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自己満足な短編部屋コミュの妖かしの月

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その日男は、車の中から赤く大きな月を見ていた。
(あの日もこんな月夜だったな・・・)
15年前に見た同じ月夜を思い出しながら、車を走らせていった。



子猫が道路の真ん中で死んでいた。
恐らくパニックになって動けないまま、車に轢かれたのだろう・・・

(このまま次々と轢かれるのも気の毒だ・・・)

そう思った男は、車を止めてこの子猫を抱きかかえると、山に埋めに行くことを決めた。
別に急いでるわけでも無いし、ついでに夕暮れ時の紅葉を楽しんで帰ろう。

紅葉では割りと有名な山だったが、一車線しかないその山を車で走らせる人はほとんどいない。
所々にある、行き違いがかろうじて出来る場所に車を止めると、男はショベルと子猫を持って山奥へと歩き始めた。

え・・・なんでそんな物を持ってるのかって?
ふむ・・・
良い質問だが、それはまたの機会に・・・


5分ほど歩くと、夜景が見える場所に辿り着いた。
藪を抜けなくてはいけない場所なので、ここを歩く人はまずいない。
そこは、男が好きな場所でもあった。

穴を深く掘って子猫を埋めると、男は手を合わせて拝んだ。
お経など知らないので、唱えるのはただ【南無阿弥陀仏】だけを繰り返す。
唱えながら、男は異変を感じた!

(何かが来る!!)

いつしか夕闇が闇へと変わり、辺りに灯りはまるで無い・・・
ふと空を見ると、赤く大きな月が薄気味悪く鈍い光を放っている・・・
その気配は、音を消しながら確かに近づいてくる!

(あの時の報復か?)

頭の中で可能な限りの出来事が思い出されたが、それらは全て何年も前に解決済みになっており、今更それを蒸し返すなんてありえない・・・

(もしかして・・・熊?)

男の背中を緊張が走る!

(いや、ココは風下だから、熊ならあの強烈な臭いがあるはず・・・)

5m・・・

3m・・・

2m・・・

男は振り返り様、気配に向かって拳を振り上げた!

「そこで何をしている!」

目に入ったのは警察官の制服・・・

バキ!!(バキとは言わんけど・・・)

残念な事に警察官は、男の拳を顔面に受けてしまったのだ。
しまった・・・と後悔する前に、もう一人の警察官の銃口がこちらを向いていた!

30分ほど懇々説教をされたが、路上に放置されていた子猫の埋葬に来たと告げたことで、何とか許してもらった。
どうやらこの警察官達は、この山で最近不法投棄が多い為、時々見回りをしていたらしい。

「早く帰るんだぞ!」

そう言い残して警察官は立ち去っていった・・・

(あれ?・・・あいつらなんで足音がしないんだ・・・)

藪の中を歩けば、必ず草木のこすれる音とか、何かしらの音がするはずなのに・・・
それすらも一切無い・・・
子供の頃に誰かが言った言葉が頭をよぎる・・・

【赤くて大きな月を見たらお化けが出て、あの世に連れて行くんだよ・・・】

にゃ〜ん・・・

静寂な闇の中・・・

子猫の鳴き声がした気がした・・・

そう・・・

地面の中から・・・






あれから15年・・・
男にとって、あの日の事は何だったのか・・・
もし子供の頃に聞いた話が本当なら、埋葬した猫が恩を感じて救ってくれたのかもしれない・・・

(ま・・・待てよ・・・)

そう、今夜も赤く大きな月が出ている・・・

(ま・・・まさか・・・な・・・)


にゃ〜ん


・・・

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