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意味不明小説(ショートショート)コミュの白い蛇

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栓を抜けば、すべて流れてゆくと分かっていて、栓を抜いた。
浴槽の中で、裸のわたしだけが取り残される。あたたまった身体が、ゆっくりと冷えてゆくのが心地よい。身体はひどく重く、指ひとつ動かすのさえ億劫で、ただ、じっとしていた。
喉が渇いた、と思い、水滴のついた天井を仰ぎ見たとき、窓から白く、細長いものが入ってくるのが目に入った。
白い、蛇だった。
白い蛇は、その、うつくしい鱗を滑らせて、わたしのいる、浴槽の中に入ってきた。黒き眼がわたしを見据え、ちろちろと出たり入ったりする赤くかわいい舌が、わたしの腕に、何度か微かに触れた。蛇は、しばらくそうしたのち、わたしの尻と浴槽の間で丸くなり、じっとしていた。
わたしの尻が、蛇の感触に馴染み、蛇がそこにいることを忘れそうになったころ、わたしは、ようやくわたし自身が動けるようになっていることに気が付き、浴槽から出た。浴室から出るとき、浴槽を振り返ると、蛇は首をもたげ、わたしを見つめ返していた。
脱衣所で身体を拭いていると、足首に何かが巻き付く感触がして、見ると、さっきの蛇だった。あまりに心地よさそうに巻き付いているので、痛くもないし、そのままにして、冷蔵庫から牛乳を取り出して飲む。コップの中の、牛乳の艶やかさは、蛇に似ている、と思った。
それから、蛇はずっとわたしにくっついている。わたしが体勢を変えれば移動し、膝の上に乗ったり、腕に巻き付いたりした。そうして、時折心地よさそうに目を閉じている。眠っているのかもしれない。
夜、わたしが眠るときには傍にいて、けども、わたしが眠りについたあと、蛇はどこかへ行っているようだった。食事だろうか。それでも、朝、わたしが起きるころには、わたしの傍に戻ってきている。
枕元の蛇と目が合い、指先で頭を撫でると、目を閉じ、そうして、腕に巻き付いた。わたしは起き上がり、腕に蛇を巻き付けたまま、顔を洗い、歯を磨く。蛇は、じっとしている。

コメント(4)

この先、何かがありそうで、でもここで打ち切るというのが「作品」なんですね。
奇妙な感触が残る作品でした。

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