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将軍様の下僕の日記集 コミュのあの日のメリークリスマス…あの日からメニー苦しんでマス・

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「ママが欲しい…」

 何度、その言葉を心の中で反芻しただろうか。。。

僕は小さい頃から鍵っ子だった。。。
まだ物心さえついてない頃に、両親が離婚。
父親はズッと、「お母さんは天国へ行ってしまったんだよ」という、ありがちな嘘を子供に付いていた。。。
 確かに、幼き子供にとってみれば、
その言葉ほど、妙な希望を持つことがないぶん、
逆に良かったのかも知れない。。。
 
 ましてうちの父親は、何時も家へ帰ってくるのは、21時や22時頃だった。早くても20時台。遅ければ、起きてる時間に顔を合わせることなどなかったこともしばしばだった。

そんな小さい頃の僕の友達は、ブラウン管だった。。。
そこへ映し出される、コントローラーを使った冒険活劇に心を馳せたり、、、大きなカセットテープを入れると同時に映し出される、ヒーローの物語へ興奮したり。もちろん、いろんなドラマを通し、僕はブラウン管の中で繰り広げられる幸せな物語へ、知らず知らずのうちに心を踊らせていた。。。
きっと、現実に味わあえない物語だからこそ、
幼心にも憧れていたんだと思う。。。

小さい頃から、人と会話をすることが少なかった僕は、
自然と口の重い人間になっていた。。。
見知らぬ人と出会っても、なかなか言葉を発することのできなかった僕。。。
しゃべりたくても、しゃべることができなかった僕。。。
何を話せば良いのか…その言葉が、頭の中へ浮かんではこなかった。。。
そんな僕でも、父親と話をするときだけは、
明けた小箱から幾羽もの蝶々が飛び出すよう、
次々と言葉があふれ出てきたものだ。。。
きっとそれが、幼心だったのだろう。。。
それがきっと、素直な自分の姿だったのだろう。。

今でも思い出すことがある。。。
まだ保育園に通っている頃のことだ。
時期はまさしく12月。。。。
なかなか自宅で過ごすことのない父親なりの、
息子に対する小さな心使いだったのだろう。。。

「まもなくサンタさんが家にやってくるって、お手紙が届いたんだ。トモは何が欲しいんだ? 今からサンタさんへお手紙を書いてあげるから、言ってみな…」

僕はその言葉を聞き、とっさに言ってしまったんだ。。。

「ママが欲しい!」

……って。。。。


その言葉を聞き、父親の言葉が止まったことを、
僕は幼いながらも覚えている。。。
喜々とした表情で答えた僕の姿を観た父親は、
「じゃあ、お願いだけしてみようか。本当にママがプレゼントされたら嬉しいよな。。。でもママは難しいかなぁ。他にはないかい?」
そう、僕に語りかけてきたことも、思い出す。。。

当時、その言葉を受け、何をお願いしたのかは…もう、記憶の彼方へ消えてしまった。。。
でも確か、ファミコンソフトが枕元に届いてたのだけは覚えている。。。

もちろん、喜んださっ。。。
それでも僕は、欲しかったんだ。。。

「ママが…」

何時までも、幾つになっても、、
僕は、クリスマスが近づくたびに、
サンタさんへお願いしていた気がする。。。

「早くママが、僕の家へ届くように」

……って。

あの頃はまだ、僕にも夢があったんだと思う。
本気でサンタクロースの存在を信じていたし。
毎年枕元に届くプレゼントは、
本当にサンタさんが届けてくれるものだと信じていた。。。
一度、サンタさんを目にしようと、必死で起きてようとしてたけど……寝てしまったなんて記憶もある。。
それって、僕に限らずあることなんだろうな。。。

僕は、小学校4年生まで、ズッとサンタクロースがいるって信じていた。。。
いや、今でも信じてる。。。
信じてたいのかも知れない。。。

そう、あのひと言があったからこそ。。。



あの言葉を聴いてしまったからこそ、
僕はサンタクロースを、現実の存在へと置き換えていた。。。


「おめぇ、誰の許可もらってその机に座ってんだよ!」
「そこに座りたけりゃ、ショバ代払えよ、バ〜カ!!」
「って言うか、くせぇんだよ。もっと離れろよっ!!!」

 そうやって言葉でなじられ、
身体を叩かれ蹴られても、
僕は呻くことさえできなかった。。。

 だって、僕には言葉がなかったんだもの。。。
小さい頃から、誰と話すわけでもなく、
ただただブラウン管の前で過ごしてきた僕。
 唯一会話するのは、心の中へ住んでる僕くらいなもの。。。
気がついたら父親とも、言葉を交わす機会は少なくなった。
 別に、無関心でも構わない。。。
それでも、汚れたシャツを見られるのだけは何故か屈辱で、
いつも帰ってきては即効で洗濯をしていた。。。
 もちろん、そんなこと父親が気づくはずがない。
まだ中学1年生なのに、綻びの目立った制服のことも。。。
ときどき腕にあざができてることも。。。

 僕は言葉を持たなかった。。。
いや、言葉は持っていたけど、出し方がわからなかった。
もちろん、しゃべれないわけじゃない。
 呼ばれたら返事くらいはしてるもの。。。
それでも、先生が取る出欠以外、学校で口を開くことなんて、まったくなかった。。。
 たとえいじめられようとも、僕は絶対に声には出さなかった。。。何も抵抗をしなかった。。。
 そうやって無抵抗と無視を決め込むことが、
僕にとって唯一の反抗宣言だったから。。。

 今でも思い出す。あの学校の正門をくぐるときの気持ちを。。。
 僕にとってあの門は、日々訪れる煉獄への開門口だった。
別に今なら、引き籠もれば良いことなのかも知れない。
だけど当時の僕には、学校へ通うということが、生きてく上では破っちゃいけない義務感だと思っていた。。。
 たとえ、誰も友達などいない学校でも、
やはり僕は毎日、あの門をくぐらなければいけないんだと思っていた。。。

 そんな僕にも、得意なものがあった。
ファミコンの腕前は、なかなかのものだったが、
友達のいない僕が、学校でその腕前を自慢することは
一度もなかった。。。
 でも美術の時間だけは、何時も先生に褒められていた。。。
これも小さい頃から、よく漫画本の模写をやっていたからだろうか。。気がついたら鉛筆やクレヨン,クーピーなどを手に、よく絵を描いてたことを思い出す。

 ちっちゃい頃は……確か、3人家族を描いていた。。。
一度も観たことのない理想の家族の姿を。。。
 でも、何時しか僕の絵は、灰黒色が主軸を成す、
おぞましき絵が多くなっていった。。。
 もちろん人間など出てこない。。
ただただ狂気をひけらかす魔物が画用紙の上を暗躍してゆくような絵ばかりだった。。。
 そんな絵ばかり描いてても、デッサンするときの絵もまた、他の人たちに比べれば格段レベルは高いようで、
よく美術の金子先生は、僕のことを褒めてくれた。。。

 ある12月の期末テストを間近に控えた土曜日、
僕はクラスの中でもちょっと大人っぽく、
でもヤンチャな仕種の可愛い子から、
授業中いきなり小さな声で呼びかけられた。。。
「ねぇ、トモ君ってさ、絵が上手だったよね。
あたしの似顔絵描ける?」

となりの席に座る彼女へ、僕は返事をした。。。

「うっ、うんっ…」

と。。。。

じつは、僕の心は飛び上がらんばかりの嬉しさに満ちていた。。
だって女の子から、声をかけてもらったんだもの。
僕は小さく震える声ながらも、

「じゃあ、月曜日までに描いてくるから」

とだけ、彼女に伝えた。

もちろん、その日の夜は必死で絵を描いたさ。
何度も何度も下書きを繰り返しながら、
期末試験の勉強さえ放り投げ、
彼女のことを頭の画用紙に描きながら、
精一杯の想いで、ケント紙の上へ筆を走らせた。。。


月曜日、僕は描いたイラストをしっかり縁止めし、
鞄の中へ滑り込ませながら、学校へ向かっていた。。。
この日ほど、校門をくぐるのにウキウキした日はない。
きっと中学生になって以降初めてだった気がする。。。

僕は早めに教室へと入り、彼女の机の中へイラストを忍び込ませておいた。。。
そして手にした文庫本を読みながら、
彼女が来るのをチラチラ横目で眺めながら待っていた。。。

彼女は……僕のイラストに気づいてくれた。。。
でも、チラッと絵を眺めただけで怪訝そうな顔をしつつ、
僕のことをキッと睨み付けながら、そのまま何も言葉など返してくれなかった。。。

「気にいらなかったのかな?」

僕は正直、落ち込んでいた。。。

そんな彼女が昼休みに入り、そっと言葉をかけてきた。

「マジに描いてきたの? バッカじゃない?
誰も描いてこいなんて言ってないって…
って言うか、キモいよ、私をこんな観察してたなんて…」

彼女にとってみれば、それはただの気まぐれな発言でしかなかったのかも知れない。
女の子に声をかけられただけで浮足だってた僕がバカだったのかも知れない。。。

僕にとってみれば、これが彼女に対する、少し早めのクリスマス・プレゼントの気持ちだったのに。。。

サンタさんなんかいない。。。
誰も幸せなんて運んでくれる人はいない。。。
そんなことわかっているけど、
やっぱり僕は信じたくなってしまうんだ。。。

「きっとサンタさんは、僕の想いを叶えてくれる」

って…。
バカな僕かな?
うん、バカだと思う。。。
それでも、自分へ、少しでも希望の種を植えたかったんだ。。
でないと、このまま芽生える前に、僕の心が枯れてしまいそうだったから。。。

その日の放課後、クラスの掃除をしながら、
ゴミ箱に入っていた僕が描いたイラストを目にした。。。
僕はそれをゴミと一緒に、校舎裏の焼却場まで運び、
燃えさかる炎の中へ投げ捨てようとした。。。

「おい、それもったいないじゃないか」

そう声をかけてくれたのは、公務員のお兄さんだった。
まだ大学を卒業したくらいの年齢だろうか、
しょぼくれた僕の姿と行動を見て、
お兄さんは、とっさに声をかけてきたらしい。。。

「どうしたんだい? そんな、東京タワーから落っこちたような顔をして。。。もっと笑顔になりなよ。もうすぐクリスマスなんだぜ。心にも、イルミネーションくらいは灯しなよ」

僕には、その笑顔がまぶしかった。。

僕は、笑顔を探してたんだ。。。
ズッとズッと、笑顔を探してた。。。
 
 それは、、、今だからこそ気づけた想いなのかも知れない。。。

 僕は、初めてドロップアウトを選択した。。。
相変わらず友達の居ない毎日。。。
 それは、高校へ進学しても同じことだった。。。
以前はまだ、いじめられることで、僕自身の存在がクラスの中でも見えていたけど、今は誰も話しかけてさえこない。
 体育でペアを組むときだって、僕だけ一人仲間外れ。。。
そんなの慣れっこだからいいんだけど、
先生たちまで、僕を「無い者」として無視するのは、
少しだけつらかった。。。

 相変わらず、家にだって、僕の温もりは伝わってこない。
父親の顔さえ忘れてしまいそうなるくらい
互いにすれ違いの生活。。。
 いや、僕が部屋から出ることを拒絶してたのだからしょうがない。。。
 それでも学校へ毎日通っていただけ、まだ少しは理性を持っていたんだと思う。。。

 だけど僕は、急に「笑顔が欲しくなって」、
学校さえも飛び出した。。。

 きっかけは、本当に些細なことだった。

♪アイアムアアンチクライスト♪と叫ぶツンツン頭の男の歌声に触発された僕は、デストロイを探しに家を出た。。。

 と、勝手に解釈しているが。本当はそんなことではなかった。。。
 気弱な僕は、人に対して「NO」とは言えない少年だった。
もちろん「YES」だって言えないんだけどさ。。。
 ある日の夕方、学校帰りにレコードを買いに新宿へ行ったんだ。。。
 ツンツン頭のバンドが奏でる、買ったばかりのレコードを手に、僕はいそいそと小田急線に乗り込もうと、駅へ向かっていた。。。
 僕にとって西新宿なんて、未開の地。。。
正直、少し不安だった。。。
 そんな僕を呼び止める声がしたんだ。。。

「おい、ちょっとちょっと」

 振り返った僕の前に居たのは、
中学時代の用務員にお兄さん……と雰囲気の似た、
30代くらいの人だった。

 その人は、何を目的とするわけでもなく僕を呼び止め、
強引に喫茶店まで連れていった。。。
 たわいもないことをしゃべる、その人。。。
僕は、居心地の悪さを覚えながらも、
仕方なく、話へ耳を傾けていた。。。

 そんな一人語りを1時間は聴いただろうか、
急にその人が、僕に提案を持ちかけてきた。。。

「君は今、何が欲しいんだい?」

 僕は、答える言葉を知らなかった。

「レコードかい? それとも洋服?? 
あっ、ファミコンかな、今の子たちなら」

 どれも欲しいけど、どれも無理に欲しいものではなかった。
強いて言うなら、「僕を認めてくれる人」が欲しかった。

「君、友達いないだろう。なんなら僕が友達になってやろうか?」

 「友達…」

 その言葉が、僕にはキラキラとした存在として映ってきた。
僕は知らない。。。
友達という言葉の意味を。。。

 たったそのひと言が、僕の気持ちのネジを緩めたんだと思う。普段なら絶対にしゃべらないはずなのに、僕はなぜか、その人に言葉を投げかけていた。。。

「欲しいんです、友達…」

 その人は、僕の手を引っ張りながら、喫茶店を出た。。。

「君に笑顔を魅せてやるよ」

 彼は、僕をグイグイ引っ張りながら、歌舞伎町の裏手へと向かっていった。。。

 間もなくクリスマスの季節。
歌舞伎町にも、いろんなイルミネーションが輝いている。
 僕は、成すがまま、、、その人の導かれるがままに、歩き続けていた。。。
 
 気がついたら、僕は2人で個室にいた。。。

「君に素敵なクリスマス・プレゼントをあげるよ。
君が笑顔になれるような…」

 その人はネクタイを緩め、僕をベッドへ押し倒した。。。

恐かった。。。。

 本気で恐かったからこそ、僕はその人を突き飛ばし、
思いきり駆けだした。。。

 僕がもらったプレゼントは、笑顔なんかじゃない。
ただの堕落だ。。。
 腐った欲望と、か弱き者を虐げる、
ただの堕落だ。。。

 僕はきらびやかなクリスマスのイルミネーションを観ながら、本気で思っていた。。。

「僕の笑顔に。。。会いたい」

 その気持ちが僕を、闇へと導いてゆくきっかけになった。。。
 何も知らないうぶな自分だからこそ、
何もしらずに大胆な一歩が踏めたのかも知れない。

 その日を境に、僕は学校へ足を運ぶのは辞めた。。。
そして僕の足は、いつも都会を目指すようになっていた。。。

「サンタさんが笑顔をくれる」と信じたくて。。。

初めて知った、、、人の肌って、こんなにも温かいんだって。。。

 ちょっとしたことをきかっけに、高校へは通うのを辞めた僕。。。
 もちろん、席だけは残っていた。。。
学校の先生が「辞めるな」と言ったからじゃない。
父親が世間体を考えて、そうしただけこと。。。

 僕は学校へ行く変わりに、お昼からアルバイトを始めた。。。
 こんな学校へもろくろく通ってない少年を雇ってくれるアルバイトなんて、枠組みが狭いのは当たり前のこと。
僕もお決まりのよう、ファーストフードでアルバイトを始めた。。。
 もちろん接客……なわけがない。厨房でのハンバーガー作りだ。。。
 初めてポテトを揚げたときには、飛び散る油のおかげで、薬指に水膨れができた…そんなのも、今となってはいい思い出か。。。
 無口な僕にとって、厨房で働けることが本当に嬉しかった。。。
場所が新宿歌舞伎町店ということもあり、忙しいというのもあったが、余計な会話をすることなく、ただただ黙々とハンバーガーを作っていれば良いだけなので、それが嬉しかった。

 僕のシフトのときには、もう2人厨房にパートナーがいた。
一人は昼間時間をもてあましていた伯母さん。そしてもう一人が、僕と同い年の女の子だった。。。
 ファーストフード店では、金髪は許されない。だから彼女はいつも頭に黒髪のカツラをかぶっていた。。。
 それでも時々カツラの奥から金色の髪が見えることから、
よく店長に怒られていた。。。

 じつは僕が、産まれて初めてまともに女性と会話をしたのが、彼女だった。。。
 学校へも通うことなく、クラブやライブハウスへ入り浸っていた彼女にとってみれば、僕など、ただの根暗な少年だったのは間違いない。
 だけど、ちょっとしたきっかけからだったんだ。彼女が僕に声をかけてくれたのは。。。

 きっかけは、僕がアルバイトへ入る前に、近所で買ってきたレコードを見てのこと。。。
 中身? 確かジャムやダムドに混じって、ピックバッグやポップグループ,キャブスなどが入っていたと思う。。。正直よく覚えてないんだけど。。。

 でも彼女が、袋から見えたそれらのレコードを観ながら、キャーキャー騒いでいたのは、しっかり覚えている。。。
 
 その日を境に彼女は、やたら僕へいろんなことを話しかけてきた。ライブハウスで、憧れのバンドの打ち上げに出て、朝までみんなで飲み明かしたこと。。
 花園神社の近くの地下にあるお店へ通い、我を忘れて踊るのが最高の気分解消なんだということ、、、などなど。。。

 じつは彼女も、友達が少なかったようだ。。。
だから必然的に僕は、彼女にチケットを無理やり買わされ、
よくライブハウスへ突き合わされてたというわけだ。
 おかげで僕もソドムやゼルダ,マダム・エドワルダなど、お気に入りのバンドができたのも確かなんだけど。。。

 だからと言って彼女とは、とくに何があったわけでもなかった。
 彼女にとっても僕は、ただの都合の良い話し相手でしかなかった。。。
 だけど、それだけで僕は十分だった。。。
ただただ彼女のマシンガンのようにしゃべる話をウンウン聴いてるだけで、僕は幸せだったし、それが至福の時間だったのも事実。
 けっしてデートとはいえない、言ってしまえば女の子どうしの喫茶店トークの相手が、たまたま僕だっただけのこと。
 そんな無防備な関係だったからこそ、ときどき彼女は平気で僕の腕をつかみ引っ張りながら駆けだしたり、嬉しいことがあると抱きついてきたりした。。。

 もちろん僕は、、、ドキドキだった。。。



そんな彼女が、12月のとある日に手首を切った。。。



彼女は僕の家に、今にも壊れそうな声で電話をかけてきた。

でも、僕は何もできなかった。。。

幸い彼女は、夕方学校から帰ってきた妹に発見され,
そのまま救急車で病院へ運ばれた。。。
なんとか命はつなぎ止めたらしい。。。

彼女の入院先を知ったのは、アルバイト先だった。
店長が嬉々とした表情で
「やっぱあいつはアバズレだったんだよな。
だから雇うのを辞めたかったのに。。。
今、女子医大へ入院してるらしい。
当分出てこなくていいよ。どうせ首だろ,首」
と、僕らにまくしたてていたからだ。

僕は、店長の発言が我慢できなかった。
本当は殴ってやりたかったが、
僕にはそんな勇気がなかった。。。
そんな僕が抵抗したせめてもの手段が、、、

僕はいきなり出来上がったばかりのハンバーガーを、
ムシャムシャと口に頬張り始めた。。
3つ4つ5…でも5つが限界だった。

最初は唖然…としていた店長も、さすがに僕を厨房の奥へ突き飛ばし、その奇天烈な行動を止めてくれた。。。

僕はそのままエプロンと帽子を脱ぎ捨て、病院へ向かった。。。



病室には、一人の男性がベッドの横に寄り添っていた。。。
僕がドアを開け入った瞬間、その人は僕に気づき、
軽く会釈を返してきた。。。
その笑顔が、とてもまぶしかった。。。
本当に天使がいるのか…と思ってしまったくらいだ。

彼は、僕の姿を観るや、遠慮して部屋を離れていった。。。

僕は、それまで彼が座っていた丸椅子に座りながら、彼女の表情を見つめていた。。。

軽く寝息を立てている彼女。。。
布団の横から突き出た腕には、細く長い管が刺さっていた。。。
僕はソッと彼女の指に触れた。。。

温かかった。。。

掌に触れた。。。

温かかった。。。。

彼女は生きてるんだよね。
暖かな温もりは,きっと、僕が知ってる笑顔に繋がっているんだよね。。。

外は病室や彼女の温かさとは裏腹に,冷たい雨が降っていた。。
結露に濡れた窓ガラスを拭きながら、
僕は心にで泣いていた。。。

「ごめん…」

何もできなかった,僕。。。
何の力にもなれなかった、僕。。。

12月の冷たい雨は、そんな僕の情けない心をグサグサに突き刺してゆく鋭利な矢のようでもあった。。。

「クリスマスの日には、プレゼント持ってくるからね」

そう話しかけながら、僕は病室を出た。。。

病室脇の椅子に、さきほどの男性がいた。。。

「ちょっといいかな」

僕は誘われるまま、彼の後ろを付いていった。。。

 僕が「愛」という存在へ気づいたのは、
今の時代の流れを考えたら、とても遅かったと思う。
 アルバイト先で一緒だった彼女との関係には、
自分でも正直「愛」という心の芽生えがあったのか、
今でも自信はない。。。
 強いて言えば、「恋に恋してる」想いだったのだろう。

 一応軽く触れておこうと思う。
あのとき病室で出会った男性は、
彼女を恋愛の保険に賭けていたような、
中途半端に人気はあるけど、けっして一流には手の届かないバンドマンだった。
 
 じつは、病院で会った男性とは、その後も何度か僕は顔を合わせている。。。
 言ってしまえば僕は、その男性にとっても、都合の良い愚痴相手になってたというわけだ。
 1〜2ヶ月に1度、フッと連絡が入り、待ち合わせのクラブへ行って、ただただ愚痴の相手をしていた程度のこと。。。
 その頃には、手首を切った彼女とも、その人は別れていた。。。
 僕も、彼女がアルバイト先を辞めたことから、
自然と疎遠になっていた。。。
 いや、正確に言うならば、たまに自発的に行き始めたライブハウスやクラブで顔を見かけることがあった。
 最初のうちは世間話めいたこともしていたはずだが、
偶然の出会いを重ねるごとに、その距離は遠く離れていた。。。

 こんな無口で生き方に不器用な僕でも、仲間として認めてくれる人たちがいた。。。
 僕からすれば、最高の憧れゆく存在たちだが、
世間から見れば、社会の動きに順応できないはみ出し者たちばかり。。。
 だから僕らは、同じ匂いを感じていたんだと思う。
まるでコウモリのよう、闇夜が空を支配する頃に新宿へと現れ、大音量の音楽に包まれ、浴びるように酒を呑みながら、ただただ世の中から逃げていく。。。
 だけど、そんな生き方が僕は好きだった。。。

 あの頃の僕は、お金が乏しいことから、よく駆けつけ2杯ほどのテキーラをすきっ腹なお腹へと流し込み、即効で酔いしれるのを楽しみとしていた。。。

 そんな友達と知り合うきっかけを作ってくれたのが、先に触れた男性だったというのも、不思議なものだ。

 当時の僕は、本当にお金には困窮していた。。。
確かに、無くても暮らしてはいけるが、
あるにこしたことはない遊びもいろいろ覚えてた時期である。
 
僕は仲間界隈で知り合った、年下の男の子に誘われ、
一線を超えたアルバイトを始めた。。。

 優等生ぶったファーストフードのアルバイトなど、比にもならない精神的に過酷な仕事。。
 僕には思いきり背伸びをしたお仕事だったけど、
もともと心を閉ざすことに慣れている僕にとってみれば、
数時間の我慢によって聖徳太子を手に入れられるのであれば、
それも納得のいく我慢だと思っていた。。。。

 僕が何をやっていたのかは、あまり触れたくはない。
それを始めたばかりの頃、思いきり精神的な苦痛を感じ、
何度も絶望の淵を彷徨ったことがあるのも、事実。
 でも、手っとり早く、みんなと楽しい時間を過ごすためには、これも僕にとっては、必要な試練だったと思う。

 そんな,クリスマスを間近に控えたとある日、
僕は指定された場所へ働きに向かった。。。。
 そこで出会ったのは……僕の心を深く傷つける相手だった。。。

 ようやくわかったんだ、、、
僕が欲しかったのは、ママのような温もりなんだね。
 産まれてこの方、一度も感じたことのないママの温もり。
産まれてこの方、一度も知ることのなかったママの優しさ。
ないものねだり? 
当たり前さっ、
だって子供だっんだもん、あの頃の僕は…。

 いや、今でも僕はズッと子供のままなのかも知れない。味わえなかった「母の温もり」を観たくなくて、
僕は部屋へ閉じ籠もり、「母の温もり」を知りたくて、僕は無理やり人と繋がろうとしていた。。。

 僕が今、手にした「守りたいもの」。。。。
それは、ノリ。。。

 僕は彼のためなら、我が身を犠牲にしてでも楯になろうと思っている。。。
 正直な話をすれば、彼が僕のことをそこまで求めているのかは…定かじゃない。
 でも母親って、無条件の愛を子供へ注ぐものらしいじゃない。だったら僕が、その愛を無条件に注いだっていいはず。


 何時かは子供は両親のもとを飛び立ち、
両親の心の届かない場所へ巣立っていく。
それでも両親は、ズッと幼い頃から子供へ抱いていた想いを、
生涯変わることなく持ち続けていく。。。

 僕がサンタクロースにお願いしていたのは、
ママが欲しいんじゃなく、無条件な愛だったんだね。
 僕は決めたんだ、、、「僕がママになる」って。。。
だって、それが僕の願いなんだもの。。。

「サンタさん、お願いします。。。僕をママにしてください!」





 '06年12月25日…僕はようやく、ママになれました。
今はまだ病室のベッドの上だけど、、、
昨日念願だった手術を終えました。。。。

本音を言ってしまえば、「僕はノリの母親」になりたかったけど、、、彼は、僕が繋ごうとしていた鎖を解き放ち、
自由に大地を駆け始めてしまったんだ。。。
それからも僕は、「無条件に愛」を、いろんな人へ注ぎ込んできた。。。

人は「バカだ」「お人好しだ」と言うけど、
僕はそうやって、人と繋がり、人を信頼することで、
僕自身の居場所を作ろうとしていたんだ。。。
僕にとってのホームタウン…それは、僕を取り巻く一人一人との行きずりゆくLOVE&LIFEだった。
きっと、これからもそれは変わらないと思う。
ただただ一方的に愛を注ぎ込みながら、
裏切られ、傷つき、涙を流し、また心がたくましくなっていく…ただただ、その繰り返しってだけのこと。。。

きっと、世間から見れば間違った考え方や生き方かも知れない。でもイエスさまは言ったじゃない。「無条件に許しなさい」「無条件に愛しなさい」と。。。。

だから僕は、私になることを決めたの。。。。
心だけじゃなく、その身も私になることで、
私がママになるの。。。。


サンタさん、ありがとう。。。
ようやくママというプレゼントをいただけました。
とても高価なみずからへ送ったプレゼントだったけど、
やっと小さかった頃のプレゼントを、今はもらえた気分なの。

みなさんにとって、幸せってなんですか?
私は今、幸せです。
世の中の価値観なんかじゃない、私自身が真の幸せを抱けゆく姿を手にすることができたのだから。。。
今日はクリスマス…。でもバースデーも兼ねたケーキは、起きてから食べようと思う。。。
今はベッドにこの身を横たえながら、
僕から私へ鍵を渡す、最後の晩餐を夢の中で行うつもり。。。
良かったら、みんなも参加してね。。。
私の新しい門出のために。。。

みなさんのもとへも「愛」や「喜び」が届きますように。。。
Merry X'mas...













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