ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

半蔵門かきもの倶楽部コミュの第23回 おたけさん作『機械職人の連続体』

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「そう、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』というのは、生命に於ける本物と偽物とは何なのかを考える話だ」
 エヴァが講義室に入ったとき、初老のセルバンテス教授は、10年前と同じように文学講義を行っていた。少々恰幅が良く、小綺麗なスーツを着こなしている教授が好んで語るのは、フィリップ・K・ディックの作品だ。中でも、ディックが著作で度々取り上げている偽物か本物かという議論に教授は執着しており、それが、まるで世界の問題の全てを成すかの様な仰々しさで、学生たちに語りかけるのだった。
 エヴァは、そんな風に昔を思い出しながら、音を立てないようにゆっくりと講義室の扉を閉め、背丈をかがめて座席に座り、何事も無かったかのようにして講義に参加した。彼女にとって、その一連の行動は、講義に遅刻した際に実行していた思い出のやり口なのだが、社会人になった今では、もっと真剣に講義を聴いてあげれば良かったと思い、自分が少し恥ずかしかった。

「文学部の講義に出戻りしても、社会に活かせる技術は身に付かないはずだがな」
 講義が終了し、学生たちが出払うと、セルバンテス教授はツカツカとエヴァのところに歩み寄ってきた。
「しかも、警察の仕事となれば、なおさらだ。どうした、もう仕事を辞めたのか」
「もう、では無いと思いますけど。10年は続いていますし」
 エヴァは、そう言いながらIDを見せると、教授は、まだ疑っているのか、それをまじまじと見つめていた。
「任意同行願えますか」
「罪状は?」
 訝しそうな表情で問う教授に、エヴァは、
「何か心当たりがあるんですか?」
と戯(おど)けて問うと、教授は、
「謎解きなら、もう手伝わんよ。以前、協力した時、被疑者の母親に姿を見られて、その後、彼女は大学までやって来て私を脅したんだからな。もう、あんな怖い思いはごめんだ」
「今回は、緊急事態です」
「以前も、そう言ってたよ」
 教授は呆れたようにして、ため息をついてから、
「仕方ない、私も公的な組織に所属している人間だ。協力するよ」
 教授は、エヴァが帰らないことを分かっていたし、このまま、大学内で付きまとわれたら、愛人かなにかと勘違いされるのも面白く無いので、認めることにした。
「だが、今回は何をするんだ? 前回みたいに、犯人が残した暗号解読?」
 すると、エヴァはニコリとし、
「とりあえず、私と美術館までデートして頂けますか?」

***

「それで、この紳士が殺されたが、犯人がアンディーで、自分はコードを書き換えられたから行動しただけで、己の意思に基づいて殺したのではないと主張しているってのか」
 セルバンテス教授が、アンドロイドのことを“アンディー”の俗称で呼びつつ、助手席から唸るように言うと、運転席のエヴァは、
「そう、それでアンドロイドを改造したと思われる男にはたどり着いたのだけど…」
「ソイツも、アンディーだったのか。しかも、皮肉なことに、ソイツは人間として、この街に馴染んでいた」
「不気味よね。で、さらに不気味なのが、どうもソイツがアンドロイド自体を組み立てたんじゃないかと思われるのよ。コンビニの経営者なんだけど、地下に謎のガレージがあってね」
 セルバンテス教授は首を傾げながら、
「既に何人捕まえたんだ?」
「5人以上かしら。私以外にも何人も出動してて、その度に更新されているから現時点の正確な数は分からないけど」
 エヴァは、それにしても不気味な事件だと思っていた。そのコンビニの経営者も、次第に、誰かに組み立てられたのだと主張した為、調査したところ、五百メートルほど離れたところでガソリンスタンドを経営している夫妻のところから、コンビニの経営者を組み立てたと考えられる設計図と、またもや組み立て場所だと思われるガレージが発見されたのだ。しかも、夫妻は自分たちのことを人間だと思っているアンドロイドであり、さらには、話を聞いて行く中で、彼らも「自分たちも誰かに組み立てられたんだ!」と喚くように主張し始めたのである。
「あの作品そっくりでしょ」
 エヴァが嬉しそうに言うと、教授は、「ああ、似ているな。まるで誰かが私たちに、偽物と本物について考えさせているかのように思えるほどに」と感慨深そうに述べた。
「で、さっきから、何で君は、被害者の写真を、そう何度も見ているんだ? 面識は無いんだろ」
 エヴァが手にしていた被害者の写真は、紳士的な男性の写真で、エヴァの説明だと山の手の方に住んでいる資産家だったようだ。しかし、教授もエヴァも、この街に住んで長いが、この男性のことは何も知らないというのが、何とも不思議だった。
「何か、彼の写真を見ていると、知っている気がするの」
 エヴァはそう言いつつも、知っている以上のことも感じていた。それは感情としては、亡くなった家族の写真を見た時の、あの、悲しくも愛おしい感情であるように思えたが、なぜ、そんな感情を彼に感じるのかは解釈不能であった。
「ジョン・ドゥが死んでいた場所に、なぜ、ドミノが?」
 一番最初に殺されたのは、人間だったのだが、なぜか屋敷のどこを探しても名前が分からず、戸籍上も確認されない為、警察では“ジョン・ドゥ”という名前を与えて捜査を進めていた。
「自己複製ドミノとでも呼ぶべき代物なの。見た目は、何の変哲も無いドミノ倒し用の板なのだけど、彼らは自分で自分とそっくりな板を作り出すのよ」
 セルバンテス教授は、顔をしかめた。
「自己複製する為の部品は、どうするんだ? まさか、死体でも食べて、細胞分裂でもするのか?」
 エヴァは、名無しの紳士に群がっている蛆虫の様なドミノ板を想像して、気持ち悪くなった。芋虫のように這い回る親指ほどの大きさの板に、いきなり小さな口と鋭い牙が現れて、紳士の皮膚を喰いちぎっていく様子は、奇妙な悪夢でしかないが、この現状には相応しい狂気のようにも思われた。
「残念ながら、そこまでホラー要素のあるものでは無いわ。ただ、床に散らばっている部品を拾い集めて、自分と同じものをどんどんと製造して行くのね。まあ、犯人が何の為に用意したのかは分からないけど」
 エヴァが、そう言うと車が停車した。
「さあ、美術館に着いたわ」
 第7美術館。そこは、奇怪な作品ばかりを集めた美術館だったが、エヴァは何を期待しているのだろうか? 教授は妙な胸の高鳴りと共に、入り口の階段を駆け上がった。

「ここが問題の合わせ鏡の間」
 エヴァが案内した場所には、何かを彫っているポーズをした老芸術家の彫像があったが、彫られている対象は置かれていなかった。作品案内を読んだところ、指定された位置から合わせ鏡を覗き込むと、老芸術家が老芸術家と同じポーズをした像を彫っている光景が永遠に続いている光景を見ることができるようになっているらしく、実際にセルバンテス教授がそれを覗き込むと、闇の一点に消失して行く芸術家の連続体を視ることができた。
「これが何か?」
 教授が、エヴァに問うと、彼女は、「事件そのものだと思いません? 自分を作り続ける自分。アンドロイドを作り続けるアンドロイドたち」
 教授は頷いた。そして、作者の欄を見ると、“不詳”と書かれていた。
「何か、文学作品との関連性とか、作品から連想されるものとか、あります?」
 エヴァの質問に、教授は答えず、
「妙だな」
「何が?」
「いや、この作品、製造年は書かれているのに、作者が不詳なんだ。作られたのは、私が生まれるのよりも最近。おかしくないか?」

コメント(2)

書きかけですみません。。
最後の方は書き上がっているのですが、途中が仕上がっておらず、また書きます。
途中でも感想は書いてもらってオッケーです!
刑事と教授の組み合わせがガリレオを思い起こさせました。
機械が機械を作るテーマは、少しありきたり。この後の展開次第。

面白そうな兆しはありますが、短すぎます。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

半蔵門かきもの倶楽部 更新情報

半蔵門かきもの倶楽部のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。