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孫呉VS武田上杉連合コミュの天軍師舞い降りる7

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昌幸ちゃんは指を動かして、
「忍びが長尾の兵たちの声を拡散させても、長尾軍が動かなかったらどうする?」
 唐突な質問に俺は驚きを顔に出そうだったが堪え、その質問を考え始める。
 謙信は簡単には動かない。必ず自身の言葉と覇気で黙らせるだろう。
 信玄様もそれを分かっている上で忍びを出したに違いない。
 単なる揺さ振りをかけるだけに過ぎないが、それはそれで心理的に痛手を与えること。
 少しでも揺らげばそこを間髪入れず付けば折れると読んでいるのだろう。
 なら、もう一つの打撃を与えるには。
「背後を突くのが良いのかな? それは単なる軍を動かして攻撃するのではなく、一揆や反乱を起こさせること。そうすれば、長尾軍は背後を気にしながら武田軍と戦わなければならないことになる。そのようなことになれば景虎さんは軍を退く事を決断することになり、背後を武田に突かれない様に停戦を乞う形になる」
 俺は軍師気分で昌幸ちゃんに告げた。
 昌幸ちゃんも俺の饒舌に瞠目していた。
 俺がこのように自信ありげに答えるとは思っていなかったのだろう。
 もちろん。未来の事は一切話していない。
 史実だと今川義元という駿河(静岡県)と三河(愛知県東部)を支配していた将が仲介役をして一時的な和睦を結ばせた形を取らせた。
「颯音お兄ちゃん。すっごい〜。私と同じ考えだよ。お兄ちゃんがここまで答えられるなんて驚いちゃった。私と同じ信玄様の奥近習になれるよ」
 昌幸ちゃんからお褒めの言葉を貰い喜びが込み上げてきた。
 奥近習とは現在で言う将来を嘱望された幹部候補を指す。
 史実でも昌幸ちゃんはその奥近習の一人だった。
 その中に俺が入るのは恐れ多い事だが名を連ねたいのも事実。
「でも、その背後を突くような一揆や反乱はどう起こさせるんだ?」
「それはね〜。国境に門徒集が居るから、その人たちを煽って一揆を起こさせようかなと」
 悪戯な微笑みを浮かべ語る昌幸ちゃんが少し怖く見える。
(小悪魔だ!)
 俺の内心はそう叫んだ。
「今は忍びの者たちが事を為すまで待つしかないな」
「そうだね。焦らず待とう」
 俺たちは陣所で語り合いながら、忍びたちの作戦成功の報告を待つことにした。

夜の静寂が空を包んでいる。
 都会の喧騒が無く静かで篝火の声と兵士たちの声しか聞こえない。
 昔の日本はこんなに静かだったと初めて知った。
 俺は陣所を回っていた。足軽たちの視線が全身に浴びて痛かったけど、信春さん、昌景さん。春日さん。内藤さんの陣所に顔を出し挨拶をしに行っていた。
 未来の話を少し話しやこの時代の事を教えてもらい、互いに新鮮な話を訊けた。
 分かった事は一つある。
 この時代が史実とは大きな違いがあること。
 これは大変な事実であり驚愕すら覚えたほどだった。
 その事実を信春さんから訊いて言葉すら出なく呆然と立ち尽くしていた。
信春さんの信じていない訳ではないけど、本当に真実なのか信玄様に訊くため本陣へと足を運ばせている。
「信玄様!」
 大声で名を呼び相手の許可なく陣幕を捲り勢い良く入る。
「何事です?」
「確かめたい事がありまして来ました」
「何でしょう?」
 驚く素振りを見せず俺の表情に応えて信玄様も真剣な面持ちで俺を見ている。
「孫呉がいるのは本当ですか?」
「はい。そうですよ。私たちも最初は驚きましたけど、今は孫呉も相手に戦っています」
 冷静に話している信玄様だが俺には冷静という文字が今はない。
 それもそのはず、過去にタイムスリップしたわけではない。
 俺はここに飛ばされる前に考えていた自分の物語の中に居るのだから。
 この世界に居る者は冷静でいられる。だが、俺の頭は混沌が渦巻く。
「どこらへんに居ますか?」
 信玄様を見ず絵図に眼を落とし言う。
「ここ一帯です」
(まったく俺の描いた世界と同じだ。やはり、過去ではなく物語の世界に飛ばされた)
 俺でもこの先はもう分からない。物語の前提を考えただけでストーリーがどう進むかは考えていなかった。
「今はどのような動きを見せていますか?」
 孫呉は大国にしたのは俺であり、甲斐と越後を脅かす存在にしてしまった。
 俺がここで現状を把握しておかないといけない。
「前に何度か攻められましたが、今は何もないです」
「そうですか……」
 顎に手をやり考える。
 孫呉で考えていた将は孫堅、孫策、孫権、甘寧、周泰、周瑜、太史慈、呂蒙。程普。
 こんなに歴戦の将がいたら甲斐も越後も危ない。
 今になって俺が孫呉と甲斐越後と組み合わせたことに後悔。
「どうしたのですか? そのような険しい顔をして」
 信玄様は俺の顔を見て尋ねる。
「信玄様、お話があります」
 俺はこれが自分の知っている未来ではない事を詳細に話した。
「そうでありましたか。なら、ここからは颯音の知らない未来が待っているのですね」
 未来ではないけど、あまり詳細に話しても分らないと思うから話さない事にしよう。
 信玄様は続けて、
「では、ここからは自分の手で未来を切り開いて行ってください。それが、颯音の未来ですよ」
 単純明快な答えだったが、今の俺にその言葉は啓示に思えた。
 ふと、身体から焦燥と恐怖心が消えていった。
(そうだ。信玄様の言う通りだ。俺が描いた物語なら俺がこの物語を作り上げるのが使命だ。俺は作家だからな。危険なストーリーだけど完成させてやる)
 決心した。俺は武田で自分の役目を全うしようと。
「ありがとうございます。信玄様のおかげで決心出来ました」
「そうですか。それは良かったです」
 信玄様は眼を細め俺を優しく見た。
 これが、上に立つ人が成しえる業。人の心を言葉で力を出させる。
 俺の心も信玄様の言葉に闇が消え光をもらった。
「では、失礼します」
 お辞儀をして本陣陣所から立ち去った。
 俺も戦えない分、頭を使っていかないといけないな。
 皆さんには負けるけど、それしか道はない。
 一つだけ強味があるとすれば、孫呉の将の事を誰よりも知っていること。
 俺は今になって三国志オタクの友に感謝。
(最大の敵は謙信様ではない。呉だ。必ず大軍を率いて攻めて来るだろう。ここは早く停戦しないと危ない)
 俺は呉が動くことに非常に危惧すべき点だと、歩きながら考えていた。

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