ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

ダイアおばちゃんの営業日誌コミュの○○年1月7日(曇)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
記入者、あたし。

朝から扉を叩く音。朝っぱらから何の用だい?っと不機嫌な顔で扉を開けたら、そこにはちっこい人間の女が立っていた。女っていうより、女の子? 背丈はあたしよりでっかいけど、雰囲気がちっこい。

その子はあたしの不機嫌な表情にも意にも介さず、ふわりとお辞儀をすると、早口で話し始める。

こんにちは。あたしリタって言います。今日からここでお世話になりますよろしく♪

リタ? そんなやつ知り合いに居たっけな? といぶかしんでいると、すかさず話を続ける。

あら? 聞いてないんですか? わたしアンジーお婆ちゃんの孫ですわ。ダンビラ亭のダンお婆さんのお手伝いをしてた・・・。

そこまで聞いて得心する。ああ、あたしんとこに来る予定の、先代のダン婆さんの店で手伝いをしてたっていう人間の女のことね。確か名前をアンジーと言ってたね。

それにしてもお前さん、アンジーはどうしたんだい?

と聞いたらリタは人指し指を上にあげてため息をつく。

だってアンジーお婆ちゃん、今年60になるんですよ? そんな年老いたお婆ちゃんを更に働かせるなんて可哀想じゃないですか?! だからわたしが替わってここでお手伝いすることになったんです。

あたしもため息をつきつつ。

60って言うけど、あたしゃ今年263才になるんだがね?

と呟いたら。

あらそれは長命種のドワーフさんだからでしょ? エルフ族程ではないにしろ、ドワーフ族もかなりの長生きだって聞くわ。わたし達人間は200も300も生きられないわ。短命種ですもの。アンジーお婆ちゃんだってかなりのお年なのよ?

そりゃそうだ。

リタはあたしが固い頭の中で必死に整理しているのにも構わず、スルリと身体を滑り込ませ、店内にスタスタと入って行く。弾かれたようにあたしも中に入って扉を閉める。

辺りをクルリと見渡したリタ。いきなりため息をついて呟いた。

おばさん、ここ掃除してるの? こんなに店内が埃だらけじゃ、お客さん来てくれないわよ? いえ、例え来てくれても、驚いて何も注文しないで帰っちゃうわ!

いきなりこれだ。でも昨日のぞいて逃げていったやつらの後ろ姿が脳裏に浮かぶ。

ムッとしてあたしも答える。

うるさいね。これから掃除するとこなんだよ。ダン婆さんが引退してダンビラ亭を閉めてから人間の暦で半年は閉めっぱだったんだ。その間ほこりも溜まるし蜘蛛だって駆けずり回るだろうさ。

テーブルに指をなぞりつつ、リタはこちらを見ないで答える。

でもここは食べたり飲んだりする店なんでしょ? やっぱり清潔にしないと繁盛しないわよ?

繁盛なんかされちゃ困るね。なんせ荒くれのバカどもの相手をせにゃならないのはあたしだけなんだ。

あたしは両手を上げて更にしかめっ面。

リタはそんなあたしを見てぷっと吹き出す。

あはははは。だからわたしが来たんじゃない! おばさんだけじゃないから安心して。それに同じく冒険者のおじさんも手が空いたら手伝ってくれるっていうじゃない?!

あ? あの役立たずの飲んだくれのドバの爺ぃかい? やつならさっそく役に立ってないよ。猪や鹿をわんさか捕ってくるって言っておいて今日で丸3日音沙汰無しだ。今頃どこかの町の居酒屋で呑んだくれているに違いないさ!

あたしはほこりの積もる灰色がかったテーブルを軽く叩いて、湧き上がったほこりにむせながら頭をかく。

リタは口に手を当てながらそこから離れ、軽いステップを踏んで台所に向かう。

あはははは! 面白そうなおじさんね。会うのが楽しみだわ!

台所にあった布巾を掴みながらリタは笑顔をこぼす。

じゃおばさんこれからよろしくね♪ わたしも少しなら料理出来るから。アンジーお婆ちゃんに教わったのよ! お婆ちゃんほど美味しくはまだ作れないけど、おばさんよりは美味しくは作れると思うわ。

にやりと不敵な笑みを浮かべながら片目をつむる。

こんな荒くれしか来ない冒険者宿では、彼女みたいな明るく懲りないタイプの方が上手くいくかも知れないね。まぁとにかくやる事は一杯だし、バカの相手と料理と酒と、目まぐるしい仕事が彼女と分担されるに越したことはないからさ。

あたしは手配してくれた先代ダン婆さんの心遣いに感謝しつつ、リタにクギも刺す。

台所の奥の扉を出たら井戸があるよ。うち専用だから水は使い放題だ。でもその分手入れもうちだけだから大変だよ。

一息ついてため息もつく。

それからそのおばさんってのは止めとくれ。あたしゃダイア・ドンデンガーンって言うありがたい名前があるんだ。丘ドワーフのガーン氏族の出身だよ。知ってるかい?

リタは片手に布巾、片手にホウキを持って答える。どこからホウキなんか持ってきたんだ?

知ってるわ。町の正門出て林の向こうの川の向こう岸の丘の家に住む人達でしょ?

違う違うとあたしはむきになって否定する。

そこは中小人達の丘団地さね。そこじゃない。正門じゃなく裏門だよ。裏門を出て林を越えて、あの有名な一本杉がある辻を山の方に曲がってしばらく歩いた先の、丘陵地帯の中にあるドンデン洞窟だ。

リタはタライを持ち上げながら目を丸くして答える。

え〜そんな遠いとこにあるんだ? 一本杉より向こうはお父さんが危ないから行っちゃダメだって言うから行ったこと無いの。へ〜わたしも行ってみたいな〜!

と丸くした目を今度は輝かせながらこちらを凝視する。

わたしはリタ・ロナワーよ。リタって呼んでね♪ おばさ、いえ、ダイアさん、ん〜ダイアおばちゃんって呼ぼ。

口に手を当てながら、笑いをこらえてる。

あ〜はいはい。この手の娘は言い出したら聞かないからね。ええ、どうにでも好きにお呼び。

首をすくめ、不機嫌な表情を浮かべながら、あたしの心は花が咲いたように彩られていた。


コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

ダイアおばちゃんの営業日誌 更新情報

ダイアおばちゃんの営業日誌のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング