADERSのアルバムはそれ相応の売上を記録。何よりも東風山公園の週末には、数多くの人たちがlIFE CRUSADERSの演奏を観に来るという様が生まれていた。
週末だけならまだしも、平日でも物見遊山としてメンバーの姿を覗きに来る人たち。差し入れをしていく人たちなどが登場。彼らの暮らしにも、少しずつだが明るい展望が開け始めてていた。
と同時に、彼らを商売の道具にしようとしていく人たちも。。。
何時もの夜の宴会のときにも。。。

ボブ:ヤッシーどうしたんだ、今日はやたらこざっぱりしてるじゃないか。
ヤッシー:いやさぁ、昔いろいろあった奴なんだけど、今回のニュースをきっかけに俺の消息を知り、わざわざ訪ねてくれたんだよ。しかも風呂へ入れてもらうのはもちろん、床屋にも連れていってもらい、この通りすっきりさ。洋服だって、「俺はもぅサイズが合わないくらい太っちまったから」と言って、奴が昔着ていた洋服をもらっちまったってことよ。
ボブ:嬉しいことをしてくれるじゃねぇか、そいつは。。。
ヤッシー:だろぅ。やっぱ、同じ時代を生きた仲間だからな。あのときに築いた絆は、なっかなか崩れねぇよ。しかもそいつは、俺が世話した女やハッパなんかを楽しんでた奴だぜ。今じゃ俺もこんな風情だけど、俺が口をつぐんでたことで罪を逃れることのできた恩義を、奴も感じてるんじゃねぇかな。
ジェイク:そいつは、お前を利用しようとしてるんじゃないのか?
ヤッシー:おいおいジェイク、奴に限ってそんなことはないって。今日だって、ただただ懐かしがって一緒に飯食ったりしただけのことだぜっ。まぁ俺は、奴に失礼して真っ昼間からワインなんか飲んぢまってたけどよぉ。
ジェイク:だったらいいんだけど。
ヤッシー:ジェイクこそ、何かあったのか?
ジェイク:俺ら、もともと訳があってこんなところへ辿り着いた連中じゃないか。その黒い経歴をネタにするマスコミ連中が増えてるのを感じてるんだ。今日も、そんな連中の一人が俺に近づいてきた。。。みんなも、そこは気をつけて欲しいんだ。
ボブ:それは、俺らもわかってるつもりだ。
松爺:なんやよぉ〜わからん話だけどよ、とにかく飲もうやっ。
閣下:そうだよ、難しいこと考えたってしょうがねぇよ。それよりもプロデューサーが俺らのために、ライブハウスでワンマンやらせてくれるって話をくれたわけだしさ。今はそっちを頑張ろうぜ。
ボブ:そうだな。その件に関してちょっと提案があるんだ。せっかくライブハウスへ進出できたことだし、何時もの週末ライブの活動を、ちょっとの間だけ止めないか? 瓢箪から駒状態とはいえ、俺らにとっては夢のようなライブハウスへの復帰だぜ。しかもワンマンでの開催。やっぱ客を集めたいじゃない。だからタダで観せるっつ〜のも、チケットを買ってくれるファンの人たちに対して失礼だからよ。
ヤッシー:そうだな。もしかしたら、これが俺らにとっての再浮上のチャンスかも知れないしな。
ジェイク:できることなら俺は、今のままのスタンスで活動を続けたい。俺らは舞い上がるためにバンド活動をやってるんじゃない。ここで浮かれたら、また過去の繰り返しを招いてしまうんじゃないのか?
ヤッシー:ジェイクは表舞台に出たくないんだろ。最近多いもんなぁ、雑誌のスキャンダル記事でも、「幻のロックバンドのヴォーカルを発見。なんと今はホームレスだった」とか。「かつての刺された恋人が証言」なんて記事まで出てしまってるもんなぁ。
松爺:ほんまなのか、それっ?
ボブ:ヤッシー、それ以上言うなっ。
ヤッシー:俺は、もう一度あの舞台に戻りてぇよ。本当なら俺はこんなところへ辿り着くような男じゃなかったはずなんだ。さっき会ったと言った友人だって、「お前がその気なら席は開けとく」と言ってくれてるんだぜ。俺はこのLIFE CRUSADERSを通し、もう1回大きな舞台へ飛び出したいんだ。。。本当ならみんなだって同じ気持ちだろっ。台湾だって、そうだろっ。
台湾:そっそゃあ、俺だってスポットライトの光の下で笑顔を浮かべてたいけどさぁ。。。
ヤッシー:閣下だって、何度も何度も俺らの載った記事を読み返してるじゃないか。本当は未練タラタラなんだろっ。
閣下:でも俺には、借金が…。
ボブ:ヤッシー、もぅそれ以上言うなっ!!
ヤッシー:ボブさんだって、自分の欲望を必死に隠してるだけじゃないかよ。本当なら真っ先に飛び出したいのに…なんで、そんなにジェイクに遠慮してんだよっ。。。

立ち上がるジェイク…。

ジェイク:せっかく心許せる音楽を楽しめてたと思ったけど、、、決まってるワンマンはこなすけど、俺はそこでこのバンドを辞めるよ。
ボブ:おい、ジェイク早まるなよ。もうちょっと冷静に話しあおうぜっ。なぁヤッシー。
ヤッシー:……。

小さな確執……これまでゆっくりながらも順風な風に乗って進んできたLIFE CRUSADERX号だったが、天候は一気に嵐の予感を示し始めたようだ。。。

SCENE・16 ヤッシー回想。。。

テレビ局プロデューサー:おい泰、今日のパーティのセッティングは大丈夫なんだろうなっ。この番組終わったら、お得意さん3人と、タレントの長嶺陵も連れて乗り込むからよ。
泰:任せてくださいよ、忠さん。その変わり、うちのタレントの番組レギュラー起用の件、よろしくお願いしますよ。
テレビ局プロデューサー:わかってるって。うちの会社は、もぅ泰の親父さんの代からズッとお世話になってる、付き合いの古い制作プロダクションだしな。
泰:でも今じゃ、有名番組を幾つも制作している優良制作会社じゃないですか。うちのような芸能界へ長くいるだけのちっちゃな会社と違って、大物芸能事務所の方々が日参するような有名制作プロダクションですからね。
テレビ局プロデューサー:でもさすがにな、いわゆる筋者の繋がりっていうのは…お宅さんのような会社のほうが専門だから。今日だって若手タレント何人か用意してるんだろっ!
泰:もちろんですよ。芸能プロダクシインと言いつつ、キャバクラへタレントを送り込んでるような事務所も多いですし。まして今日は、あの長嶺陵くんがやってくる。。。も〜、はりきって売り出し中の若手アイドルも誘い込みましたよ。
テレビ局プロデューサー:おっ、それって誰なんだ?
泰:日向香織ちゃん。
テレビ局プロデューサー:あの深夜の情報番組で司会アシスタントをやってる子?
泰:そうです。もちろんプロデューサーのためにも、香織ちゃん繋がりで、巨乳タレントの村木優子ちゃんも誘ってます。まぁ香織ちゃんはまだしも、優子ちゃんは今日のパーティの内情を詳しく知らないようだがら。もしもNGだった場合は、枕になれるタレントと上手くその場でチェンジしますから。
テレビ局プロデューサー:泰よぉ、お前そっちのコーディネイトをやったほうが儲かるんじゃないの? お前んところのタレントは、あんまパッとしないけどよ、お前の女性関係のパイプとブッキング能力は、そこいらの大手芸能プロダクションの奴らになんか、到底真似できない腕前だぜっ。もし、そっちに本気出すなら、うちは何時でも協力させてもらうぜっ。
泰:そんな持ち上げないでくださいよぉ。これでも親父が残したプロダクションを継続させてくって使命があるんですから。一応こう見えても歴史だけは長い会社ですからね。
テレビ局プロデューサー:確かにな。じゃあ22時に、いつものホテルのスウィートへ行けばいいんだよな。
泰:バッチリです。一応20時頃、現場へだけは顔を出しますよ。陵さんも出演してるとのことだし。その後,香織ちゃんや優子ちゃんを向かえにいき、あとは現地でみなさん合流ですかね。。。
テレビ局プロデューサー:了解だよ。

ナレーション=泰:何時もの光景だった、長年芸能界へ居るコネクションを利用し、いろんな若手タレントを制作会社や有名スポンサー会社のプロデューサーや社長連中に紹介しては、パーティと称し、ホテルのスウィートでのどんちゃん騒ぎと乱交パーティ。もちろんドラッグだって用意。こういう場へやってくる女の子たちも、ある程度の期待と覚悟を持って足を運ぶから、みんな割り切ってくれてると思ってたのに。。。

スウィートルームにて。。。

優子:香織、なんなのこのパーティ? 私、そんな内容聴いてないし、いきなり「番組に出たいならヤラせろ」なんて言われてもできないわよっ。
泰:優子ちゃん、確かに戸惑う気持ちもわかるよ。だけどさ、こうやって番組でメインを張ってる子たちは、みぃ〜んな通ってきた道なんだよ。隣にいる香織ちゃんだってそう。そんなことより、呑み足りないんじゃない? ほらっググッきいこうよ。
香織:そうだよ優ちゃん、こんな滅多な機会そうそうないわよ。まずは乾杯しよっ。
優子:いやっ、私帰ります!

立ち上がった優子。荷物を持ちドアへ向かおうとする優子を観た泰はそのまま後ろからはがい締めにし、無理やり口を開けさせ、ウォッカを立て続けに飲み込ませた。
むせる優子。さらに手にしたコカインを,泰は優子の歯茎へゴシゴシとこすりつけていく。。。
次第に朦朧としていく優子。ぐったりとした優子へ、「僕が看病してあげるよ」プロデューサーが優しく囁きかけながら、隣の部屋まで連れていってしまった。。。

そして起きた大きなスキャンダル。

「某テレビ局のプロデューサー、若手タレントを薬づけにして強姦。裏で糸を引いていたのは、老舗芸能プロダクションの若手社長」
「次々と発覚。老舗芸能プスロダクションとは、枕営業会社だった。出てきた出てきた、若社長の放蕩スャンダル」

ヤッシー:気がついたら俺は、芸能界への居場所を失っていた。いや、別に、方向転換さえすれば、AVの制作現場ででも食っていけたんだろうと思う。村木優子の訴えだって、時間が経てば忘れてしまう事実。豚箱入っても、保釈金を出せばすむ問題だった。
でも一つ大きな汚点があったんだ。うちの会社が芸能界へまわしていたドラッグ・ルートが警察へバレそうになったため、大手芸能フィクサーたちはもちろん、仕入れていた裏家業の人たちまでもが、うちの会社との関係を一切断ってしまったんだ。
うちのような長いだけで、売れてるタレントもいない零細プロダクションなんて、すぐにお釈迦さ。
結局俺はいたたまれなくなり、倒産寸前の会社を歩降り投げ逃避行。気がついたらお金もなくなり、ここへ辿り着いたッってわけさ。。。

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