壊れてゆく少女達と秘密基地コミュの【卒業（窓ガラスは壊さないｗ）】

【卒業（窓ガラスは壊さないｗ）】

いつものように、快,感と、快,楽だけを貪り合った後
ティッシュで、どくどくと出る液体を少年は拭きながら
半分、背中を向けて少女に言った。

「こういうのも、もう卒業しなきゃな……」

少女は盛大に吹き出しそうになり、必死に堪えて
優しく、それは優しく、答えた。

「うん、いいよ、それでも」

思った通り、少年から（え？）という間が漏れる。
（え……やだよ……）（もっと一緒にいたいよ……）
半泣きになった少女の顔と言葉でも期待していたのであろうか？

少女は、偽善が大好きだった。
自分が優しく見える、偽善が大好物だった。

何も始まっていない２人の間に、卒業などという
感傷的な言葉はない。お互い、快,楽のみを
欲する関係なのは、最初から暗黙の了解で理解しあってた。

だけど、少女は偽善が大好きだったので
優しい声で、そっと聞く。

「なにか、嫌な事でもあったの……？」

少年は、容易く蜘蛛の糸に絡まる。

「うん……ちょっと甘えさせて……」

少女は優しいフリに陶酔し
得も言われぬ快,感に、飢えた心が潤った。

少年はキスも上手で、他の事も上手だけど
ちょっと我儘が多くて、少女はそろそろ退き際だな、と
考えていたら、向こうから面倒な事になりそうな話を
『感傷』というオブラートと自己陶酔に紛れて
切りだしてくれた。

（つまんねぇ……捨てる立場を維持したいなら
弱みと甘さを見せるなよ……甘さはあの時の嘘の言葉だけで充分）

何度も言うが、それでも少女は優しく見える自分が大好きだった。
全く優しさを持っていない事実は理解していたが、ハイエナの様に
弱った相手に付けこんで、存分に似非の優しさを注いだあとは
味の無くなったガムのように、紙に包んで小さく丸めて捨てる。

（もうちょっと、楽しませてくれると思ったんだけどなぁ……）

少年との行為が気に入っていた少女は、少々残念に思う。

まあ、でも……。

最後まで美味しい思いをさせてくれたし
少女の心は、存分に偽善に浸って、今は、満ち足りた。

すぐにお腹は空くのだが。

「じゃあ、俺、寝るから帰ってくれる？」

少年の言葉は、少年に恋してる相手なら相当痛い。
でも、少女は、少年の期待している言葉は与えてやる気は無い。

（大丈夫？今は傍にいたいよ……）
（心配で、放っておけない……居ちゃだめ……？）

これらの言葉を、全て拒否するであろう少年に
少女は、にっこり笑って、やはり優しく言葉を置く。

「じゃあね。おやすみ。BayBay.」

少年は自分の方がずっと強かなつもりでいるので気付かない。
BayBay.という言葉は、『もう要らない』という意味を含む事を。

気付かない事すら、愉快な少女は、スキップをしながら道を歩く。

新しい獲物は、別に急いで探さない。面倒な相手と絡まっても損だ。

人生詰んだ、などと言う健康な人間の気がしれない。
こんなにも、何もかも無くしたはずなのに、まだあったのだから。
愉快な事も、気持ちの良い事も、自分自身すら騙せる事も。

若さ。
しか、武器が無い事も承知だ。
でも年齢に応じた楽しみ方はあるだろう。

少女は体を売らない。

少女は相手の思い込みや
叶わない夢を喰う獏だ。

それが、少女の主食。
体は少女にとって何の価値もなかった。
だから、値段はないので売れない。

自分だけが上から見てると勘違いしてる少年や
そんな少年のくずおれる姿、傲慢な態度が急に
甘える坊やになるところ。

気に入る相手はいつもそんな相手。

美食の対価として、たった一つの武器。
【若い体】を、少年が築き上げた砂上の楼閣に
犬に肉でも投げつけるように与える。

実際、少女にはその程度の価値しかなかったし
少女も、それ以上を求めなかった。

下衆の這いずる底辺で生きる自分には
充分過ぎる環境であったから。

下衆ぃな、お前。

それは褒め言葉だった。