Amis　コミュの初顔合わせと初練習９

「さすがに家からここはキツイ」
　ざっと、３キロはあると思う。
　これからこのコースで走って行こう。
「さて、お参りだ！」
　水分補給のため財布は持参していたからお賽銭は大丈夫。
　神田大明神の中に入り奥へと進む。
少し日は高くなったもののまだ薄暗く神社には人気が無い。
ちょっと怖いかも。
賽銭箱にお賽銭を入れて鐘を鳴らし二礼二拍一礼の作法をした。
「プロデューサーとしての第一歩を踏み出し、これから絢音。詩乃。心美とまずは四人で活動していき、デビュー曲で彼女たちの存在をファンに知らせて人気を上げていきます。見ていてください」
眼を閉じお祈りを済ませまた一礼し踵を返し歩くと……
「叶うと良いねん。そのお願い事」
「え？」
　聞こえて来た声に俺は周囲を見渡すと一人の女性がいた。
「こんな朝早くからお参りにしに来たのやから、神様も必ず見てると思うで」
「あ、あ、あなたは？」
「ここで巫女さんのお手伝いをしている……」
　徐々に見えてきた女性の姿。
　俺は驚きのあまり立ちつくした。
　神田大明神の神が俺に幻影を見せているのではないかと思い頬を抓る。
痛い！　これは夢ではない。
しかしながら、あり得ないほどの事実がそこにいる。
巫女姿の女性は、あ、あ、あの伝説のスクールアイドルμ'sの一人、東條希さんなのだから。
「と、と、東條希さん！」
「そんなに驚かなくてもいいんやで、うちを知っておるん？」
「も、も、もちろんですよ。自分μ'sの大ファンでして、ライブはすべて見に行ってました」
「μ'sか懐かしいな〜。あの頃は本当に楽しかった」
「じ、自分、鷹月凱斗と言います。お、お会い出来て光栄です」
「そんなに緊張しなくてせいへんで、よろしく、凱斗」
　もう大学４年生くらいなのだからあの頃とは違う。
　薄紫の髪に艶美で大人の雰囲気、その中に可愛さも残っている。
　包んでくれそうな慈愛に満ちた双眸に俺の心が包まれそうな感じがした。
その姿に豊満な双丘を兼ね揃えているが俺には刺激が強い。
「どうして、ここにおられるんですか？」
　まず、今ここに希さんが居ることについて訊いてみよう。
「うち、ここで巫女さんの手伝いをしてるんよ。今日はその手伝いをする日」
「そうでしたか……」
　納得したのは良いが、次の言葉が拾えない。
　訊きたい事は山ほどあるのに緊張と現実ではない現実が眼の前に起こっているから。
「凱斗はこんなに朝早くから参拝しに来たん？」
「は、はい。これから自分の決意報告に！」
「決意報告？」
　首を傾げる希さん。
　どーーーーーん！
　可愛すぎます。年上の人に可愛いとかは失礼だと思うけど可愛いです。
「自分、聖桜歌学園の生徒でして、そのアイドル生たちをプロデュースする学科に通っている一年生です」
「スクールアイドルをプロディユースするん？」
「はい。しかし、そこから本当のアイドルにしてあげるのも自分の役目でして」
「スクールアイドルをプロデュースとはプロデュースの生徒は大変やない？」
　大変すぎますよ。だけど、それが良いんですよ。
　アイドルを育てて夢の舞台に立たせるのが。
「大変ですけど、アイドル生を自分たちが導き最高のアイドルにしてあげる。その舞台を自分が与え最高のアイドルにする。それが自分の夢でもあるからプロデュース科に入ったのです。他の生徒たちも多分同じかと。その夢の第一歩を歩き出すと神田大明神に決意報告をと」
「その夢、うちもその夢が叶うように神様にお願いしてあげる」
「そ、そ、そ、そんなこれは自分の夢でして、の、希さんにお願いしてもらうなんて」
　希さんの優しさに恐れ多いと両手を振り遠慮する。
「うちのパワーはすごいんやで。神様にお願い事すると必ずと言って良いほど叶うんやで」
「そのような力は自分にでは無く、希さん自身でお使いになった方が良いですよ」
「大丈夫やで。うちのパワーはいっぱいあるんや」
　そう言いながら、希さんは鐘を鳴らし拝み始めた。
　巫女服で祈る希さんに俺は眼を奪われた。
「これでよし！」
「あ、あの〜、どうしてそこまでしてくれるのですか？」
　初対面の俺にここまでしてくれるのは嬉しいが、その真意が知りたい。
「夢に向かっている少年の背中を押したいそれだけや」
「あ、ありがとうございます」
　優しいお姉さんです希さん。
　その優しさに俺は包まれそうだ。
「頑張ってね。応援してる」
「ありがとうございます」
　深々と頭を下げる
　空は暁から青空へと顔を変えていた。